■再論-広域師団論
広域師団というかつての北大路機関連載は55回を掲載した後に即応機動連隊という新しい編成が実際に部隊改編され、理論再構築をしている最中です。

広域師団の理念は現役部隊は全て機動運用部隊へ、有事の際には地域配備部隊と機動運用部隊を分けず、そもそも分離する運用は有事における遊兵化そのもの、という視点から着想しています。もちろん従来型陸上戦闘以外に備える、03式中距離地対空誘導弾と12式地対艦誘導弾に普通科中隊と施設隊を加えた沿岸特科連隊のような部隊も必要なのですが。

即応機動連隊は、一説には部内研究でロシア軍の自動車化歩兵旅団が相手の場合は短時間で壊滅的な被害を受けたとの話も側聞しますが、非常に研究された部隊です。考えれば旅団相手に連隊が壊滅するのは、某普通科連隊戦闘団が重装備の混成団を相手に対抗訓練に臨み大損害の判定を受けた点に重なるものでして、寧ろ連隊の数を揃える論拠とできます。

機動戦闘車隊は連隊隷下の大隊結節、その編成は3両編成の戦闘小隊を基幹とする縮小中隊2個という20両程度の編成ですが、現在の第3戦車大隊や第10戦車大隊の2個中隊編成よりも更に小型ながら、一応体裁は保っている編成です。これを本論では、戦車隊に置き換えたものを装甲機動連隊、対舟艇対戦車隊に置き換えれば遠征機動連隊、とすべきだ。

装甲機動連隊は普通科部隊に戦車隊と火力支援中隊を充てる編成、一個単体で敵戦車部隊と激突させるには戦車20両というものは如何にも頼りないものですが、装甲機動旅団は3個装甲機動連隊と偵察部隊を基幹とする編成で完結するならば、旅団全体の戦車は60両を越え、普通科部隊の装甲化を進めればいまの中国の重型合成旅団にも劣らぬ編成でしょう。

偵察戦闘連隊と3個機能別機動連隊、旅団はこの4個連隊と高射隊及び施設隊と通信隊に後方支援隊を基幹とする4100名規模、航空部隊は必要に応じ上級部隊より派遣隊を受ける。施設隊は機動運用を念頭に方面施設団を方面施設隊に縮小し、引き抜いて旅団施設隊とする。高射隊は指揮情報中隊と高射中隊を基幹とし、巡航ミサイル対処など当たる編成です。

連隊の基幹となる普通科中隊ですが、これを増強改編して2個普通科大隊に強化すべきとは思う。一例として380名基幹の空挺大隊などは、大隊本部に3個普通科中隊をおいています。大隊本部は通信小隊と対戦車小隊に情報小隊を含み、普通科中隊は対戦車火力を01式軽対戦車誘導弾に留め、しかし独自の81mm迫撃砲をもつ迫撃砲小隊を置く編成を採る。

普通科大隊ですが、空挺型の3個普通科中隊基幹ではなく、本州の戦車大隊型の2個中隊基幹とすれば人員規模を280名とでき、これは現状の師団普通科中隊の四割り増し程度の増強中隊に過ぎませんが、大隊編成としては一応体裁を保てる編成です。そして2個大隊を現役大隊とし、更に即応予備自衛官主体の第3大隊を置けば、留守部隊とできます。

大隊。戦車隊も機動戦闘車隊も2個中隊基幹ですので連隊は2個大隊機動群を編成可能となります。ただ、第3大隊の指揮を全て即応予備自衛官に担当させられるのか、戦車隊や機動戦闘車隊を7両の3個准中隊運用とすれば、戦車隊長隷下に各大隊情報小隊を引き抜いて騎兵中隊のような運用が可能なのではないか等、まだまだ研究の余地があると思う。

普通科連隊と機動連隊の複合化、これによる現役部隊すべての機動運用。大隊を連隊隷下に置く論拠はまさに此処です。つまり、隊区を持ち防衛警備災害派遣にあたる普通科連隊は機動連隊の役割を担う一方、地域警備、駐屯地をカラにせず即応予備自衛官部隊に移管するという運用を採るならば、心おきなく防衛出動や災害派遣に全力投入可能となります。

