北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ロシア軍機の日本列島周辺訓練激増へスクランブル!今月に入り既に37機の接近が発表

2014-04-20 22:55:39 | 防衛・安全保障

◆東京急行経路や戦略爆撃機複数編隊同時接近

 ロシア機の我が国周辺での飛行が急激に増加し、今月2日から19日までの間だけで実に37機が飛行しました。これは異常な増大としか表現の仕様がありません。

Bimg_2262  現在のところ航空自衛隊の対領空侵犯措置により領空侵犯事案は発生していません。また、この急激な増大、クリミア情勢の緊迫化に伴う対日牽制と太平洋正面での米軍への牽制であるのか、太平洋方面におけるロシア機の活動状況が今後冷戦時代の最盛期の水準に転換する位置仮定としての飛行訓練増加かは、現時点では如何とも判断しかねるものがありますが、防衛省が発表した数字だけで半月少々の期間に37機の航空機接近というものは、近年ではなかなか生じませんでした。

Bimg_1502  併せて当初は日本海上での飛行、それも偵察機を中心とした飛行が活発化している、という程度だったのですが、徐々に頻度が高まると共に哨戒機派生の偵察機から戦略爆撃機派生の偵察機が編隊で投入される状況へ転換してゆきます。その後数日を経て、日本海から航空機が太平洋上の我が国沿岸に沿っての飛行へ転換してゆき、続いて複数の戦略爆撃機が数個編隊を同時に我が国周辺を周回する経路を採るようになりました。周回飛行は日本列島を文字通り南西諸島から北海道まで周回するようになっています。

Img_3092 順を追って詳細を示します。4月2日、Tu-142偵察機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道より沿海州方面へ飛行する事案がありました。続いて、4月4日、Il-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行という事案、更に4月5日、Il-38哨戒機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道へ飛行、北海道沖で機動飛行を行ったのち沿海州方面へ飛行、航空自衛隊は何れも緊急発進し対応しています。

Gimg_7354 更に4月7日、Tu-142偵察機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道より沿海州方面へ飛行、4月10日、Il-20偵察機1機が最初に島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行、続いて同一経路にて飛行、と続きます。しかし、4月11日、Il-20偵察機1機が沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行します。

Aimg_0583 この日は更に4月11日、別のIl-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行、と一日に二回の接近事案も生起するようになってきました。そして、4月13日。Il-20偵察機1機が沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行 、と継続的に領空への接近事案は続いてゆきます。

Img_7839f  4月14日、三方向から同時に航空機が接近、戦略爆げっきが加わり、東京急行という太平洋上を東京を目指し一直線に飛行する飛行する経路がこの日の緊急発進から加わることとなりました。Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、Il-20偵察機1機は北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、別行動のIl-20偵察機1機はサハリンより北方領土上空を経て北海道太平洋岸へ飛行します。

Oimg_2104  続いて三陸沖を南下する東京急行経路を飛行、一方Tu-95爆撃機2機編隊は韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行する経路を採りました。冷戦時代には多々展開された飛行経路となりますが、近年では多くは無くなりました、一方、この日の接近を端緒として今月は恒常化する異常な状況へ。

Adimg_1520  4月15日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が3個梯団に分かれ6機が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、編隊の一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、もう一つの編隊はは韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、戦略爆撃機6機の同時接近は近年では非常に稀です。

Uimg_2274 4月16日、Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行、もう一機は北海道北方より北方領土上空を経由し太平洋王へ飛行、三陸沖を房総半島方面へ東京急行の経路を飛行し、その後同一経路にて沿海州方面へ飛行、爆撃機ではなく偵察機ではありますが東京急行の経路が恒常化した端的な事例とも言えるでしょう。

Img_7857  4月17日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が2個梯団4機に分かれ日本海及び太平洋上を飛行、Il-20偵察機1機も飛行、Tu-95爆撃機2機編隊は韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、別のIl-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行しています。

Himg_3304 4月18日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が3個梯団に分かれ6機が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、編隊の一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、もう一つの編隊はは韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、6機の爆撃機が三方向から、という状況の再来です。

Img_6610  4月19日、Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行、もう一機は北海道北方より北方領土上空を経由し太平洋上へ飛行、三陸沖を房総半島方面へ東京急行の経路を飛行し、その後同一経路にて沿海州方面へ飛行、という経路をとりました。東京急行の向上かと複数爆撃機編隊の同時接近、現時点で防衛省が発表した緊急発進は以上の通り。

Img_8934  ロシア機の行動活発化の意図は今のところ判然としません、大規模な空軍演習を展開しているための一過性のものであるのか、前述の通りクリミア半島での騒乱を起因としたウクライナ情勢への太平洋側からの圧力への対抗勢力としての航空部隊の行動活性化であるのか、判然としないのです。他方、海軍艦艇の行動については、今回の航空部隊の活性化ほど大きなものでは無いため、単なる示威行動を航空部隊が中心として展開しているのみ、ということも考えられるかもしれません。

Nimg_2500  一方で確かなことは、近年、航空自衛隊の対領空侵犯措置任務緊急発進は南西諸島での中国機への対応が主体となり、航空警戒態勢もそうした状況へ対応する部隊配置や増援体制へ転換されてきました。ここで、北方での航空部隊活性化が冷戦時代の規模となりますと、南西諸島の緊張はそのまま緊急発進任務の純増というかたちとなり、平時の警戒任務と有事への即応体制維持へ向けた訓練体系の維持へ影響が出てくるのではないか、現状のロシア機の行動が仮に一過性でなかった場合には、少々我が国の防空体制、特に戦闘機数について不安を持たざるを得ないように感じる次第です。

北大路機関:はるな

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自衛艦隊集合訓練2014横須賀(2014-04-18) PowerShotG-12撮影速報

2014-04-19 23:24:13 | 海上自衛隊 催事

◆ヘリコプター搭載護衛艦くらま筆頭に多数が参加

 横浜へ所用があった当方、昨日時間を何とか工面し横須賀へ行ってまいりました。

Ybimg_3579 ヘリコプター搭載護衛艦くらま、背景に見えるのはヘリコプター搭載護衛艦いせ、横須賀基地逸見桟橋と吉倉桟橋に停泊している情景です。くらま母港は佐世保基地、いせ母港は呉基地、ともに横須賀へ揃っての入港ですが、くらま隣にも多数の艦艇が見え、いせ奥にも多数の艦艇が停泊しているのがお分かりでしょうか。

Ybimg_3597 自衛艦隊集合訓練、海上自衛隊が毎年一回実施している艦隊集合の訓練です。逸見桟橋は近年完成した大型艦用の桟橋で、ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型の竣工へ向け横須賀基地の母港能力を高める目的で造成された桟橋ですが、ここまで多くの護衛艦が停泊するのはなかなかありません。撮影の翌日、つまり本日は第2回護衛艦カレーナンバー1グランプリが行われ、準備も進められていました。

Yb_img_3594  ヘリコプター搭載護衛艦いせ、海上自衛隊最大の護衛艦で満載排水量は19000t、ヘリコプターの運用を重視した全通飛行甲板構造を採りつつ、FCS-3多機能レーダーを搭載し防空能力も高い。かつて最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、がヘリコプターとともにターターシステムを搭載し艦隊防空に充てる試みがなされ、断念された設計を、ようやく実現できた海上自衛隊装備体系の頂点にある一隻です。

Yb_img_3577  ここまで、ヴェルニー公園を散策しつつ米海軍横須賀海軍地区を眺めると、アーレイバーク級のほかに、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦らしきマスト、その奥には原子力空母ジョージワシントンや第七艦隊旗艦の指揮艦ブルーリッジのマストらしいものもみえてきました、こうなりますと、奥の方も見てみたくなる。

