北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十四年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.09.22・23・25)

2012-09-20 22:42:41 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 台風の直撃を免れつつも豪雨でひやりとさせられた三連休を超えて、今週末の行事紹介と行きましょう。

Cimg_9151 今週末、全国的に注目の行事は色々とあるのですが、航空機ファンには小松基地航空祭がその筆頭に浮かぶのではないでしょうか、小松基地航空祭2012、小松基地は石川県の対岸に北朝鮮を睨む防空の要衝でF-15二個飛行隊を有する第六航空団が広大な日本海の訓練空域にて腕を磨く精鋭の部隊、その機動飛行や編隊飛行の展示について迫力と定評があります。

Cimg_1645 第10師団創設50周年記念行事守山駐屯地祭。名古屋市内の師団司令部で、来年度に即応近代化師団の改編を受ける事となった第10師団は、現在四個普通科連隊と本土最大規模の特科連隊に四個中隊基幹の戦車大隊を有する強力な師団で、東海東南海地震を睨む名古屋の精鋭です。名鉄瀬戸線守山自衛隊前駅から駐屯地がすぐ、というのもありがたいところ。

Cimg_7673 八戸航空基地開庁55周年祭。海上自衛隊の北方海域の対潜哨戒と洋上哨戒に当たる要衝、青森県八戸航空基地でも航空基地祭が行われます。P-3Cを運用する第2航空群が展開する基地で、陸上自衛隊も駐屯している場所。今月初めに三沢基地航空祭が行われたばかりですので、今月は青森県の航空行事強化月間、というところでしょうか。

Cimg_4294 このほかの海上自衛隊行事ですが、今週末に一件と来週の中ごろに一件、まずは砕氷艦しらせ一般公開、今週末は福岡県門司港にて土曜日と日曜日に一般公開が予定されています。実施は門司港西海岸一号岸壁、時間は両日とも0900から1600で乗艦は1500まで、お間違えなく。

Cimg_9505 神戸港護衛艦ひゅうが一般公開、一般公開は平日の25日火曜日なのでご注意ください。いせ神戸港寄港から半年、ひゅうが型一番艦が寄港です。神戸新港第四突堤のポートターミナルが会場、時間は1200から1730時までです。阪神基地隊によれば、ひゅうが神戸港入港は24日月曜日で、出港は26日水曜日となっています。

Img_4327 ひゅうが神戸寄港、しかし勤めがるんで平日昼間はさすがに行けない、という方には夜景という選択肢もあります。会社に一眼レフと三脚なんて持っていけるか、という声に対して、取り敢えず当方の神戸港ポートアイランド護衛艦いせ夜景コンデジ撮影写真三脚不使用を一枚。埠頭の安定する場所にカメラを置いて揺れないようセルフタイマー撮影したものです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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尖閣諸島防衛への一視点② 航空自衛隊による南西諸島航空優勢維持

