北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【G3X撮影速報】第12旅団祭/相馬原駐屯地創設60周年祭.桜榛名と雪赤城(2019-04-13)

2019-04-18 20:09:11 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■空中機動旅団の訓練展示
 一眼レフ7Dを支援するCANONのコンパクトデジタルカメラG3Xにて撮影の速報記事、後篇は訓練展示の様子を紹介しましょう。

 空中機動旅団、一時代を象徴する世界陸軍が競って新編していた、一種の趨勢でした。冷戦後世界中で多発した地域紛争をどう沈静化させるか、その回答が緊急展開により地域紛争の拡大を未然に阻止する、エアモービルの速度の威力を最大限活かした編成です。

 自衛隊第12旅団はもちろん、イギリス第16空中機動旅団にオランダ第11空中機動旅団、ドイツ第1空中機動旅団にフランス第4航空機動旅団、イタリアフリウーリ航空騎兵旅団にポーランド第25空中機動旅団、各国編成を一時期興味を持って調べたことがありました。

 世界中の陸軍が空中機動旅団を、といえば語弊がありますが、少なくとも経済的にヘリコプターをそろえられる陸軍が編成したものです。なにしろヘリコプターは非常に高価、第12ヘリコプター隊よりも輸送ヘリの少ない陸軍も広い世界には実は多数派であるのですね。

 しかし、イギリス第16空中機動旅団は現役ですが、世界中の空中機動旅団は2010年代後半に入りますと次々解体されてゆきます、オランダ第11空中機動旅団はAH-64Dを大規模削減し実質ヘリコプターを持っている軽歩兵旅団に、フランスに至っては廃止しています。

 ドイツは特殊作戦部隊に組み込まれ空挺部隊にヘリコプターを加えて特殊部隊を支援する特殊部隊予備軍となり、ポーランド軍は予算不足で肝心の強襲ヘリコプター取得計画が宙に浮いている。ある意味、空中機動旅団の時代は変容の結節点を迎えているといえます。

 アフガニスタンとイラク、空中機動旅団の位置づけを変容させたのはNATO諸国が立ち向かった、この二つの戦争があるように思う。既に緊急展開がもとめられる状況でなく、悪化している地域に空中機動部隊を投入する際に必要な作戦能力です。此処に問題が生じる。

 NATO諸国を例に挙げますと、緊急展開部隊の花形として空中機動旅団を編成した事例が多く、つまり一つの部隊がヘリボーンによるエアモービルに熟達した状況を醸成していたのですね。するとローテーションが組めない状況が生じます、つまりどういう事でしょう。

 緊急展開部隊としてのヘリボーン部隊はアフガニスタンのような長期戦には、交代の部隊がない、本来緊急展開部隊は初動の火消しを求められ、後詰めは機甲部隊が担う構想でした。しかし、アフガニスタンとイラクは違いました。空中機動旅団も後詰に投入される。

 戦闘ヘリコプターの死活的重要性、これも逆にこの種の機体を、自衛隊の第12旅団は持っていませんが、NATOでは集約した事が裏目にでました。PAH-2でもAH-64Dでもマングスタでも良いのですが、この種の機体はすべての部隊が必要としている。この点について。

 空中機動部隊にすべてを集約することの限界が突きつけられた、ということでしょうか。この点、フランス軍等はヘリコプターを陸軍航空司令部に集約し隷下にヘリコプター連隊を多数置き、必要に応じて第一線部隊へ展開させています。イギリスも概ね近い運用です。

 落下傘旅団と軽機甲旅団、フランス軍はこれらの部隊にヘリコプター連隊を加入、適宜組み合わせることで、例えば2013年のマリ軍事介入サーバル作戦では、すっごーい成果を発揮しています。少なくとも連隊ごとに、部隊運用面でのローテーションは組めるのですね。

 空中機動旅団を単一部隊として編成する場合、緊急展開以外の任務に使いにくく、しかも緊急展開以外の任務でも必要なヘリコプターを一つの部隊が独占する弊害が生まれるという。故に、予算で難しくとも複数の部隊を空中機動部隊として、維持する運用が望ましい。

