北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

警戒航空隊第603飛行隊那覇基地に新編,南西地域での常続的警戒監視活動を期す

2014-04-12 22:45:36 | 防衛・安全保障

◆第601飛行隊、第602飛行隊、第603飛行隊

 11日の防衛省発表によれば、20日付で警戒航空隊第603飛行隊が那覇基地に新編されるとのこと。

Eimg_3279 航空自衛隊は三沢基地へ警戒航空隊司令部を置き、E-767早期警戒管制機及びE-2C早期警戒機の計17機を以て航空警戒管制にあたっています。早期警戒機は、通常のレーダーサイトよりも高い高空へ全周警戒能力を有するレーダーを搭載した航空機で、直進する電波の特性上、地上の防空監視所よりも広域を警戒することが可能です。

Nimg_2401 南西諸島での対領空侵犯任務の爆発的増大へ、防衛省航空自衛隊は前防衛大綱より明示されていた那覇基地南西方面航空混成団第83航空隊の現状の一個飛行隊体制を二個飛行隊体制への増勢改編準備を進めると共に、三沢基地よりE-2C早期警戒機の前進配備を行ってきました。

Himg_31850 警戒航空隊は現時点の編成で三沢基地のE-2C早期警戒機を運用する飛行警戒監視隊と、浜松基地においてE-767を運用する飛行警戒管制隊の二つの飛行監視部隊を基幹としています。来たる改編では、ふたつの航空部隊が飛行警戒監視群と統合され、その隷下に第601飛行隊、第602飛行隊、第603飛行隊が配置されるというかたち。

Img_8989 第601飛行隊は三沢基地を拠点としてE-2C早期警戒機を運用、第602飛行隊は浜松基地を拠点としてE-767早期警戒管制機を運用する、第603飛行隊は新編され那覇基地に常駐しE-2C早期警戒機による警戒管制にあたります。つまり、13機のE-2Cを二つの飛行隊に分けた、ということ。

Eimg_0011 これまで三沢のE-2Cが那覇に前進し警戒に当たっていた、という形でしたので、那覇基地への常駐の整備施設など支援設備の建設を行い、那覇基地へのE-2C配備の準備を進めてきましたが、これが実現した、という事でしょう。これにより、分遣隊のような運用は改められ、より高度な警戒態勢を維持できます。

Img_6543 今後の課題は、那覇基地の機能強化でしょう。那覇基地は二つの大きな問題を抱えています。一つは沖縄本島の玄関としての民間空港という位置づけ上、航空管制や発着件数が過密状態にあるということで、過去には航空管制のミスにより離陸滑走中の戦闘機へ管制塔が緊急停止を命じ滑走路逸脱事故を誘発させたこともありました。

Mimg_8857 第二滑走路の建設が那覇空港で開始されましたので、那覇基地の過密状態については将来的に解決されることでしょう。しかしもう一つの問題があります、それは那覇基地の脆弱性です。那覇基地は航空攻撃、特に現在増大している巡航ミサイル脅威に対して、対策は必ずしも十分ではありません。

Aimg_1952 航空掩体を、千歳基地のF-15戦闘機や三沢基地のE-2CとF-2のように建設し、航空攻撃への備えを充分としなければ地上で格納庫ごと破壊されてしまう可能性があるのですが、那覇基地は上記の通り面積に限界があり、海抜の低いため地下ハンガーを構築することも出来ません。

Img_1034  理想としては那覇基地の丘陵地帯に地下ハンガーを構築することですが、それまでの時間を要するのであれば比較的近いアメリカ空軍嘉手納基地の航空掩体を一時的に借用する、第18航空団のF-15飛行隊が90年代末に数機分余剰となって以来増強改編は行われていませんので、打診してみる必要もあるのでしょうか。

Simg_6050 脆弱性払拭には併せて基地防空隊の強化や航空施設隊の増強などを行い、基地機能を維持する体制の構築や、輸送機部隊の運用体制を強化し南西方面航空混成団を全国の部隊が整備器材や支援器材、航空機とその支援要員などの展開が迅速に実施できるようにする必要もあるでしょう。

Gkimg_8489  早期警戒機についてはその増勢が新中期防衛力整備計画に盛り込まれましたが、戦闘機などについての機材不足が顕著化するのであれば、支援戦闘機の増勢として次期戦闘機選定に換える別の手早く入手できる機体の選択肢も考える必要があるかもしれませんし、施設部隊の増援体制は統合運用の観点から陸海空の共同を真剣に検討するべきです。

Img_4815 航空自衛隊全体として様々な施策を行う必要はありますが、何とも現時点では次期戦闘機選定の難航などの影響もあり、航空機材が圧倒的に足りず、今回の那覇基地への第603飛行隊配備も既存部隊の再編により実施されました、もちろん可能なことと不可能なことはありますが、打診次第では不可能化可能化の可否が曖昧な部分も少なからずあります、この点について如何に模索するか、日本全体の課題と言えるものです。

北大路機関:はるな

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コメント (1)
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