北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:74式戦車、平成30年代初頭へ敢えて今更の近代化改修を構想する

2014-04-07 23:37:36 | 防衛・安全保障

◆先ずはRWSを砲塔に載せてみよう・・・

 駒門駐屯地祭での雑談などからの備忘録的に、敢えて今、74式戦車を考えてみる。

Simg_3698 今更74式、当方とてこの北大路機関をWebに作成した時点では平成28年度には全廃される、と思っていた戦車ですが、万一、明日にでも中国からの軍事脅威が増大し、数か月以内に74式戦車を含めた全機甲部隊が前線に投入される可能性が生じたときには、どうするのか!?

Biimg_0683 そんな暇なことを考えていたのか、と呆れられそうですが、駐屯地祭の行事開始まで一時間以上ある、祝辞や祝電披露も長い(コラコラ)、するとどうしても間がもたなくなって雑談とかになる、もちろん、前日も含め暇な時間を有効に使った陸上自衛隊戦車への壮大な無駄なお話し。

Iimg_2756 さて、74式戦車、そう長く使うことは無いとはいえ、長く使わない範囲内で近代化改修できる部分はあります、最たるものは夜戦能力への強化策を行えば、もともとレーザー測距装置に連動した弾道コンピュータを搭載しており、日本が開発した第二世代戦車最後の車両という性能は十分備えています、ただ、費用面からパッシヴ暗視装置の搭載だけが見送られた。

Fimg_6022 元々の照準器性能は高いのですが、暗視装置だけを断念したため、夜間戦闘能力という今日の重要要素に後れを取り、赤外線サーチライトを目標に照射し射撃する今日的には相手に熱源を教えつつ射撃する自殺行為を採るのか、後方から迫撃砲の照明弾の支援を受けるしかない、という状況となってしまいました。もちろん、後手後手に廻り、これまでに暗視装置を一新しなかった付けです。

Img_64_46 前提として、数年内に全廃される装備ですので今更予算を掛ける事は出来ません。すると、選択肢としては一つ、用途廃止後に取り外して他車両に流用できる装備を装着する事です。そこで、夜間戦闘能力の強化への無茶苦茶な泥縄策が、現在、軽装甲機動車や装輪装甲車用に開発されているRWS,遠隔操作式銃塔を砲塔に装備する、というもの。

Img_0801 RWS,イスラエル軍が軽装甲車両や戦車改造装甲車等に乗車戦闘能力を付与する方策として開発された、暗視装置と重機関銃を一体式とした動力銃座に搭載し、車内からテレビカメラにより照準し射撃するというもの、自衛隊は装甲車両用に技術研究本部が開発中で、先んじて世界中で開発採用、例えば米軍のストライカー装甲車などでは主武装として搭載されています。

Img_2453 自衛隊の装甲車は車内から操作できるものがありますが、RWSは動力式で暗視装置と一体化しているという点が異なります。74式戦車にRWSを搭載した場合、車長用ハッチに搭載した12.7mm重機関銃に代えて搭載することとなり、車長が外部視察用に車内から運用することとなるでしょう。

Gimg_8535 もともと74式戦車はリモコン式銃塔を搭載する試作が行われていましたが、同じ試作車に搭載されていた微光増倍方式のパッシヴ暗視装置と並び高コストであるところと、何より当時の技術ではリモコン式銃塔の信頼性や航空攻撃への視野等の面で見送られた背景があります、しかし、現在の技術ならば話が違ってくるでしょう。

Kimg_8484 戦車長だけRWSでパッシヴ照準が出来ても意味は無いではないか、と思われるかもしれませんが、それならば現状のままで行うのか、それとも索敵だけでも暗視装置を最大限利用できるよう追加搭載するべきか、という視点を示すと共にもう一つ、RWSは戦車が用途廃止となった後でも装甲車に乗せ換えればよい、といえます。

Iimg_2902 RWSの暗視能力ですが、一応一般的なものとして1000m先の人員を発見できる程度の性能が求められているようです。12.7mm重機関銃で装甲車に搭載し降車歩兵への火力支援を行う、という性能要求はこの程度、という事なのでしょうね。この制度ならばより大きな戦車程度の目標であれば2000m程度、認識できるでしょう。

