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榛名防衛備忘録:航空機動部隊とヘリボーン作戦② 航空機動旅団案と水陸機動作戦の所管

2014-04-14 23:09:43 | 防衛・安全保障

◆航空機動旅団は水陸機動任務を兼ねるのか

 装甲機動旅団と航空機動旅団という部隊編制を明示しましたが、併せて水陸機動旅団をどう位置付けるか、考える必要が出てくるかもしれません。

Img_0302 水陸両用作戦の展開に際し、航空部隊との協同は不可欠であり、我が国が模範とするであろう米海兵隊も海兵航空部隊の空中機動部隊と陸上部隊の連携により任務を遂行しています。すると、航空機動旅団の任務の一部に水陸機動任務を含めるんか、という 論点は出てきて当然ともいえるでしょう。

Img_1381  航空機動旅団、いろいろと部隊案を提示していましたが要点をまとめると、現行の第12旅団へ、対戦車ヘリコプター隊を付与し多用途ヘリコプターを増勢、普通科連隊の高機動車を四輪駆動軽装甲車へ置き換えた編成の部隊、というと分かりやすいかもしれません。

Img_5969 各国の空中機動旅団の多くはヘリコプターによる空中機動を重視した結果、軽装甲車等を充分に持たないだけでなく、部隊機動可能を期した車両も装備していないため、その行動に大きな制約が付きます、つまりは空中機動で展開し所要の任務を遂行すると同時に空中機動部隊が戻らなければ次に展開できない、ということ。

Img_02_90 これは、軽装甲車とはいえ車両を空中機動すること自体、輸送ヘリコプターを投入しなければ実施できず、輸送ヘリコプターの調達費用は戦闘ヘリコプターと同等で多用途ヘリコプターの数倍以上となりますので、そもそもCH-47を陸空合わせ75機も保有している日本が特別で、諸外国では数機から十数機しか保有していない国が基本で、車両空輸の断念は当然と言えるかもしれません。

Img_8292 一方で空中機動旅団を創設した諸国の中でフランス軍はいち早く航空連隊へ機能別編成化するべく解体し、軽装甲機動部隊との連携、空挺部隊の緊急展開、装甲部隊の上空掩護と戦術空輸支援、その三様式への革新をいち早く達成し、アフリカ地域での機動戦などで成果を上げています。

Img_914_6 我が国では第12旅団がもとよりヘリコプターへの過剰な依存を行わない空陸連携の協同を構想して部隊を整備してきましたので、こうした問題には直面していませんが、車両機動と空中機動部隊との連携という様式を用いる場合、陸上戦闘において特に本土戦では威力を発揮しますが、島嶼部防衛では、陸空連携の機動戦という需要は必ずしも大きくありません。

Img_0213  もちろん、石垣島や宮古島、対馬や奄美大島と隠岐の島や父島のような比較的大きな島嶼部への侵攻対処であれば、機動戦と場合によっては対機甲戦闘の可能性も捨てきれません。むしろ尖閣諸島のような無人島を除けば車両を揚陸し機動戦闘を行う必要はあることは、確かでしょう。

Img_8_777 その一方で、島嶼部戦闘における戦域は面積が小さければ小さいほど、空中機動の降着地域は限られ、そして航空機動部隊の拠点は陸上からの地続きではなく、近接する離島の応急航空拠点か、場合によっては輸送艦かヘリコプター搭載護衛艦を拠点とする可能性のほうが、高くなってくるわけです。

Img_31_36 同時に、航空機動部隊は特科部隊を持ち独自の火力投射能力を持つという想定ですが、離島防衛では野砲は射程が長すぎます。 むしろ火力は艦砲に依存でき、遮蔽物の限られた小島を戦域とする場合は直接照準により、野砲よりも迅速かつ正確な火力投射が可能です。

Img_4712 こうした点を踏まえると、必ずしも航空機動旅団の運用は、陸上の策源地から展開を開始しなければ全ての車両部隊を空輸展開することは非効率ですし、降着地域の確保という手間を考えた場合、それよりも徒歩部隊を空中機動で展開させその地域確保を実施するだけでも、狭隘島嶼であれば全域を奪還する事となるわけです。

Img_7019 すると航空旅団の空中機動部隊はやはり島嶼部戦には必要となりますが、車両機動の支援は必要なく、徒歩部隊と携帯火器、携帯火器と言っても近年は84mm多用途ガンに01式軽対戦車誘導弾、まもなく60mm軽迫撃砲も配備され、充実した火力ではあるのですが、車両機動という根管の部分は必ずしも主役と成り得ません。

Img_5383  しかしながら、海岸線を確保しなければ空中機動部隊が孤立する結果にもなり、海岸線付近では空中機動部隊だけでは必ずしも確保できず、一定の装甲部隊を以て展開し、空中機動部隊はその展開までの遅滞行動といった用法に限定することが現実でしょう、こういうのも装甲車両を吊下げ空輸するヘリコプターの脆弱性は大きく、幾度も往復するのは非常に危険であるためです。

Img_43671  他方、それならば装甲機動旅団をエアクッション揚陸艇で強襲輸送か、と思われるかもしれませんが、狭隘島嶼は占領された場合の海岸線当たりの兵力密度も高くなるため、管理揚陸に近いエアクッション揚陸艇ではかなりの危険を伴います。結果は、水陸両用装甲車と複合高速艇の連携が必要となる。

Img_1431 結果的には一転し、やはり航空機動旅団では海岸線の確保を行うには問題があり、海上からの展開する水陸機動部隊は別途必要になるわけです。もちろん、水陸機動任務には空中機動任務が併せて必要となるのですが、水陸機動部隊と空中機動部隊が同一である必要はありません、必要に応じ連携すればよい。

Img_6450_1 航空機動旅団は水陸機動任務の一端を担う上で不可欠ではあるが、航空機動旅団をそのまま水陸機動部隊として扱うことは、必ずしも正しくは無い、担うのは一端であり、全てではない。そして小規模であっても水陸機動任務部隊は別途整備されるべきであろう、こうした結論に至りました。その概要などは別の機会に検討しましょう。

北大路機関:はるな

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