Ybimg_3601 横須賀軍港めぐり遊覧船、横須賀基地を海から散策するにはここが一番でしょう。当日券が残っていれば利用しよう、と聞いてみますと初便の1100時がまだ空席がありました。早速予約してみましたが、乗ってみるとそれほど混雑はしていません。所謂オンラインゲーム艦隊コレクションの人気が波及し凄いことになっている、という話でしたが、ブームというのはこういうものなのでしょうか、ね。

Ybimg_3602 原子力空母ジョージワシントン、横須賀へ。やはり巨大そのもの。間もなく原子炉炉心交換工事が開始されるため、来年頃には一旦横須賀を本国へと戻り、代わりに東日本大震災救援で大活躍した原子力空母ロナルドレーガンが横須賀配備になる、と報じられています。

Ybimg_3610 自衛艦隊司令部の所在する船越地区へ遊覧船は進みます。ここまでちょっと港外に出ただけで波浪と風が凄く、少々揺れて海に出たということを実感できました。並んでいるのは、護衛艦あまぎり、訓練支援艦くろべ、護衛艦はまぎり、奥に見えるのは掃海母艦うらが、手前の三隻は集合訓練参加艦でしょう。そして、第2回護衛艦カレーナンバー1グランプリにも参加しています。

Yb_img_3619  船越地区から吉倉桟橋を望む。なんというか、停泊艦艇の凄さもさることながらヘリコプター搭載護衛艦いせ、の威容がここまで伝わってきます。奥に見えるビル群は汐入駅前と横須賀中央駅に続く市街地、しかし、少々曇り気味で小雨も降っていたため、空の色が少し残念だ。

Ybimg_3627 吉倉桟橋に停泊する護衛艦たかなみ、おおなみ。満載排水量6300tは巨大です。隣に除籍された護衛艦はつゆき型、今年佐世保の第13護衛隊より護衛艦いそゆき、はるゆき、が除籍されましたので、 除籍艦は昨年除籍された元護衛艦さわゆき、でしょうか。

Ybimg_3633  護衛艦ふゆつき、護衛艦むらさめ、隣が紹介した護衛艦たかなみ、おおなみ、です。護衛艦ふゆづき、は就役したばかりの最新鋭艦ですね。三井造船玉野事業所で17年ぶりに建造された護衛艦として進水式の様子が一般に公開されたそうですが、当方は初見の護衛艦です。母港は舞鶴、先日行こうと思いつつも急用で行けなかった。

Yb_img_3640  あきづき型と、むらさめ型では、あきづき型の方が満載排水量6800tと、むらさめ型の6200tよりも一回り大きいのですが、ステルス性を重視したマストの形状もあって、並んでいる様子というのは中々当方観る機会に恵まれませんでした、こうして一見したところでは、むらさめ型の方が少し大きい印象が意外でした。

Ybimg_3643 ミサイル護衛艦はたかぜ、補給艦ときわ、護衛艦すずつき、三隻の並び。すずつき、も先日、といいますか先月就役したばかりの最新鋭護衛艦です。佐世保基地に配備されました。補給艦よりも基準排水量と満載排水量でかなり小さいのですが、外見の迫力はこちらが凄い。

Ybimg_3645 護衛艦ふゆつき、護衛艦むらさめ、護衛艦たかなみ、護衛艦おおなみ。護衛艦あきづき型、護衛艦むらさめ型、護衛艦たかなみ型の4隻、長大なシーレーンと連戦時代のソ連に現代の中国海軍の圧力を跳ね返すべく性能面でかなり重視された設計の艦型、この4隻だけで小国海軍の稼働艦艇を圧倒できるほどの能力を秘めた大型艦です。

Yb_img_3654 逸見桟橋に停泊している護衛艦二隻を真横から撮影です。護衛艦はるさめ、ミサイル護衛艦あたご、あたご、のほうは奥で見えにくいはずなのですが流石は満載排水量10000tの大型艦、艦橋部分がくっきりと見えています。奥に見える通信塔は横須賀地方総監部のもの。

Yb_img_3658  ヘリコプター搭載護衛艦くらま、ミサイル護衛艦ちょうかい、ミサイル護衛艦あしがら、真横から撮影。横須賀軍港めぐり遊覧船は毎日運航、汐入駅近くに桟橋があり、電話とインターネット予約か当日券で1400円にて利用可能、毎日4便か臨時便を含め5便が運航されています。荒天時と台風接近時は運休となりますが、横須賀を海からの散策には是非、といえるもの。

Ybimg_3716 軍港めぐり遊覧船を満喫したのち、徒歩にて高台へ、この場所に来るのは久しぶりです。前に登った際にはまだ逸見桟橋が計画段階の頃でした。イージス艦が並んでいます、イージス艦あしがら、イージス艦ちょうかい、イージス艦こんごう、それぞれ佐世保の艦で、加えてイージス艦あたご、も。

Ybimg_3720 くらま、他の艦を圧縮効果で写るよう構図を。イージス艦4隻に、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、そして新鋭の護衛艦あきづき型、たかなみ型、むらさめ型、置くのを含め15隻、自衛艦隊の三分の一近い数です、が、世界的な視点ではこれだけの規模の艦艇になりますと、中堅海軍国の総力をも凌駕する規模です。

Ybimg_3771 電燈艦飾等撮影出来れば、物凄い荘厳な情景になるのだろうなあ、と思いつつ、時間も迫っていましたのでこののち撤収しました。一応海軍カレーを金曜日という事ですし堪能し、時間に無理やり余裕を造った中の余裕で江田島産牡蠣の浜焼きも堪能できました、最後に汐入駅の喫茶店にてアイスココアを楽しみ、横須賀を後にしました。

北大路機関:はるな

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平成二十六年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.04.19・20)

2014-04-18 03:55:19 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末の自衛隊関連行事について、横須賀基地の自衛艦隊集合訓練と第6師団祭など、様々な行事が行われます。

Bimg_0162 横須賀基地HPを見ますと、現在全国から続々と艦艇が集結している様子が映されています。とうとう始まったか!?、という情景ですが、これは自衛艦隊の集合訓練、有事の際の艦隊の迅速な集合を目的とした訓練です。そして全国から精鋭が集まったこの週末、もう一つの海上自衛隊を象徴する行事が行われる、という。

88img_1087 カレーに関して、海上自衛隊は恐らく世界最強です。海上自衛隊護衛艦隊集合訓練が横須賀基地で実施され、土曜日には護衛艦カレーフェスタや、一部艦艇の一般公開が行われます。第2回護衛艦カレーナンバー1グランプリとして前回の佐世保に引き続き、盛大に行われます。 カレーは売切れ次第終了、お早めに。

Aimg_3329  海軍カレー、なにやら勇ましい響きですが、実は日本のカレーは海軍カレーから始まりました。インド料理店やネパール料理店などで本場のカレーを注文しますと、スープのようなカレーで我が国家庭のカレーでお馴染みのとろみが無いことに驚かされるのではないでしょうか。

Jimg_1315  我が国家庭のカレーは、旧帝国海軍が週末に曜日の感覚を維持し且つ食材を整理する目的で明治期より導入した、当時は土曜日の昼食に出されていたカレーが始まりですが、美味い一方で揺れる艦内ではスープ上のカレーでは確実に零れ白い夏服が大惨事となりかねません。そこで片栗粉やその他の方法でとろみをつけ、これが全国的に広まることで今日のカレーとなりました。

Eimg_4233 第2回護衛艦カレーナンバー1グランプリは、参加艦艇が非常に多く、潜水艦部隊濃厚味わいカレー、護衛艦あまぎり天霧カレー、ミサイル護衛艦はたかぜ旗風豚カレー、護衛艦はるさめチキンスープカレー、護衛艦むらさめ村雨カレー、護衛艦たかなみ燃えよスパイシーカレー、イージス艦ちょうかい特製シーフードカレー。

