◆東京急行経路や戦略爆撃機複数編隊同時接近
ロシア機の我が国周辺での飛行が急激に増加し、今月2日から19日までの間だけで実に37機が飛行しました。これは異常な増大としか表現の仕様がありません。
現在のところ航空自衛隊の対領空侵犯措置により領空侵犯事案は発生していません。また、この急激な増大、クリミア情勢の緊迫化に伴う対日牽制と太平洋正面での米軍への牽制であるのか、太平洋方面におけるロシア機の活動状況が今後冷戦時代の最盛期の水準に転換する位置仮定としての飛行訓練増加かは、現時点では如何とも判断しかねるものがありますが、防衛省が発表した数字だけで半月少々の期間に37機の航空機接近というものは、近年ではなかなか生じませんでした。
併せて当初は日本海上での飛行、それも偵察機を中心とした飛行が活発化している、という程度だったのですが、徐々に頻度が高まると共に哨戒機派生の偵察機から戦略爆撃機派生の偵察機が編隊で投入される状況へ転換してゆきます。その後数日を経て、日本海から航空機が太平洋上の我が国沿岸に沿っての飛行へ転換してゆき、続いて複数の戦略爆撃機が数個編隊を同時に我が国周辺を周回する経路を採るようになりました。周回飛行は日本列島を文字通り南西諸島から北海道まで周回するようになっています。
順を追って詳細を示します。4月2日、Tu-142偵察機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道より沿海州方面へ飛行する事案がありました。続いて、4月4日、Il-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行という事案、更に4月5日、Il-38哨戒機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道へ飛行、北海道沖で機動飛行を行ったのち沿海州方面へ飛行、航空自衛隊は何れも緊急発進し対応しています。
更に4月7日、Tu-142偵察機2機編隊が竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち、本州日本海沿岸に沿って北海道より沿海州方面へ飛行、4月10日、Il-20偵察機1機が最初に島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行、続いて同一経路にて飛行、と続きます。しかし、4月11日、Il-20偵察機1機が沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行します。
この日は更に4月11日、別のIl-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行、と一日に二回の接近事案も生起するようになってきました。そして、4月13日。Il-20偵察機1機が沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行 、と継続的に領空への接近事案は続いてゆきます。
4月14日、三方向から同時に航空機が接近、戦略爆げっきが加わり、東京急行という太平洋上を東京を目指し一直線に飛行する飛行する経路がこの日の緊急発進から加わることとなりました。Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、Il-20偵察機1機は北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、別行動のIl-20偵察機1機はサハリンより北方領土上空を経て北海道太平洋岸へ飛行します。
続いて三陸沖を南下する東京急行経路を飛行、一方Tu-95爆撃機2機編隊は韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行する経路を採りました。冷戦時代には多々展開された飛行経路となりますが、近年では多くは無くなりました、一方、この日の接近を端緒として今月は恒常化する異常な状況へ。
4月15日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が3個梯団に分かれ6機が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、編隊の一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、もう一つの編隊はは韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、戦略爆撃機6機の同時接近は近年では非常に稀です。
4月16日、Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行、もう一機は北海道北方より北方領土上空を経由し太平洋王へ飛行、三陸沖を房総半島方面へ東京急行の経路を飛行し、その後同一経路にて沿海州方面へ飛行、爆撃機ではなく偵察機ではありますが東京急行の経路が恒常化した端的な事例とも言えるでしょう。
4月17日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が2個梯団4機に分かれ日本海及び太平洋上を飛行、Il-20偵察機1機も飛行、Tu-95爆撃機2機編隊は韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、別のIl-20偵察機1機が島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち同じ経路を採り沿海州方面へ飛行しています。
4月18日、Tu-95戦略爆撃機2機編隊が3個梯団に分かれ6機が日本周辺を日本海と太平洋に掛け周回飛行、編隊の一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って能登半島沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、編隊のもう一つは北海道沿岸から本州日本海沿岸に沿って九州沖へ飛行したのち同一経路にて沿海州へ、もう一つの編隊はは韓国日本海岸に沿って南下し対馬海峡を飛行、東シナ海を尖閣諸島沖に向かいその後沖縄本島方面へ変針、本州太平洋岸を飛行し伊豆大島沖公海上を飛行したのち、三陸沖を東京急行と逆経路にて北海道を機を経由し沿海州方面へ飛行、6機の爆撃機が三方向から、という状況の再来です。
4月19日、Il-20偵察機1機、別行動のIl-20偵察機1機、沿海州から北海道へ飛行、本州日本海沿岸に沿った経路を飛行し、竹島隠岐島間の空域を通過し韓国沿岸部に接近したのち経路を逆行し日本海上を沿海州方面へ飛行、もう一機は北海道北方より北方領土上空を経由し太平洋上へ飛行、三陸沖を房総半島方面へ東京急行の経路を飛行し、その後同一経路にて沿海州方面へ飛行、という経路をとりました。東京急行の向上かと複数爆撃機編隊の同時接近、現時点で防衛省が発表した緊急発進は以上の通り。
ロシア機の行動活発化の意図は今のところ判然としません、大規模な空軍演習を展開しているための一過性のものであるのか、前述の通りクリミア半島での騒乱を起因としたウクライナ情勢への太平洋側からの圧力への対抗勢力としての航空部隊の行動活性化であるのか、判然としないのです。他方、海軍艦艇の行動については、今回の航空部隊の活性化ほど大きなものでは無いため、単なる示威行動を航空部隊が中心として展開しているのみ、ということも考えられるかもしれません。
一方で確かなことは、近年、航空自衛隊の対領空侵犯措置任務緊急発進は南西諸島での中国機への対応が主体となり、航空警戒態勢もそうした状況へ対応する部隊配置や増援体制へ転換されてきました。ここで、北方での航空部隊活性化が冷戦時代の規模となりますと、南西諸島の緊張はそのまま緊急発進任務の純増というかたちとなり、平時の警戒任務と有事への即応体制維持へ向けた訓練体系の維持へ影響が出てくるのではないか、現状のロシア機の行動が仮に一過性でなかった場合には、少々我が国の防空体制、特に戦闘機数について不安を持たざるを得ないように感じる次第です。