2012-09-19 23:53:15 | 防衛・安全保障
◆沖縄の那覇・嘉手納・普天間三基地を最大限運用
 時間があるというのは本当に心に余裕が持てる中の本日のお題は尖閣諸島、短期集中連載なので取り急ぎ。
Oimg_1903 南西諸島防空ですが、一部週刊誌などでは中国空軍の戦闘機数を挙げ、福州から尖閣諸島へ最短距離の、杭州より沖縄本島へ最短距離の経路から我が領空に一定数の部隊を送れば、比較的短期間に航空優勢を確保できる、という短絡的な内容が紹介されていたとのこと、校正されて誤字が無い分当方よりも、というかもしれませんが、この考えはあまりに短絡的と言わざるを得ません。何故ならば、その経路は確実に台湾空軍の介入を招くからです。そして、尖閣諸島方面へ中国空軍戦闘機の接近による対領空侵犯措置任務が実施されない背景にも台湾の存在があるという事を忘れてはならないでしょう、何故なら台湾にとっても重大な問題なのですから。
Oimg_1224 さて、先ほどのはなし、那覇基地にはF-15戦闘機一個飛行隊しかいない、ということを提示したうえでの内容のようですが飛んでもありません、航空自衛隊は飛行隊規模の展開訓練を実施しています。必要であれば本土から数個飛行隊を引き抜き、比較的短期間に沖縄本島の基地に展開、航空優勢を維持するに十分な部隊を揃えることは可能なのです。 具体的事例としては、2010年チリ地震津波災害に際し、松島基地よりF-2B一個飛行隊全てが小松基地へ緊急避難した事例があります。まあ、この事例を基に東日本大震災でも、津波到達まであと2時間あれば全機退避できた、という声にもつながるのですが、このほか、コープノースグアムやレッドフラッグアラスカへ飛行隊の半分程度に当たる飛行隊を展開させています。
Oimg_8185_1 沖縄本島には、那覇基地のほか、嘉手納基地、普天間基地があります。1997年の日米防衛協力に関する指針、いわゆる日米新ガイドラインでは有事に際し日米の基地を日米が使用できる内容を含んでおり当時は朝鮮半島有事がひっ迫しているといわれていた頃ですので、有事の際に米軍が自衛隊の基地を使用する部分ばかりが強調されていたのですが、日本有事の際に米軍基地を自衛隊が使用することが可能、本土からの増援部隊を沖縄の米軍基地に収容することが出来るのだ、という部分を覚えておく必要があるでしょう。
Oimg_1007 嘉手納基地、沖縄最大の米空軍嘉手納基地は3700m滑走路二本を有し、敷地面積は羽田空港の二倍、200機の航空機が展開する北東アジア地域最大の航空基地となっていますが、こちらは、奇しくも普天間基地問題において普天間基地機能の嘉手納統合案が出された際に、有事の際には350機以上の空軍機を搬入するため容認できないという表明を以て、その能力の大きさが改めて提示されることとなりました。あまり関係ありませんが、沖縄トラフ地震、かつての八重山地震規模の大津波が発生したとしても嘉手納基地の標高は44m、羨ましい。
Oimg_1587 普天間基地、2700m滑走路を有し、海兵隊の航空部隊一大拠点となっていまして、こちらも有事の際には回転翼機で300機程度を収容する航空基地であり、その面積は480.5ヘクタール、F/A-18CやAV-8Bを運用する海兵航空部隊の受け入れを想定する普天間基地は、必然的に戦闘機部隊の運用に必要な滑走路強度や支援設備の受け入れ能力を有していることになるのですから、航空自衛隊の航空団規模の部隊であったとしても、この受け入れ程度は十分可能であるわけです海抜は75mとのこと。
Oimg_3839 米軍が全域を使用している状態となれば航空自衛隊の受け入れは不可能になるのではないか、という危惧をも他tれるかもしれませんが、それは杞憂というもの、嘉手納基地に空軍機350機、普天間基地に海兵隊航空機300機が集中する状態というのは全航空自衛隊と陸上自衛隊の全航空機が展開するようなものですので、その状況で更に航空自衛隊が展開しなければならないとは考えにくいもの、抑止力の塊というべき状態、想定するような事態が実際に起こる前に封じ込められてしまうでしょう。
Oimg_2306 増援部隊は全国の航空団から飛行隊を抽出して一時的に展開させる方式を採れば、我が国の防空体制を維持しつつ戦力集中が可能です。例えば、北部航空方面隊から一個飛行隊乃至二個飛行隊を嘉手納基地へ、中部航空方面隊から一個飛行隊を普天間基地へ、もしくはF-15二個飛行隊を嘉手納基地へ展開させ、F-2一個飛行隊を普天間基地へ展開、このような措置を採ったならば沖縄の防空能力は一挙に四倍となり、加えて米軍基地の航空掩体などにより戦闘機を、例えば弾道ミサイル攻撃に際して有効に防護する余地が生まれますし、日米の地対空ミサイル部隊による迎撃もかなりの密度となります。
Oimg_3258 航空作戦の中枢、これを担うのは実際には消耗戦に行かに耐えるか、という側面が強いのですが、現代の消耗戦は、第二次大戦中のような数百機が入り乱れての航空作戦は装備の長射程化により起きにくくなっており、航空機そのものの消耗戦ではなく、主として膨大な予備部品を必要とする航空機に対し、如何に予備部品を供給し稼働率を維持するかが大きな部分を占めることとなります。さしあたって、この場合に問題となるのは本土基地からの予備部品の沖縄への空輸といことになるのですが、この点で不安応訴は自衛隊の輸送機数の限界でしょう。
Oimg_2779 この問題に対し、一つ大きな力となるのは横田基地の第374空輸航空団のC-130H輸送機20機です。東日本大震災では、豪州空軍のC-17輸送機による嘉手納基地と横田基地間の第15旅団空輸支援の事例がありますが、南西諸島有事に際しても日本側が航空部隊の維持に必要な物資の輸送、木更津基地と入間基地に岐阜基地の補給処からの輸送支援に米空軍の支援を受ける事は可能であると考えます。我が国は専守防衛を掲げ、戦闘部隊を充実させつつ、外征能力を欠いてきた側面があるのですが、これを同盟関係が補完する、日米安保の理念そのもの。
Oimg_3020 戦闘機の稼働率維持、これはF-15J戦闘機と中国空軍のSu-27戦闘機の性能以上に重要です、稼働率が低下してしまえば劣勢となり、作戦空域に投入できない戦闘機は何百機あったとしても要を為さないからです。特にロシア製Su-27は、最高稼働率を高める欧米の戦闘機設計思想とは異なり、極限状況においても最低稼働率を一定数維持するという設計思想に依拠した航空機ですので、元来稼働率を高く維持する航空機ではありません。中国空軍の戦闘機整備体制と稼働率維持への部品準備態勢について、詳しい情報はありませんが、元々稼働率への考え方が異なる航空機という事を考えていく必要もあるということ。
Img_5656i 弾道ミサイル攻撃からの沖縄防衛は、2006年の北朝鮮弾道ミサイル連続発車事案を受け、陸軍防空砲兵部隊のペトリオットミサイルPAC-3一個大隊を嘉手納基地へ展開させています。一個防空砲兵大隊は四個射撃中隊を基幹とする編成で、沖縄本島の防空を考えた場合、航空自衛隊のペトリオット、運用しているのは対航空機用のPAC-2ではあるのですが、これもかなりの密度と言えるもので、米軍の沖縄重視の姿勢が見えるわけです。もっとも、同時に沖縄に多数の地対空ミサイルを配置する自衛隊の本気度合いも、図れるというものなのですが。
Oimg_3632 ただ、不確定要素が無いわけではありません。我が国は、浜松基地へE-767早期警戒管制機を配備し、その長大な航続距離を活かし、航空作戦の組織化を図っています。実のところ、これが重要な航空作戦の能力を有していまして、いっぽうで中国の早期警戒管制機との能力差は大きな不確定要素となる可能性があります。尖閣諸島近海には中国空軍の航空管制を行う手段は、KJ-2000早期警戒管制機となっています。実のところ、KJ-2000はレーダー出力がかなり大きい可能性が示唆されており、言い換えればF-35が導入されている状況ならば、この脅威をステルス性能を最大限発揮し排除することも可能性として残るのですが、不安要素の中では最大のものと言えるやもしれません。
北大路機関:はるな

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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑰ 沿岸部航空基地の津波対策