88img_4169_1 護衛艦おおなみプレミアムカレー、護衛艦はまぎり豚角煮と野菜のカレー、訓練支援艦くろべ呉代表カレー、ヘリコプター搭載護衛艦くらま観艦式内閣総理大臣喫食カレー、イージス艦こんごうチキンカレー、補給艦ときわローストビーフカレー、イージス艦あしがらビーフカレー、イージス艦あたごビーフカレー。

Aimg_2372_1  以上15隻が海上自衛隊最強のカレーを一般投票で競います。海上自衛隊は護衛艦や潜水艦に補給艦から輸送艦に掃海艇など、全ての艦艇が秘伝のカレーレシピを作成し、長期間の航海で週末の金曜日を忘れないよう毎週金曜日をカレーの日としています。そのレシピは特定防衛機密よりも上の重要特秘とされ、その一端がいよいよ開かれる、カレーナンバー1グランプリへ是非どうぞ。

Bimg_4543  第二回カレーナンバー1グランプリの会場は横須賀基地逸見桟橋にてグランプリ会場が設置され、0900時から開始されます。投票はスプーンで一票を投じるとのことで、カレーがなくなり次第終了、このほか艦艇一般公開も0900から1600まで行われるとのこと。

Img_9845  第6師団創設記念行事、今週末最大の行事はこの駐屯地祭でしょう。第6師団は山形県の神町駐屯地に司令部を置き、東北南部を防衛警備管区として受け持つ師団で、情報RMA実験師団として先進装備を受領しているほか、東日本大震災では福島県や宮城県等で矢面に立ちました。

Nimg_8475  普通科連隊の駐屯地行事について。美幌駐屯地は第6普通科連隊の駐屯地で、連隊は第5旅団の隷下部隊です。弘前駐屯地は青森県の駐屯地で、第39普通科連隊と第9偵察隊が駐屯している駐屯地。高田駐屯地は新潟県の桜の名所として知られ、第2普通科連隊と第5施設群が駐屯しています。

Gimg_5354  松本駐屯地はこの行事のみ19日実施ですのでご注意ください、長野県の駐屯地で第12旅団の第13普通科連隊、山岳連隊として有名な部隊です。板妻駐屯地は富士地区の第1師団隷下、精鋭野戦部隊として知られています。久居駐屯地は三重県津市の第33普通科連隊駐屯地、中部方面隊最初の軽装甲機動車配備部隊です。

Gimg_6392  信太山駐屯地は大阪府を防衛警備区とする第37普通科連隊が駐屯、映画のガメラⅢにて64式小銃と62式機銃で活躍した連隊として一部では有名です。幹部候補生学校は久留米市、候補生の行進や訓練展示なども行われるのでしょうか、保存展示装備には貴重なものがあるとして有名な駐屯地です。

Img_8999  航空部隊駐屯地としては、霞目駐屯地創設記念行事が挙げられます。東北方面航空隊本部と東北方面ヘリコプター隊、東北方面管制気象隊、東北方面航空野整備隊が駐屯、このほか東北方面輸送隊も駐屯しており、第309輸送中隊、第302輸送隊、第105輸送業務隊など、駐屯しています。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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豪製ブッシュマスター耐爆車両、防衛省が“輸送防護車”邦人救出用車両として選定

2014-04-17 23:15:50 | 防衛・安全保障

◆アルジェリアテロ受け補正予算で緊急に取得

 陸上自衛隊がオーストラリア製装甲車、タレスオーストラリア社のブッシュマスター装甲車を少数導入することとなりました。

Img_7015 防衛省は邦人救出用輸送車両として予てより耐爆車両の選定を行ってきましたが、豪州製ブッシュマスターへ決定、本年末までに納入されることとなりました。陸上自衛隊は機動力と防御力を持つ96式装輪装甲車や小回りの利く小型装甲車などを多数整備してきましたが、邦人輸送用の機能に特化した車両としてタレスオーストラリア社より取得する事となったかたち。

Img_3984  今回は非常に特殊な方式で調達されます。ブッシュマスター耐爆車両は、昨年にその必要性が痛感され、b脳営予算ではなく補正予算により取得費用が計上、短期間で装備選定が実施され、海外製装備を翌年、つまり今年の末までに納入を受け、装備化する、という、緊急に必要となった装備は短期間で取得する、という選択肢が採られたことが、非常に大きな意味を持つといえるかもしれません。

Iimg_2807  輸送防護車、として専用装甲車が導入された背景には昨年1月に発生したアルジェリアガスプラント襲撃事件に伴う邦人輸送任務の支援用車両が必要となったことで、従来、海外での紛争事案等に際し自衛隊が邦人救出へ派遣された際、自衛隊は空港などでの安全確保を行います。

Img_9017_1 しかし空港が戦闘地域に包囲され、邦人が空港へ向かうことが困難な場合はどうするのか、空港や港湾までは邦人は戦闘地域などを含め独力で踏破し集合しなければならない、という問題がありました。危険な地域には自衛隊が出ない、という前提とされますが、自衛隊が危険で行けない地域を邦人が非武装で踏破する、可能なのでしょうか。

Img_8310_1  輸送防護車は、こうした状況に際し、輸送機等で邦人救出集結地へ緊急展開し、戦闘地域や不意遭遇に急襲等が懸念される地域を含め、邦人を暫定的な安全地域から飛行場や港湾へ輸送する目的で導入されました。過去には、自衛隊イラク派遣に際しての情勢悪化を受け、報道関係者などイラク国内の邦人第三国への輸送へ、96式装輪装甲車が用いられたこともあります。

Img_3976 ブッシュマスターの実物を撮る機会に恵まれませんしたが、この車両について。豪州陸軍が広すぎる国土を背景に三万人しかいない陸軍、そのうちの歩兵への機動力付与と国際平和維持活動を通じて豪州への脅威を取り除くための装備として導入したもので、豪州陸軍ではランドローバー高機動車の後継車両という位置づけです。

Img_2231 ブッシュマスターとは、豪州陸軍はヴェトナム戦争派遣の関係上700両のM-113装甲車を保有しているが、広い豪州大陸で運用するには余りに機動力が低すぎたというものがありました、其処で米海兵隊が装備するLAV-25軽装甲車を300両導入し、25mm機関砲と8輪機動による高度な機動力を付与しましたが、歩兵全体を機械化するには取得費用が大きすぎました。

Img_4712 こうしてブッシュマスターは、高価な装甲車ではなく四輪駆動として駆動系を簡略化するとともに武装を車載機銃程度に妥協、広大な豪州大陸で運用する為地形上車高を大きくし、併せて地雷防御を重視した設計です。かなり費用を抑えられたようで既に約1000両が調達、豪州陸軍では第1旅団王立豪州連隊第5大隊、同第7大隊、第3旅団第4騎兵連隊、第7旅団第6大隊、同8大隊、同9大隊、第7旅団第7後方支援大隊、陸軍予備役部隊、第1空軍基地警備中隊、第2空軍基地警備中隊へ装備されている。

Img_57691 ブッシュマスターは車幅が2.48mと抑えられており、既存の自衛隊車両のように道路運送車両法の枠内で運用可能です。輸出は英陸軍へ2008年より24両がアフガニスタンでのIED対策車両として輸出され、同時期にオランダ軍も86両を取得している、このほか、インドネシアが3両とジャマイカが12両、我が陸上自衛隊も4両を取得した、というかたち。

Img_0801 何故陸上自衛隊は海外製装甲車の導入に踏み切ったのか、ですが、国産車と比較してみましょう。防弾性能ではNATO標準規格STANAG-4569ではブッシュマスターは1から2、30口径弾の直撃や155mm砲弾の破片などを充分防護できる水準であり、これは軽装甲機動車や96式装輪装甲車と同程度です。