即応予備自衛官、この部隊を二線級と誤解して演習場を見学しますと無知を曝します、実は現役部隊の支援車両が泥濘や積雪で行動不能となるところを、即応予備自衛官部隊が訓練指導のように救助する様子を一度ならずみる機会がありまして、考えれば即自部隊はベテラン揃い、しかも短期集中訓練を行う実は非常に高練度を備えた部隊でもあるのですね。

師団全体で旅団だけでも1万2300名規模、ここに特科連隊と師団直轄部隊を加えれば1万5500名規模となり、師団旅団人員だけで6万2000名が必要となります。ただ、方面施設の管理替えや高射部隊の編入と駐屯地業務の民営化などで、陸上自衛隊全体では現役人員を10万名に抑え、現在よりも人員を縮小できる見通しで、その分の装備を強化可能です。

広域師団。戦車300両体制や機動戦闘車200両の量産計画と減り続ける対戦車ヘリコプターという前提を元に、最低限装甲戦闘車や装甲車両の増勢が必要という視点を加味しましたが、戦車定数の枠内とはいえ、実質全ての戦車大隊を廃止するかなりラジカルな改編案であることは承知しています、ただ、これくらいの改編をしなければ体裁を保てないようにもおもうのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
広域師団というかつての北大路機関連載は55回を掲載した後に即応機動連隊という新しい編成が実際に部隊改編され、理論再構築をしている最中です。

広域師団の理念は現役部隊は全て機動運用部隊へ、有事の際には地域配備部隊と機動運用部隊を分けず、そもそも分離する運用は有事における遊兵化そのもの、という視点から着想しています。もちろん従来型陸上戦闘以外に備える、03式中距離地対空誘導弾と12式地対艦誘導弾に普通科中隊と施設隊を加えた沿岸特科連隊のような部隊も必要なのですが。

即応機動連隊は、一説には部内研究でロシア軍の自動車化歩兵旅団が相手の場合は短時間で壊滅的な被害を受けたとの話も側聞しますが、非常に研究された部隊です。考えれば旅団相手に連隊が壊滅するのは、某普通科連隊戦闘団が重装備の混成団を相手に対抗訓練に臨み大損害の判定を受けた点に重なるものでして、寧ろ連隊の数を揃える論拠とできます。

機動戦闘車隊は連隊隷下の大隊結節、その編成は3両編成の戦闘小隊を基幹とする縮小中隊2個という20両程度の編成ですが、現在の第3戦車大隊や第10戦車大隊の2個中隊編成よりも更に小型ながら、一応体裁は保っている編成です。これを本論では、戦車隊に置き換えたものを装甲機動連隊、対舟艇対戦車隊に置き換えれば遠征機動連隊、とすべきだ。

装甲機動連隊は普通科部隊に戦車隊と火力支援中隊を充てる編成、一個単体で敵戦車部隊と激突させるには戦車20両というものは如何にも頼りないものですが、装甲機動旅団は3個装甲機動連隊と偵察部隊を基幹とする編成で完結するならば、旅団全体の戦車は60両を越え、普通科部隊の装甲化を進めればいまの中国の重型合成旅団にも劣らぬ編成でしょう。

偵察戦闘連隊と3個機能別機動連隊、旅団はこの4個連隊と高射隊及び施設隊と通信隊に後方支援隊を基幹とする4100名規模、航空部隊は必要に応じ上級部隊より派遣隊を受ける。施設隊は機動運用を念頭に方面施設団を方面施設隊に縮小し、引き抜いて旅団施設隊とする。高射隊は指揮情報中隊と高射中隊を基幹とし、巡航ミサイル対処など当たる編成です。

連隊の基幹となる普通科中隊ですが、これを増強改編して2個普通科大隊に強化すべきとは思う。一例として380名基幹の空挺大隊などは、大隊本部に3個普通科中隊をおいています。大隊本部は通信小隊と対戦車小隊に情報小隊を含み、普通科中隊は対戦車火力を01式軽対戦車誘導弾に留め、しかし独自の81mm迫撃砲をもつ迫撃砲小隊を置く編成を採る。

