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【防衛情報】C-17ラピットドラゴン計画と日本向けKC-46A給油機,J-31ステルス機艦載型

2021-09-21 20:09:37 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回の防衛情報は日本の航空防衛を含む空軍関係の最新情報を11論点紹介しましょう。

 アメリカ空軍は7月14日、アイスランドのキエブラヴィーク基地へ再展開させるF-15戦闘機分遣隊が作戦稼働体制に入った事を発表しました。アイスランドは北海の小国で2000年代まで常備軍を有しておらず、漸く2008年にアイスランド外務省の外局としてアイスランド防衛庁が設置されましたが、レーダーサイトを持つのみで戦闘機は有しません。

 アイスランドは創設当初からのNATO加盟国ですが、人口30万の小国である為、空軍力などはNATOからの派遣に依存していました。冷戦時代にはキエブラヴィーク基地へF-15飛行隊とP-3C分遣隊がアメリカより派遣、アイスランドは駐留延長を求めるも冷戦後の緊張緩和を受けアメリカ軍は2006年に撤収、アイスランド防衛庁はこれを受け設置された。

 キエブラヴィーク基地はグリーンランドとアイスランドとイギリス本土を結ぶ大西洋上の要衝です。今回派遣されるのはF-15C戦闘機4機からなる分遣隊でNATOのAOC航空作戦センターと連携し24時間のスクランブル発進待機態勢を採ります。キエブラヴィーク基地には冷戦時代に構築された掩体等が維持されアイスランド政府が保守整備しています。
■C-17のラピットドラゴン計画
 航空自衛隊のC-2輸送機も将来にはこうした運用を想定する必要があるのでしょうか。

 アメリカ空軍が進める輸送機ミサイル母機ラピットドラゴン計画は7月にC-17輸送機からのシステム試験に成功しました。実験はアメリカ本土ニューメキシコ州のホワイトサンズミサイル試験場にて実施され、アメリカ空軍のSDPE戦略開発計画実験群により行われました。ラピットドラゴン計画は将来の厳しい航空戦闘における輸送機の新しい任務です。

 ラピットドラゴン計画は有事の際にC-17輸送機やC-130輸送機などの戦術輸送機が危険な第一線空輸を行う事は、近年の長射程化が進む地対空ミサイルや空対空ミサイル、艦隊防空艦の性能を考えればもはや不可能であるとの認識に依拠し、輸送機は事前集積に限定されるとした一方、有事の際に輸送機を遊兵化させないためのミサイル母機としての構想だ。

 C-17輸送機を用いた試験ではJASSM-ER長射程スタンドオフミサイル4発を搭載したコンテナを連続投下、実戦ではコンテナは空中で落下傘を展開し、JASSM-ERを空中発射します。C-17輸送機はF-15FXなどの戦闘機と桁違いの搭載能力があり、1000km以上脅威目標から離隔した空域からミサイル飽和攻撃を行う、次世代の運用が見込まれるわけです。
■テンペスト2億5000万ポンド
 イギリスの次期戦闘機計画は抑え気味ですが着実に開発費を捻出しています。

 イギリス国防省は7月29日、第六世代戦闘機テンペスト計画へ2億5000万ポンドの支出を決定しました。これはイギリスのBAEシステムズ社とイギリス国防省の開発契約に基づくもので、F-35戦闘機に続く戦闘機であるとともに、一国開発によるF-35よりも洗練された意見集約を実施し、取得費用や製造費用を最大限安価に抑える事を企図しています。

 ウォレス国防相はテンペスト計画について、イギリス国内での数千の雇用が維持されるとともにイギリス航空抑止力を高い水準で維持するとしており、BAEシステムズ社もテンペストは2026年から2050年にかけ、毎年二万規模の雇用とイギリス全体で250億ドルの波及効果があるとしており、また過去、日本へも共同開発への参画が呼びかけられています。
■タイフーンECRSMk1搭載
 タイフーン戦闘機に漸くF-2戦闘機と同じAESAレーダーの搭載が実現するようです。