Mimg_2345  費用面ですが、ブッシュマスターは4両が360万米ドルで契約された、としています。一両90万ドル相当ですが、同等の輸送能力を持つ96式装輪装甲車が9000万円程度ですので、為替変動により上下しますが概ね同程度、四輪駆動で小型の軽装甲機動車は2700万円程度で、国産車両の方が同程度か、もう少し安い、ということが分かります。

File0110 それならば、何故ブッシュマスターが導入されたか、として考えられるのは防弾性能と共に防御力の重要な要素を占める耐地雷性能が評価されたことが考えられます。自衛隊車両は野戦を重視し車高を低くすることを重視してきましたが、車高を低くしますと地雷に対する爆風からの防御力に制限が付きます。

Img_3988 自衛隊の装甲車が車高を低く設計した最大の背景は、車高が高ければ戦車などの脅威に対し暴露しやすくなるためで、これは専守防衛を国是とする我が国には死活的な重要性をもつものでした。反面、地雷防御については軽視されたのかと問われればそうではなく、専守防衛の我が国は地雷を仕掛ける側であり、防御地雷原はこちらが敷設、敵が敷設する十分な時間を与えない、という前提がありました。

Img_2546 地雷などの対処よりは戦車砲や大口径機関砲の方が脅威が大きく、これから軽装甲車両が生き延びるには車高を低くして被発見性を局限まで下げるしかない、とした要求からの仕様ですが、反面、今回の邦人救出任務での運用ではこうした前提が通じない。こうして海外車両が選定されることとなりました。

Img_4810 紛争地へ自衛隊が展開する際には、武装勢力の待ち伏せや防御地雷原という我が国での専守防衛に依拠した防衛戦闘では考えられない脅威が生じ、この為の少数の特殊車両を導入するのならば、国産開発するよりは海外製車両を導入したほうが早い、導入の背景にはこうしたものがあるのでしょう。

Kimg_8105  今回のブッシュマスター導入はアルジェリアガスプラントテロを受け、急ぎ調達されたという背景も大きく、防衛予算ではなく全車両補正予算により緊急取得することとなりました。将来的にこの種の車両の待機体制を強化する必要が出れば国産化や駆動系に機関系統の日本仕様が開発されるのでしょうが、国産までの前提であっても、兎に角迅速にそろえる、という面で素早い対応と言えました。

Img_2297 他方で、これは繰り返しになりますが、装甲車に限らず広く防衛装備品全般に言える事ですが、緊急に必要なものであれば短期間で海外製装備を選定し、補正予算から緊急取得、必要性が生じれば即座に揃えるという素早い態勢こそ、豪州製装甲車導入という部分以上に自衛隊が実戦での対応を真剣に考えている証左ともいえ、この部分が大きく評価されるべきでしょう。

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コンパクト護衛艦構想と米海軍LCS沿海域戦闘艦戦闘艦の比較、その常識的要求水準

2014-04-16 23:50:55 | 先端軍事テクノロジー

◆LCSと比べ余裕ある船体と常識的な高機動性能

 コンパクト護衛艦について、前回に続いてもう少し考えてみる事としましょう。

Gimg_5125 落ち着いて考えると、コンパクト護衛艦は比較的無難な設計に落ち着いている、要求水準も無難なものだといえるかもしれません。米海軍の沿海域戦闘艦LCS,コンパクト護衛艦と比較される対象はこちらが基本となるのですが、一晩明け、再度比較していますと、コンパクト護衛艦はLCSよりも三割程度大型で、併せて要求速力はコンパクト護衛艦の方が10ノット近くLCSよりも低速です。

Img_8810 LCS計画の問題点をまず挙げますと、過小すぎる船体規模をモジュール換装により補おうとした為のモジュール維持費の高騰と非効率、高速度を希求しすぎたための機関出力と燃料消費量の増大、短期間大量建造を実現するための未経験企業への参入措置、などなど。

Img_6635 充分な船体規模。コンパクト護衛艦は基準排水量3000t程度という構想ですが、写真の右端に写る護衛艦はつゆき型が3050tです。隣の護衛艦たかなみ型が4600tですので、比較すれば3000tは小型ですが、各種装備や燃料などを搭載した満載排水量ですと4200tとなり、これは米海軍のLCSが満載排水量で2800tから3000tという水準ですから、コンパクト護衛艦の方が大型であるとわかります。

Img_6749 LCSは船体規模の限界から、艦砲と近接防空火器しか兵装を搭載できませんでした。しかし、コンパクト護衛艦は写真右端、はつゆき型護衛艦と同程度の船体を持つのですから、艦砲と近接防空火器に加えて16セルから32セルの垂直発射装置Mk41-VLSを搭載可能で、此処に対潜用のアスロックやESSM対空ミサイルを搭載可能でしょう。もっとも、建造費の関係上、SEA-RAMのような短射程防空火器に限定し、Mk41-VLSは後日搭載扱いとなる可能性はありますが。

Aimg_4332 LCSは水上戦闘艦としての機能に加えて機雷戦能力を求めたため、航空掃海能力の哨戒ヘリコプターへの付与や機雷戦用無人潜水艇の開発等に技術的な障壁に突き当たりました。この点、コンパクト護衛艦も機雷戦能力の付与が盛り込まれているため、慎重に対応しなければなりません。

Uimg_0060 対機雷戦能力の付与ですが、コンパクト護衛艦の場合、あまり難しく考えずMCH-101掃海輸送ヘリコプターの搭載と船体後部の飛行甲板下に自航無人掃海器具SAMを搭載し管制する能力を付与させるだけでも掃海艇が展開するまでの限定的な掃海能力付与が可能でしょう。

Img_6388 機雷戦能力は、もちろん対機雷戦ソナーの搭載なども求められ、機雷戦指揮能力を付与しますと、護衛艦に掃海艇を載せるようなものですので費用は一定程度上昇するものの、掃海艇の代用ではなく暫定的な掃海機能に限れば圧縮可能です。ただし、船体の消磁機能付与へ、従来の我が国が実施する非磁性素材対応は護衛艦には無理なものがあり、アクティヴ式の消磁技術の導入か開発は求められます。

Img_5983  機動力、LCSに対してコンパクト護衛艦が配慮しているのは、LCSが50ノットの速力を求め、実際にミサイル艇並の48ノット程度の性能を付与されているのにたいし、コンパクト護衛艦は速力が40ノット程度に求められており、変な話、はつゆき型に、こんごう型と同程度の機関を搭載しても発揮できる程度の能力に纏められています。もっとも、LCSと比較し大型化しているコンパクト護衛艦を動かすには相応の出力のある機関が必要となりますが。

Img_6773 LCSは3000tという船体にミサイル艇並の機動力を付与しようとした、一種無理がありましたが、コンパクト護衛艦は護衛艦の速力を三割強化する。もちろん、これだけでも機関出力の負担は大変なもので低抵抗船体形状の研究等が必要になりますが、それでも実現性は現在の技術蓄積でも十分あります。しかし、音響ステルス、放音の静粛化は検討せねばなりません。

Img_5979 航続距離がコンパクト護衛艦について明示されていないところについて、追記して着目すべき点で、その背景にはLCSのような敵対国沿岸部へ浸透するための長大な航続距離を求めるのか、島嶼部専守防衛を重視し従来護衛艦程度の航続距離に抑えるのかが、大きくなるでしょう。

Img_4339 即ち、遠距離での打撃戦を想定するのならば相応の搭載量が求められ、船体規模が制限されている状況ではその幼生期に影響しますし、船体規模と燃料などの搭載量に影響するため、更にその分重量も増大しますから、この部分も注視し、併せて我が国の防衛政策からある程度無理のない水準に収まるのではないか、と期待するところ。