普通科大隊ですが、空挺型の3個普通科中隊基幹ではなく、本州の戦車大隊型の2個中隊基幹とすれば人員規模を280名とでき、これは現状の師団普通科中隊の四割り増し程度の増強中隊に過ぎませんが、大隊編成としては一応体裁を保てる編成です。そして2個大隊を現役大隊とし、更に即応予備自衛官主体の第3大隊を置けば、留守部隊とできます。

大隊。戦車隊も機動戦闘車隊も2個中隊基幹ですので連隊は2個大隊機動群を編成可能となります。ただ、第3大隊の指揮を全て即応予備自衛官に担当させられるのか、戦車隊や機動戦闘車隊を7両の3個准中隊運用とすれば、戦車隊長隷下に各大隊情報小隊を引き抜いて騎兵中隊のような運用が可能なのではないか等、まだまだ研究の余地があると思う。

普通科連隊と機動連隊の複合化、これによる現役部隊すべての機動運用。大隊を連隊隷下に置く論拠はまさに此処です。つまり、隊区を持ち防衛警備災害派遣にあたる普通科連隊は機動連隊の役割を担う一方、地域警備、駐屯地をカラにせず即応予備自衛官部隊に移管するという運用を採るならば、心おきなく防衛出動や災害派遣に全力投入可能となります。

即応予備自衛官、この部隊を二線級と誤解して演習場を見学しますと無知を曝します、実は現役部隊の支援車両が泥濘や積雪で行動不能となるところを、即応予備自衛官部隊が訓練指導のように救助する様子を一度ならずみる機会がありまして、考えれば即自部隊はベテラン揃い、しかも短期集中訓練を行う実は非常に高練度を備えた部隊でもあるのですね。

師団全体で旅団だけでも1万2300名規模、ここに特科連隊と師団直轄部隊を加えれば1万5500名規模となり、師団旅団人員だけで6万2000名が必要となります。ただ、方面施設の管理替えや高射部隊の編入と駐屯地業務の民営化などで、陸上自衛隊全体では現役人員を10万名に抑え、現在よりも人員を縮小できる見通しで、その分の装備を強化可能です。

