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新田原基地航空祭2011詳報⑫ 空挺降下展示、南九州の大空に花開く落下傘の一群

2013-04-09 22:39:40 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆精鋭 習志野第一空挺団、新田原基地へ降下

 新田原基地航空祭、眺鷲台撮影位置から基地へ移動し、前回の掲載分まで地上展示や装備品展示を撮っていました。

Nimg_8976 遠くから先ほど離陸したC-1輸送機のエンジン音が聞こえてきます、見えてきた速度感あふれる輸送機の機影、C-1輸送機には空挺降下展示に向けて空挺隊員が続々と機内へ収容されていく様子が見え、そして今まさに空挺降下展示として新田原基地へ落下傘降下を開始しようと、基地へ進入してきたところ。

Nimg_8980 機体の側面ハッチは既に開け放たれ、今しも降下を開始する準備を整えた習志野第一空挺団の精鋭が見えます、先んじて基地より効果誘導を行う要員が展開していて、この地上からの誘導に従い、まず一名が降下、続いて次々と降下へ移る、空挺降下の基本的な流れは以上の通り。

Nimg_8986 空挺降下、空挺強襲は敵が意図しない地域に迅速な兵力展開が可能で、特に本土防衛に際しては内陸侵攻を受けた際に補給路を叩く能力や、緊要地形の先制確保など、攻勢と防御双方にその威力を発揮するのが空挺部隊の大きな威力、即ち日本侵攻を企てる勢力は仮に大兵力を着上陸させることに成功したとしても、その後にリスクを強いらせることが出来る。

Nimg_8993 空挺部隊は一人ひとりに精強を求められます。何故なら、空挺部隊は降下すればそのまま実態は軽歩兵であり、輸送機の能力では展開できる重火力や車両が少なく、仮に展開したとしてもこれを支える後方支援が継続しにくい、だからこそ一人一人に高い能力が求められる、ということ。

Nimg_9004 降下してゆく隊員。第1空挺団は、本部中隊、第一普通科大隊、第二普通科大隊、第三普通科大隊と空挺特科大隊、通信中隊、施設中隊、空挺後方支援隊、空挺教育隊を以て編成されています。各普通科大隊は三個中隊を基幹としており、以前の一個普通科群基幹の編成から実戦的な三単位編成へ転換されました。

Nimg_9247 再度C-1が進入を開始します。快晴の青空にぽつんとC-1輸送機が展開してくる様子が見えます。毎年正月明けに習志野にて行われる空挺降下訓練始めでは三機から六機の輸送機が支援に参加するのですが、航空自衛隊の輸送機も十分ではなく、此処が悩みどころ。

Nimg_9250 降下開始。なお、落下傘降下は正しい判断と飛び降りる胆力に降下完了後の迅速な機動と装備の運搬、個々人の機転などが求められ、これが結果的に精鋭の要員を多数そろえる背景となります。一方、落下傘降下では車両なども投下されるのですが、衝撃で破壊されたり、破損し即座に稼働できない車両も少なからず出てくるという。

Nimg_9256 他方で、落下傘降下は見ての通り迫力があり、多数の輸送機で同時に空挺降下を行うことは、例えば自国内での占領地域への空挺強襲を実施した場合、相手側に対し無視できない動揺を強いると共に、我が方に対し心理的な高揚をもたらす、このような無視できないものもあったりします。

Nimg_9259 空挺降下の利点と限界、この均衡を探る場合、まず空挺部隊は落下傘降下を基本とした特技として各隊員にその能力保持を求めると共に、空挺部隊とは輸送機により展開、それも落下傘だけにより降着するのではなく、航空基地や野戦飛行場に着陸し車両を展開する、こうした運用との連携が図られるべきでしょう。

Nimg_9263 軽歩兵である空挺部隊ですが、この空挺部隊を以て航空基地などの滑走路と飛行場機能を把握してしまえば、あとはその空港の滑走路を利用し、直接車両や人員を展開させることが可能です。落下傘を装着した隊員よりも普通の完全武装要員のほうが同じ輸送機でも多くを運ぶことが出来ます。

Nimg_9273 第1空挺団は三個普通科大隊が高機動車による自動車化に続いて、どんどん軽装甲機動車の装備による装甲化を進めていますが、むしろ96式装輪装甲車と軽装甲機動車を有する中央即応連隊のような装甲化部隊を輸送機により緊急展開させる、空挺部隊の在り方を考える必要もあるのかな、と。

Nimg_9293 さらに続いてもう一度C-1が空挺降下へ進入します。このC-1輸送機ですが、輸送能力が当初設計要求を大きく上回る時代を迎えると共に初飛行から40年以上を経て、飛行開発実験団などに装備される一部の機体を除き老朽化が激しく、後継機として開発中であるC-2輸送機へおきかえられます。

Nimg_9294 今後の南西諸島防衛を考えた場合、緊要地形の先制確保をおこなうには離島に緊急展開する部隊はヘリコプターによる空中機動と空挺部隊による空輸展開以外あり得ないわけですから、機動戦闘車の大量配備や、現在の重迫撃砲に留まらない軽量火砲など、落下傘で運ぶものと同時に純粋な空輸で運ぶものとを併せて整備するべきでしょう。

Nimg_9302 大空に広がり花開く落下傘。C-1輸送機の後ろに一列と並ぶらか三と、地上のF-15やF-4,そして無数の観衆がその様子を見上げている。地上の景色と共に写真の構図に入れると、新田原基地で撮った空挺部隊の降下展示、という情景を強調できますね。

