曲がり角の向こうに・・・

毎日の暮らしの中でフと心に留まった人やもの、そして風景を描きとめています。 

遥かな山遠い風

2021-06-19 | 絵  ③アレコレ

しっとりとした雨と久しぶりの涼しさに、ほっと人心地がついた気がしています。 手がつかないでいた自分の部屋の掃除と片付けをしていたら、なんと遙かに遠い自分の青春時代を思い起こす画文集が出てきました。 英文学の恩師の画文集です。

大学に入学して2年間は、学風に馴染めず鬱々とした学生生活を送っていたのですが、3年になって選択したゼミで出会った教授と、仲間達のお陰で人生が変わりました~~

勉強に関しては、すっかり忘れましたが、夏休みに、先生の北軽井沢の山荘での合宿・・・昼は近くの草原や山歩き、夜は勉強、炊事はみんなで作って食べたことや、卒業後も月1回、先生の世田谷のご自宅での読書会、6月になると信州鹿沢高原でのレンゲツツジと山の花を愛でながらワラビ摘み・・などなど、文学と自然と触れ合う楽しさを充分教えて頂きました~~

山荘周辺の散策の時に、先生はスケッチブック片手に、割りばしを削ったペンとインクで休憩時間にはよくスケッチされていらっしゃいました~~ 都立大で教鞭をとられていた時にはワンゲル部の部長として登山を楽しみ、冬はスキー、夏は水泳、バイオリンを弾きフルートも吹く・・・そして、絵も描く・・・そんな優しくて親しみやすいお人柄と先生のマルチな才能に学生たちは、みんな惹かれて先生の大ファンに。

卒業後の月一の読書会には、お嬢さんたちが交代で、見た目も美しく美味しいケーキを作って下さったことが、今でも心温まる思い出として残っています。

先生の画文集は、先生の絵の熱烈ファンの都立大ワンゲル部の卒業生を中心に青学の英文科の学生たちも加わって、出版されました。 絵も文も、奥様をはじめ5人のお子様たちが寄せた文も素敵な1冊です。

 

 

先生の絵の中から、私にとって思い出の北軽井沢と浅間周辺、そして鹿沢高原の絵をご覧頂きたいと思います。

 

冒頭の絵は浅間山の麓の薄原です

 

そして、白樺の道…こんな草原の道をみんなで散策しました

 

ワラビ取りに出掛けた鹿沢高原

 

地蔵峠

6月は梅雨の時期なのですが、何故か鹿沢高原はお天気が良く、満山レンゲツツジが咲いている中を、ワラビ取りや、可憐な山野草を楽しみました。 ここで初めてイワカガミを知りました~~ 他にもいろいろ咲いていたのですが、記憶に残っているのはイワカガミだけです

 

先生の自画像(もっとイケメンです)

 

山男ですからこんな絵も

越後駒

 

槍のみえる尾根

 

                    

先生は教え子が卒業する時、結婚する時にはお祝いとして、先生の描かれた絵(油絵)を下さいます。 事前に気に入った絵を、先生に伝えることになっていました。 私も、宝物として2枚先生の絵を持っています。

私は、学生時代はもちろん、社会人になってからも絵を描くこととは無縁の人生を歩いてきました。 仕事を辞めてから、絵手紙を始め、それからペンスケッチ、日本画へと、自分の心の赴くままに描いてきて現在に至っています。 

もしかしたら、学生時代の恩師の絵がずっと心の底に残っていたのかもしれません。  私が今絵を描いていることを知ったら、ビックリしながらも、先生は『上手い、下手ではなく、自分の絵を楽しんでお描きなさい・・・』と仰って下さると思います。

 

                    

ところで、さきほど・・・

画文集に挟まれていた、一枚の挨拶状を見つけて驚きました。 それは今からちょうど30年前(平成三年)の6月の日付で、奥様と5人のお子様連名の先生の49日忌の法要のご挨拶状でした・・・ 

奥様の挨拶状が余りに素敵なのでここに一部引用させていただく事をおゆるし下さい。

〇郎は生前の生き方そのままに颯爽として死に赴きました。 死を恐れることもなく生に執着することもなく、生前の言葉そのままに「家に帰るように」自然へと帰って往きました。                                                                                                                                                          『人生はよく登山にたとえられるが、人生を命をかけて戦い、征服してゆくのもよかろう。 だが、一日一日それ自体を目的として苦しさの中にさえ楽しみを見出しながら一生を送ることができたら、それもまたよい一生ではないか。 そうすれば、失敗に対する悔いもなく、登山を終えて家に帰るような気持ちで、死を迎えることができるのではないだろうか』 (S○○郎画文集 「遥かな山遠い風」より)

なによりも文学を愛し自然を愛し学生を愛した人でした・・・略

 

先生の画文集の紹介のつもりが、計らずも、追悼のような文になってしまったようですが、奥様曰く「あの皮肉っぽい発音不明瞭な話し方と、象のような目と、はにかんだようなほほえみ」で、『思い出してくれてありがとう』と仰って下さる、と勝手に思っています。

