奥の細道歩きも富山県の高岡まで歩を進めてきた。想えば東京深川を出発してから、昨年3月11日の東日本大震災で中断した宮城県の松島から岩手県平泉・中尊寺を経て山形県の山寺に至る約290㎞を先送りし、1,368.1㎞を歩き通してきた。この間、芭蕉の足跡を辿ることもさることながら、歩き旅ならではの道すがらのさまざまな景色や出会いを楽しんできた。特に、強く印象に残るのは道々にお世話になった宿泊施設、中でも民宿はそれぞれに心温まるもてなしで歓迎してくれたのがうれしかった。とりわけ日本海側に移ってからは、海の景色の素晴らしさに加え、日本海特有の魚の美味さそしてお米の美味さ、お米が美味ければ酒も美味い、これに宿の心配りが加わると、もう何をかいわんやとなり歩き旅の真髄に触れた心地となる。そんな民宿に柏崎で巡り会えた。
14時22分柏崎に入る。15時05分今日の宿 柏崎市西山町大崎海水浴場の「民宿丸久」に到着。ここでの夕食は思いもかけず最高のもてなしを受けた。これまで日本海側は魚が美味い(事実美味かった)とこれを楽しみ味わってきたが、それを更に上回る美味さにここで出合った。よくいわれる日本海の厳しさに鍛えられた、旨みが凝縮した、これが日本海の魚なのだと十二分に堪能させていただいた。あんこう鍋も加わって(日本海であんこうが獲れるとは知らなかった)。あんこう鍋の残った分は、お願いして翌朝にも出していただいた。心のこもったもてなしをしてくれたおかみさんの笑顔が印象的だった。