2012-09-18 23:53:16 | 防災・災害派遣

◆自衛隊が被災せぬように・・・、現実となった危惧  東日本大震災において津波被害に遭った施設に航空自衛隊松島基地と陸上自衛隊多賀城駐屯地がありました。
Bimg_7346 陸上自衛隊航空の中枢というべき木更津駐屯地、第一ヘリコプター団隷下の32機の大型輸送ヘリコプターCH-47J/JAが展開しており、方面対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sが16機と要人輸送ヘリコプターEC-225も展開し世界的に見ても屈指の航空輸送部隊の集積地ですが、駐屯地から東京湾対岸の横浜が見えるほど、文字通り沿岸にあります。
Bimg_8692 東日本大震災では東北方面航空隊が展開する東北地方太平洋岸陸上自衛隊航空の一大拠点、霞目駐屯地が大丈夫なのか気が気ではありませんでした。仙台東部道路が津波を食い止めたを報じられる一方で盛り土の下を通る道路から津波が浸水し、駐屯地のほんの数百mまで津波が到達していたことを現地で知りました。
Bimg_3588 実は震災の一年前、2010年3月1日の記事に昭和南海地震津波被害により徳島県の小松島航空基地、当時自衛隊創設以前であり被害はなかったのですが津波が押し寄せ、冠水したことを例に挙げ、現在の小松島航空基地も東日本大震災以前の津波想定で1mの津波が15分で到達し、航空機の空中退避は間に合わないという現状を紹介、沿岸部の基地の津波対策強化というものはもう少し真剣に考えられるべきだ、と提案しています。
Bimg_7289 NHKスペシャルにて震災復興予算19兆円が外国人交流事業や沖縄の防波堤建設に北海道道路建設などに流用されている内容を報じていましたが、基本的に南海トラフに備えるという名目で防衛予算からではなく防災予算を防衛省の執行計画として採ることが出来ないか、という念頭での記事を作成していましたので、やはりこの予算行使の在り方を考えるという事は問題なのだろうか、と思いつつ。
Bimg_1739 東日本大震災以降繰り返し提案している内容でもあるのですが、防災予算で自衛隊の防災能力強化、というものはそこまで防災政策という骨子を外れてはい無い、という信念がありますので、やはりこの際思い切った基地施設、沿岸部の基地の津波対策と内陸部の基地の強化を行うべきだ、という視点を改めて提示しましょう。
Bimg_7793 三沢基地は海抜36mあり八戸航空基地も海抜46mで芦屋基地も海抜30m、沿岸に近そうな印象の浜松基地は内陸で標高46mと比較的方向が確保されているのですが、南海トラフ地震を想定した場合、標高が低く沿岸部に近い航空基地や飛行場がいくつもあります。もっとも、海抜ですべてを考えられないことは確かです。
Bimg_5535 津波は連続した並の塊ですが、海面上昇ではないので地表に接すると急速にそのエネルギーを失います。小牧基地のように海抜16mなのですが、南海トラフ地震で最大規模の津波が襲ったとしても名古屋市の更に北方で海岸線から20km近く離れている基地があり、八尾駐屯地も海抜は12mですが大阪湾から15km離れています、この点からも一概に海抜では言えないという事がわかるでしょう。

Mimg_6687 松島基地海抜2m、館山航空基地海抜3m、木更津駐屯地海抜3m、静浜基地海抜7m、小松基地海抜6m、明野駐屯地海抜6m、八尾駐屯地海抜12m、小松島航空基地海抜3m、徳島航空基地奇抜8m、岩国航空基地海抜2m、防府北基地海抜2m、美保基地海抜6m、築城基地海抜17m、目達原駐屯地海抜16m、大村航空基地海抜5m、那覇基地海抜4m、とこの通り。

Img_9047 津波対策としては飛行場施設の嵩上げなどが考えられるのですが、何分、南海トラフ地震が想定する津波は30mを超える地域があり、この30mというのは最大値に近い、まあ、東日本大震災の東北地方太平洋沖地震で38mの津波がありましたので一概に行くことは危険なのですが、それにしても10m単位での嵩上げ、というのは少々難しいものがあるかもしれません。
Bimg_9721 小松島航空基地では、検討の域を出なかったそうではありますが、航空機をそのまま格納庫の天井に吊り上げるという方式が検討されたそうです。航空技師の方にこの方式を離しますと素人考えではありますが、ヘリコプターは飛行時にローターで全重量を支えているのだから原理的には可能、とのことでした。飛行準備には航空機は一時間程度を必要とするのですが、ワイヤーを取り付けるだけならば数分、整備員は機体を防護しつつ避難が可能でしょう。
Bimg_2176 航空掩体。戦闘機部隊については、強固な掩体に戦闘機を収容してしまう、という方法も一つの選択肢でしょう。松島基地などは航空格納庫周辺に防水措置を行う方法を行っているのですが、NBC戦を想定する密閉性の高い掩体ならば、津波により冠水したとしても航空機を守ることが出来るでしょう。
Bimg_3168 那覇基地の南西方面航空混成団司令部のように、司令部施設を人工の山に隠すという方式、扉部分を防爆構造とすれば津波における防水能力も発揮できます。もっとも、この方式は地震により亀裂が生じ浸水する可能性もありますので、スロープを用意して航空機ごと高台に整備員ともども率先避難、という方式もあるやもしれません。もちろん、発電機能や通信機能なども極力対策を施さなければならないことは言うまでもありません。
Bimg_8774 喫緊の課題は沿岸部の基地や駐屯地で、木更津駐屯地などは、駐屯地嵩上げよりも内陸部の海抜25mにある霞ケ浦駐屯地へ部隊を移転し、実任務への影響が限定され比較的安価な練習ヘリコプターなどを運用する機体へ置き換える、南海地震想定被災地の沿岸飛行場は内陸部の伊丹空港などに暫定措置を含め部分移転する、などの施策は考えられないでしょうか。
Bimg_4091 この津波対策は、航空掩体を増強するという方法により、有事の際の航空攻撃からの基地機能維持に繋げることが出来ますし、人口山格納庫は精密誘導兵器による攻撃に対して地下構造を秘匿することで航空機の被害を最小限とすることが出来る方策です。南海トラフ地震対策という視点も含みつつ、抑止力強化、という側面からも検討されるべきではないか、こう考える次第です。

