ひのっき

あったかくてぐっすりでごはんがおいしくてよかったねうれしいねなんて小さなしあわせ探し雑記

雫井脩介「つばさものがたり」は号泣の名作

2017年12月12日 | 絵日記
つばさものがたり (角川文庫)
雫井 脩介
角川書店(角川グループパブリッシング)

雫井 脩介先生の「つばさものがたり」を読みました。
泣きました。号泣です。

主人公は26歳の女性パティシエ。
家族で洋菓子店を開きたいという父親の夢を引き継ぎ、東京の有名店で修業します。
しかし夢中で修業に打ち込んできたパティシエを、6年目に病魔が襲いました。
抗がん剤の副作用で味覚は失われ、髪の毛はごっそり抜け落ちます。
このままでは終われない!家族の、私の夢を形にしたい!
パティシエは実家にもどり、念願の洋菓子店を開きます。
しかし修行半ばのパティシエが素人商売で成功できるほど甘くはなく、ほどなく経営に行き詰ります。
打ちひしがれ倒れるパティシエ。
抗がん剤治療を中止し、短い余生を静かに暮らすことにしました。
しかし抗がん剤をやめたことにより、パティシエの体に変化が起こります。
味が分かる!
蘇えった味覚により、自分の作ったケーキの何がだめだったのかを理解しました。
やっぱりこのまま終わるのは嫌だ!自分だけのケーキが作りたい!自分の理想の店を残したい!
残された命はあとわずか、果たしてパティシエは病魔と闘いながら夢をかなえることができるのか!・・・というお話。

いつもながら、雫井先生の心情描写は本当に見事です。
ずっぽり主人公に感情移入し、ページをめくるごとに新しい涙が溢れます。

涙をぼたぼた流しながらも、心を包むキラキラと輝くような読後感。

生きられることの有り難さと夢が人に与える強さに勇気がもらえる名作です。