 ヘリコプターで忘れてはならないのは、空中搬送は人員や装備だけでなく、後方連絡線の維持に空中搬送が可能なのですね、装輪車主体の部隊ならば燃料と弾薬を空中搬送することで攻撃衝力を維持させることも十分可能です。空輸補給とする分、機動力を高められる。

 CH-47輸送ヘリコプターを自衛隊は幸い55機と非常に多数を有しています、第1ヘリコプター団に集約されているが8機編成の飛行隊を6個置き、更に教育所要の予備機を置くことが可能です。5個方面隊に稼働状態の飛行隊各1個分遣隊を出すことが、可能なのですね。

 航空集団、陸上自衛隊は、手遅れになる前に航空集団を編成した方が良いように思います。第12ヘリコプター隊型の輸送ヘリコプターと多用途ヘリコプターからなるヘリコプター連隊、出来ればここに数機でも戦闘ヘリコプターを組み込む。理想の編成はこうでしょうか。

 第12旅団は改編当時、非常に軽装備の旅団でしたが、現在では全国の師団と旅団、北海道だけは除きますが、本州九州四国の師団と旅団は順次第12旅団なみに軽装備となってゆきます。すると、ヘリコプター隊配備による機動力の付与というものの重要性が出てきます。

 ヘリコプター隊の支援は遍くすべての旅団、例外はあるでしょうが、必要とするように考えるのです。もっとも、この発想突き詰めると、結構長く掲載が中断している此処の特集"広域師団構想”の"航空機動旅団”と"装甲機動旅団”に行き着くのは我が発想力の乏しさ。

 空中機動、自衛隊の場合は第12旅団を第12師団から改編する際に、報道では先走りすぎ、輸送ヘリコプターや多用途ヘリコプターを各30機程度配備する、という予測が、もう20年ほど前ですか、乱れ飛びました。もちろんそんな大所帯の編成などは実現していません。

 第1ヘリコプター団と第12旅団を統合運用でもしなければ実現しない案ですが、NATO諸国が1990年代に試した空中機動旅団はこの方式に近く、日本が実施した場合、旅団以外へのヘリコプター不足から早々に運用は転換されていたでしょう。現状で良かったでしょう。

 中央即応集団、陸上総隊発足とともに解体されましたが、第1ヘリコプター団と第1空挺団に中央即応連隊を集約していた、当時の編成は、ある意味、野砲を装備する特科部隊はありませんでしたが、その本質の面では、空中機動旅団に近い編成だったかもしれません。

 第12旅団の場合、当初考えられた全国への機動展開という運用、言い換えれば現在の"統合機動防衛力”概念を先行する試み、これは深読みしすぎたものであり、実際には警備隊区である日本アルプス山岳地帯での戦車運用の難しさを空中機動に置き換えたかたちです。

 旅団の編成は成功であったと思う、惜しむべくは、もう数機づつ各機種をそろえる必要と、若干でもヘリコプター隊本部に戦闘ヘリコプターを配備する事でしょうか。ほかには空中機動力を想定し、海兵隊のグラウラー軽機動車のような空中起動用車両が必要でした、か。

 山岳戦を考えるならばヘリコプターでも空輸できるBV-206のような全地形車両も少数でも配備するべきでしたし、ヘリコプターに補給を依存する前提で軽装甲機動車などは騎兵連隊のように一つの普通科連隊へ全部を集約するという選択肢もあったのかもしれません。

 即応機動連隊が将来的に第12旅団へも配備される、これは防衛大綱に機動運用部隊として第12旅団が含まれたことで明示されています。戦車を省く将来部隊の在り方、ヘリコプターをどう活用するか、第12旅団の先駆けとしての存在を、今後も注目して行きたいですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都発幕間旅情】三嶋大社,... | トップ | 平成三一年度四月期 陸海空... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸海空自衛隊関連行事詳報」カテゴリの最新記事