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【防衛情報】C-390ミレニアム輸送機,オランダ次期輸送機候補とポルトガル輸出準備とBAE提携に多用途運用

2022-11-14 20:00:46 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 エンブラエルの輸送機は川崎C-2輸送機よりも実用化の遅れはあったものの様々な手段で輸出に尽力しています。日本の防衛産業を考える際に一つの参考となるのかもしれません。

 オランダ国防省は老朽化したC-130H輸送機の後継としてC-390M輸送機を導入すると6月16日に発表しました。クリストフファンデルマート国防大臣はC-130H輸送機について当初の2031年までの長期運用計画を破棄していたうえで進めていた後継機選定について、ブラジルのエンブラエル社が製造するC-390Mミレニアム輸送機への決定を公表しました。

 C-390Mミレニアム輸送機と共に候補に挙がっていたのはロッキードマーティン社製C-130J輸送機となっていましたが、四発機と双発機とを比較した場合でのメンテナンス負担の軽減や飛行性能等が評価されたとしています。オランダ空軍へのC-390Mの引き渡しは2026年縫い開始され2031年までにすべてのC-130H輸送機を置換える構想とのこと。

 NATOにはEATC欧州航空輸送司令部としてNATO加盟国の輸送機統合運用が執り行われていますが、オランダ国防省によればKC-390をEATCへ派遣する方針とされています。NATOでのC-390採用国は、ポルトガルとハンガリーに続いてオランダが三カ国目となり、オランダ空軍では今後ウクライナ情勢を受け輸送機の年間運用時間を拡大する方針です。
■BAEとの提携強化
 エンブラエル社はC-390がいかに優れた輸送機であっても単体の性能だけでは輸出は出来ないという実情を直視しています、この当たり日本のC-2輸出交渉の低調を説明しているようですね。

 ブラジルのエンブラエル社はKC-390輸送機にサウジアラビア売り込みにイギリスBAE社との提携を模索中です。これは7月19日のイギリスでのファンボロー航空ショーにおいて明らかにされたもので、サウイアラビアはKC-390輸送機導入を真剣に検討しているものの、エンブラエル社単独ではサウジアラビアへ維持整備施設を構築できないためです。

 BAE社はサウイアラビア軍へ過去数十年間にわたり防衛装備品売却や維持整備の実績があり、現在もサウジアラビアで運用されるユーロファイタータイフーン戦闘機やトーネード攻撃機、ホーク練習機などの運用支援を実施中です。もともとエンブラエルはボーイングの支援を受ける構想でしたが2019年に協定は破棄、代わってBAEが対応する構図です。

 KC-390輸送機は空輸能力がC-130J程度ですがジェット旅客機と同じ速度を付与する事で国際航空路線を利用した飛行が可能です、これは需要が期待されましたがC-130Jは胴体を延長したC-130J-30が開発され陳腐化するとともに、エンブラエル社の国際ロジスティクス網は限界があり、予備部品や整備支援に大手支援を受ける事で課題に挑む構図でしょう。
■不整地での運用能力
 日本のC-2輸送機も2020年に岐阜基地において不整地運用試験を成功させているところですが、戦術輸送機として重要な点です。

 ブラジルのエンブラエル社はC-390輸送機の未舗装滑走路からの発着実験を公開しました。これはブラジル空軍の支援を受けガビアオペイショト空軍訓練場において実施されました。試験では2100mの砂利を敷いた最小限の整地された野戦飛行場が準備され、不整地発着用に設置圧を調整し、空気圧を低下させた車輪を用いて発着試験を実施しました。

 不整地での輸送機運用は、今回は砂利による未舗装滑走路という状況で実施されましたが、砂利以外に砂漠での応急滑走路、また戦術輸送機の中には車輪を格納したまま草地や田畑に強行着陸し、その上で貨物をおろし機体重量を軽くした上で油圧により車輪を展開させ離陸する不整地運用能力を持つ機体がありますが、C-390はそこまでは至っていません。

 C-390はIAE-V2500-E5ターボファンエンジン双発構造により巡航速度はマッハ0.8と日本の川崎C-2輸送機と並び国際貨物航空航路をそのまま利用できる高速巡航性能が強みではありましたが、2015年の初飛行と2019年のブラジル空軍引き渡しののち、思うように輸出が進みません。今回発表されたのは野戦運用能力の高さを示した為といえるでしょう。
■ポルトガルの輸出機
 C-2輸送機に対してC-390輸送機は一応輸出実績が成立っている点は凄い事です。

 ポルトガル空軍が導入するC-390輸送機が試験飛行を開始しました。ポルトガル空軍は老朽化が進むC-130輸送機の後継を選定した結果、2008年に当時開発中であったエンブラエル社のC-390輸送機に注目します、当初は6機の輸送機を導入する計画となっていましたが、その後2019年8月にエンブラエル社とブラジル政府との間で5機取得を契約した。

 C-390のポルトガル空軍向け初号機はサンパウロ州のガビアンペイショトにあるエンブラエル社工場において完成し飛行を開始、この試験にはAANポルトガル国家航空局 によるポルトガルでの運用認可に関連した評価も含まれているとのことです。ポルトガル空軍はC-390を空中給油機としても運用する計画であり、空中給油関連の試験も含むとのこと。

 エンブラエル社はポルトガル現地法人としてOGMA社を立ち上げており、ポルトガルでのC-390運用や整備に関してはOGMA社が支援に当る事となります。エンブラエル社のC-390輸送機について、5機を導入するポルトガルはブラジル空軍に続く最大の顧客であり、OGMA社は今後期待される欧州での新規運用国への整備支援なども期待されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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