Img_1151  建造について、LCSは軍需造船への未経験企業が参入したことにより技術的な、工程技術面での影響が設計の想定を上回り、全体的な要求性能に影響しただけえなく、船体構造が就役後に脆弱部分が発見され、建造費用も高騰、機関部の腐食が予想以上となった事例がありました。

Img_1084 この部分について、我が国はアメリカのように造船業全体が縮小した状況ではなく、一応建造技術は維持されていますし、更に海上自衛隊が求めるコンパクト護衛艦の要求数は常識的な数量となっていますので、過度な要求に対応できず未経験業者が参入し計画を実現させられない、という可能性は比較的低いのではないでしょうか。

88img_3524  機動力と船体規模の面でコンパクト護衛艦はLCSほど無理をしていません。コスト面で従来護衛艦の半額程度を実現できるのかは未知数ですが、あきづき型護衛艦の建造費は750億円ですので、機関出力を充分とったとして兵装をある程度常識的とし、航空機性能に依存するなど施策を採れば、そこまで無謀ではありません。

Img_8104 米海軍のLCS計画が傍目には明らかに失敗ではないか、高コスト状態に陥っている現状から、日本版LCSを思わせるコンパクト護衛艦という発想を聞きますと、確かに不安な予感はよぎりますが、要求性能をしっかりと見てゆきますと、そこまで無謀な要求は行っていない、ということが分かります。ある程度楽観的に見ていいのではないか、こう考えました次第です。

北大路機関:はるな

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海上自衛隊“コンパクト護衛艦”2隻を建造へ、新防衛大綱の計画艦平成33年度就役期す

2014-04-15 23:56:51 | 先端軍事テクノロジー

◆基準排水量3000t程度、多機能艦として設計

 防衛省によれば、海上自衛隊は新しくコンパクト護衛艦を建造するとのこと。

Img_64_03 コンパクト護衛艦は2隻同時に建造し、比較的早い多数の建造と整備が見込まれるほか、将来的に旧式化する護衛艦はつゆき型や護衛艦あさぎり型、護衛艦あぶくま型を代替すると共にミサイル艇の任務を完全に置き換え、掃海艇の任務も部分的に置き換える新世代の水上戦闘艦として建造されることでしょう。

Img_6918_1  海上自衛隊は新防衛大綱において護衛艦定数を1995年防衛大綱以来一貫して縮小し、南西諸島での緊張を背景においても維持課微増という状況が継続されていたなか、2013年防衛大綱では護衛艦増勢へと大きく防衛政策を転換しました。その中に示されていた護衛艦に今回のコンパクト護衛艦の要素も含まれています。

Img_1357 コンパクト護衛艦とは、従来の護衛艦よりも小型、1980年代に量産された護衛艦はつゆき型程度の船体規模を有し、特にステルス性と速力を重視するとともに対水上戦闘や対潜戦闘能力と対空戦闘能力という護衛艦の要件に対機雷戦闘能力など、従来の護衛艦が想定していない任務へも対応する多機能艦を目指すようです。

Img_07_86 高速度と多機能性を追求した水上戦闘艦という設計思想は、米海軍が建造しているLCS沿海域戦闘艦と共通するものがあり、米海軍ではフリーダム級とインディペンデンス級の二種類が建造中となっていますが、双方とも満載排水量で3000t前後、対して我が国の計画艦は基準排水量で3000tということですので、満載排水量は4000t前後となるでしょう。

Aimg_0673 コンパクト護衛艦の構想は新防衛大綱において従来の護衛艦と一線を画す新型艦の建造が盛り込まれており、この計画に基づくものと言えます。併せて、現在の汎用護衛艦は基準排水量で5000tからのものとなっており、満載排水量では7000tに迫り、最大の護衛艦は基準排水量で19500tというものもあるほど。

Gimg_3468 こうした艦艇の大型化は、防衛計画の対抗が改訂されるたびに防衛費への配慮から艦艇数が削減され、一方で自衛隊の任務は我が国周辺国の我が国領域およびその近接地域での不明瞭な行動が増大し、任務が増大している状況を背景に、航続距離や航海期間を延伸できるよう求められ、大型化しました。

Img_62_59 この部分について、新防衛大綱では護衛艦定数が増大し、併せて自衛隊の任務想定海域として島嶼部を含めた沿岸海域や近海海域が増大したことと併せ、大型艦よりは沿岸部での運用に柔軟性を持つと共に、沿岸戦闘において大きな位置を占める機雷などの脅威対処やその敷設を含めた艦艇が必要となったためでしょう。

Img_643_1 コンパクト護衛艦の概要は、基準排水量3000t程度で高速性能を有し多機能性を持つ、という程度しか情報は示されていませんが、三胴船構造かSES船型もしくは水面滑走を重視した船体形状を有すとともに、上部構造物はステルス重視の設計、ミサイルなどは垂直発射装置VLSに収容し、排水量から推測し後部に航空機を搭載する格納庫と飛行甲板を装備する形状となるでしょう。

Img_6927_1 安直な発想では、米海軍のインディペンデンス級かフリーダム級の設計に対し、各種装備を必要に応じ置き換えるモジュール構造を採りつつ、実のところ換装と整備が容易ではないモジュール換装は近代化改修時のみとし基本は全ての装備を常備、前部へ艦砲とVLSを搭載する容積を確保し、後部飛行甲板と格納庫を大型化させた形状となるかもしれません。

88img_0457 配備部隊については、コンパクト護衛艦は運用特性が異なるので、恐らく護衛隊群に配備されるのではなく二桁護衛隊、自衛艦隊直轄の護衛隊に配備され、所謂ヘリコプター搭載護衛艦やイージス艦等ミサイル護衛艦とは直接では無く間接的に協同する艦艇となるのではないでしょうか。

Img_2529 これは船体規模が異なるため島嶼部への接近が従来護衛艦とは異なると共に、速力が従来護衛艦よりもかなり高速であるため、直接協同は合理的ではなく、むしろ独立行動による海域での優勢維持と、大型艦をもつ護衛隊群に先んじて前方哨戒と警戒に当たると共に過大な脅威に際しては一旦後退し連携する手法が採られるのだと思います。

Img_5847 いろいろと期待する艦艇ですが、高速航行時には燃費が著しく悪化しますし、対戦索敵能力にも影響します。また、水上戦闘艦艇の機雷戦対処能力付与には非磁性化技術が不可欠となりますし、大型艦の高速運用への船体構造の負荷などは実試験を重ねねば、という部分があることも確かです。

Img_6932  また、コンパクトとはいえ基準排水量3000tの規模を想定しているとされ、この場合、機関出力など必要な速力を発揮するためにはかなりの馬力を要するため、建造費用もかなりのものとなり、量産する際の財政上の負担は大丈夫なのか、従来護衛艦よりも高くならないのか、という不安も残るところ。

Img_9234  こうした点で、平成33年に2隻を就役させるという指針は、相当な技術蓄積に依拠したものと推測されるのですが、 実際にどういった艦艇として完成するかは今後の情報を待ちたいところ。課題は考えられると同時に期待する部分も大きく、今後も注視してゆきましょう。

北大路機関:はるな

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榛名防衛備忘録:航空機動部隊とヘリボーン作戦② 航空機動旅団案と水陸機動作戦の所管

2014-04-14 23:09:43 | 防衛・安全保障

◆航空機動旅団は水陸機動任務を兼ねるのか

 装甲機動旅団と航空機動旅団という部隊編制を明示しましたが、併せて水陸機動旅団をどう位置付けるか、考える必要が出てくるかもしれません。

Img_0302 水陸両用作戦の展開に際し、航空部隊との協同は不可欠であり、我が国が模範とするであろう米海兵隊も海兵航空部隊の空中機動部隊と陸上部隊の連携により任務を遂行しています。すると、航空機動旅団の任務の一部に水陸機動任務を含めるんか、という 論点は出てきて当然ともいえるでしょう。