広域師団。戦車300両体制や機動戦闘車200両の量産計画と減り続ける対戦車ヘリコプターという前提を元に、最低限装甲戦闘車や装甲車両の増勢が必要という視点を加味しましたが、戦車定数の枠内とはいえ、実質全ての戦車大隊を廃止するかなりラジカルな改編案であることは承知しています、ただ、これくらいの改編をしなければ体裁を保てないようにもおもうのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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ただ、日本が世界の陸軍戦術で乗り遅れないために、戦闘群の単位は米国や欧州の陸軍に従った方が良いと思います。実戦がなく演習も限られる陸自ですから、圧倒的に新戦術の導入で遅れるわけで、他国の良いところを「まねぶ」ことが大事ではないでしょうか?
1:4個連隊基幹で4100名の旅団ということは、1個連隊は米軍の1個大隊相当です。人員700名くらい。4個戦闘中隊基幹(歩兵大隊なら、3個小銃中隊+1個火器中隊。機甲混成大隊なら、2個戦車中隊+2個機械科歩兵中隊)で、砲兵や工兵、兵站部隊の支援を受けて9000-1000人規模の大隊戦闘群を編成しますので、これを真似すべきと思います。(*下記参照*)
今、陸上戦の戦術は劇的な変化をしているところであり、「独自の工夫」をしていると、戦術の確立に失敗して、一方的にやられることになりかねません。
2:あえて「連隊」の名を残すのであれば、上記の大隊を連隊と呼称しても良いですし(ただし当然指揮官は二佐であるべき)、あるいは全体的に再編して、
・「2個大隊+1個装甲偵察中隊」で人員2000名ほどの連隊を編成し、「2個連隊をもって1個旅団とする」のでも良いと思います。
現代戦では、基本的に大隊戦闘群を単位として行動するため、「大隊」編成さえ世界基準にしておけば、あとはどのように編成しても良いかと。
3:その意味では、「4個歩兵中隊+1個(小型)機甲科中隊」基幹の部隊が4つもあって、総員4100名というのも、少なすぎると思います。
野砲(特科)部隊を減らしているとは言え、その分、自己突入型ドローンを含むドローン部隊が幅を効かせているのが現代戦であり、かつての野砲部隊に相当するのがドローン部隊と思います。
ドローンでの「制空」に失敗すれば、自軍の兵力配置は相手に全て知られ、守る側の有利は消え失せます。すべての戦車・装甲車は特攻ドローンで狙撃・破壊され、タコツボ内の歩兵ですら攻勢正面では一人一人狙撃されるでしょう。
注意(*):なお、陸自の機動即応連隊は、4個歩兵中隊基幹の混成大隊と考えれば、25-33%ほど増強された大隊戦闘群と考えれば良いと思います。
1佐(大佐)が指揮している理由がありませんが。単純には、陸自の階級は、佐官で1階級下げ、将官で2階級下げで、やっと世界標準ですので。。。200名そこそこの「隊」を大隊扱いして二佐が指揮したり、6000名そこそこの増強旅団規模の部隊(師団と呼んでいます)を、中将(本来は数個師団の司令)が指揮していますからね。。。
機能別旅団、考えるには考え抜いたのですが、ご承知の通り広域師団に関する連載は即応機動連隊というものに驚かされまして55回を掲載できないまま今日に至ります。
4100名で4個連隊という構想、実のところ現実的には6000名弱の規模が必要だとは考えていましたが、装備密度を考えますとこの数字まで収斂させる必要はあるのかな、という一種の妥協と、そして即応機動連隊が独立運用を念頭に850名で一つの作戦単位として、実際に本部管理中隊の支援能力であれだけの数のMCVを整備できるかは、どうやっているのだろうという関心事ではあるのですが、逆に驚かされています。その上で、後方支援隊や通信隊といった部隊を機動連隊へ統合できるのであれば、旅団は指揮中枢と高射隊だけでもある程度成り立つのではないか、と考えた次第です。
連隊。この組織に拘るのは、防衛上の問題というよりは東日本大震災を受けての幹部不足、とくに各省庁と自治体との調整会議に決定権を持つ指揮官を、米軍では連絡将校を派遣すれば、災害や文民保護は国土安全保障省とFEMAの管轄ということで連邦軍や州軍は前に立つことがない為という経緯はあるのですが、調整ならば下士官に権限を与えて指揮官と同格の決済を行わせる事例はあります、しかし、自衛隊の場合は権限を簡単に授与も出来ず、結果的に連隊長決済が必要な分野が多いのですね。もちろん、選択肢はほかにも。
