WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

九月の雨……青春の太田裕美⑰

2007年09月03日 | 青春の太田裕美

Watercolors_21   1977年作品「九月の雨」。誰が弾いているのかわからないが、ベースラインが印象的な曲である。ヒット曲である。けれど、どうしても好きになれなかった曲である。ジャケットはなかなか可愛いが、いかにも歌謡曲然とした曲調がいけない。出だしからいかにもシリアスなという感じのピアノだ。あまりに生真面目すぎはしないか。大人への脱皮をはかろうとしたのであろうが、ちょっと無理をしすぎではなかろうか。声も荒れてしまっているではないか。こんなに無理をさせて、得るものとは一体なんだったのだろうか。 

 二股の歌である。あるいは男の浮気の歌である。太田裕美がかわいそうではないか。ユーモアに溢れ、アンニュイで、コケティッシュで、ノスタルジックな太田裕美の持ち味を損なっている。繰り返し聴けば、決して悪いメロディーではないが、やはり失敗作である。ヒット作品ではあるが、失敗作であると断じたい。しなやかさを欠いた生真面目さは、硬直的なのだ。太田裕美はこの曲によって大人の女性のイメージに脱皮できたであろうか。否、である。女の生臭さを表出してしまっただけである。聴衆が、太田裕美という「物語」に求めていたものは、そういった姿ではなかったはずだ。 

 しかし、そうはいっても、この曲がヒットしたことは事実である。この曲がヒットした社会的背景を分析しなくてはなるまい。若干の用意はあるのだが、他日を期したい。 

※   ※   ※   ※ 

車のワイパー透かして見てた 

都会にうず巻くイリュミネーション

くちびる噛みしめタクシーの中で
 

あなたの住所をポツリと告げた

September rain rain  九月の雨は冷たくて
 

September rain rain  想い出にさえしみている

 愛はこんなに辛いものなら  私ひとりで生きて行けない               

 September rain  九月の雨は冷たくて 

ガラスを飛び去る公園通り 

あなたとすわった 椅子も濡れてる

さっきの電話であなたの肩の 

近くで笑った女(ひと)は誰なの 

September rain rain  九月の雨の静けさが 

September rain rain  髪のしずくをふるわせる 

愛がこんなに悲しいのなら あなたの腕にたどりつけない 

September rain  九月の雨の静けさが

季節に褪せない心があれば 人ってどんなにしあわせかしら                 

ライトに浮かんで流れる傘に
 

あの日の二人が見える気もした

September rain rain  九月の雨は優しくて 

September rain rain  涙も洗い流すのね 

愛が昨日を消して行くなら 私明日に歩いてくだけ 

September rain  九月の雨は冷たくて 

September rain  九月の雨は優しくて