Img_1381  航空機動旅団、いろいろと部隊案を提示していましたが要点をまとめると、現行の第12旅団へ、対戦車ヘリコプター隊を付与し多用途ヘリコプターを増勢、普通科連隊の高機動車を四輪駆動軽装甲車へ置き換えた編成の部隊、というと分かりやすいかもしれません。

Img_5969 各国の空中機動旅団の多くはヘリコプターによる空中機動を重視した結果、軽装甲車等を充分に持たないだけでなく、部隊機動可能を期した車両も装備していないため、その行動に大きな制約が付きます、つまりは空中機動で展開し所要の任務を遂行すると同時に空中機動部隊が戻らなければ次に展開できない、ということ。

Img_02_90 これは、軽装甲車とはいえ車両を空中機動すること自体、輸送ヘリコプターを投入しなければ実施できず、輸送ヘリコプターの調達費用は戦闘ヘリコプターと同等で多用途ヘリコプターの数倍以上となりますので、そもそもCH-47を陸空合わせ75機も保有している日本が特別で、諸外国では数機から十数機しか保有していない国が基本で、車両空輸の断念は当然と言えるかもしれません。

Img_8292 一方で空中機動旅団を創設した諸国の中でフランス軍はいち早く航空連隊へ機能別編成化するべく解体し、軽装甲機動部隊との連携、空挺部隊の緊急展開、装甲部隊の上空掩護と戦術空輸支援、その三様式への革新をいち早く達成し、アフリカ地域での機動戦などで成果を上げています。

Img_914_6 我が国では第12旅団がもとよりヘリコプターへの過剰な依存を行わない空陸連携の協同を構想して部隊を整備してきましたので、こうした問題には直面していませんが、車両機動と空中機動部隊との連携という様式を用いる場合、陸上戦闘において特に本土戦では威力を発揮しますが、島嶼部防衛では、陸空連携の機動戦という需要は必ずしも大きくありません。

Img_0213  もちろん、石垣島や宮古島、対馬や奄美大島と隠岐の島や父島のような比較的大きな島嶼部への侵攻対処であれば、機動戦と場合によっては対機甲戦闘の可能性も捨てきれません。むしろ尖閣諸島のような無人島を除けば車両を揚陸し機動戦闘を行う必要はあることは、確かでしょう。

Img_8_777 その一方で、島嶼部戦闘における戦域は面積が小さければ小さいほど、空中機動の降着地域は限られ、そして航空機動部隊の拠点は陸上からの地続きではなく、近接する離島の応急航空拠点か、場合によっては輸送艦かヘリコプター搭載護衛艦を拠点とする可能性のほうが、高くなってくるわけです。

Img_31_36 同時に、航空機動部隊は特科部隊を持ち独自の火力投射能力を持つという想定ですが、離島防衛では野砲は射程が長すぎます。 むしろ火力は艦砲に依存でき、遮蔽物の限られた小島を戦域とする場合は直接照準により、野砲よりも迅速かつ正確な火力投射が可能です。

Img_4712 こうした点を踏まえると、必ずしも航空機動旅団の運用は、陸上の策源地から展開を開始しなければ全ての車両部隊を空輸展開することは非効率ですし、降着地域の確保という手間を考えた場合、それよりも徒歩部隊を空中機動で展開させその地域確保を実施するだけでも、狭隘島嶼であれば全域を奪還する事となるわけです。

Img_7019 すると航空旅団の空中機動部隊はやはり島嶼部戦には必要となりますが、車両機動の支援は必要なく、徒歩部隊と携帯火器、携帯火器と言っても近年は84mm多用途ガンに01式軽対戦車誘導弾、まもなく60mm軽迫撃砲も配備され、充実した火力ではあるのですが、車両機動という根管の部分は必ずしも主役と成り得ません。

Img_5383  しかしながら、海岸線を確保しなければ空中機動部隊が孤立する結果にもなり、海岸線付近では空中機動部隊だけでは必ずしも確保できず、一定の装甲部隊を以て展開し、空中機動部隊はその展開までの遅滞行動といった用法に限定することが現実でしょう、こういうのも装甲車両を吊下げ空輸するヘリコプターの脆弱性は大きく、幾度も往復するのは非常に危険であるためです。

Img_43671  他方、それならば装甲機動旅団をエアクッション揚陸艇で強襲輸送か、と思われるかもしれませんが、狭隘島嶼は占領された場合の海岸線当たりの兵力密度も高くなるため、管理揚陸に近いエアクッション揚陸艇ではかなりの危険を伴います。結果は、水陸両用装甲車と複合高速艇の連携が必要となる。

Img_1431 結果的には一転し、やはり航空機動旅団では海岸線の確保を行うには問題があり、海上からの展開する水陸機動部隊は別途必要になるわけです。もちろん、水陸機動任務には空中機動任務が併せて必要となるのですが、水陸機動部隊と空中機動部隊が同一である必要はありません、必要に応じ連携すればよい。

Img_6450_1 航空機動旅団は水陸機動任務の一端を担う上で不可欠ではあるが、航空機動旅団をそのまま水陸機動部隊として扱うことは、必ずしも正しくは無い、担うのは一端であり、全てではない。そして小規模であっても水陸機動任務部隊は別途整備されるべきであろう、こうした結論に至りました。その概要などは別の機会に検討しましょう。

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榛名防衛備忘録:航空機動部隊とヘリボーン作戦① 航空機動旅団と装甲機動旅団の連携

2014-04-13 23:48:14 | 防衛・安全保障

◆如何に空中機動作戦を展開するか、備忘録的に

 中間報告の提示した内容を補足するべく如何に空中機動作戦を展開するかについてを、反省会的に、幾つか。

Jimg_0768 空中機動旅団、ヘリコプターの機動力を以て緊急展開を行うべく、イギリス第16空中機動旅団、オランダ第11空中機動旅団やスペイン第7航空騎兵旅団にイタリアのフリウーリ空中機動旅団、ドイツの第1航空擲弾兵旅団とフランス第4航空旅団、一時期百花繚乱のように各国が競って緊急展開部隊的に新編しました。

Img_2035 しかし、フリウーリ空中機動旅団は両用戦連隊に機械化連隊を含む緊急即応部隊の集団へ、フランス第4航空旅団は歩兵部隊を持たない航空運用部隊へ再編され必要に応じ各旅団へヘリコプターを派遣する編成へ改編、イギリス第16空中機動旅団も旅団単位ではなく分散運用される戦略予備部隊的な運用が採られるようになっています。

Aimg_0792 2003年のイラク戦争ではAH-64D戦闘ヘリコプターがイラク軍自走高射機関砲部隊の待ち伏せを受け撤収する事案があり、運用方法を誤れば戦闘ヘリコプターであっても一時華々しく報じられたような対戦車戦闘航空打撃の決定打とはかならずしも言い切れない現状が突き付けられているかたちです。

Aimg_2735 重要な部分は、相当の空輸能力を元に展開しなければ、ヘリボーン展開した空中機動兵は降着すれば軽歩兵となるため、策源地より距離の大きな地域へのヘリボーンの展開は兵站線維持が非常に難しくなり、降着後の展開は更に空中機動部隊を展開させるか車両を空輸しなければ容易ではありません。

Pimg_4057 即ち、空中機動部隊は重装備部隊の跳躍前進に先んじた第二戦線の構築や緊要地形確保というような、重装備部隊の増援が着実に受けられる状況下であり、加えて降着地域への敵防御陣地を回避し中入りの迂回攻撃を加えるなど、用兵に相当の留意点を持たせなければ、遊兵化か孤立化しやすい限界点を持っているといえるでしょう。