警備隊を置く。一つ考えたのは機動連隊を置かず駐屯地に警備隊と機動大隊を配置し、機動大隊は2佐を補職し600名規模の、警備隊は管区警備を念頭とした野戦部隊ではなく地区司令部部隊として師団や旅団ではなく方面隊直轄とし、FAST forceと駐屯地警衛隊のみを隷下に置き1佐を補職する、海上自衛隊の地方隊警備隊のような部隊を都道府県単位で配置する、という選択肢もあるのかもしれません。ただ、この場合は1佐が単なる名誉職になるのではないか、という懸念がありますが。
大隊、280名規模を提案していますが、これは過少であるということは認識しています、空挺団の普通科大隊なみに340名は必要とは思います、が、いまは必要な人員を集める難しさのほうがありまして、妥協の産物です。3個中隊基幹として第三中隊を即応予備自衛官基幹とする選択肢もあるのかもしれませんが、それよりは即応予備自衛官と予備自衛官主体の第三大隊を置いて、有事の際には留守部隊として切り離して運用する方式の方がまだ現実的なのかな、と考えた次第で。
陸上戦闘の変容、これは重々承知しています。特にアフガニスタンでの国家崩壊とシリアにおける政府軍の頑強という点を見ますと、重装備部隊の位置付けや市街戦における建設工兵の重要性を認識させられますし、ズボン戦術と呼ばれる機械化部隊による現代版浸透戦術や胸壁とカセトカ戦術のような新旧織り交ぜた運用、ナゴルノカラバフ紛争での徘徊式弾薬など、転換期にあることは認識しているのですが、その上で基本的な装備と戦術部隊を構築せねば、基礎がなければ応用もできません、広域師団構想とはまさに、ここに視点を置いたものなのですね。
私のコメントは、総兵力が同じであっても、大隊は700名の「普通の編成」の方が、「340名の大隊」を2つ持つケースよりも、精強であろうということです(ましてや280名の大隊では...)。各々、大隊司令部に15-30名は必要でしょうから、前線兵力を削って実現することになります(しかも高給)。その二佐は、本来700名の大隊を指揮できる能力を持つ有能な人間であり、人材の無駄遣いです。
空挺団が340名で大隊を組めるのは、レンジャー訓練を受けた一騎当千の軽歩兵集団で、かつ重装備部隊との正面戦闘を主任務としないからです。
そこで、私の別案では、例えば(即応機動連隊に代表される)「混成連隊」を、現状の「4個歩兵中隊+2個戦車orMGS中隊(各3個小隊基幹) 800名」のところを、「6個歩兵中隊+2個戦車orMGS中隊(各4個小隊基幹) 1200名」にするものです。これだけの規模なだ、中間結節として2個大隊司令部をおき、2つの大隊戦闘群を編成できるでしょう。
総兵力が同じであれば、より精強であるのは、「正しい編成の部隊」です。無駄な人件費がないため、装備が充実するか、兵士の給料が上がって(少しとは言え)人員も増える。編成を頭でっかちにすることは、人員不足をより悪化させるだけです。
「各省庁と自治体との調整会議に決定権を持つ指揮官」は、戦闘部隊のラインから外れた一佐、二佐たちに頑張って貰えば良いと思います。全く左遷ではなく、むしろ調整のスペシャリストとして、自衛隊の「顔」となる人たちです。一佐、二佐にまで上り詰めた高い軍事知識と、日々のたゆまぬ調整・調査・訪問により、有事に活躍できるかと。自治体との「調整」は経験や人間力が欠かせない業務であり、若い1尉程度には荷が重い。
戦闘能力は、高い専門知識だけでなく、駆け引きのセンスや軍隊独特の特殊なリーダーシップが必要だと理解しています。人間力はどちらにも必要でしょうが、特に自治体との調整は、非軍事的な組織のメンバーに動いてもらうためにも、法令に対する十分な知識、地域住民の意識の理解、土地勘、キーパーソンの把握など、政治的なセンス、あるいは官僚的な能力が欠かせません(2つは異なる能力)。単に、適材適所だと思います。
どちらもできない左官は、左遷せざるを得ません(というか、本来昇進しないべき)。
こんばんは
やはり2個中隊基幹の大隊はラジカル過ぎたでしょうか。特科大隊も戦車大隊もいまや2個中隊基幹ですので、こう収斂してゆく方向性もあるのかな、と考えていたのですが。やはり歩兵大隊は600名規模、戦車大隊は42両、砲兵大隊は18門、これが理想ではあるのです。
一方で痛感するのは、戦車部隊の能力で、射撃競技会などをみますと、どうしても独立中隊よりも大隊の方が練成の度合いが高く、これもアナログな考えなのかもしれませんが、競技会と教育研究が層として成り立つには一定の数が必要で、だからこそ日本の装甲戦闘車部隊は練度が高まらないともいえるのですが、部隊に数が必要、と考えるのですね。
