■特報:世界の防衛,最新論点
ロシア軍ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁はロシアからの防衛装備品に依存している各国に影響を及ぼし始めています。
インド海軍は3月5日、新型のブラモス超音速巡航ミサイル改良型の海上発射試験に成功しました。試験はコルカタ級ミサイル駆逐艦チェンナイより実施、チェンナイは2020年に搭載改修を行った。従来型ブラモス超音速巡航ミサイルは既にインド海軍の水上戦闘艦8隻に装備されており、コルカタ級は船体前部に配置された8セルのVLSに搭載している。
ブラモス超音速巡航ミサイルはインドがロシアとの国際共同開発により開発した兵器です。問題は此処でもロシアのウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁で、インドはロシア軍ウクライナ侵攻を受け国連安保理から付託されたESS国連総会緊急集会においてロシア非難決議を棄権しています、これは両国防衛協力が極めて深い度合いまで進んでいる為です。
ロシアとの軍事協力、特にブラモスはロシア海軍が運用するP-800超音速対艦ミサイルを元にロシアのシースキミング超低空飛行技術を応用しており、インド独自では開発できません、いっぽうスクラムジェット方式で飛翔し射程は350km以上と、この種のミサイルとしては先進的で、インド洋での中国海軍の脅威に対抗する切り札的な装備となっています。
■マレーシアSu-30維持問題
戦闘機などはアメリカから政治的にF-35を、経済的にラファールかF-16とAMRAAMを取得できなかった国にはロシア製戦闘機は貴重な選択肢でした。
マレーシア空軍のSu-30戦闘機にロシアウクライナ侵略に伴う経済制裁が暗雲をもたらしているようです。マレーシア空軍はアメリカとロシアの両国関係を重視する観点から、かつてアメリカ製F/A-18C戦闘機とロシア製MiG-29戦闘機を同時に導入し世界を驚かせたことが在りました、その後F/A-18Cはクウェートなどから中古機を取得し増勢している。
Su-30戦闘機はMiG-29戦闘機の後継として導入していますが、マレーシア国内に維持部品などの製造基盤は無く、ロシアからの維持部品供給に依存しています。現在アメリカが進めるロシア経済制裁にマレーシアが全面的に協力する場合、これらの維持部品も即座に中断し、またロシアから派遣されている整備支援要員への給与支払いも制裁対象となります。
マレーシア空軍がSu-30戦闘機を導入したのは2007年、当時新型のSu-30MKM型18機を9億ドルで取得しています。一部維持部品はライセンス生産を行うインドのヒンディスタン社より供給を受けていますが、導入機の内12機が老朽化し、少なくとも一度はロシアへ搬入し重整備が必要で、これらの手続きが経済制裁下では不可能という実情があります。
■フィリピンのMi-17導入問題
これも安価なロシア装備という利点があり買おうにも西側の高価な機材を取得できない諸国には死活問題だ。
フィリピン国防省はロシア製Mi-17ヘリコプター17機の導入をウクライナ侵攻後も契約維持と発表しました、これはロレンザナ国防相が公式に発表したもので、既に2021年1月に導入に向けての初度費用がロシア側へ振り込まれたとしています。ただ、全額の費用支払いは為されておらず、ウクライナ侵攻に伴う対ロシア経済制裁との兼ね合いが焦点です。
Mi-17ヘリコプターは旧ソ連時代に開発されたMi-8ヘリコプターの改良型で、比較的高い輸送能力と際立って安価な取得費用で知られている機体で、航続距離は500kmから800kmであり最高速度は280km/hとヘリコプターとしては平均的ですが兵員24名か担架12床もしくは4tまでの物資を空輸可能、またロケット弾や対戦車ミサイルの搭載も可能という。
ロレンザナ国防相は、現在の契約が3月初旬の時点で破棄される可能性は無いが、経済制裁の影響が及ぶかについては慎重に情勢を見極めるとしています。フィリピンはアメリカ製UH-60の取得を計画するも費用面でポーランドの民間型ライセンス生産機を取得、輸送ヘリコプター導入を計画していましたが国防費の上限が厳しく安価なMi-17を選びました。
■インドのT-90戦車近代化
90式戦車が想定していたT-90戦車の神話はウクライナで崩れた訳ですがT-90を大量に導入した国には頭痛の種でしょう。
インド国防省は保有するT-90戦車957両の近代化改修を発表しました、この近代化改修は熱線暗視装置の能力向上等が主体となっています。この契約にはインド国内の防衛産業としてIRDE社とDRDO社及びBEL社が参画しています、主として車長用外部照準器に熱線暗視装置を追加するといい、インド国防産業のメイクインディア政策を受けてのもの。
T-90戦車はロシアがT-72戦車の改良型に従来のT-72の商標が湾岸戦争によるイラク軍T-72戦車多数損失という実情を受け新たにT-90と冠したものであり、1992年に開発されています。T-90戦車は125mm戦車砲2A46型や1A45T火器管制装置とともに複合装甲とシュトゥーラ赤外線対ミサイル妨害システム、コンタック5爆発反応装甲等を備えている。
インド軍では国産戦車開発の遅れを旧ソ連やロシアからの戦車導入により代替しています、ただ、この防衛協力の深化がロシアのウクライナ侵攻に際しての対ロシア経済制裁協力に影響を及ぼしており、一方でT-90のように安価な第三世代戦車は国際市場には中国製戦車位しか存在せず、ロシアへの経済制裁は世界の安全保障へ別側面からも影響しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア軍ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁はロシアからの防衛装備品に依存している各国に影響を及ぼし始めています。