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尖閣諸島防衛への一視点① 急速に悪化する日中関係と南西諸島守る海上自衛隊の実力

2012-09-17 23:11:08 | 防衛・安全保障

◆短期集中連載第一回、防衛だけならば日本有利

 本日もあまり時間が無いのですが、南西諸島はさらに時間が無さそうという事での掲載です。

Gimg_0822 尖閣諸島国有化を契機として日中間の南西諸島をめぐる緊張が新し段階へ入ろうとしています。本日は大規模な漁船団が南西諸島周辺海域向け出港したとの報道があり、反日暴動は邦人への暴行を含め拡大中となっています。一過性のものか、暴動の背景にはどういったものがあるか、この点は敢えて記さないのですが、南西諸島が沸点に向け緊張が高まっていることだけは確かでしょう。

Gimg_1272 しかし、軍事的に見た場合、当方はそこまで悲観していません。中国海軍の対潜戦闘訓練は多国間訓練の機会が限られているため自国潜水艦を基本とするものが主であり、海上自衛隊の潜水艦に対して有効な行動を取ることはできないでしょう。事実、我が国の護衛艦周辺を中国機が飛行した事案は過去にありましたが、潜水艦が追尾された事実は皆無であるという事を忘れてはなりません。

Img_7161 また、海上自衛隊はデータリンクにより艦隊が一つの巨大な群として運用する方式を創設当時から修得しています。これは、この必要性を説いた米海軍が、そもそもデータリンクにより艦隊が一体として対応しなければ第二次大戦中に日本の航空攻撃から艦隊を防護できなかったからなのですが、この部分で日中には覆い難い技術差が生じているわけです。

Img_1890 少々変な例えではあるのですが、サッカーに例えれば連携が出来るかできないのか、というデータリンクの重要性は同じチームの味方選手の位置が全く分からない視野狭窄の状態で、通常のチームプレイを行う集団へ対応するようなものですから、この有無がいかに重要か、身に染みて多くの予算を投じる集団と、必要性を額面上だけ認識している集団との違いが出てくるという事です。

Cimg_2914 日中の稼働艦艇ですが、有事となれば、平時では攻勢側が我が領域周辺を遊弋する時期を選定できるため、これに合わせて稼働艦艇を運用できることから日本が逆に不利となるのですが、有事となれば総力戦となるため、単純に稼働率が高く長期間の航行が可能な大型水上戦闘艦艇の数で優位にある海上自衛隊が有利という事は確かなところ。

Cimg_7526 ただし、現在進展している事態はまだ有事ではなく、漁船団の我が領海接近事案に際しては多数の警備救難選定を運用する海上保安庁の活躍を期待するほかありません。軍隊と軍隊ではなく、こうした領有権紛争への実力行使を所謂非対称の戦い、中国風に言うならば国家テロをも選択肢に含むという超限戦、というところでしょう。

Img_0805m こうしたなかで、一つ不安要素を挙げるならば、日本が戦後初めて海上自衛隊をマリアナ方面に展開させた理由が日本漁船団大量遭難事件を契機するものであったことを思い出し、中国漁船団が台風被害を受けるような状況に乗じて自国漁民の捜索救難名目で海軍が出てくる、というところでしょうか。

Aimg_6739 この通り、海上戦闘においては我が国海上自衛隊は中国海軍を圧倒することは十分可能なのですが、それ以外の非対称型の戦いとなれば、現在の有事立法や自衛隊法の法体系下では対応が難しく、実のところ自衛隊の任務や運用方式が従来の有事とは別の状態に対応可能な、装備を揃えつつも法体系が未整備、という事はおきな問題と言えるやもしれません。

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第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報 掲載延期のお知らせ

2012-09-16 22:36:02 | 北大路機関 広報

◆コメント欄もお返事遅れております

 本日とここ数日、お仕事上のトラブルがあり多忙を極め、真駒内駐屯地祭特集は延期とさせていただきます。

Mimg_1286 今回は観閲行進の締めくくりとなる戦車部隊と航空部隊を紹介する予定でしたが、多数の写真を紹介する文章作成の時間が捻出できず、対して少数の写真で紹介するには第11戦車隊は勿体無いほどの威容です。尖閣諸島問題や欧州防衛産業BAE/EADS統合協議など扱いたい内容も多々あるのですが、時間が無い。

Mimg_1874 コメント欄の公開も遅れておりますが、頂いたコメントは第二北大路機関にて先行する形で紹介しております。10日に一本という形で四記事を連載としていますが、場合によっては今後も一部延期というものがある可能性を個々に通知します、どうかご了承ください。

北大路機関:はるな

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P-8哨戒機日本展開へ、米海軍は2013年にも三沢基地・嘉手納基地へ配備を計画

2012-09-15 23:48:06 | 防衛・安全保障

◆ボーイング737派生型の大型機

 NHK等の報道によれば、米海軍は早ければ2013年後半に最新型哨戒機P-8を我が国へ前方展開する方針を固めたようです。

Img_7940 海上自衛隊は現行のP-3C哨戒機後継機として国産のP-1哨戒機を開発し、部隊配備へ順調に生産と運用試験が行われていますが、P-3C哨戒機の後継機に米海軍はボーイング737を改造した大型哨戒機P-8を開発中です。P-1哨戒機は、対潜哨戒と洋上哨戒を一手に担う航空機ですが、ボーイング737を原型としたP-8哨戒機は低空に降りることを極力省き、無人機と連携し高高度から警戒を行う新世代の航空機として開発されました。