Img_256_8 理想としては、99式自走榴弾砲用近接防護火器としてRWSを導入、特に接近する遊撃隊へ特科車両の自衛火器という位置づけを先ず確保し、その上で同型のRWSを74式戦車にも搭載する、というものです。戦車用と自走榴弾砲用を並行し配備、戦車が用途廃止となった際に取り外して未搭載の自走榴弾砲に搭載する。

Img_9097 力技の解決策を提示しましたが、74式戦車にパッシヴ式暗視装置が搭載されなかった理由は今を以て謎です。V-3暗視装置という今日では高機動車やトラックの運転手にも渡される複眼式の暗視装置は装備開始後早い時期に戦車長へ渡され車上からの夜間警戒に活用されていましたし、64式小銃に載せる倍率3.5倍の75式照準用微光暗視装置を手にした機甲科隊員の写真なども部隊写真集に載っています。

Fimg_8399 そもそも、64式小銃でさえ75式照準用微光暗視装置を搭載することで夜間戦闘に対応する改修を受けた、と言えるのですし、106mm無反動砲等に搭載し照準しているものもあります。74式戦車の砲手用J-1照準器は昼間倍率8倍と夜間倍率9.6倍の切り替え式、夜間照準器を取り換える事は不可能ではないと思うのですが。

Img_4423 なお、74式戦車は1993年より89式装甲戦闘車用の熱線暗視装置に付け替えた改良型を試作している、改良型はレーザー測距装置を一新し、対戦車ミサイル警戒へレーザー検知装置を搭載、サイドスカートを装着し履帯部分の防護を期する研究とともに、脱輪防止輪を採用したものとして完成しましたが、当時の費用で一両改修に1億円を要するため、それならば90式戦車の生産を急いだ方が良い、と結論付けられ、量産されませんでした。

Nimg_3730 このほか、乱暴な解決策ですが、砲手用J-1照準器の接眼部にCCDを組み込み、暗視装置化してしまう、もしくは砲手が微光増倍暗視装置を携行し照準器の接眼部分に取り付けて用いるという方法も考えられるかもしれません。これならば戦車の改造に当たらず、乗員の個人装備で改修予算を通せるでしょう。

Img_2583  また、この乱暴な方式は接眼部を73式装甲車や重機関銃搭載の96式装輪装甲車の機銃照準器にも応用できますし、用途廃止後の再利用ができます。99式自走榴弾砲と96式装輪装甲車は、まだまだ自衛隊が当面運用する装備ですので、戦車が廃止されたのちに流用、無駄な発想ではありません。

Eimg_2361 C4Iへの共同交戦能力の付与ですが、こちらは社外に通信機器を搭載し、車内とネットワークを構成、タブレット型電子情報端末を車内に設置し、こちらも乗員の個人装備扱いにて運用すれば、戦車が廃止されたのちにも応用することが出来るでしょう、このあたりの装備は、状況把握の手順と戦術への応用は普通科部隊の指揮官車にも流用できる部分を含みますから、ね。

Bimg_8253 防御力ですが、これは、74式戦車の場合限界があります、レオパルド1A4やA3のように中空装甲を追加する方策、今更設計しても間に合うのか、という印象があります。ERA爆発反応装甲は簡単に装着できますが周辺への付随被害が懸念され、軽量と言えども総量が重くなる追加装甲を行った場合車体への、特に砲塔旋回能力に影響が出る可能性を、今から評価試験することは時間的に間に合いません。

Jimg_0315 ただ、有事の際に迫られれば現地改造で使い装甲が求められることとなりますので、例えば中空装甲ではなく、砲塔一体式装具箱、というような方式で砲塔に中空装甲の役割を果たす、極力軽量な改修を考えて観ては、と。ともあれ、74式戦車、もう少しは運用が続くのですから、流用可能な装備の追加を中心に方策を提示してみました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
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