場面はファルザスの古戦場。辺りは暗黒。
魔女 エリヒトー :
ハーイ あたしはエリヒトー 夜の魔女よ ! 今宵も 魔女たちの祭りに参上したわ 詩人たちに 悪しく言われるほど 不気味な女でないわ 褒めたり 貶なしたりして 際限を知らないのが詩人よね あら 見渡せば 谷間に 灰色のテントが ぎっしり 波打っているわ あの波の まにまには 過ぎし日の恐怖が 夜の幻に交じって もう何年 繰り返されてきたのかしら そして これから先も いつまで繰り返されてゆくやら。 そう やすやす 国は人手に渡したくないに 決まっている 略奪や統治も 力づくでは 長続きするはずないわ 他国を奪ったり 支配したり 権力欲や 傲慢からくるのよね そうよ ここも そういう戦(いくさ)があった古戦場なのよ 美しい花が千切られ 月桂樹の冠が 略奪者の頭を虚しくかざったところね
こっちの岸辺で ポンペイウスが 過去の栄光に酔っていたと思えば 対岸では シーサーが 運命を覗っていたところね そして やがて戦が 。 勝利の女神 ニーケが どちらに微笑んだか 云わなくても分るわね・・
古代ワルプルギスの夜 ゲーテ「ファウスト」 第二部 より
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