 ドイツ空軍はタイフーン戦闘機38機へのECRSMk1レーダー搭載についてスペインのインドラ社と1億ユーロの契約を締結しました。ドイツ空軍はF-4ファントムの後継としてユーロファイタータイフーンを導入していますが、低稼働率と性能の陳腐化に曝されています。この為、新たに導入するユーロファイターへECRSMk1レーダーを搭載します。

 ECRSMk1レーダーは漸く完成したユーロファイター用のAESAレーダーで探知能力は数百kmまで延伸したとされています。なお、ECRSレーダーについて、イギリスでは現在開発するテンペスト戦闘機実用化までユーロファイターの性能を維持すべく、2020年よりBAE社とレオナルド社が新たに改良型のECRSMk2レーダーの開発を開始しています。
■MAKS-2021航空展の商談
 MAKS-2021航空展ではロシアが航空機や防衛装備品契約を広く進められたという。

 ロシアの武器対外供与調整公社ロソボロネクスポルト社は7月22日からのMAKS-2021航空展において13の商談が締結され10億ユーロを超える契約が在ったと発表しました。通貨単位にユーロが用いられている背景には、ロシアは現在クリミア併合を契機とした経済制裁を受けており、米ドルのルーブルからの両替が大きく制約されている為とのこと。

 商談の対象となったのはSu-30SME戦闘機やMi-35戦闘ヘリコプターなどですが、MAKS-2021航空展ではスホーイ社による全く新しい第五世代戦闘機チェックメイト、MiG-21戦闘機の後継となる戦闘機MiG-XX開発、Su-57戦闘機無人機管制用の複座型、ミグコーポレーションの垂直離着陸型第五世代空母艦載機などの新型機が発表されています。
■Su-57複座型開発を発表
 第五世代戦闘機Su-57もいよいよ本格的な量産が開始されるとみえますね。

 ロシア空軍は第五世代戦闘機Su-57について複座型の開発を発表した。Su-57はロシアが独自に開発したステルス戦闘機でアメリカのF-22ステルス戦闘機よりも大型である事を誇示しています。ステルス機にとり大型は武装搭載能力の増大を意味しますが、同時にレーダー反射面積の増大も意味します。ただ、戦闘爆撃機的運用が行われる可能性もある。

 Su-57戦闘機はこれまで単座型のみが製造されていましたが、複座型の開発により例えば機種転換訓練を地上シミュレータ以外に教官が同乗し訓練が可能となりますが、スホーイでは無人航空機管制官の同乗を想定しているとのこと。Su-57は量産の遅れや縮小が指摘されていますが、ロシア空軍は2021年に4機の新造Su-57を受領すると発表しています。
■TVS-2MS現代版An-2
 旧式の設計であっても発想が先進的というものが数多あるものですね。

 ロシアのSibNIA航空研究所はMAKS-2021国際兵器展に現代版アントノフAn-2というべきTVS-2MS航空機を発表しました。アントノフAn-2は1947年に開発された単発複葉輸送機で、布張りの前時代的設計ながら失速速度50km/hという強烈な低速性能を利用し匍匐飛行による空挺部隊輸送が可能で、2tの貨物を輸送でき手堅い輸送機として有名です。

 TVS-2MS航空機は50mの滑走距離から発着可能な全備重量3.38t、ヘリコプターよりも高速で、1tの貨物を搭載可能で航続距離は1000kmです、ロシアではプロジェクトPARTISANとして双発機に10基の電動補助エンジンを搭載した垂直離陸小型特殊作戦機等を研究していますが、TVS-2MSは複葉機型、この性能であれば揚陸艦等からも発進が可能でしょう。
■中華民国DACT戦闘訓練
 台湾空軍は厳しい緊張を前に本土防衛に努力していますが並行してアメリカでの要員養成も続く。