Img_0866 P-8哨戒機は、米海軍が三沢基地と嘉手納基地へ展開させているP-3C哨戒機として運用され、数年内にグアム島へ配備される無人偵察機トライトンとともに連携し哨戒任務に当たることとなる計画、これにより太平洋地域での日米の対潜哨戒能力及び洋上哨戒能力はP-1と共に運用されるP-8が大きく底上げすることとなるでしょう。

Img_7672_2 米海軍はP-3C哨戒機について運用開始から四十年を経ることにより耐用年数を超えており、加えて機体には現在開発されている最新鋭のレーダ装置などを搭載できないことを後継機導入の理由としています。海上自衛隊は、導入開始から約30年ですが、延命改修予算を来年度予算へ計上している現状、P-1の導入も急がなければならないのでは、とも思うのですが、最新鋭機の前方展開が抑止力の強化につながることを期待したいですね。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.09.15・16)

2012-09-14 22:30:55 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 三連休、台風が沖縄近海で不穏な動きをする中ではありますが皆様お過ごしでしょうか。この三連休には三つの行事が行われます。

Gimg_1601 岩国航空基地祭、海上自衛隊の岩国航空基地で行われる開庁記念行事で、航空祭として飛行展示なども行われます。岩国航空基地には第31航空群が置かれ、救難飛行艇を運用する第71航空隊、電子偵察機を運用する第81航空隊、訓練支援を行う第91航空隊、そして航空集団直轄の掃海ヘリコプターを運用する第111航空隊などが展開しています。五月に行われる海兵隊岩国航空基地フレンドシップデイほどの派手さはありませんが、注目の行事といえるでしょう。MV-22,隣から出てきたりは、しないか、な。

Gimg_5548 相浦駐屯地創設記念行事。長崎県佐世保市にあるこの駐屯地には西部方面隊直轄の精鋭、西部方面普通科連隊が駐屯しているほか、西部方面隊隷下の第3教育団本部、第118教育大隊と第5陸曹教育隊が駐屯しています。西部方面隊の精鋭という事で対馬警備隊の写真でご勘弁を。聞くところでは一昨年はレーザー訓練装置を使った迫真の模擬戦が行われたとのことですが、偽装と遮蔽利用が徹底していて、なかなか写真撮影は難しかったとのこと。

Gimg_2760 しらせ境港一般公開。海上自衛隊の砕氷艦しらせ、が鳥取県境港港において土曜日と日曜日に一般公開が行われます。土曜日と日曜日共に一般公開が行われる時間は0900から1200と1300から1500まで行われます。注意事項は、しらせ、は遠めによく映える塗装となっていますが、そのまま見学は出来ず受付に行く必要があります。竹内団地PLANT5東南側に受け付けはあり、そこで受付を済ませると接岸している岸壁まで無料送迎バスにて移動することとなります。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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ヘリコプター護衛艦くらま就役30周年記念一般公開⑨ 護衛艦くらま佐世保出港