インド海軍は3月5日、新型のブラモス超音速巡航ミサイル改良型の海上発射試験に成功しました。試験はコルカタ級ミサイル駆逐艦チェンナイより実施、チェンナイは2020年に搭載改修を行った。従来型ブラモス超音速巡航ミサイルは既にインド海軍の水上戦闘艦8隻に装備されており、コルカタ級は船体前部に配置された8セルのVLSに搭載している。
ブラモス超音速巡航ミサイルはインドがロシアとの国際共同開発により開発した兵器です。問題は此処でもロシアのウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁で、インドはロシア軍ウクライナ侵攻を受け国連安保理から付託されたESS国連総会緊急集会においてロシア非難決議を棄権しています、これは両国防衛協力が極めて深い度合いまで進んでいる為です。
ロシアとの軍事協力、特にブラモスはロシア海軍が運用するP-800超音速対艦ミサイルを元にロシアのシースキミング超低空飛行技術を応用しており、インド独自では開発できません、いっぽうスクラムジェット方式で飛翔し射程は350km以上と、この種のミサイルとしては先進的で、インド洋での中国海軍の脅威に対抗する切り札的な装備となっています。
■マレーシアSu-30維持問題
戦闘機などはアメリカから政治的にF-35を、経済的にラファールかF-16とAMRAAMを取得できなかった国にはロシア製戦闘機は貴重な選択肢でした。
マレーシア空軍のSu-30戦闘機にロシアウクライナ侵略に伴う経済制裁が暗雲をもたらしているようです。マレーシア空軍はアメリカとロシアの両国関係を重視する観点から、かつてアメリカ製F/A-18C戦闘機とロシア製MiG-29戦闘機を同時に導入し世界を驚かせたことが在りました、その後F/A-18Cはクウェートなどから中古機を取得し増勢している。
Su-30戦闘機はMiG-29戦闘機の後継として導入していますが、マレーシア国内に維持部品などの製造基盤は無く、ロシアからの維持部品供給に依存しています。現在アメリカが進めるロシア経済制裁にマレーシアが全面的に協力する場合、これらの維持部品も即座に中断し、またロシアから派遣されている整備支援要員への給与支払いも制裁対象となります。
マレーシア空軍がSu-30戦闘機を導入したのは2007年、当時新型のSu-30MKM型18機を9億ドルで取得しています。一部維持部品はライセンス生産を行うインドのヒンディスタン社より供給を受けていますが、導入機の内12機が老朽化し、少なくとも一度はロシアへ搬入し重整備が必要で、これらの手続きが経済制裁下では不可能という実情があります。
■フィリピンのMi-17導入問題
これも安価なロシア装備という利点があり買おうにも西側の高価な機材を取得できない諸国には死活問題だ。
フィリピン国防省はロシア製Mi-17ヘリコプター17機の導入をウクライナ侵攻後も契約維持と発表しました、これはロレンザナ国防相が公式に発表したもので、既に2021年1月に導入に向けての初度費用がロシア側へ振り込まれたとしています。ただ、全額の費用支払いは為されておらず、ウクライナ侵攻に伴う対ロシア経済制裁との兼ね合いが焦点です。
Mi-17ヘリコプターは旧ソ連時代に開発されたMi-8ヘリコプターの改良型で、比較的高い輸送能力と際立って安価な取得費用で知られている機体で、航続距離は500kmから800kmであり最高速度は280km/hとヘリコプターとしては平均的ですが兵員24名か担架12床もしくは4tまでの物資を空輸可能、またロケット弾や対戦車ミサイルの搭載も可能という。
ロレンザナ国防相は、現在の契約が3月初旬の時点で破棄される可能性は無いが、経済制裁の影響が及ぶかについては慎重に情勢を見極めるとしています。フィリピンはアメリカ製UH-60の取得を計画するも費用面でポーランドの民間型ライセンス生産機を取得、輸送ヘリコプター導入を計画していましたが国防費の上限が厳しく安価なMi-17を選びました。
■インドのT-90戦車近代化
90式戦車が想定していたT-90戦車の神話はウクライナで崩れた訳ですがT-90を大量に導入した国には頭痛の種でしょう。
インド国防省は保有するT-90戦車957両の近代化改修を発表しました、この近代化改修は熱線暗視装置の能力向上等が主体となっています。この契約にはインド国内の防衛産業としてIRDE社とDRDO社及びBEL社が参画しています、主として車長用外部照準器に熱線暗視装置を追加するといい、インド国防産業のメイクインディア政策を受けてのもの。
T-90戦車はロシアがT-72戦車の改良型に従来のT-72の商標が湾岸戦争によるイラク軍T-72戦車多数損失という実情を受け新たにT-90と冠したものであり、1992年に開発されています。T-90戦車は125mm戦車砲2A46型や1A45T火器管制装置とともに複合装甲とシュトゥーラ赤外線対ミサイル妨害システム、コンタック5爆発反応装甲等を備えている。
インド軍では国産戦車開発の遅れを旧ソ連やロシアからの戦車導入により代替しています、ただ、この防衛協力の深化がロシアのウクライナ侵攻に際しての対ロシア経済制裁協力に影響を及ぼしており、一方でT-90のように安価な第三世代戦車は国際市場には中国製戦車位しか存在せず、ロシアへの経済制裁は世界の安全保障へ別側面からも影響しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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