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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海洋国家日本の構想-刊行六〇周年,海のに日こそ考えたい日本が進む次の国家像と未来

2025-07-21 20:16:43 | 北大路機関特別企画
■海洋国家日本の構想
北大路機関資料室には初版の日本沈没の隣に増補版で半世紀以上前の一冊が並んでいる。

海洋国家日本の構想、1965年に京都大学の高坂正堯先生が発表された著書でして、本日は海の日ということで、この60年前の著書に関する話題などを、と思います。不思議なことに、京都大学と言えばリベラルな印象があるようですが、国際政治学についていえば、東京大学が坂本義和教授らによる非武装平和主義が模索されていたという現実があります。

リアリズム、という視点から、これは手元に在るのが増補版だからなのでしょうが、非武装平和主義の価値を認めたうえで実現性がどのくらいあるのかという部分、“現実主義者の平和論”という一節から書籍は始まっていまして、平和を実現する手法として、いわば、平和を道具とするか果実とするかという視点で現実主義をしめしています。

外交政策の不在と外交論議の不毛、続く章ではこう、著述されていまして、これは60年を経て、もう少し日本は進むことができまして、FOIP、自由で開かれたインド太平洋、この安倍政権時代の、アジア太平洋というアメリカの理念を再構築させた二つの大洋をもとにした海洋秩序に関する国際公序という視座を示せたのは、進歩というところでしょうか。

しかし、不思議なことに高坂先生の門下生がかなり、安倍政権時代のブレーンとして活躍したという背景もあり、実のところ門下生は半世紀を掛けて宿題に取り組んだ形、と言えるように思えます。また、二十世紀の平和の条件、としまして当時の、居たのかというところですが、核平和主義者、そしてリベラリズムの関係性についても説かれていますが。

平和を求める世論は平和を実現する原動力となっても平和を実現するものではない、こう示していまして、権力政治と一線を画す平和運動は結果に繋がらないとして、現実主義に基づく平和運動というものを考えなければ深刻なジレンマに直面すると警鐘を鳴らす一方、現実問題として、60年を経てもこの視点から抜け出ていない日本の現実に気づきます。

中国問題とは何か、章は映りまして、当時国交が無かった大陸中国、中共と呼ばれた中国との、当時の数百億ドルに上る賠償請求に応えることはできないとしつつ、当時の国民政府が唯一の政党政府とする視点が幻想と一蹴した上で、日中関係には克服すべき過去の歴史がある一方で、幸い中印のような国境問題を挟んでいない、と希望を残しています。

日華平和条約を以て、国家継承の立場、当時は日中国境正常化前ではあったものの、歴史問題に一応の終止符を打てたとする当時の視座を問題視し、将来的な日中国交回復に関する、友好関係を構築できるのか、緊張関係となるのかという、60年前の課題についての、最近の話題のような視点を突き付け、仮にこの問題を克服できなければ、次の問題に、と。

中国の核兵器、その脅威を直視する場合に、日本は日中関係に緊張感を孕んだままであれば、日本の安全保障は一層、ワシントンDCに依存する事となり、アメリカの太平洋戦略に依存する事は同時に、日本の対中外交の独自性を失う懸念について既に示しています。ただ、同時に核兵器の存在は、軍事力の全面行使という位置づけを変化させた、とも。

国際政治における最重要要素はかつて軍事力であったとしつつ、1960年代においては核兵器という安易に使えない兵器が存在することにより、安易に全面攻撃を国際政治の選択肢に構えられなくなったことが、軍事力と国際政治の関係を変化させたと指摘し、しかし軍事力は国際政治の要素の中に在って重要要素であり続ける、曖昧な時代と指摘しています。

60年前に示されながら、実のところその内容は今なお新鮮であり、軸となる外交と防衛の在り方、軍事力と経済力という力の概念、対米でも対中でも従属しない海洋国家の在り方について可能性を示していて、その上で、これら分析から求められる答えを探す必要を示しています。言い換えれば60年前の課題を引きづり続けているという実情を裏返しています。古い書籍ですが、一読をお勧めしたいものですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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