北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

次期政府専用機、ボーイング777型機の方針 現用ボーイング747は2018年度に除籍へ

2014-04-24 23:50:05 | 先端軍事テクノロジー

◆2機の取得を予定、多目的輸送機として運用

 報道などによれば、政府は次期政府専用機としてボーイング777型機を採用する方向で最終調整へ入った、とのこと。

Vimg_1398  政府は1992年に政府専用機としてボーイング747-400型機2機を導入、航空自衛隊へ配備し特別輸送任務へ運用してきました。これは従来、日本航空のジャンボ機をチャーターし必要に応じ運用してきましたが、半官半民から民営へ日本航空の転換が行われると共に緊急の首脳会談や邦人救出任務や輸送任務など不測の事態に際し確実にチャーター機を確保できるのかという視点から政府専用機を独自に政府が運用する必要性が指摘されたためです。

Vimg_2426  政府専用機は、こうして導入されたのですが日本航空でのボーイング747型機の運用が終了し、続いて実施していた全日空による同型機の運用も今年遂に終了しました。これは、併せて政府が整備支援を日本航空など民間会社に委託していたため、現行政府専用機の整備支援を受けることが出来なくなったことを意味し、このため後継機選定が必要となったわけです。民間から支援を受けられない前提での政府専用機取得に対し、整備は民間に委託、少々矛盾する気がしないでもありませんが、財政上致し方なかったためでしょう。

Vimg_1980 次期政府専用機をどの機種にするか。意外に知られていませんが、日本の政府専用機は諸外国のVIP専用機とは根本的に異なる機体です。例えばアメリカ大統領が利用する通称エアフォースワンとして知られるVC-25等はVIP専用機で、言い換えれば政府要人以外の輸送には用いられません、しかし、日本の場合は政府要人の輸送にはもちろん用いられるのですが、併せて邦人救出任務や自衛隊の部隊輸送に実際運用された実績があるため、VIP専用機ではなく、多目的輸送機であるのです。

Vimg_7288 多目的輸送機としての性格を有する政府専用機であるため、輸送能力がある程度重視されます。このため、一部には首脳外交にボーイング747のようなワイドボディ機は贅沢だ、過剰だ、という指摘がありますが必ずしも正しくありません。例えば、フランスなどは長く大統領専用機としてエアバスA310を運用してきましたが、その航続圏外へ大統領など要人を輸送する際には、フランス空軍のボーイング747型人員輸送機を用いていました。日本の場合はVIP専用機を持たない代わりに多目的輸送機を重宝している、というべきかもしれません。

Vimg_1174  政府専用機の必要性が特に叫ばれたのは、イランイラク戦争に伴う邦人緊急非内の必要性が生じた際、当時の日本航空労組が政府からのチャーター機運航要請を安全性が確保できないとして拒否した事例が大きく、その際はトルコ航空の有志が邦人救出を担い本当に幸いなことに犠牲者が出る事は回避されましたが、特に導入検討次、朝鮮半島有事の可能性が指摘され、邦人救出の必要性が現実化していたため、導入されたという一要素もあります。

Vimg_2840 大型の機体が必要、という観点から、ボーイング777とエアバスA350が選定対象となってきましたがボーイング777、として内定の方針が示された模様です。 エアバスA350は日本航空が30機程度の導入が決定していますが、ボーイング777は全日空と日本航空共に国際線の主力旅客機であるほか、伊丹空港三発機以上乗り入れ規制以降国内線大量輸送の主力機となっており、整備性の面からは国内の整備基盤は777に軍配が上がった、といえるでしょう。

Vimg_2845 他方で、ボーイング747の現行政府専用機の時点から問題視されていた予備機の問題、定期整備などを考えた場合、通常要人輸送の際には副機と共に2機で運用される政府専用機は片方が定期整備や重整備となっていた際には、運用そのものが出来ず、長らく3機体制を構築することが望まれていました。747と比較し小型化するという点から輸送力維持へ3機体制が期待されたところですが、しかし、現時点では導入機数は2機とされており、今回も予備機の取得という大きな課題は達成されませんでした。

Vimg_2401 もう一つ、航空自衛隊には政府専用機よりも古い機体は非常に多くあります。F-15戦闘機も多くが政府専用機以前の機体を第四世代機と同額の近代化改修費用を以て運用していますし、C-1輸送機やF-4戦闘機も現役です。整備支援を受けられなくなったことが一つの理由とはいえ、世界の民間軍事会社には大型機の整備能力と実績を持つ企業は多く、また、民間支援を受けない状況での運用体制を構築する必要は当然大きかったわけです。延命改修を行い運用する選択肢は無かったのか、とも思うところです。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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