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【防衛情報】将来ヘリコプターFVL計画とUH-60Vヴィクター,ISV歩兵分隊車両とJAGM統合空対地誘導弾

2022-10-25 20:00:54 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はアメリカ軍の回転翼航空機や可動翼航空機などの最新情報を纏めてみました。

 アメリカとオランダは将来ヘリコプターFVL計画で提携を発表しました。アメリカ陸軍は海兵隊のMV-22オスプレイ可動翼機のような高速の垂直離着陸対応輸送機を保有しておらず、この遅れを取り戻す計画が将来ヘリコプターFVL計画となっています、この計画に2022年、オランダが参入する事となりましたが、NATOでも同様の計画が推進中です。

 将来ヘリコプターFVL計画には、FLRAA将来長距離打撃航空機、FARA将来偵察攻撃航空機計画、将来無人航空システム計画など多種多様な計画が並行して進められており、この為にアメリカ陸軍ではFARAの開発に31億ドルとFLRAA開発には36億ドルを今後5年間に投じるという、陸軍将来装備体系では最優先事項の一つとして重視しているもの。

 NGRC、オランダではもう一つNATOが開発する高速ヘリコプターの開発にも参加しており、これはNGRC北大西洋条約機構次世代回転翼航空機能力構築と称されています。将来的にはアメリカの機体をNATOが採用する布石となるのか、それともオランダは似た二つの計画を天秤に掛けるのか、オランダはウクライナ戦争を受け同盟重視を掲げています。
■ブリストウヘリコプターズ
 AW-609可動翼機は初飛行までは順調なのですが流石に軍用として開発されている訳ではないので資金が集まらなければという、民間の限界を感じるところだ。なにか三菱のMRJと同じ様な印象を受ける。

 ブリストウヘリコプターズ社はレオナルド社が進めるAW-609可動翼機計画への参画を発表しました。ブリストウヘリコプターズはイギリススコットランドのアバティーンに本社を置く航空会社でヘリコプターによる空輸や人員輸送、操縦士教育から捜索救難までを担う会社で、2018年までは参加に固定翼旅客機を運航するイースタン航空を保有していた。

 レオナルド社製航空機をブリストウヘリコプターズ社はAW-109やAW-139にAW-189など90機所有しています。同社の参画はティルトローター機、可動翼機が従来軍用輸送に限られていたのに対して民間旅客輸送という次の段階へ展開する事を意味します。なお、AW-609は既にアメリカでの民間航空型式証明を付与、旅客機として運用が可能です。

 AW-609可動翼機はベルヘリコプター社とアグスタウェストランド社が合弁会社BAACベルアグスタエアロスペース社を設立し開発していたもので2003年に初飛行、2015年に試作機の墜落事故を起こしましたが2021年に量産初号機が完成、全長13.45mで自重は4.7t、乗員2名に加え人員9名を輸送可能で巡航速度509km/hと航続距離1389kmを誇ります。
■UH-60Vヴィクター
 航空自衛隊が老朽化したUH-60J救難ヘリコプターを退役させていますが世界を見れば延命する選択肢はあるのです、一寸もったいない。

 アメリカ陸軍はブラックホークシリーズ最新型となるUH-60Vヴィクターに関するIOT&E初期運用試験を完了させました。UH-60Vは現在の最新型であるUH-60Lを能力向上させた改良型です。IOT&E試験はウィスコンシン州フォートマッコイ陸軍試験場において7月5日から試作機5機を用い三週間に渡り実施され、今後は量産改造へ進む計画です。

 UH-60Vヴィクターの改良点は電子部品を中心としたもので、ノースロップグラマン社製デジタルコックピットへの換装が含まれています。興味深い点は既存のブラックホークからの改修に軸点を置いている点で、陸軍は将来の複合ヘリコプターなど野心的な新型機開発と並行し、今後も数十年間に渡りブラックホークを運用し続ける方針という点でしょう。

 UH-60Mブラックホークなどが改修の対象となり、夜間及び全天候での運用性能や整備における自動診断能力などが飛躍的に向上するとのこと。先ず量産改修機の引き渡しは九月中に予定されており、更に2022会計年度内に陸軍第106航空連隊第一大隊へ最初の量産改修機が配備されることとなり、続いて既存のUH-60で760機がその改修対象となります。
■JAGM統合空対地誘導弾
 陸上自衛隊もこんな感じでできるだけ陸海空のミサイルを共通化すべきなのですよね。

 アメリカ国防総省はJAGM統合空対地誘導弾の量産開始を決定しました。これはロッキードマーティン社とともにアメリカ海兵隊において実施されていたAH-1Zヴァイパー戦闘ヘリコプターへの適合試験が改良した事を受けての施策であり、先行して陸軍のAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターでの適合試験の完了とともに目処がつきました。

 JAGM統合空対地誘導弾はヘルファイアロングボウおよびヘルファイアーロメオの後継となる装備ですが、MQ-1無人機やMQ-9リーパー無人攻撃機及びMH-60Rシーホークなどからの運用、そしてストライカー装甲車用多目的砲塔であるM-SHORADやLCS沿海域戦闘艦等への搭載も想定、ヘルファイアミサイル用のM299兵装架からの発射が可能です。

 中射程型であるJAGM-MRでは射程が16km、マルチモードガイダンスセクションという複数の誘導方式を併用しており、セミアクティヴレーザー誘導に加えMMWミリ波レーダーを併用する事で移動目標や航空機に対しても撃ち放し方式での正確な命中が可能とのこと。これにより各種ある陸海空海兵隊のミサイル体系を統合化する事が期待されています。
■ISV歩兵分隊車両
 海兵隊のグロウラーをそのまま採用する訳にはいかなかったのかなとはおもうところ。もちろんISVの方がかなり大きいのですが敢えて新型を開発せずともと考えてしまう。

 アメリカ陸軍はISV歩兵分隊車両の空挺部隊での運用試験を本格化しています。試験はマサチューセッツ州ネイティックにある米陸軍戦闘能力開発司令部において進められていて、空挺部隊の他に特殊部隊での運用も進めている。具体的には複列空中投下プラットフォームという空挺投下梱包に車両を収容し、空挺投下の衝撃をクレーン落下で再現します。

 複列空中投下プラットフォームに搭載しての投下試験は、落下傘を用いた場合でも立体駐車場から落下した場合よりも強い衝撃が加わるために破損しないかの私見、また横転した場合や湿地帯等に落下した場合の車体耐性等を試験します。ISV歩兵分隊車両は市販車であるシボレーコロラドZR2を転用し部品を90%市販車のまま軍用とした機動車輛です。

 ISV歩兵分隊車両は10名をかなり無理矢理ですが収容可能、装甲はありません。自衛隊では高機動車に当る車両です、アメリカ軍はハンヴィー高機動車の後継に軽装甲車であるJMTV統合戦術車輛を採用、頑丈ではあるのですが空輸などには重すぎて不向きです。現代の軽歩兵は歩兵といえど防弾装備やミサイル等重く、その為の機動車輛となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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