北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

尖閣諸島防衛への一視点③ 88式地対艦誘導弾射程180km/八重山諸島尖閣諸島間170km

2012-09-22 23:58:01 | 防衛・安全保障

◆高性能極めた国産ミサイル群

 陸上自衛隊は冷戦時代、太平洋岸において唯一ソ連と境界を接していた西側の国であり、各種ミサイルが重視、その性能は冷戦後20年を経た今日でも物凄いものがあります。

Simg_1591 陸上自衛隊が誇る最も新しい誘導弾を、中距離多目的誘導弾を紹介しましょう。富士教導団と第3陸曹教育隊に配備が開始されたばかりですが、普通科中隊対戦車小隊に配備されるものです。中距離多目的誘導弾は射程8km、世界で最も新しい世代の対戦車誘導弾です。ミリ波レーダーを搭載し、目標を熱線画像誘導装置で識別もしくはレーザー誘導による複合誘導が可能であり、発射後ロックオン能力があることから可搬式レーザー誘導装置を用いた見通し線外誘導が可能というもの。

Simg_5142 百聞は一見に、とはよくいうもので、連続射撃が可能という事でしたが、富士総合火力演習にて実施した中距離多目的誘導弾連続射撃には驚かされました、次弾発射までEOS-7Dの毎秒7枚という高速撮影能力を持って図った上で初めてわかるのですが0.5秒程度しか要しておらず、此処まで連写可能な誘導弾、特に誘導装置の能力の高さには驚かされ、この中距離多目的誘導弾が量産され、掩砲所に秘匿しての見通し線外射撃を行えば、離島防衛はかなり容易となる、そう実感しました。

Simg_1123 88式地対艦誘導弾、通称SSM-1,このミサイルを南西諸島島嶼部に配備すれば、洋上の制海権のかなりの部分を制圧することが可能となります。尖閣諸島は、八重山列島宮古島から170kmの距離を隔てて居るのですが、この宮古島や石垣島などに88式地対艦誘導弾を配備すれば、この射程は180kmに達するもので、射程だけでは尖閣諸島に接近する艦艇を全て制圧可能です。島嶼部は線量よりも補給の維持が労力が大きいのだと、太平洋戦争の島嶼部戦は戦訓を残しました。補給が維持されなければ軍隊も維持できないという実情は今も同じで、海上封鎖をSSM-1により行われる危険がある限り、南西諸島への侵攻は難しいのです。

Simg_8988 88式地対艦誘導弾、これは冷戦時代にソ連の第上陸部隊を洋上で撃破するために開発された誘導弾で、大雪山など道央に展開し、周辺海域全てを射程に収めるというもの。連隊単位で行動し、4両の六連装発射装置を有する射撃中隊四個を持って行動するため、発射装置は16両、同時に96発を射撃可能で、発射後はミサイルに搭載されたデジタルマップに従い地形に隠れるように目標へ接近、撃破します。こんな装備が何個連隊も置かれており北海道、ということなのですが、沖縄救援隊としてこれら装備が展開すれば、なかなか島に近づけないということ。

Img_8037 航空攻撃により撃破されてしまうのではないか、という高付加価値目標となった88式地対艦誘導弾なのですが、実は冷戦時代にもこの点は考えられており、この為に開発されたのが坑道掘削装置です。三池炭鉱所により開発されたこの装備は、ミサイルを地下に隠す装備で、戦術核を含め各種脅威にさらされていた88式地対艦誘導弾を防護します。八重山諸島等に単会した場合でも地下に掩砲所を構築して秘匿してしまえば、航空攻撃や弾道ミサイル攻撃からの防護が可能となります。

Img_8571 唯一にして最大の問題は、ミサイルを誘導する索敵標定レーダ装置が捜索能力が100km以下、ということです。標定装置も連隊本部に配備されているのみという状況ではあるのですが、部隊以外に潜水艦や哨戒機などからのデータ情報共有が可能とのことですが、無人偵察機などの運用を考える必要があります。なお、88式地対艦誘導弾は後継となる12式地対艦誘導弾への代替が開始されます。こちらは射程が250km程度とされ、島嶼部防衛の切り札的装備としての能力が発揮されるでしょう。

Simg_5929 離島防衛には03式中距離地対空誘導弾のような装備があり、方面高射特科部隊に配備されています。射程は60km程度、低空侵入する航空機への対応能力と限定的な短距離弾道弾への対応も可能とされ、陸上自衛隊では近く巡航ミサイル防衛能力を強化する方針を打ち出していますので、中国軍が運用を開始しているDH-10巡航ミサイルに対する対処能力も有することとなり、国産ミサイル群による列島ミサイル要塞化、というような方式が現実となります。

Simg_1284 これら部隊の展開は陸上自衛隊と航空自衛隊合同の北朝鮮弾道ミサイル事案に対しての沖縄救援隊編成と派遣という実績があり、こんかいもなされることとなります。北朝鮮弾道ミサイル事案に際しては、ペトリオットミサイル部隊と護衛部隊に化学防護部隊が派遣されています。有事の際には沖縄救援隊を編成し派遣する、この実績がありますので、南西諸島有事の際にはこの方針に沿った沖縄救援隊を輸送艦や民間船により派遣することとなるのでしょう。尖閣諸島有事に際しては、我が国がこうした能力を有するというだけで、実施如何に関わらず八重山列島も攻撃対象となり得ますので、部隊を展開させなければなりません。

Simg_6391 このほか、93式近距離地対空誘導弾や96式多目的誘導弾のように高機動車に搭載された機動性の高い装備品が陸上自衛隊にはあります。これらはCH-47J/JA輸送ヘリコプターにより空輸展開が可能ですので、島嶼部防衛に際しての能力はかなりの能力を発揮します。ただ、問題が無いわけでもありません。88式地対艦誘導弾は中隊規模の単独誘導を余り考えていません、これは一定数を集中させる前提の装備であるから、標定装置が元々多くないのです。また、93式のようなそうびも師団対空戦闘システムとの連携が前提です。

Simg_5702 これら装備は、連隊戦闘団が師団や旅団の一員として運用することを念頭に置き装備されています。そして師団対空戦闘システムは分散運用を想定していません。このほかに、特科火砲も対砲兵戦を展開するには情報中隊の支援が不可欠ですね。中隊規模での分散戦闘を師団や旅団のネットワークから省く場合これら装備の能力はかなり制限されてしまいますが、まさか、中隊ごとで任務に当たる際に一個中隊に通信中隊をつけてやるわけにもいきませんので、独立運用のありかたを考えてゆくことも今後の課題でしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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