WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

スピーク・ライク・ア・チャイルド

2007年03月03日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 131●

 Herbie Hancock     Speak Like A Child

  ハービー・ハンコックの1968年録音盤『スピーク・ライク・ア・チャイルド』、新主流派の傑作だ。ロマンチックなジャケットだ。どこかで読んだような気がするのだが、キスをしているこの2人は、ハービー・ハンコックとその奥さんなのだそうだ。本当だろうか。私もやってみたいものだ。

 ハービー・ハンコックに熱狂したことはない。作品を長い期間フォローしたこともない。けれども、すごい演奏家なのだと思う。マイルス・グループでもVSOPでもハービー・ハンコックが加わると、そのサウンドはハービー・ハンコック的サウンドになる。ジャズ評論家の内藤遊人は、『はじめてのジャズ』(講談社現代新書)で彼を「マイルス・スクールの最優等生」と表現したが、やはり才能のある人なのだろう。

 好きなアルバムであるし、比較的よく聴くアルバムでもある。ただ、かつて村上龍の次のような発言の意味がいまだによくわからない。

「『スピーク・ライク・ア・チャイルド』。最初の一音で、とても日本人はかなわない。『ああ、ジャズをやってなくてよかった』と思わせる。」(『ジャズの事典』冬樹社)

 そんなにすごい「最初の一音」だろうか。ああ、理解できない。それとも、村上龍的な挑発的なプロパガンダ発言に過ぎないのだろうか。いつもの日本的貧困に対する嫌悪感を表明する発言なのだろうか


ブルースエット

2007年03月03日 | 今日の一枚(C-D)

●今日の一枚 130●

Curtis Fuller     Blues-ette

Watercolors0004_3  超名盤である。カーティス・フラーの1959年録音、『ブルースエット』。わかりやすい。気持ちいい。最高だ。

 リーダーはカーティス・フラーだが、いうまでもなく、全体のコンセプトは、ベニー・ゴルソンのもの。1950年代後半、長々と展開されるソロが全盛で、クールやモードやフリーといった新しいジャズがつぎつぎと誕生したこの時代に、ゴルソンがファンキージャズの枠に留まりつつ、あくまでアンサンブルを追求したのは興味深いことだ。彼は、古くて新しいアレンジといものにこだわることによって、時代の扉を開けようとしたのかもしれない。

 「ファイブスポット・アフター・ダーク」、なんだかんだいっても、やはりかっこいい曲である。テナーとトロンボーンの低音のアンサンブルにぞくぞくと鳥肌が立つ。