北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南西有事の際に旭川第2師団を引抜けるのか?防衛大綱へロシア脅威再認識の必要性

2022-04-19 08:10:35 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
ウクライナ情勢はマリウポリ包囲が極めて重大な時期であり恰もこれはアゾフ海へのウクライナアクセスを絶とうとしている状況に、冷戦時代想定された北海道稚内の有事の状況を見るようです。

現状で南西有事の際に北部方面隊を引き抜けるのか、安全保障上の大きな前提が崩れ始めている事を認識すべきかもしれません。現在、我が国では沖縄方面や台湾有事に伴う周辺事態に際しては初動を九州および沖縄の部隊により対応しつつ、その決定打となる重戦力即ち戦車部隊や機械化部隊はロシア正面に当る北海道から展開させる方針となっている。

しかし、ロシア軍ウクライナ侵攻を例に挙げるように、有事の概念はロシア軍による北海道への軍事圧力というものを想定しない前提で、北海道から部隊を抽出する方針であり、例えば近年の鎮西演習では冷戦時代には考えられない、道北は旭川の第2師団をまるごと九州へ転地させるという運用を実施しています、これはロシアを考えれば最早不可能だ。

北部方面隊の重戦力を引き抜くのは、軍事上の間隙を補う別の抑止力がなければ軍事空白に乗じて南西有事に呼応した北方有事がロシアにより引き起こされる懸念があり、例えば在日米軍へ陸軍部隊の駐屯、例えば戦車の増強などが必要となります。ただ、南西有事の特に台湾有事においては米軍こそが主役であり、それほど余裕があるとは考えられません。

千歳の第二航空団は削減されていませんが、考えれば陸上防衛力は冷戦時代や2000年と比較しますとずいぶんと削減されたものです。いや、北部航空方面隊として考えますと、F-15戦闘機二個飛行隊とF-1支援戦闘機二個飛行隊という編成が、F-15戦闘機二個飛行隊にF-35戦闘機二個飛行隊となったのですから、かなりの強化といえる。しかし陸上はどうか。

南西防衛の重要性が年々高まっている、この認識は誤りではないのですが、年内にも確定される国家安全保障戦略には南西方面とともに、ロシアに世おるウクライナ侵攻を受け、北方への軍事的影響をどのように内部化するかが、関心事といえます。それは特に、戦車300両体制、戦車は北海道にのみ配備し転地させる、という今のもの。これには限界がある。

戦車300両体制、それも例えば現役戦車300両というならば納得できます、即応予備自衛官制度を充実させ、先ず、九州に第2師団一個分の、つまり戦車連隊と即応機動連隊と機械化された2個普通科連隊に自走榴弾砲の特科連隊と後方支援連隊などの装備を事前集積し、員数外としておく。有事の際には人員だけ旅客機や新幹線等で北海道から動けばよい。

即応予備自衛官制度を強化しておけば、人員を第2師団が動かすと同時に召集を行い、そのうえで道北の第2師団装備を即応予備自衛官が入れ替わる方式で動かすことができます、事前集積しておいた装備も即応予備自衛官が定期的に訓練にて九州で動かせば問題はありません。ただ、この方式には戦車や火砲調達の増強が不可欠となります。昔の規模まで。

戦車増強など時代に逆行している、こう思われるかもしれませんが今回のロシア軍ウクライナ侵攻そのものが時代に逆行している、正戦論以前の欲しいから領土を奪い相手国の国民を隷属させるという、まさに19世紀的な時代に逆行、20世紀さえ飛び越してしまったような時代錯誤なものなのですから、この暴力が東に転じた際の備えを、日本も行う必要が。

防衛大綱と国家安全保障戦略の改訂には、中国一辺倒の防衛政策からの転換が必要だ、こう表現するのは簡単ですが、それよりも重要であるのは、日本はロシアと中国両方が有事の際に呼号する、少なくとも一方が行動を起こしたさいにもう一方が圧力をかける懸念、中立を保たない懸念が大きくなった、緊張が拡大したという現実にあるように思うのです。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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Unknown (ハリー)
2022-04-19 22:57:15
まったく仰る通りです。
3普連の即応機動連隊化が迫ってますが、結局行き先は、南西ではなく、稚内か音威子府になるでしょうね
返信する
Unknown (バッファ郎)
2022-04-20 01:51:02
もともと機動師団、機動旅団の構想自体に無理があった。
第14旅団や第6師団なら隣接の師団、旅団で抜けた分をカバーも出来るが、北部方面隊はもともと機動運用の第7機甲師団をはもとより全師団、旅団が機動化してしまいまった。
しかしロシアの潜在的脅威(すでに顕在化してしまったが)を鑑みれば、いくら揚陸能力に難ありとはいえ、北海道を空にするなど正気の沙汰ではない。
幸いにして防衛費が今後5年で欧州並のGDP比2%に増額(年間7000億円増)される見通しなので、本州以南の機甲戦力と特科戦力の過剰縮小化を早急に見直すべきだ。
しかし陸自というのは、予算の壁があるとはいえ、市街戦重視が謳われれば野戦が出来なくなるほどのめり込みわ、南西重視といえば北部をガバガバにするわ、なぜこうも極端な方向に暴走するのだろう?
返信する
Unknown (バッファ郎)
2022-04-20 01:51:50
もともと機動師団、機動旅団の構想自体に無理があった。
第14旅団や第6師団なら隣接の師団、旅団で抜けた分をカバーも出来るが、北部方面隊はもともと機動運用の第7機甲師団をはもとより全師団、旅団が機動化してしまいまった。
しかしロシアの潜在的脅威(すでに顕在化してしまったが)を鑑みれば、いくら揚陸能力に難ありとはいえ、北海道を空にするなど正気の沙汰ではない。
幸いにして防衛費が今後5年で欧州並のGDP比2%に増額(年間7000億円増)される見通しなので、本州以南の機甲戦力と特科戦力の過剰縮小化を早急に見直すべきだ。
しかし陸自というのは、予算の壁があるとはいえ、市街戦重視が謳われれば野戦が出来なくなるほどのめり込みわ、南西重視といえば北部をガバガバにするわ、なぜこうも極端な方向に暴走するのだろう?
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