Nimg_9312 降下してゆきます。なお、日本の落下傘部隊、即ち空挺部隊は、パレンバン強襲やメナド空挺作戦などの太平洋戦争初期に大きな戦果を挙げ、沖縄戦での義烈空挺隊のような強襲というより特攻というべき悲劇もありましたが、空挺作戦、それも空挺作戦で成功した経験は、比較的多く有しています。ある意味伝統と共に今在る空挺団、今後も様々な任務と困難へ臨む姿を応援したい。

Nimg_9325 空挺降下展示を完了したC-1輸送機が基地へ戻ってきました、着陸します。新田原基地へ入って最初の飛行展示がこの通り完了したのですが、午後の飛行展示は続いて航空祭の目玉の一つとも呼ばれるブルーインパルスによる飛行展示が開始されます。このあたりは次回紹介しましょう。

北大路機関:はるな 

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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6 コメント

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はるなさま (ドナルド)
2013-04-10 23:45:51
はるなさま

2013-04-10 09:06の名無し様のコメントは、私も失礼だと思います。

蛇足ですが、軍事をかなり専門的に語る場である以上、ブログ主さんが軍事に詳しいのは当然です。詳しいということは、「好き」ということです。軍事だけでなく、政治でも、経済でも、料理でも、おしゃれでも、スポーツでも、アニメでも、そもそもその分野に詳しく、その分野を愛していない方のブログやコメントを、私は読む必要を認めません。

名無しさんは、本質を見失っていると、私は考えます。

その上、人間として、失礼です。

ブログ主さんのおかげで、こうした比較的良質な議論が出来ていることを感謝している者として、言わせていただきます。
返信する
久我山のチ那ッピー 様 (はるな)
2013-04-10 19:37:18
久我山のチ那ッピー 様

意図が分からないのですが、四発ジェット輸送機で輸送力がC-130前後のもの、今更売れますかね?、それも実施すれば少数生産ですからかなりの価格になりますから・・・。四発機は整備負担が大きくなりますので、C-27までしか購入できない空軍機構では手に余りますし・・・。

C-1の現用の機体を流用するのでしたら、構造寿命が来ていますので、そこまで飛行距離が多くないC-1FTBと飛行開発実験団配備の二号機を除き、胴体部分がもちません。

再生産するには、設計が40年以上前の機体ですから生産ラインは跡形もないのが実情ですし、現在生産ラインは川崎重工でC-2の生産ラインに置き換えられています。再設計して軽量化するにしても、C-2輸送機が生産終了するまで工場に余裕はありませんし、川重岐阜工場は目一杯拡張していますから、新しい生産ラインを敷く余裕がありません。自衛隊が例えばLR-2の後継(?)や海上自衛隊の自隊輸送用に、それでも最低20機は導入する確約が無ければ、と思いますがそもそも開発契約に川重が同調しないでしょうし、海外需要だけで変な先読みで生産するにはリスクが大きすぎます。

エンジンですが、P&W-JT8Dは64.5kNですので、P-1紹介kのF-7推力の60kNよりもわずかに大きく、C-1規模の機体とする場合、重量を軽量化、搭載量を6tに減らし双発とするか、四発機としてC-130並みの輸送力とするか、ということになりますが、ちょっとC-2輸送機が開発されている状況では“技術的に出来る”だけで、価格は生産数によりますがC-2より大きくなります。

そもそもC-2輸送機の営業活動に別の新型機を開発するという指摘も少々意味が不明ではありませんか。
返信する
2013-04-10 09:06 様 (はるな)
2013-04-10 19:16:30
2013-04-10 09:06 様

個々人の内心までは立ち入りませんが、そういった書き込みは失礼ではありませんか?
返信する
 C1の主翼内に燃料タンクを追加した4機のエン... (久我山のチ那ッピー)
2013-04-10 16:10:59
 C1の主翼内に燃料タンクを追加した4機のエンジンをP1のF7-10エンジンに代えて、騒音と、燃費がどの程度になるのか?気になりますね。
 以外に航続距離が伸びて、グラスコクピットにしたら、結構、輸出用モンキーモデルで売れるかもですよ。
 C27かAN72あたりと競合になるが。C2は、大きすぎる。高いという国の軍隊にどうですかね。
 燃費が6割向上していれば、フェリーで4000km
の航続距離を伸ばせるはず。
 主翼内に燃料タンクを追加したC1を川崎に譲渡して、エンジン交換、グラスコクピット化したものをデモ機で、展示会に出品したら、いろいろ情報集められるよね。F7-10エンジンの信頼性試験という理由でもつけて、C2の営業活動にもなる。展示飛行で、C1得意のアクロバチックな飛行すれば、興味持ってくれるよね。
 ブルーインパルスを派遣することは出来ないが、C2の営業活動にならないものか?と思ってしまいます。
返信する
>2013-04-10 09:06 (データリンク情報端末)
2013-04-10 09:50:01
>2013-04-10 09:06

そういうこと平然と書き込めるあんたほど気持ち悪くはないですよ
返信する
気持ち悪いですね(笑) (Unknown)
2013-04-10 09:06:30
気持ち悪いですね(笑)
なんかカッコ良く書いているけど、要は武器や飛行機、戦艦が好きな幼稚な集まりじゃん
集まりって言ってもガキが作る~団みたいな?(笑)
幼稚臭いよ ガキみたいにブーブーって乗り物遊びは卒業したら?
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