■基軸通貨ドル
強い”円”というものが幻想であったように基軸通貨ドルというものは必然ではなく微妙な調整と共に成り立っていて、アメリカは基軸通貨国という恩恵を少なくとも現政権が忘れているように危惧するのです。

基軸通貨ドルに対する人民元の限界は、その根拠として2023年のデジタル人民元流通を筆頭に、人民元デジタル化などにより海外での人民元流通に際しブロックチェーン技術を用いた統制を試みるなど、自由な流通とは真逆の施策を執っているためです。基軸通貨国としての地位、1945年まではイギリスのポンド通貨が基軸通貨となっていました。

スターリングブロックと呼ばれた基軸通貨ポンド、蛇足ですが、この基軸通貨国としての地位を失ったイギリスの世界政治における地位が大きく転換した事は、改めて説明するまでもありません、いや、逆に通貨管理主導権を世界において失ったからこそ、管理通貨維持へ、ブレア政権時代のユーロ加入がブラウン蔵相との間での閣内対立に陥る。

ブレア政権がこの閣内対立を解消できなかったことから、崩壊につながったことと無関係ではありません。ただ、恩恵というものが無償のように受けている状況ではその理念を維持する為の負担へ負担感を感じるものなのかもしれません。それは、恰も、平和な時代の日本に在って防衛費に懐疑的な視座を示す方々と重なるものなのですが。

ユーロダラー市場というものを一例として示しましたが、問題を複雑化しているのは、ドルを基軸通貨としている事は、基軸通貨国はどのように世界に基軸通貨を供給しているかという事を理解しておく必要があります、通過を供給するという方法は一つ、貿易赤字です。貿易赤字は赤字という言葉自身が持つマイナス要素があります。

誤解を招きやすいのですが、アメリカからドルを世界に供給している事で初めて基軸通貨を流通させる、つまり、基軸通貨国の恩恵と貿易赤字は不可分の要素なのですが、不可分の要素よりも貿易赤字を問題視する有権者の数が勝った場合、現在のように、結果的に必然の基軸通貨国地位喪失という不可避の進路であっても、ということ。

貿易赤字反対の世論が生まれやすいということ。この論調は、ジニ係数、所得格差比較係数が膨らむほど、一人一票、この原則から富裕層に対する選挙結果としての不満が蓄積しやすく、貿易赤字でも恩恵を受ける人よりも損失か喪失感を受ける人の多さほどに、選挙では結果に直結します。誰でも一票を有しているのが民主主義なのですから。

やりがい搾取という言葉が日本では2010年代から問題視されていますが、恩恵を被らない有権者には貿易赤字が負担に感じるのだろう、基軸通貨国としての地位を筆頭に、アメリカは、というよりも有権者の数として、やりがい主義への限界といいますか、パクスアメリカーナの基盤そのものを結果として維持しない方向に向かうということです。

冷戦の自然延長として、冷戦時代に全面核戦争の脅威からアメリカ本土を護るという、西半球は難攻不落、この理念から形成されたパワープロジェクション能力をもとに、ユニラテラリズムを具現化する世界で唯一のグローバルな紛争介入能力を維持したアメリカではありますが、2001年9月11日の9.11同時多発テロを例外とするならば。

9.11同時多発テロを除けば、アメリカ本土に脅威が及ぶ状態は顕在化せず、皆無では無いにしても顕在化せず、いわば一種の常態として安全保障とはアメリカ域外の問題という認識が、ワシントンDCは例外であるものの、アメリカ有権者の認識として定着したことも、今日のアメリカの世界における規範形成と無関係ではないでしょう。

こうして、アメリカは、グローバルパワープロジェクション能力とドル基軸体制、これに裏打ちされた世界一の経済大国という地位を一種の常態として受け容れている状況にあります。中国の経済成長を前に追い抜かれる可能性は指摘されていますが、規範を構成する側として君臨していることによる有形無形の得られるものというのは、大きい。

多極化時代、一見してこうした状況は多極化時代とは無縁のように思えますが、アメリカのユニラテラリズムを構成する要素を世界で共有しているのかといいますと、難しいものがあります。そもそもアメリカにおける正義とは何か。ジョンロールズの“正義論”などはその難しい視座に正面から取り組んだ古典ですが、説明されています、それは。

配分的正義と原初状態における平等、アメリカの正義をこの二つとして分析しています、能力と功績により財産と地位など社会的利益と負担を公平に分配するという理念と、生まれた時点では社会的な格差を許容しないという二つの理念です。そして、ユニラテラリズムとなるには相応のステイクホルダー、というもので支え合う必要がある。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
強い”円”というものが幻想であったように基軸通貨ドルというものは必然ではなく微妙な調整と共に成り立っていて、アメリカは基軸通貨国という恩恵を少なくとも現政権が忘れているように危惧するのです。