 中華民国台湾空軍のF-16要員はアメリカ空軍のF-15戦闘機部隊とDACT異機種間戦闘訓練を開始しました。これは7月15日から30日まで実施されるもので、アメリカ空軍からはオレゴン州兵空軍第142戦闘航空団、台湾空軍からは第21戦闘飛行隊派遣要員が参加、訓練はアリゾナ州ルーク空軍基地にて実施、同基地の第56戦闘航空隊の支援も受ける。

 第21戦闘飛行隊は平和鳳凰計画として、F-16操縦要員養成に関する3年間の米台防衛プログラムを推進中で、第21戦闘飛行隊はアメリカ空軍の部隊に台湾空軍のF-16A戦闘機近代化改修型の操縦士を派遣するインターンシップ型の教育訓練を実施しており、この目的の為に第21戦闘飛行隊はアメリカ空軍でも稀有なF-16Aを装備する部隊となっています。
■KC-46A空中給油輸送機
 KC-46A空中給油輸送機の日本向けの機体が初飛行を経て現在は給油試験を進めています。

 航空自衛隊への納入に向け試験飛行を続けるKC-46A空中給油輸送機は八月に入り初の空中給油試験に移行しました。KC-46AはKC-767に続いて航空自衛隊が導入する最新の空中給油輸送機です。空中給油試験はアメリカ本土ワシントン州上空において実施され、これはボーイング社のボーイング767製造工場がワシントンエベレットに所在するためです。

 KC-46A空中給油輸送機の試験には航空自衛隊向けの機体とアメリカ空軍向けの機体が相互に空中給油と空中給油受油を実施しており、日本到着は年内にも実現すると考えられています。航空自衛隊は4機のKC-767を運用中で、更なる空中給油機増勢に際しエアバス製候補機と比較した際、KC-46Aは同じボーイング767の派生と云う事で採用されました。
■J-31ステルス戦闘機艦載型
 中国の戦闘機開発がかなり速い速度で進展しているようですが新たに新型空母艦載機が。

 中国湖北省武漢の海軍航空試験施設にJ-31ステルス戦闘機艦載型と思われるモックアップが並べられている様子が中国国内SNSなどに投稿され話題となっています。情報統制の厳しい中国ですが、国威発揚に繋がる新兵器については意図的に撮影を黙認する事が在り、J-20ステルス戦闘機や15式軽戦車などが試験場や貨物輸送の際などに撮影されています。

 J-31ステルス戦闘機はアメリカのF-35戦闘機によく似た形状の双発ステルス戦闘機、武漢海軍航空試験施設には中国海軍空母の飛行甲板を再現した試験施設が建設されており、中国が空母艦載として第五世代戦闘機の開発を進めている事が読み取れるでしょう。現在中国では、330m前後とされる003型空母の建造の様子が衛星写真により判明しています。
■カナダでAn-74輸送機製造
 斜め上の発想と云いますか防衛装備品販売の妙手と云いますか緊張下の第三国への防衛産業基盤確保と云いますか。

 カナダではケベック州においてウクライナ設計An-74輸送機の製造が検討されています。機種は改良型AN-74TK-200を想定、これはウクライナ産業省が進めるウクライナ設計航空機の北米市場開拓の一環となっていて、ウクライナのアントノフ社が、先ずカナダ国内へアントノフカナダ社を設立、ウクライナ製部品を元にカナダ国内で現地生産する方式です。

 AN-74TK-200輸送機は人員52名乃至貨物10tを空輸する双発輸送機で、日本のC-1輸送機に近い機体規模、機体配置はSTOL実験機飛鳥に似ている。特色はD-36エンジンを主翼下ではなく主翼上に配置したことでSTOL性が高く450mで発着可能です。軍用輸送機とともにSTOL性能を活かした地方空港での旅客機としても想定され、一定の需要を見込む。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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