WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ブレックス、ファイナルへ

2021年05月22日 | 今日の一枚(G-H)
◎今日の一枚 506◎
Holly Cole
Dark Dear Heart
 すごいゲームだった。すごいレベルのゲームだった。昨日も今日も、心臓が止まりそうだった。まだ、興奮しいいる。
 Bリーグ2020-21 チャンピオン・シップのセミファイナル、宇都宮ブレックス vs 川崎ブレイブサンダースのゲームの話である。日本のプロバスケットボールだ。やはり、チャンピオン・シップは、ディフェンスもオフェンスも、強度や集中力が全然違う。2試合とも、素晴らしいゲームだった。ブレックスが勝ったことについては、素直にうれしい。
 我らがブレックスは、強豪ひしめく東地区を首位で通過し、チャンピオン・シップ出場を決めたが、川崎には、レギュラーシーズンで1勝4敗と負け越している。全チーム中で唯一だ。しかも、天皇杯決勝で激戦の末破れ、レギュラーシーズン終盤のブレックスのホームゲームでも2連敗しているのである。ブレックスの唯一のホームでの連敗である。そのことから、ブレックスはレギュラーシーズン首位ではあったが、大方の予想は川崎有利、優勝予想の筆頭にも川崎をあげる解説者が多かった。
 昨日の第一戦は、2m以上のプレーヤを3人同時に起用するビックラインナップの川崎に対して、ブレックスはゴール下で身体を張って対抗し、ブレックスが10点以上リードして前半を折り返した。しかし、終盤川崎が追いついて、一進一退の攻防となり、残り数十秒のところで何とかブレックスが逃げ切った。互いにハードなディフェンスの応酬で、68-65のロースコアのゲームだった。
 今日の第二戦は、序盤から一進一退の手に汗を握る展開だったが、驚異的3ポイント成功率とオフェンスリバウンドに高い意識を持続したブレックスが、3Qで優位に立った。結果は96-78となったが、両チームとも最後まで集中力を切らさない、見ごたえのある引き締まったゲームだった。日本のバスケットもここまで発展・進化したのか、と思わせるゲームだった。本当に、感慨深い。
 来週はいよいよファイナルだ。相手は千葉か琉球か。おそらく、千葉だろう。いずれにせよ、ハラハラドキドキのゲームになりそうだ。

 今日の一枚は、ホリー・コールの1997年作品、『ダーク・ディア・ハート』である。ホリー・コールは、ボーカル、ピアノ、ベースのトリオ編成が好きだ。この作品はトリオ編成ではない。にもかかわらず、時々聴きたくなるのは、② Make It Go Away のためだ。ホリー・コールのささやくようなボーカルも素晴らしいが、途中から入ってきてアクセントをつける、ギターのシンプルなストローク演奏がたまらなくいい。この曲を聴くために、時々、このアルバムを手に取るのた。
 

チャーチルのVサイン

2021年05月22日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 505◎
綾戸智恵
Life
 ある俗説の話だ。第二次世界大戦期にイギリスを率いたW.S.チャーチルはよくVサインをしたが、戦後、その意味を問われてこう答えたというのだ。《このサインは、victry(勝利)の意味でもあるが、peace(平和)の意味でもある。一本の指は広島、もう一本の指は長崎。2つの原爆で世界は平和になった。》
 これは全くの俗説のようだ。チャーチルがよくVサインをしたことは事実であるが、あくまでvictry(勝利)の意味で使っていたのであり、戦時中から勝利への意志を示すために使っていたものだ。Vサインがピース(平和)と結びつくのは、60年代にベトナム反戦運動を展開した、ヒッピー文化の中でのことだったらしい。広島や長崎については後付けされたものではないかと考えられる。
 どのような経緯でこの俗説が流布したのかはわからない。ある予備校教師の本などに出てくるようであるが、典拠は示されておらず、この予備校教師が単独で考えたホラ話なのかどうかわからない。恐らく、元ネタがあったのだろう。悪意を感じる俗説である。
 今日の一枚は、綾戸智恵の『ライフ』である。1999年の作品である。つい最近のことような気がしていたが、綾戸智恵が旋風を巻き起こしたのも、もう20年も前の事なのだ。感慨深い。綾戸智恵がジャズではないといわれれば、それでもよい。事実、綾戸はジャズ雑誌にはほんんど取り上げられなかった。ただ、それまでの日本にはほとんどいなかったような種類の、ソウルフルでスピリチュアルでアグレッシブな歌唱だったことは間違いないだろう。所有する数枚のアルバムの中では、この作品が一番好きだ。ソウルやゴスペル、ブルース、そしてジャズなど、多彩なバックボーンを感じさせられる、歌心溢れる歌唱が展開される。しばらくぶりに手に取ったが、やはり、折に触れて時々聴きたい作品だと改めて思った。⑬夜空ノムコウは、日本に存在するこの曲の演奏の中で、最高の名唱だと思う。