2012-09-13 22:55:00 | 海上自衛隊 催事
◆くらま出港!湾内で撮影!!
 佐世保三日目、最終日の朝、遂に護衛艦くらま佐世保出港の様子を撮影することが出来ました。
Kuramaimg_9032_1 ここから本日は連続写真です。くらま、その護衛艦としての紹介はこれまでに何度も紹介しましたので、撮影などを経ての感想を掲載するとともに、じっくりと背負い式艦砲とマックに艦橋という上部構造物に長大な飛行甲板、美しい、はるな型以来のヘリコプター搭載護衛艦の艦容を見ていただきたいと思います。
Kuramaimg_9042_1 鞍馬、旧帝国海軍では巡洋戦艦鞍馬として有名ですが、戦時中の海軍拡張計画に基づく航空母艦鞍馬、として終戦には間に合わなかったものの建造されていた艦名を引き継いだのが護衛艦くらま、でして、空母鞍馬、よりは排水量は小さくなるのですが遅れて完成した、という印象で見ると違って見えるやもしれません。
Kuramaimg_9052_1 くらま就役30周年記念特別一般公開ということで、佐世保へ展開したわけなのですけれども、大事を取って月曜日に長さっ空港からの便を予約しておいたのが正解でした。日曜日の夜の便も考えていたのですけれども、あまり詰め込み過ぎた行動計画ではかえって難しい、ということで月曜日午後一のフライトとしたわけ。
Kuramaimg_9062_1 特別公開第一日目には、基地での護衛艦くらま、を見学するとともにもっと良いアングルから撮影することはできないものか、と佐世保の撮影ポイントを詳しく知らなかったため文字通り上がったり下がったり東奔西走北上南下、良いといわれる場所が明らかに私有地で断念したり、建物の陰に入っていたり。
Kuramaimg_9072_1 そして体験航海という事を知ったのですが、基地の近くに住んでいる場合を除けば、中々護衛艦の出入港というものは見えるものではありません。もっとも、この時点では知らなかった話で、こののち2011年12月に佐世保入港の様子を、2012年3月に江田島出港の様子を撮影する機会には恵まれたのですけれども。
Kuramaimg_9082_1 くらま。見上げますと、この艦容は独自、日本ならではのものだからこそ、印象に残ります。DDHという呼称そのものが独特のもので、ヘリコプターの運用を余り行わない海軍などではほかの水上戦闘艦と区分するためにヘリコプター搭載艦艇をDDHと呼称する場合もあるのですが、日本の呼称はもっと独特です。
Kuramaimg_9092_1 はるな、最初のDDH就役に際してはやはりヘリコプターを搭載する唯一の護衛艦、という意味合いであったのですが、くらま就役の時点ではヘリコプター一機を搭載する護衛艦はつゆき型の量産が開始されており、それよりも大型対潜哨戒用のヘリコプターを集中運用する航空中枢艦、という意味合いが強かったわけですね。
Kuramaimg_9102_1 しらね型、これは石油危機の関係で縮小された第四次防衛力整備計画の護衛艦なのですが、実はこの時期に汎用護衛艦にもヘリコプター搭載の計画があり、しかし、汎用護衛艦はのちの、はつゆき型よりも小さかったためもう少し小型のヘリコプター搭載を考えていたそうです。石油危機を契機とする計画中止で、DDHと同じ大型機を搭載する護衛艦はつゆき型、とおわまったのだとか。
Kuramaimg_9112_1 HSS-2B,くらま最初の艦載機はこの懐かしい機体だったのですが、これは米海軍が空母の対潜用に搭載していたSH-3と同型、吊下ソナーを搭載するかなり高度な対潜哨戒機でした。その後米海軍は駆逐艦やフリゲイト搭載用にSH-60Bを導入するのですが、水上戦闘艦のセンサーの延長という位置であり、対して海上自衛隊は吊下げソナーを搭載する対潜機としての性能を重視したSH-60Jを開発しました。
Kuramaimg_9122_1 さてさて、この日の天候ですが青空を背景に護衛艦、という情景を期待したのですが洋上からの撮影は航路の関係上、逆光となってしまう配置です。すると、曇りの方がしっかりとした情景に出会えるはずなのですが、天候というものは撮影の中でも非常に運に左右されるものがあり、多少不安は抱えていたけれども、この通り当日の天候は曇りです。
Kuramaimg_9132_1 絞りなどを+補正にしまして、もちろんあまり補正をかけすぎると画面が光を拾いすぎてしまい真っ白になってしまいます。気を点けつつ、デジタル一眼レフ最大の強みはフィルム式カメラでは不可能であった、ためしに一枚撮影して露出やシャッター速度とISO感度を調整できるという事、慎重に準備します。
Kuramaimg_9142_1 くらま洋上撮影はこれ一回、緊張度はブルートレインを撮影するときの様、いや、早朝の山崎駅で寝台特急なは・あかつき号を撮影したことを思い出しました。あかつき号、残っていれば長崎に行くのに便利だった。ただ、ブルートレインは失敗しても翌日に同じダイヤに基づく動くのですが、護衛艦となるとそうはいきません。
Kuramaimg_9152_1 写真はある程度うまく撮影できたことはこの連続写真を見て判断していただくこととしましょう。2011年12月の撮影では、日の出の逆光が美しくシルエットを際立たせた写真を撮ることが出来ましたし、江田島出港では天気に恵まれ、順光の環境で出港する様子を理想的な写真を撮ることが出来ました。
Kuramaimg_9162_1 くらま、この護衛艦しらね型ですが、最初は対潜巡洋艦として計画されていた護衛艦で、8000t級のミサイル巡洋艦と対潜巡洋艦を建造して巡洋艦隊を護衛艦隊に置く案や、全通飛行甲板型巡洋艦を建造する計画もありましたが、石油危機で見直され、今に至ります。なにやらロマンを引き立てる響きですが、四個護衛隊群の能力の均衡を考えれば、くらま、はこの状態でよかったのだと思います。
Kuramaimg_9172_1 新冷戦時代には、護衛艦隊を七個護衛隊群に拡張する案や、大型航空母艦を導入する案が自民党から出されたこともありましたが、現在の経済状態で護衛艦隊がその規模を維持できているのは、この四個護衛隊群という編制が石油危機の景気後退を背景に達成された、まさに不景気対応型の編成だったからこそ、維持できているのではないか、そう考えているところ。
Kuramaimg_9182_1 まあ、いろいろと長く書きましたが、これら写真を撮影している時間はほんの一瞬、EOS-7Dの連写機能を最大限活かしての撮影でした。PowerShotG-12の導入はこの写真を撮影した約二週間後、今では例えるならば小銃と拳銃、艦砲とミサイル、そんな関係でEOS-7DやEOS-50Dとの連携で撮影に活躍しているもの。
Kuramaimg_9192_1 さてさて、護衛艦くらま特集は、番外編的なものを紹介する次回と、そして総集編を掲載して完結です。実質三カ月から四カ月ほどの長い特集記事でしたが、次は何を紹介しようか検討中です。舞鶴展示訓練か大阪湾展示訓練、一転して航空自衛隊特集で、入間基地航空祭や新田原基地航空祭か那覇基地航空祭、なんかもいいやもしれません。
Kuramaimg_9202_1 南海トラフ地震への備え特集記事も間もなく完了しますが、続いて来年度防衛予算概算要求分析記事を作成するか、こちらを不定期連載という扱いにして島嶼部防衛の記事を紹介するのか、自衛隊行事紹介記事を陸海空三本立てとして、これに防衛産業特集を組むのか、サイドバーの“最新の記事”10本に各特集を1記事づつ紹介できるよう、検討中です、お楽しみに。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成24年度日米共同方面隊指揮所演習 仙台駐屯地にて12月上旬に実施

2012-09-12 22:21:04 | 防衛・安全保障

◆陸上自衛隊東北方面隊・米太平洋陸軍参加

 防衛省によれば、今年度の陸上自衛隊日米共同方面隊指揮所演習が12月上旬に行われるとのことです。

Gimg_1676 今年度の陸上自衛隊日米共同方面隊指揮所演習は、東北方面総監部が置かれている仙台駐屯地において実施されるとのことで、演習参加部隊として、陸上自衛隊からは東北方面隊を中心とした部隊が参加し、米陸軍からは太平洋陸軍司令部と在日米軍司令部などから部隊が参加するとのこと。

