WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

煙草がうまそうだ

2015年02月21日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 419●

Bill Evans

Easy To Love

 テレビで宮崎駿監督の『風立ちぬ』をやっていた。ロードショーの時に次男と妻と私でみたアニメ映画だ。次男がみていたので、途中まで付き合った。次男はこの映画の音楽に興味があったようだ。そういえば次男は、最近しばしば、この映画のサントラをピアノで弾いている。それにしても、登場人物が実にうまそうに煙草を吸う映画だ。内容ももちろん悪くはないが、登場人物たちが煙草を吸うシーンが妙に印象的な映画である。

 しばらくぶりに煙草が吸いたくなり、ダウンのコートをはおって戸外に出た。あまりうまいとは感じなかった。もうほとんど煙草は吸わない。若い頃は1日に60本程度も吸っていたのだが、長男が生まれたのを契機に、妻の圧力もあって完全にやめてしまった。もう吸いたいと思うこともない。映画をみて吸いたいと思ったのは、若き日の情熱への憧憬だろうか。

 ビル・エヴァンスの『イージー・トゥ・ラブ』である。リバー・サイド時代の、1956年、1958年、1962年録音のピアノ・ソロを集めたアルバムだ。アルバムジャケットの、煙草を吸う姿が実にかっこいい。ビル・エヴァンスは煙草がよく似合う。スタイリッシュである。ただ、『風立ちぬ』の煙草とはちょっと印象が違うようだ。『風立ちぬ』の煙草はどこかに温かみがあり、うまそうに感じる。それに対して、エヴァンスの煙草はもう少しドライで、あくまでスタイリッシュでかっこいい印象だ。若い頃、そのかっこよさに憧れ、意識的にまねをしてみたりしたが、凡庸な日本人の私にはあまり様にならなかったようである。

 ずっと以前に買って印象も悪くなかったアルバムだが、なぜか聴くことは少なかった。しばらくぶりにかけてみたが、実に好ましいアルバムである。もちろん演奏自体の質も高くじっくり聴けるアルバムだが、読書のBGMにもうってつけのように思う。最近の不穏な政治情勢の故もあって、問題を整理して考えるべく、日本近代史の坂野潤治氏の一連の著作を読み返している。ここしばらくは、このアルバムがBGMになりそうだ。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