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広島長崎原爆忌二〇二四【2】79年前の今日-長崎が核攻撃を受けた,2020年代の核兵器と危機の核軍備管理

2024-08-09 20:06:00 | 北大路機関特別企画
■核兵器を巡る国際政治
 南海トラフ地震関連情報で薄らいでしまっている印象はありますが本日が長崎原爆忌となっています。

 核兵器を巡る国際政治、ではどこに危機があるのかと問われれば、ロシアの軍事援助に関する変容です。具体的にはロシアウクライナ戦争においてロシア軍は最早核兵器を除けばなりふり構わぬ運用を行っている、総動員だけは、事実上の支持層であるモスクワ市民やサンクトペテルブルク市民を含む総動員だけは冷静に避けていますが、それ以外は。

 総動員に準じたロシアは、イランから自爆用無人機を、北朝鮮から砲弾を、ベラルーシから接近経路を、という段階さえ最早2022年に通過していて、2023年にはイラン製巡航ミサイルや北朝鮮製弾道ミサイルの残骸がウクライナから回収、つまりこれらの装備がロシア軍に供給されている事を意味し、2024年には北朝鮮製装甲車両のようなものが。

 Su-30戦闘機やT-72戦車など、従来ロシア軍は友好国に対して戦闘機や戦車を供給し友好関係を武器援助により強化してきた歴史があります、それは資源外交の一環でもあれば地政学上の要件に対する策源地提供の見返りであり、また権威主義国家同士の連携強化という視座もありました、が、Su-30戦闘機や特にT-72戦車は現在不足しているのだ。

 北朝鮮との連携強化やイランとの軍事協力強化、イランへはSu-30戦闘機の供与が2023年に実施され、そろそろ運用限界であったパーレヴィ王政時代のF-14トムキャット戦闘機の後継機として道筋を建てたとされていますが、なにしろSu-30戦闘機をロシアが新造するには欧米からの半導体などが経済制裁で輸入が大幅に支障をきたしている現状がある。

 核関連技術と核兵器運搬技術、ロシアが提供できる分野はこのあたりに絞られてしまっているという現実を直視しなければならない。もちろん、外貨獲得のための天然ガスや原油、なにしろ膨大な戦費が必要な戦争を遂行中なのだ、こうしたものの供給は継続されていますが、核不拡散条約という国際公序下において核兵器国以外の核保有国には技術こそ。

 ベラルーシへの戦術核兵器移転、難しいのはニュークリアシェアリング以外の移転を既にロシアが実施しているという事です。恐らく起爆コードまで移転したものではないと考えられますが、公然と戦術核兵器の操作手順に関する合同演習を実施、今年6月にも、第二段階演習という、何が第二段なのかは明言されていませんが、実施したばかりなのだ。

 北朝鮮とロシアの軍事協力強化発表、プーチン大統領の北朝鮮公式訪問に際し、同盟関係に近い軍事協力強化が発表された際、韓国政府はウクライナへの致死性武器援助解禁を含めた厳しい措置を警告しました。K-2戦車にK-9自走榴弾砲とK-239多連装ロケット砲にK-21装甲戦闘車とKF-21戦闘機やKF-50軽戦闘機、ウクライナが欲しがるもの。

 韓国政府がここまで強い姿勢を示唆した背景には、軍事援助として北朝鮮が受け取れるものは、確かにMiG-29戦闘機の老朽化が進むためにSu-30戦闘機を50機程度欲しいのだろうけれども、それ以上に開発難航が続いている極超音速滑空兵器関連技術や核弾頭小型化技術、アメリカにその装備を確信させる水準の技術供与こそが挙げられましょう。

 イランについても、イスラエルとの対立関係、イランが1979年イスラム革命を経て国是にイスラエル廃滅による聖地奪還を掲げている、こうした関係がありますので、事実上核兵器を保有しているとされるイスラエルに対して、イランは核兵器そのものの保有を切望しています。そして遠心分離機多数整備など、過去幾度も模索されてきた歴史がある。

 ロシアから核関連技術提供が実現するならば、イランは漸くイスラエルに対抗できる核戦力を整備するとともに、核戦力が確実に整備された後であれば、これは北朝鮮に近い発想といえるのですが、アメリカが有志連合を組みイラクに対して実施したような軍事行動を起こすことができない選択肢を得られることとなる、こうした事情があるのです。

 核不拡散秩序とは、1970年発行の核不拡散条約において、1968年7月1日までに公然と核兵器を核爆発装置による作動とともに保有した国を核兵器国とし、それ以外の諸国を非核兵器国に位置付け、これらの国に核保有国が現れないよう加盟国全体で行動する国際公序です。勿論、条約には核兵器国の核軍縮義務も明記され均衡に考慮していますが。

 核不拡散条約は、核兵器国として締結の時点で公然と保有している国を特別扱いすることにより国際公序に組み込むとともに、核兵器国が新しい核保有国を出現させないよう努力するという枠組みを規範化したものです。勿論、インドとパキスタンの核兵器保有や北朝鮮核実験という出来事はありましたが、核兵器国の協調は2010年代まで継続した。

 ロシアが核関連技術の北朝鮮やイランへ提供、これは、核兵器国同士がこれ以上核保有国を増やさないように協調する、という1970年以来の枠組みが崩れようとしている構図です。核兵器を削減する事は簡単です、使えば減る。しかしこの方策では人類文明そのものに重大な悪影響を及ぼす、使えば減る以外の核軍備管理の道筋をみつけねばなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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