Gimg_3562 日米共同方面隊指揮所演習は、陸上自衛隊と米陸軍の部隊が平時においては異なる指揮系統にある中で共同しての作戦実施における方面隊や軍規模での幕僚間の指揮系統統合運用に関する演練を実施し、有事の際の連携への能力の維持と強化を図ることが目的とのことです。

Gimg_3756 日米演習は、東日本大震災に際して、文字通り奇襲と言えた大震災を前に米軍が迅速に立ち上げた支援体制との協同を行うことで、米軍が進める震災救援任務トモダチ作戦での日米連携を円滑に進める事ができました。日本有事や周辺事態に加え今後の大規模災害を考慮した場合、この種の訓練の重要性は今さら敢えて言うまでもないでしょう。

Gimg_5614 国民保護訓練が今回の演習と共に実施されることとなっており、国民保護訓練へは陸上自衛隊と米陸軍に加えて日本から関係機関が参加することとなっています。仙台駐屯地での国民保護訓練、東日本大震災自衛隊災害派遣統合任務部隊司令部が置かれた場所での訓練、という事ですね。

Gimg_2318 なお、今月末に行われる東北方面隊創設記念行事は毎年実施されている霞目飛行場地区会場ではなく、仙台駐屯地が式典会場となるようです。仙台駐屯地はシャトルバス乗り場程度しか利用できませんので、方面指揮所演習が行われる会場、方面隊記念行事に足を運ばれてみてもいいやもしれません。

北大路機関:はるな

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望④ 多年度分割調達方式への対応

2012-09-11 23:54:26 | 防衛・安全保障

◆そもそも日本式の契約に応じてくれるのか?

 海外からの調達の方が良い、という視点への反論の一つを本日は紹介したいと思います。それは、日本型の調達方式に応じてくれるのか、ということ。

Bimg_0785 富士重工が当初60機を調達するとして防衛省と契約したAH-64D戦闘ヘリコプターについて、毎年1~2機を調達していた防衛省が価格高騰を理由に調達を11機で終了する方針を示し、対して富士重工はアメリカ製AH-64Dをライセンス生産するにあたり実施した生産設備費用や既に調達した有償軍事供与による直輸入部品の費用の弁済を求め350億円を国に支払うよう求め提訴したのが昨年1月15日でした。我が国では、ある程度導入したい数量を制式化もしくは部隊使用認可の時点で生産企業に示すのですが、一括支払いは行われず、多年度に分割して調達する方式を採っており、これが時として一方的に反故とされることがあります。

Bimg_4416 89式装甲戦闘車は、機甲師団である第7師団の一個普通科連隊所要に加えて旭川第二師団、帯広第五師団、真駒内第十一師団へ各一個連隊程度を装甲戦闘車化する構想で生産開始されました。機甲師団隷下の第11普通科連隊は六個中隊編制ですので所要は150両、つまり少なくとも89式装甲戦闘車は350両か多ければ500両程度が生産される計画だったのですが、これも冷戦終結と重なり下方修正、当初は年間5~8両生産されていたのが毎年1両程度と減り、70両以下で生産終了しました。

Bimg_3952 87式自走高射機関砲、機甲師団直衛用装備とはなっていますが、こちらも第七師団第七高射特科連隊と第二師団第二高射特科大隊一部中隊所要で生産終了しているのですが、もともとL-90高射機関砲の後継として全国の師団高射特科大隊への配備が念頭に置かれていまして、170両は生産される計画でした。90式戦車も現在は北海道専用装備のように言われていますが戦車定数と同数の1000両程度の生産は見込まれていたことも記しておきましょう。96式多目的誘導弾も最初は全ての師団に配備される計画でしたが、今や方面隊直轄装備へ一部が転換されていました程。そして観測ヘリコプターOH-1,機動性が高く開発当時の将来脅威として考えられていた敵攻撃ヘリコプターへの対処能力を考え空対空戦闘能力を有していますが、こちらも250機程度の導入が展望されていましたものの、実際は30機程度での生産終了となります。多数を導入する計画を立てつつも、これは計画であり契約ではない、という立場なのでしょうか。

Bimg_2336 年間少量づつ調達するが、将来の配備数を明示してくれるのでしたら簡単です。契約の際に納期とオプション調達契約を結び、メーカーは数年後の納期までに一括生産してしまい、少数づつを自衛隊へ納入すればよいのです、89式装甲戦闘車であれば十年で500両の契約でも、OH-1の場合で例えれば十年で250機の契約でも、最初の二年間程度で一括生産してしまい、その後納入すればよいのですから。しかし、実際の事例、例えば極端な事例のAH-64Dのように、生産設備を準備したのに少数調達で終了、と日本が一方的に海外メーカーに通達した場合、全量買い取りに関する訴訟が確実に行われ、併せて海外メーカーとの通商問題は外交問題へと発展します。実際問題、NATOでは欧州通貨危機などで支払いが難しくなった装備を受け取り拒否しようとしたことで紛争となった事例があるほどで、日本型の調達方式は海外で通用しにくい、という事は忘れてはなりません。

Bimg_5570 こうした問題を一度やってしまうと、その後は日本との契約は一括支払い方しい以外応じない、という反応となり戻ってくるでしょう。それでは、調達方式を切り替え、日本も一括発注方式とする、このように転換した場合はどうなるのでしょうか。少なくとも、必要数を明示して、財務省を納得させることが出来たならば、一括して必要な車両を一挙に入手することが可能となります、この年度は装甲車を、次の年度は戦車を、その次の年度は航空機を、更に次には地対空誘導弾を、そのまた次の年度に火砲を、という方式です。