長文にお付き合い頂いて、ありがとうございました。

コメント (12)    この記事についてブログを書く
« 食べ物スケッチ・・・豆腐の... | トップ | 食べ物スケッチ 最中 & カス... »
最新の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
のりさんへ (のびた)
2021-06-19 18:10:44
何と崇高な生き方をされ それこそマルチの才能
ヴァイオリン フルート スケッチ 登山 水泳 などなど
生徒の憧れと尊敬を集める方 のりさんの生き方 人生にも大きく影響を及ぼしていますね
鹿沢高原 北軽井沢辺り 私にもたくさんの若い頃 壮年時代など 思い出が蘇ります
返信する
のびたさんへ (のり)
2021-06-19 19:02:37
こんばんは(^^♪
本当にさりげなく、実は真に立派な先生でした~~ 
研究室では、コーヒーに何倍もお砂糖を入れて飲まれていらっしゃった姿が印象に残っています。
そうですね、色々な面で深く影響を受けた先生だと思います。 
鹿沢高原、北軽周辺はいろいろ見所がありますから、のびたさんもきっと何度も行かれて、たくさんの思い出がおありでしょうね・・・

鹿沢高原・・・今頃はレンゲツツジとわらびがいっぱいでしょうね。 行きたいです!!
返信する
Unknown (ゆっくん)
2021-06-19 20:04:51
のりさん こんばんは。
凄い先生ですね。
芸術からスポーツまでオールマイティで。

それより驚いたのは、のりさんが、学生時代、社会人時代で、絵を描くことが無縁だったのですね。
てっきり、ずっと絵を描かれていたと思っておりました。

先生に会われて、のりさんの人生が好転したのですね。恩師と言える方ですね。人生で、何人かいらしゃると思います。自分の人生を好転させてくれる方。
もちろん、ご主人様もですね。💗
返信する
こんばんは (ミルク)
2021-06-19 21:17:07
なんとも、素敵な山の風景ですね~。
気持ちが、スカッとしました(^^♪

のりさんが絵を始めるきっかけは、きっと先生の影響だったのでしょうね。
たくさんの生徒さんに慕われて 生徒への影響も
大きかった事が伺われます・・・
のりさんの宝物でしょうね
実物をみたいな~ みたくなりました♪
返信する
ゆっくんへ (のり)
2021-06-19 22:51:27
こんばんは(^^♪
余りに素晴らしい先生でしたので、周りの男性が小さく見えて困りました~~

絵を描くことは特に得意ではない、普通の子供でした~~ ですから仕事を辞めて、絵手紙を始めた時に、自分にも絵が描けた~~と感動したくらいです。

恩師と胸を張って言えるのは、この先生位だと思います・・・ ゆっくんは何人もいらっしゃるのですか。 
夫が私の人生を好転させてくれた・・・??それは何ともビミョウな問題です(^_-) 何故なら‥夫は結婚して2年でくも膜下出血で倒れ、その時私は妊娠10カ月の身体でした・・・ それ以来、現在に至るまで、夫の身体を気遣う生活が続いているのですから・・・ どうなのでしょうね・・・自分でもよく分かりません
返信する
ミルクさんへ (のり)
2021-06-19 23:01:18
こんばんは(^^♪
先生の山の絵、力強くて爽やかで良いですよね~~
元山ガールのミルクさんが見ても、気持ちがスカッとしますか!(^^)!

絵手紙から入った絵ですが、絵を描く先生の姿が無意識のうちに胸の奥に残っていたのかもしれない・・・とも思ったりしています。 本当に魅力的な先生でした~~ 出会いに感謝しています。
実物は2枚、我が家にありますよ~~。 見に来て下さい!!
返信する
Unknown (yoko)
2021-06-20 08:16:33
のりさん~
おはようございます(^^♪
ブログ記事は、スマホで見ているのですが、今回の記事は小さくて読めず、PCに切り替えて見ています。
どれも実際に行ってみたい所ばかり・・
ステキな風景ですね!
そして恩師との出会いも、のりさんにとっては影響力のある方だったのですね。
その恩師の方の言葉が心に沁みました。
「登山を終えて家に帰るような気持ちで・・」

どんな困難にも立ち向かってゆくのりさんの姿には、こんな素晴らしい先生の影響があったのですね。良いお話と素晴らしい風景画を見せて頂き、ありがとうございました。

スマホでの件は、goo事務局に調べてもらいます。
返信する
素晴らしい人との出逢い (ヒキノ)
2021-06-20 08:41:27
人はさまざま人との出会いがありますが、素晴らしい人との出会いは一生のうちに一人か二人・・・素晴らしい人との出逢いが生き生きと語られています
ね。
絵が素晴らしい・・・人柄が見えてきます。

鹿沢高原から湯の丸、池の平湿原・・・好きな山です。イワカガミがびっしりと咲いています、行きたくなりました。

ありがとうございました。
返信する
Unknown (msroom_miharu)
2021-06-20 10:39:02
お手紙の深く温かい言葉が静かに残りました。最期のお別れがどうあれ そう思うと穏やかな気持ちで送れる気がします。

先日恩師が旅立ったと本で知りましたが 偶然にも緊急事態下にも足が向いて 最期の大作を見ることができそこにいるのを感じて帰りました。こんなにいいお別れは初めてでした。後でPCでゆっくりみたいと思っていますが様々な出会いに感謝です。
返信する
yokoさんへ (のり)
2021-06-20 10:44:34
おはようございます(^^♪
先生が連れて行って下さったところはどこも自然の美しさ優しさが感じられる場所だったように思います。 先生が切り取って描かれる風景も先生が描きたいと思われた場所ですから、その段階でどの絵も素敵な風景になるのだと思います。
今になって、考えてみると、先生からは自分が思っていたよりずっと多くのものを学ばせて頂いたのだ・・・と気付き、あらためて感謝の気持ちで一杯です。
私も「登山を終えて家に帰るような気持ちで・・・」ホッと安堵の気持ちと共に、穏やかに最後の時を迎えられたらいいなぁ・・・と思っています。
記事を丁寧に読んで下さり、有難うございました。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

絵  ③アレコレ」カテゴリの最新記事