基軸通貨ドルに対する人民元の限界は、その根拠として2023年のデジタル人民元流通を筆頭に、人民元デジタル化などにより海外での人民元流通に際しブロックチェーン技術を用いた統制を試みるなど、自由な流通とは真逆の施策を執っているためです。基軸通貨国としての地位、1945年まではイギリスのポンド通貨が基軸通貨となっていました。

スターリングブロックと呼ばれた基軸通貨ポンド、蛇足ですが、この基軸通貨国としての地位を失ったイギリスの世界政治における地位が大きく転換した事は、改めて説明するまでもありません、いや、逆に通貨管理主導権を世界において失ったからこそ、管理通貨維持へ、ブレア政権時代のユーロ加入がブラウン蔵相との間での閣内対立に陥る。

ブレア政権がこの閣内対立を解消できなかったことから、崩壊につながったことと無関係ではありません。ただ、恩恵というものが無償のように受けている状況ではその理念を維持する為の負担へ負担感を感じるものなのかもしれません。それは、恰も、平和な時代の日本に在って防衛費に懐疑的な視座を示す方々と重なるものなのですが。

ユーロダラー市場というものを一例として示しましたが、問題を複雑化しているのは、ドルを基軸通貨としている事は、基軸通貨国はどのように世界に基軸通貨を供給しているかという事を理解しておく必要があります、通過を供給するという方法は一つ、貿易赤字です。貿易赤字は赤字という言葉自身が持つマイナス要素があります。

誤解を招きやすいのですが、アメリカからドルを世界に供給している事で初めて基軸通貨を流通させる、つまり、基軸通貨国の恩恵と貿易赤字は不可分の要素なのですが、不可分の要素よりも貿易赤字を問題視する有権者の数が勝った場合、現在のように、結果的に必然の基軸通貨国地位喪失という不可避の進路であっても、ということ。

貿易赤字反対の世論が生まれやすいということ。この論調は、ジニ係数、所得格差比較係数が膨らむほど、一人一票、この原則から富裕層に対する選挙結果としての不満が蓄積しやすく、貿易赤字でも恩恵を受ける人よりも損失か喪失感を受ける人の多さほどに、選挙では結果に直結します。誰でも一票を有しているのが民主主義なのですから。

やりがい搾取という言葉が日本では2010年代から問題視されていますが、恩恵を被らない有権者には貿易赤字が負担に感じるのだろう、基軸通貨国としての地位を筆頭に、アメリカは、というよりも有権者の数として、やりがい主義への限界といいますか、パクスアメリカーナの基盤そのものを結果として維持しない方向に向かうということです。

冷戦の自然延長として、冷戦時代に全面核戦争の脅威からアメリカ本土を護るという、西半球は難攻不落、この理念から形成されたパワープロジェクション能力をもとに、ユニラテラリズムを具現化する世界で唯一のグローバルな紛争介入能力を維持したアメリカではありますが、2001年9月11日の9.11同時多発テロを例外とするならば。

9.11同時多発テロを除けば、アメリカ本土に脅威が及ぶ状態は顕在化せず、皆無では無いにしても顕在化せず、いわば一種の常態として安全保障とはアメリカ域外の問題という認識が、ワシントンDCは例外であるものの、アメリカ有権者の認識として定着したことも、今日のアメリカの世界における規範形成と無関係ではないでしょう。

こうして、アメリカは、グローバルパワープロジェクション能力とドル基軸体制、これに裏打ちされた世界一の経済大国という地位を一種の常態として受け容れている状況にあります。中国の経済成長を前に追い抜かれる可能性は指摘されていますが、規範を構成する側として君臨していることによる有形無形の得られるものというのは、大きい。

多極化時代、一見してこうした状況は多極化時代とは無縁のように思えますが、アメリカのユニラテラリズムを構成する要素を世界で共有しているのかといいますと、難しいものがあります。そもそもアメリカにおける正義とは何か。ジョンロールズの“正義論”などはその難しい視座に正面から取り組んだ古典ですが、説明されています、それは。

配分的正義と原初状態における平等、アメリカの正義をこの二つとして分析しています、能力と功績により財産と地位など社会的利益と負担を公平に分配するという理念と、生まれた時点では社会的な格差を許容しないという二つの理念です。そして、ユニラテラリズムとなるには相応のステイクホルダー、というもので支え合う必要がある。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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