◆10式雪上車の配備が開始されているようですが
第12旅団の豪雪災害派遣任務等、今年は除雪に関する災害派遣任務が多いですが、陸上自衛隊の雪上車に関して、ちょっと思った事を書いてみます。
霧島ですが、ひと段落火山活動が、と書いてラハールの話を書いた翌朝にまたまた大規模な爆発が、油断できないのですが普賢岳噴火の際に活躍した60式装甲車は既に除籍、73式装甲車は北部方面隊に集中配備、装輪装甲車ばかりになってしまいました。ううむ、89式装甲戦闘車のような装甲車が本土の師団にも必要と考えるのですが、不整地突破能力も高い。
閑話休題。陸上自衛隊は大原鉄工所製78式雪上車をこれまで装備してきまして、この後継装備として同じく大原鉄工製の10式雪上車の配備を開始しているそうです。この10式、写真でもまだ見た事ありませんし、どういう形状か、新しい装備年鑑に掲載を期待しているのですけれども、航空自衛隊がレーダーサイト等で運用している大型雪上輸送車BV206J-02をライセンス生産して装備してみてはどうかな、と考えました。
BV-206,航空自衛隊の豪雪地にあるレーダーサイトにおける創設記念行事では展示されるのでしょうか、残念ながら実物は見た事がありません。さて、この車両は装備年鑑に大型雪上輸送車として掲載されていますけれども元々はスウェーデンヘグルンド社が1974年に開発した全地形追随車両でして、湖沼地帯が多く全土が積雪地であるスウェーデンにおいて水陸両用で広幅履帯による積雪地突破能力を付与し、前後が分離させた形状により地形障害突破能力を高めた車両です。
雪上車ですが、最高速度は52km/hを発揮できますので最高速度53km/hの74式戦車に追随可能でして、なによりもこの車両は雪上車として積雪地を突破可能な全地形追随車両なのですから夏等の冬季以外の寄港において運用が可能なのです。陸上自衛隊の駐屯地では78式雪上車は冬季以外動いている様子がありませんが、BV-206ならば不整地の輸送用に夏季でお運用が可能という訳で、運用の幅は広がります。
BV-206は装甲を有していませんので装甲車としての能力はありませんが、後部車両は座席を折りたたむことで輸送用に使用でき、この場合2000kgの輸送を果たします。不整地突破能力は高機動車よりも上ですので、高機動車の運用が難しい地形障害のある地域への120㍉重迫撃砲や79式対舟艇対戦車誘導弾の輸送等に運用することが可能です。
もちろん、積雪期には路外機動力を発揮して、この種の装備の展開に活躍する事でしょう。展開可能な地形に対し牽引車両の能力からその展開に制約が加わるという状況では、その能力を最大限に発揮することはできません。この部分にも主力では無く補助でも全地形車両が加わることの意義は大きいはずです。
BV-206の輸送能力は、部分的には資材運搬車としての運用が車体こそかなり大きいのですが可能ですし、水陸両用ですから70式地雷原処理装置や、道路障害作業車等のアタッチメントを搭載することで、師団施設大隊や旅団施設中隊の第一線での作業支援にも充てることが可能ともいえます。75式装甲ドーザや92式地雷原処理車が方面施設にどんどん集約されているようで、師団や旅団施設部隊の能力強化はかなり切迫した問題とも思うのですし、ね。
もちろん、広範に装備するにはBV-206は安価ではありませんので難しいでしょうが、普通科連隊の本部管理中隊や施設大隊本部等に数量の配備から開始すれば、災害派遣任務、特に除雪任務での迅速な展開を念頭に置いて、路上性能の高さと不整地突破能力の両立を提示すれば、多少は予算が通りやすくなるやもしれません。
BV-206について、装軌式ですが、必要とする整備はかなり大きなものとなるかもしれません。しかし、本車を運用可能な程度の整備支援能力を部隊や後方支援連隊の直接支援部隊に付与すれば、言い換えれば部隊が96式装輪装甲車等を将来受領した際の整備基盤を構築する事ともつながるのではないでしょうか。
将来的に装甲車の必要性が高まり、一方でBV-206の能力に問題が無いようであれば、BV-206には装甲型のBVS-10という型式があり、車体部分が装甲化、高い不整地突破能力はそのままで概ねM-113と同程度の防御力を確保している構造になっています。重量が大きく車体も拡張されているので費用は大きいでしょうけれどもね。
78式雪上車、駐屯地で見かける事もあるのですが、駐屯地記念行事の時期では片隅にいまして、参加したそうにも見えるのですが、動く様子は見れません。しかし、陸上自衛隊には数百両単位でかなりの数があり、それならば、その後継装備には航空自衛隊での運用実績があり、通年で運用可能で、用途も広い車両を導入してみたらば、任務対応の幅も広がるのかな、と思いました次第。
HARUNA
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はるなさんがおっしゃられるようにBV206系(装甲タイプ)は日本の地形で広範囲に使用でき有用だと思います。
英海兵隊も装備しているように島嶼作戦にも有効だと思います。
装輪装甲車もそれなりに有用でしょうが、日本では小型装軌装甲車も必要ですね。
けど現有よりも狭く人員も多く乗車できないならばあまり意味もない気がします。
78式は荷台も広く10名後部乗車で移動していましたしね。
まぁそれでも基通や会計の一部には既に部隊予算での納入品として数年前から納入されていましたからね。
ただ冬期以外に運用する機会が無いだけですし、定期的なメンテナンスをあまり必要としていませんので1年間使いっぱなしも可能です。
あと、78式は冬期における120mmRTの牽引(足場をソリ装着)や79式重MATの積載も可能ですね。
けど装軌式を導入しても用途が限られるうえに演習場までの運搬やら何やらで経費がかかるうえ、演習場の殆どは整地されて装輪式でも十分対応可能な状況になってきてますので、無理にBV206を導入する必要性は低いんじゃないですかね?WAPCが装輪式になったのは走破性と機動力の高さで決定したくらいですので。
装軌式は日々のメンテナンスで言えば経費がだいぶかかりますしね
1箇所の破断で走行できなくなりますし
汎用品の場合は本来用途以外の性能が本来用途の性能を邪魔することがありますからね。他方で、こちらの方が安価な場合が多いですし。
BV-206、装甲型は考えてみたのですが、BV-206自体が仮に78式雪上車の後継として広範に装備された場合に初めてその運用基盤を活かす事が出来るので、雪上車としての導入が無かった場合は導入しない方が良いでしょうね。
早速訂正記事を作成してみました。
http://harunakurama.blog10.fc2.com/blog-entry-730.html
リンク先の“SACの部屋”様Weblogを拝見したのですが、大原鉄工所HPの写真と同じ車両なのですけれども、多目的雪上車、と紹介されているのですね。
ううむ、◎○式、とあるのですから部隊使用許可ではなく制式化手続きを経て導入したようなのですが、こういう雪上車は、どの学校で評価試験を受けるのでしょうかね、・・・、武器学校でまとめてやってしまうのかな?