Mimg_2104 中間報告として提示した将来の陸上防衛体系に関する特集では、各方面隊の基幹部隊を島嶼部と首都防衛を除き二個機動旅団へ再編し、各方面隊の全ての新防衛大綱下で維持可能な重装備に不足する打撃力を装甲戦闘車増勢により補完する装甲機動旅団、方面隊が保有する対戦車及び多用途と一部の輸送用航空機材を軽装甲の軽量部隊へ集約する航空機動旅団を提示しました。

Oimg_5580 非常に大きな反省点は、戦車師団を除く全師団旅団の機動旅団化を提示し、機動運用を念頭としたのに対し、従来の基盤的防衛力では駐屯地と補給処の支援を受けられる故の後方支援体制を、機動運用を前提とした膨大な兵站需要への転換を軽視していた点で、部隊の機動展開に兵站が随伴できない、というこの上ない問題点は今後課題としなければなりません。

Img_4816 一方で、航空機動旅団の緊急展開能力と瞬発打撃力を装甲機動旅団の機動打撃力が突破し支援するという構図は間違っていなかった、と考えられるところですが、欧州各国の空中機動旅団に対する部隊の位置づけの見直しは、その運用の反映を考えなければなりません。

Iimg_7731 この点で感心させられるのは、空中機動を重視した陸上自衛隊の第12旅団です。第12旅団は、航空打撃力ではなく航空機により対戦車装備と砲迫部隊を、近年の改編で更に軽装甲部隊を空輸展開させる方策を構築していることで、安易に対戦車ヘリコプターに依存した場合問題と成ろう滞空時間限界による地域占領能力の欠如を抑えているところ。

Gimg_6136 これは同じ対戦車ミサイルであっても、陸上車両と航空機では後者が機動力が大きく自由な位置から戦闘を展開できるのに対し、前者の場合は地形防御に依存し長期間の戦闘が可能であるため、こうした装備を輸送ヘリコプターにより展開することで、一時的な航空阻止に当たらない防衛線の展開が可能となるわけです。

Img_0198 ただ、第12旅団は航空打撃力と装甲打撃力を共に欠いていることから、対機甲戦闘を展開する際には相当数の対戦車装備を集中しキルゾーンを構築しなければ、相手の攻撃前進を破砕し反撃の戦火拡大に展開する事は出来ません。仮に敵兵站線への第二戦線確保を展開したとしても主力部隊が反転した場合に主戦線より追撃する部隊はありませんし、この点が片手落ち。

Fs_img_4493 やはり、対機甲戦闘等を含めた場合、緊急展開部隊を後詰めで支える部隊が無ければ緊急展開した軽装備の部隊が重火力で押し潰される可能性が無視できず、航空機動旅団と装甲機動旅団の協同という視点と、出し惜しみをせずに方面隊の対戦車ヘリコプター部隊を編入するという必要性は痛感します。

Img_4407  一方、軽装甲部隊という一定の打撃力を兼ね備えた部隊をヘリボーン部隊と協同させ、必ずしもヘリボーン空輸できない重装備、つまり防御力を持つため重くなった装備を示しますが、この部隊を常時ヘリコプターの支援下で運用させる部隊編制を、航空機動旅団の一形態として考えられるかもしれません。

Nimg_4726 これは、ヘリコプターの天敵が防空火力であるならば、防空火力の天敵である地上打撃力を装輪装甲車主体の軽装甲部隊により攻撃前進させ、軽装甲部隊の天敵である重装甲部隊に対し航空打撃力を展開させ共同させると共に、高速前進により伸び過ぎる兵站線を空中機動により補給できないか、ということです。

Aimg_2662 軽装甲機動車小隊と四輪駆動軽装甲車中隊の協同案、これまでの榛名防衛備忘録に連載した内容ですが、軽装甲機動車7両と四輪駆動軽装甲車14両に中距離多目的誘導弾4セットと81mm軽迫撃砲4門と直接輸送支援の高機動車、これらを以て編成する中隊戦闘群であれば、一日弾薬と燃料及び糧秣や水の補給が輸送ヘリコプター一機一回か多用途ヘリコプター一機の数往復で維持可能です。

Simg_3811 中隊戦闘群に加え、各方面隊に一個と想定した航空機動旅団、各方面隊の方面航空隊を旅団に集約するのだから五個となる計算ですが、全陸上自衛隊で五個の航空機動旅団が編制されるわけで、併せてこれは重装甲を備えた装甲機動旅団が五個と連携する上で、一つの重要装備を航空機動旅団へ集中可能です。

Iimg_2761 機動戦闘車200両、戦車100両の削減に代えて陸上自衛隊が導入する装備ですが、この200両の機動戦闘車を装甲機動旅団は必要としていません。言い換えれば、水陸機動旅団や首都防衛旅団とともに航空機動旅団へ集中配備出来る事を意味します。105mm砲を装備するこの装輪車両が示す可能性は非常に大きい。

Nimg_2369  想定する航空機動旅団は四個普通科連隊の十二個中隊戦闘群を基幹としますので、仮に30両の機動戦闘車を装備していれば、少なくとも中隊戦闘群に2両を装備したとして、予備車両6両の余裕がでます。もちろん、特科火砲は最大限装甲機動旅団へ集中すべきです。

Fs_img_3886  したがって特科火力は連隊支援用か全般支援用に限られるのですが、普通科連隊には重迫撃砲中隊がおかれ、12門から16門の120mm重迫撃砲を運用しています。各中隊へ2門を配置したとしても連隊の予備として一定数の重迫撃砲が残ることになりますので、中隊戦闘群へ重迫撃砲を配置する選択肢は有効かもしれません。

Nimg_2367 もちろん、直接火力支援は戦闘ヘリコプターが展開可能ですし、躍進攻撃を行う際には輸送ヘリコプターへ機内に軽装甲機動車と吊下げで四輪駆動軽装甲車を各一両搭載し乗員は多用途ヘリコプターにて機動、地形障害を軽装甲車両のみ一挙に跳躍してしまう方法も考えられるでしょう。

Limg_0078 ヘリコプターの天敵地対空ミサイルの脅威を、例えばAH-64D戦闘ヘリコプターのロングボウレーダーが電波標定等で発見した際には、AH-64Dで叩き潰しても良いのですが、併せて120mm重迫撃砲と81mm迫撃砲で攪乱射撃を仕掛け、直接照準可能な距離であれば機動戦闘車の105mm砲が戦闘加入し、叩き潰す事が可能です。

Mimg_2374 地形障害に直面した際には、機動戦闘車は空中機動できませんが、それ以外の車両を以て対岸を空輸確保し、渡河点を迅速に確保することも可能でしょう。機甲部隊の防衛戦に遭遇した際には、防空火力を砲迫火力で攪乱し機動戦闘車による回避戦闘を展開しつつ、戦闘ヘリコプターの支援を受け制圧します。

Img_6228 陸空一体の戦闘、現状の空中機動との最大の相違は、空中機動部隊は空?機動するという固定観念ではなく、充実した軽装甲装備を持つ部隊が必要な輸送を後方支援と戦術空中機動の面で支援を受け、軽装甲部隊が苦手とする大火力投射と対装甲戦闘を必要に応じ航空支援を受ける、というもので、ヘリコプターに支援された軽装甲部隊、という構図です。

Iimg_0166 必要な場面において空中機動部隊は支援に展開しますが、常時ヘリコプターの支援を受けるという空中機動部隊の運用とは異なります。即ち、空中機動部隊の支援が必要でない場合には兵站維持を除いて軽装甲部隊は自前の打撃力と装甲防御力により自力で攻撃前進する。

