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【日曜特集】小牧基地オープンベース2019【10】懐かしの戦術偵察機RF-4は百里へ帰る(2019-11-09)

2023-08-27 20:00:41 | 航空自衛隊 装備名鑑
■迫力の帰投フライト
 小牧基地航空祭この年度の外来機で一番の注目は退役を控えたRF-4なのですが帰投前に派手なローパスを繰り返してくれました。

 RF-4戦術偵察機、時代遅れの偵察装置を搭載していたといわれるものですが、しかし災害派遣では日本全体がお世話になりました。このRF-4もCOVID-19新型コロナウィルス感染症の最中に退役、疾病ではなく耐用年数の関係でしたが、過去の装備です。

 HIAC-1-LROOP長距離側方写真機という特殊な超望遠レンズ搭載カメラを機首部分に備えていまして、これは気象条件さえよければ160㎞先を撮影できるという写真機です。100㎞以上先のものが見えるのか、といわれますと、そこが航空機の利点というべきか。

 旅客機で移動していますと、それこそ気象条件に左右されるものですが肉眼でも50㎞先はかなり鮮明に見えます、HIAC-1-LROOPについては、かなり重量がありますがもともとF-4戦闘機は戦闘爆撃機として運用されたほど搭載能力が大きく、問題にはならない。

 前方フレームカメラ、低高度パノラミックカメラ、高高度パノラミックカメラ、前方フレームカメラにHIAC-1-LROOPが搭載されていますが、更に飛行場や港湾施設などの点目標を撮影する以外に全般の情報を撮影するために広角カメラも搭載されているのです。

 RF-4が、ではなぜ時代遅れになったのかといいますと、このカメラはフィルム式で、家庭用ネガフィルムとは比較にならないほど大型のフィルムを内蔵しています。しかし、RQ-4のような現用偵察機はそのままデジタル画像を常時持続的に伝送することが可能に。

 3.11東日本大震災の災害派遣においてもまさにそうでしたが、RF-4戦術偵察機が配備されている茨城県の百里基地を離陸したRF-4は被災地上空から詳細な写真を撮影し、飛んで百里基地に帰る、航空機ですから飛んで帰るというのは比喩でも何でもありません。

 津波被害に見舞われた現地の詳細な写真を政府中央対策本部は一秒でも早く欲しいのですが、フィルムをそのまま東京に伝送する、前にまず百里基地で現像しなければなりません。専門現像部隊は偵察航空隊本部に置かれている、先ずこの時間がフィルムは惜しい。

 政府中央対策本部は首相官邸に置かれていますので、現像された写真はヘリコプターよりも航空機で運んだ方が早いのですが、F-4EJ改の爆撃照準器を使って首相官邸中庭に正確に投下、なんてことはできませんからT-4練習機で先ず首都圏の入間基地へと運ぶ。

 総理大臣が待ち焦がれている写真は入間基地から航空自衛隊ヘリコプターに載せ替えられ、そのまま渋滞を飛び越して官邸に運ばれるという。さすが自衛隊迅速だ、と思われる方は1990年代の方、変な話、伝送できないというのはどうしても時間が隔靴掻痒という。

 電送できないのか、と問われますとスキャンして電送することは、多少漏洩の懸念があっても被災地情報なのですから不可能ではありません、しかし、広角レンズにより撮影した画像は、写真に現像して引き延ばすと、基地を撮影した場合は地上の個人が判別できる。

 高精度の写真ゆえなのですが、広角レンズで数km四方を撮影して個人が判別できる精度なのですから、非常にデータ量が重くなる、スマートフォンで撮影して電送することも可能ですが、それでは高精度画像の意味がなくなってしまうのです。そしてその高精度は。

 橋梁の損傷度合は何tまでの車両が通行可能か、土砂崩れは10㎞中何カ所あり一番交通量を多く通せる道路はどこか、孤立地域で空輸が必要な地域を10カ所選定する場合はどの孤立地域が最も迅速に救命できるか、原発の損傷度は、など分かるのは高精度写真ゆえ。

 RQ-4無人偵察機、防衛省は2010年頃に高高度滞空型無人機として、国産機とアメリカ製RQ-4を比較検討していました。実際には2000年頃にアメリカが100㎞以遠からRQ-4により護衛艦むらさめ空撮を行い、非常に高精細な画像を防衛庁関係者に見せたことが。

 防衛庁の時代ですか2000年ですと。つまり防衛庁の時代にこうした情報に接しまして検討は進めた、無人偵察機そのものは冷戦時代に陸上自衛隊が第101無人偵察機隊を北海道に配置し、とても観測ヘリコプターでは行えない有事の際のソ連軍偵察を検討していた。

 グローバルホーク、ただ、この費用は機体そのものよりも地上管制設備が高すぎた。しかし、必要性を認識していたならば日本の経済力では調達できないものではないかった、それが実現しなかったのは、防衛予算を抑制する行政改革時代、ミサイル防衛の時代ゆえ。

 来年度予算概算要求では航空機等維持部品調達費が一挙に2兆円要求され、現状の稼働率不足にようやく終止符を打つという。弾薬調達費も9000億円ていど要求するといい、これまでどんなに無理を重ねていたのかを如実に示すような予算要求となるという報道が。

 200億円をとうじてちょうたつしたとしても、予備部品の予算を削って飛行できない状態としてしまっては何ともなりません、ただ、予算不足と、予算を抑制するよう政治に求めているのは世論であり選挙の結果ですので、この状況を容認せざるを得なかった構図です。

 RQ-4については、今年度偵察航空隊がようやく発足する、導入に関心を抱いてから実現するまでは20年以上を要した訳ですが、結局、無理をして予算を削った場合は、抜いてはいけない部分を抜いてしまい全体を瓦解させてしまう、という悪い見本のようになった。

 RF-4からRQ-4へ、本来ならば機種転換のように入れ替えるべきであったのでしょうが、2020年から2023年まで、偵察機が無ければ状況を確認できないような広域災害が起こらなかったのは僥倖だったというべきか、いやあの災害時に在れば、と思うのか。

 偵察機について、一方でもう一つ不安、今だからこその不安な要素としてなのですが、RQ-4で撮影した画像は、被災地自治体などで共有できるものなのでしょうか。簡単に思われるかもしれませんが、偵察能力は特定防衛秘密に含まれ得る、簡単には公開できない。

 新潟中越地震、2004年10月23日に発生しました地震に際して、この問題が表面化しました。山間部で大規模な山岳崩壊が生じ、河川などをせき止め複数の土砂ダムが発生、新潟県や山古志村と三条市などの自治体は土砂ダム決壊による下流への鉄砲水を警戒した。

 UH-60JA多用途ヘリコプターのFLIR画像により、陸上自衛隊は土砂ダムの情報を常に監視していましたが、これは下流で災害派遣に当たる隊員の安全確保用に、決壊の危険の可否のみが伝えられたのみで写真は新潟県庁にも被災地自治体にも提供されていません。

 土砂ダムの画像があるならば欲しかった、と新潟県災害対策本部は写真の存在さえ知らされず不満を述べることとなりましたが、陸上自衛隊はFLIRの性能そのものが防衛秘密にあたり、有事の際の偵察能力を暴露する懸念があるため、提供や開示は出来なかった、と。

 FMS有償軍事供与によりアメリカから導入した装備は特に、昨年の観艦式におけるF-35戦闘機のように、動画をリアルタイムで提供する際にも制約が生じることがあります。この点は純粋なアメリカ製のRQ-4、RF-4のように写真を出せるのかな、不安でもあります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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