1佐を行政職に。この視点、同感です、いや具体的には2佐までは体力勝負、そこから先が経験勝負、こういう考え方は成り立つと思います。一方で、行政職の考え方が連隊長、という考えでもあったのですが。中央に集約するという方式は、例えば滋賀県や福井県の地元との調整に毎回市ヶ谷から人を寄越すのでは、戦時中の内務省時代のように地方自治が中央の所管にある時代ではないのですから、都道府県単位で分けて配置すべきとも思うのですね。もっとも、有事の際に地元との調整役が第一線に行ってしまう、という問題もありますので、前のお返事に記しました警備隊長といいますか、駐屯地司令を地域司令官に当て、機動部隊と指揮機能を分ける、という選択肢もあるのかもしれませんが。
一方で、これは新年防衛論集に論旨が間に合わなかったために割愛したものですが、方面隊の施設科部隊をどのように考えるか、という視点です。師団施設が戦闘工兵で方面施設は建設工兵、とは過去の認識でいまや戦闘工兵の車両、装甲ドーザや地雷原処理車などは方面隊が管理し有事の際に師団へ派遣する方式です。建設工兵は必要と思うのですが、方面隊の施設団を方面施設隊に切り替え、重架橋部隊や舗装装備などを除き、29個ある施設中隊をそのまま第一線へ管理替えすることは出来ないか、と。
普通科連隊から連隊という一つの組織に転換する、という視点で、施設中隊も隷下に置くことは出来ないか、と。この視点、2010年代のシリア内戦などをみますと、工兵の能力は重要度が高まっており、例えば第一線での胸壁、例えば戦車に先行して市街戦、これは2000年代のイラク治安作戦でも市街戦では防護壁による街路封鎖が武装勢力鎮圧に威力を発揮しており、シリアでは安価なドーザーが戦車の身代わりとなり部隊の戦闘能力を維持するという一面もあります。遠征機動連隊や装甲機動連隊という視点を示しましたが、ここに方面施設の施設群施設中隊を管理替えする必要もあるのではないか。統合すれば、それだけ編成は大きくなり、もちろん運用も複雑化しますが。
私の論点は、「大隊は**であるべき」は「手段」であって、「陸自はきちんと精強であるべき」が本論です。もし陸自が、ドローンやネットワーク化、歩兵装備の革新において世界に伍しており、世界のトップの多くの陸軍と平常的に演習をし、そこで「280名大隊」の優位性を示して、むしろ世界の陸軍がその方向へ進む、という状況であれば、全く問題ないと思います。
が、陸自は全くそういう状況にありません。故に、「大隊は世界標準の600-700名規模であるべき」と提案しています。
兵力が足りないなら単位数を減らすべきで、戦う単位を小さくしてはどんどん「精強」から外れてゆき、少ない戦力をさらに毀損します。「戦う単位」は、1990年ごろから旅団に、2010年代以降は大隊戦闘群になっています。現代陸軍は大隊戦闘群ベースとし、世界中の陸軍が日々その戦術の改善を続けているわけです。AIやドローン、ネットワークの進化で、陸軍戦術は劇的に変化しつつあり、世界中の陸軍で得られつつある知見を生かせば、世界一流に準ずる陸軍でいられます。独自の戦術研究はあって当然ですが、それが戦術単位の基本編成を根本的に変えるほどの精度があるとは思えません。
日本独自の地形や制約はありますが、もはやそれほど特徴的ではなくなってきたと思います。平地が少なく起伏の多い地形も、監視衛星やUAV/ドローンの発達と膨大な画像データを処理できるAIの進化により、守勢側の有利は急速に失われつつあります。都市部での戦いも世界のトレンドで、むしろ陸自は世界に遅れています。
結果として、1万2000名の師団を、3個旅団=12個の連隊(各3個現役大隊)=36個の超小型大隊で編成しても、10-12個の普通の大隊を基幹とする「普通の師団」より弱いでしょう、ということです。それでなくても兵力が足りないのに、なぜさらに弱くするのか?
施設科は重要ですよね。ただ、重装備の施設科部隊は、師団直下に大隊 or 連隊として配備して、機動的に運用する方が良いかと思います。並行して、連隊 or (普通の)大隊の中の施設小隊を強化してはどうでしょう?その分、前線近接部隊の数が減ったとしても、「結果としてより精強」な方が、当然優先されるべき思います。
#なお、島嶼防衛は難しいですね。。。ただ南西諸島は「ありふれた島」で、日本独自の側面はほぼありません。守勢であれば、敵側の長距離火力支援に晒される中で、島の地積を防衛するという困難な任務です(ここでも、AIやドローンの進化で守勢側の「隠れる」というメリットが急速に失われていることが深刻です。ただ高機能な地雷や機雷など、防衛側の工夫も多くできます、正しく投資すれば)。対等の防勢であれば、中国のA2ADを参考に長距離火力で出来る限り対応する、という基本線はあっていると思います(アメリカ海兵隊がそちらに移行しつつある)。