Aimg_1842  この様式は、空中機動部隊がヘリボーンを主体としない、いわばヘリボーンとエアボーンの連環性として考えられた方式から大きく転換することとなります。つまり、航空機動旅団は最初の根拠地からの前進にヘリコプターを運用するのではなく、装甲車で自走し攻撃前進を開始する、ということ。

Img_0799 それでは、装甲機動旅団は必ずしも必要ではないのではないか、と思われるかもしれませんが、脅威対象が重装備を有していた場合に違ってきます。航空機動旅団は対応できない状況に直面した場合に、防御戦闘と遅滞行動等に転換し、航空攻撃を中心に出血強要しつつ、戦線を形成、その後、装甲機動旅団により主力を殲滅する、という運用が可能でしょう。

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警戒航空隊第603飛行隊那覇基地に新編,南西地域での常続的警戒監視活動を期す

2014-04-12 22:45:36 | 防衛・安全保障

◆第601飛行隊、第602飛行隊、第603飛行隊

 11日の防衛省発表によれば、20日付で警戒航空隊第603飛行隊が那覇基地に新編されるとのこと。

Eimg_3279 航空自衛隊は三沢基地へ警戒航空隊司令部を置き、E-767早期警戒管制機及びE-2C早期警戒機の計17機を以て航空警戒管制にあたっています。早期警戒機は、通常のレーダーサイトよりも高い高空へ全周警戒能力を有するレーダーを搭載した航空機で、直進する電波の特性上、地上の防空監視所よりも広域を警戒することが可能です。

Nimg_2401 南西諸島での対領空侵犯任務の爆発的増大へ、防衛省航空自衛隊は前防衛大綱より明示されていた那覇基地南西方面航空混成団第83航空隊の現状の一個飛行隊体制を二個飛行隊体制への増勢改編準備を進めると共に、三沢基地よりE-2C早期警戒機の前進配備を行ってきました。

Himg_31850 警戒航空隊は現時点の編成で三沢基地のE-2C早期警戒機を運用する飛行警戒監視隊と、浜松基地においてE-767を運用する飛行警戒管制隊の二つの飛行監視部隊を基幹としています。来たる改編では、ふたつの航空部隊が飛行警戒監視群と統合され、その隷下に第601飛行隊、第602飛行隊、第603飛行隊が配置されるというかたち。

Img_8989 第601飛行隊は三沢基地を拠点としてE-2C早期警戒機を運用、第602飛行隊は浜松基地を拠点としてE-767早期警戒管制機を運用する、第603飛行隊は新編され那覇基地に常駐しE-2C早期警戒機による警戒管制にあたります。つまり、13機のE-2Cを二つの飛行隊に分けた、ということ。

Eimg_0011 これまで三沢のE-2Cが那覇に前進し警戒に当たっていた、という形でしたので、那覇基地への常駐の整備施設など支援設備の建設を行い、那覇基地へのE-2C配備の準備を進めてきましたが、これが実現した、という事でしょう。これにより、分遣隊のような運用は改められ、より高度な警戒態勢を維持できます。

Img_6543 今後の課題は、那覇基地の機能強化でしょう。那覇基地は二つの大きな問題を抱えています。一つは沖縄本島の玄関としての民間空港という位置づけ上、航空管制や発着件数が過密状態にあるということで、過去には航空管制のミスにより離陸滑走中の戦闘機へ管制塔が緊急停止を命じ滑走路逸脱事故を誘発させたこともありました。

Mimg_8857 第二滑走路の建設が那覇空港で開始されましたので、那覇基地の過密状態については将来的に解決されることでしょう。しかしもう一つの問題があります、それは那覇基地の脆弱性です。那覇基地は航空攻撃、特に現在増大している巡航ミサイル脅威に対して、対策は必ずしも十分ではありません。

Aimg_1952 航空掩体を、千歳基地のF-15戦闘機や三沢基地のE-2CとF-2のように建設し、航空攻撃への備えを充分としなければ地上で格納庫ごと破壊されてしまう可能性があるのですが、那覇基地は上記の通り面積に限界があり、海抜の低いため地下ハンガーを構築することも出来ません。

Img_1034  理想としては那覇基地の丘陵地帯に地下ハンガーを構築することですが、それまでの時間を要するのであれば比較的近いアメリカ空軍嘉手納基地の航空掩体を一時的に借用する、第18航空団のF-15飛行隊が90年代末に数機分余剰となって以来増強改編は行われていませんので、打診してみる必要もあるのでしょうか。

Simg_6050 脆弱性払拭には併せて基地防空隊の強化や航空施設隊の増強などを行い、基地機能を維持する体制の構築や、輸送機部隊の運用体制を強化し南西方面航空混成団を全国の部隊が整備器材や支援器材、航空機とその支援要員などの展開が迅速に実施できるようにする必要もあるでしょう。

Gkimg_8489  早期警戒機についてはその増勢が新中期防衛力整備計画に盛り込まれましたが、戦闘機などについての機材不足が顕著化するのであれば、支援戦闘機の増勢として次期戦闘機選定に換える別の手早く入手できる機体の選択肢も考える必要があるかもしれませんし、施設部隊の増援体制は統合運用の観点から陸海空の共同を真剣に検討するべきです。

Img_4815 航空自衛隊全体として様々な施策を行う必要はありますが、何とも現時点では次期戦闘機選定の難航などの影響もあり、航空機材が圧倒的に足りず、今回の那覇基地への第603飛行隊配備も既存部隊の再編により実施されました、もちろん可能なことと不可能なことはありますが、打診次第では不可能化可能化の可否が曖昧な部分も少なからずあります、この点について如何に模索するか、日本全体の課題と言えるものです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十六年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.04.12・13)

2014-04-11 23:32:16 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末の自衛隊関連行事について。今週末は首都圏と東北で行事があります。

Gimg_3563 今週末は東部方面隊の師団旅団行事が土曜日と日曜日に実施されます。明日土曜日が第12旅団創設行事の相馬原駐屯地祭、明後日日曜日が第1師団の練馬駐屯地祭、第1師団には10式戦車が導入され、観閲行進でもその威容を見せつけます。首都圏の戦車が見れる行事、貴重な師団祭です。

Gimg_1723 第12旅団祭、ヘリコプター隊を隷下に置く空中機動重視の旅団です。見応えがある行事ですが、ただ、相馬原駐屯地は少々交通が不便で、高崎駅からバスにて50分程度、本数が少ないのですが、この他群馬総社駅から、タクシーを確保出来れば18分ほど。

Gimg_6689 滝ヶ原駐屯地祭、日曜日に実施される富士地区の行事で、普通科教導連隊と教育支援施設隊に評価支援隊第一機械化大隊が駐屯しているところ。89式装甲戦闘車を筆頭にかなりの重装備が固められているところで、観閲後進や訓練展示などは中々の迫力です。

Gimg_0435 東北方面隊管区では、特科部隊と高射特科部隊の駐屯地である郡山駐屯地祭と、第2施設団の駐屯する船岡駐屯地祭が行われます。土曜日に相馬原に展開し、そののちに首都圏や富士地区に展開するか、東北方面へ展開するか、というのも興味深いやもしれないですね。

Gimg_0192 第2施設団は東北方面隊直轄の施設部隊です。隷下に第10施設群と第11施設群が配置され、8個っ説中隊と施設器材隊に水際障害中隊とダンプ車両中隊を基幹とした編成、施設器材というものは他の行事で観られないものも多く、お近くのかたはお勧めできるところ。

Gimg_1954 航空自衛隊関連行事として、高良台分屯基地祭が行われます。福岡県久留米市にあり、第2高射群第8高射隊の分屯基地でペトリオットミサイルが配備されています。規模は大きくはありませんが、装備品展示のほかに展開展示等が行われるのでしょう。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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