Img_1923 一括発注方式一括支払い方式への転換、一見こちらの方が装備更新効率化と取得費用低減という観点有利に見え、我が国も海外に倣い方針転換するべきではないか、これは一時期言われた話なのですが、実のところ問題があります、それは一括して行ったのちに、追加分を発注する際に生産されていた装備品の生産ラインが閉鎖しており追加できない可能性があるという事、実際に海上保安庁の航空機調達計画などで近年起こっているのですが、これに対応できない。

Bimg_3688 例えば電子装備などは、開発段階で導入計画数を提示して国際共同開発により迅速に開発し調達、その後維持部品のみを生産してゆく、という方式があります。これは極端としても、同型の装備品が相当長期間生産されるという事例は、併せて相当数の調達が行われる場合に限られ、海外装備品が市場に出され、各国の運用評価などを踏まえ調達を決定するまで数年間を要するのですが、この時点で最新装備は准最新程度となり、一括発注を行い納入されたその数年後に、再度一括発注を希望したとしても、一度閉じた生産ラインを再度稼働させる場合は、その費用を我が国が負担しなければなりません。しかし、新型新型新型と一括発注のたびに異なる型式を導入すれば、富士教導団のような実験と教育部隊のように各種装備が混在してしまうことになるでしょう。

Bimg_5503_2 国産であれば、海外の新装備が発表された土地にその装備品の情報収集を開始し、我が国での運用に適合するのかを模索する、というタイムラグを省くことが出来ます。最新型をそのまま必要とすればいいのならば、国際共同開発が良いのではないか、という視点もありますが、戦車や装甲車に火砲といった装備品の国際共同開発は、どの国も自国のもしくは自国軍隊での運用に最適合化させる使用を提示しますので、独仏標準戦車計画や米独共同開発戦車MBT-70計画のように空中分解する可能性が高く、この場合貴重な予算を空費し貴重な時間も浪費することになってしまうリスクを忘れてはなりません。

Bimg_5926 そして維持部品の供給、この視点が海外装備に関する大きな問題として忘れられれいるように思います。国産装備であれば、下請け企業を含め自衛隊が運用を続ける限り、契約の交渉を行うことで整備支援や維持部品の調達を行うことが出来るのですが、基本的に日本以外の諸国では、とはいってもNATO加盟国以外では別の方式もあるのでしょうが、装備品運用支援に関する契約をメーカーとの間で締結し、これに則った運用が行われるわけです。言い換えれば、いつまで使えるのか、を明示している、という事になる。

Img_4368 運用支援契約とは、戦車や航空機等各種装備品について、例えば今後五年分や十年分の予備部品などをあらかじめ契約し、その予備部品を元に定期整備などを行う、ということ、これが案外高くつきます。フランスが350両を導入したルクレルク戦車についての契約事例を見ると、2010年に締結されたものなのですが、ネクスター社との間で十年間で250両のルクレルク戦車の長期整備計画を行った金額が13億ドルとなっていました。これは2007年に閉鎖されたルクレルク戦車の生産ラインについて予備部品製造ライン維持費を含んだものとなっているので、案外と高いことがお分かり頂けるでしょうか。そして、運用期間が長期化すればするほど、維持費と補修費用は大きくなり、その費用は整備対象が限定されている分、競争原理が利かなくなるわけです。

Kimg_9021 汎用部品を増加させ、他の装備品との維持部品互換性を確保して維持費用全体を低減する、という方式もあるにはあるのですが、そうしますと一社系統の装備品に限られ、所謂一社傾倒となってしまいますので、その都度安い海外装備品を取得する、という事は出来なくなってしまいます。NATOでは共通部品プールを構築して整備基盤を効率化しているため選択できる部分でもあるのですが、NATOに加盟しておらず、そして加盟したとしても地理的に離れた我が国では撮りえない選択肢、というものもあるわけですね。それならば、国内でのファミリー化を行うべく開発を行った方が、長期的には安価に収まるのではないでしょうか。

Img_4119 前回、装甲車の車幅について記載しました、我が国の道路は2.5m規制である。これに対して自衛隊だけは特別に世界基準の3.2m装甲車が走れるようにすればよい、と反応がありました、正直、気軽に言ってくれるなあ、と稚拙さにため息が出ましたが、更にその翌日ダンプカーに無理な幅寄せをされかなり怖い思いをしたところで、これが2.5mではなく70cm大きい3.2mなら巻き込まれて大事故か即死だ、と冷や冷やしました。3.2mは気軽に言いますが73式小型トラック二台の車幅が3.3mなのですよね、案外簡単に自衛隊だけ特別に、という事は出来るのですが、実際に行えば大惨事間違いなし。

Img_5153 海外装備導入すれば安くていいよ、この言葉も言うのは気軽なのですが、長期整備費用まで計算したのか、と問い返せば、しっかりとした数字は戻ってきません。こういうのも、長期間運用するため数字は出しにくいのですが、フランスの事例を見るだけでもわかるようにかなり高くなるのです。そして、日本型の調達方式、導入数を曖昧に明示し中途打ち切りも有り得る、もしくは実際にかなりの装備品が当初導入計画からかなり少数で生産終了となっている、この現状で無理に海外製を導入すれば打ち切った際に莫大な賠償金を要求されるという事、忘れてはならないでしょう。これを踏まえれば、気軽に海外から購入すればいい、という視点へ売ってくれるのか、契約を結べるのか、長くなされている海外装備導入案に対しこの単純な答えが出されない事について、少々違和感を感じる次第です。

北大路機関:はるな

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