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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二三【7】中期防衛力整備計画から防衛力整備計画へ,第一次からのやりなおし

2023-01-03 20:23:51 | 北大路機関特別企画
■第一次防衛力整備計画
 護衛艦はるな建造は第三次防衛力整備計画に基づくものですが昨年末にこの懐かしい防衛力整備計画という単語が復活しました。

 ドイツはじめNATO加盟国は冷戦後、一時は身軽な旅団に師団編成を小型化しているのですが、しかし2010年代にその旅団を複数隷下においた師団編成、それも非常に大型の師団に回帰しています。ドイツとフランスの師団は現在約30000名規模、もちろん両国とも現役陸軍兵力は10万名程度と陸上自衛隊よりも小規模ですので多数の師団は編成していない。

 フランスは第1機甲師団と第3機甲師団、ドイツは第1装甲師団と第10装甲師団、フランスはいくつかの直轄部隊がありますし、ドイツも特殊作戦師団という、最近クーデター未遂事件を繰り返している不名誉でも有名となっていますが配置されている、しかし師団級部隊は若干数に押さえているのですね、どれも多数の旅団を隷下に有しているのが特色だ。

 戦車が225両しかないのにフランスは2個機甲師団、不思議な編成をとっていますが機甲部隊とは装甲機動部隊、VBCI装輪装甲戦闘車はじめ装甲車を多数保有していますし、どちらの師団も機甲旅団を一つ、装輪式のERCやAMX装甲偵察車を多数装備する軽機甲旅団か海兵機甲旅団を一つ有していますので、一応は機甲師団としての体裁を整えてはいます。

 管区隊編成、自衛隊も思い切ってその編成を1950年代の重厚な第一次防衛力整備計画時代の編成、重厚な編成に戻してみてはどうか、最近こう考えるのは、航空自衛隊と海上自衛隊が大幅な改編を繰り返す中で陸上防衛についても敢えて多数の師団と旅団をおく、そして旅団と師団の違いが定数われか凄い定数割れの違いしかない現実をみるための施策です。

 第一次防衛力整備計画時代は、自衛隊には何もない時代に旧陸軍の解体と、進駐軍の朝鮮戦争出兵などによる戦力空白化を受けて必要に迫られたという構図がありました。故にその編成に当たっては装備も何もかもアメリカ陸軍の支援を受けており、編成もアメリカ軍の当時の歩兵師団に準じています、むろんその編成が最良とはいえない事は理解している。

 歩兵師団編成、当時アメリカは4000名規模の歩兵連隊を3個基幹として砲兵連隊に戦車大隊などを置く編成でした、さすがに当時ヘリコプター旅団はありませんが、観測機部隊を有していまして、これが紆余曲折ありながら今のアメリカ陸軍の編成に非常に大きな影響を及ぼしているのです。紆余曲折とは、核戦争の懸念をその編成に反映しているのです。

 ペントミック師団、アメリカ陸軍が日本の自衛隊が参考としたという小型の歩兵連隊を基幹とする編成に移行したのが1950年代です。これは大きな歩兵連隊が一カ所に固まっていては戦術核兵器により一気に壊滅してしまう、という懸念から部隊を小型化したものです、陸上自衛隊も部隊を全国へ配置するために普通科連隊を小型化した。ここだけ真似した。

 五単位師団、さて忘れてはならないのはペントミックという意味です、辞書を調べてもおそらく出てこないでしょう、ペントミックとはペンタゴンとアトミックをあわせた造語、ペンタゴンとはアメリカ国防総省の事ではなく五角形、アメリカ国防総省が建物の岩盤の地形から五角形の建物となった為にペンタゴンといわれている、つまり5という数字だ。

 アトミックな核戦争の時代に小型の歩兵連隊を五個からなる師団、この編成を採用しました。そして自衛隊は歩兵連隊、いや普通科連隊を小型化するという発想だけを導入しまして、五単位という編成を採用していません、アトミック師団といいますか、自衛隊は多くても四単位、半数の部隊が三単位という、師団小型化を進め、一種の無理を通しました。

 1962年師団編成という、陸上自衛隊は大型の管区隊を四単位の師団へ、おして小型の編成だけを急いだ混成団、これでも今の方面混成団や旅団より大きく前の中央即応集団以上の5000名以上という定員、これを三単位の師団としています。この際に普通科連隊を増やすという手段に用いたのが、連隊を分割して三個普通科連隊とする手法で水増ししました。

 練馬の第1普通科連隊をみますと、もともとの名称は第1連隊、その人員規模は4200名といまの第一師団に迫る人員規模であり、隷下に本部管理中隊と3個大隊が置かれていました。もちろん一カ所の駐屯地には多すぎますので、練馬駐屯地と久里浜駐屯地に豊川駐屯地、三カ所に大隊ごと駐屯していました。この大隊が普通科連隊の雛形へなってゆきます。

 アメリカの編成をみますと、ペントミック師団は使い勝手が悪かった、何よりも師団として行動するには当時の通信技術と指揮統制能力の限界を越えていました、故に戦闘基幹部隊を大隊と位置づけ、連隊は一種の伝統称号となった構図です、いまでも第2騎兵連隊第一大隊というような、2/1騎兵大隊とも書かれる初見者には一種の難読名称となっている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二三時事:核もたぬ決意の日本の反撃能力-ウクライナ戦争の戦訓と地対地ミサイルの意義

2023-01-03 18:20:25 | 北大路機関特別企画
■オペレーションリサーチ
 岸田総理大臣は核兵器について、自らが被爆地広島の出身である事を挙げたうえで日本は行うべきではないとしました。確かに独自の核を2020年代に開発し保有する事は難点の方が多い。

 反撃能力、日本は核武装を行わないと言う前提であるのだから一発で敵のミサイル関連施設を確実に破壊できるような強力な装備は導入できません、そしてクラスター弾薬さえすべて廃棄していますので、ミサイル施設を確実に破壊するには、目標10平方mあたり一発というくらいの徹底した集中攻撃を行わなければ、残った核ミサイルが飛ぶでしょう。

 ウクライナ戦争はロシア軍がウクライナへ撃ち込んだミサイルの数が5400発に達していますが意気軒昂です、ウクライナという民主国家で有ってさえ意気軒昂なのです。すると、特に日本の反撃能力は軍事施設に中注させるという名目で、おそらく相手が人口密集地にミサイル陣地を構築した場合でも躊躇なく攻撃するとして、民生被害を抑えるという。

 5000発や1万発という規模の整備ではおそらく不足するのだろうなあ、こう考えるのです。政府がどの程度の反撃能力を想定しているかは不明ですが、地対艦ミサイル連隊の定員は普通か連隊の半数程度ですので、例えば地域配備師団に複数のミサイル連隊を置く、これくらいの改編を行っても、なおミサイル発射装置は不充分でしょうが、再装填で対応する。

 東京大空襲、日本ではあの東京大空襲という打撃を受けても半年間にわたり抗戦継続となりました歴史がありますので、大まかではありますが発射機の数ではなく長距離巡航ミサイルの備蓄としては概ね5万発程度を目安とすべきでしょうか。かなり難しくも見えますが、見方変えれば長らく削減され続けた日本のロケット産業には光明となりうるでしょう。

 航空自衛隊ではなく陸上自衛隊に地対地ミサイル部隊を置く、本来これは航空打撃部隊の任務ではないのか、こう不思議に思ったのですが、政府が防衛費をGDP1%からGDP2%へ、つまり防衛費を倍増させるのですから、ミサイルの備蓄数はオペレーションリサーチで5万10万を当たり前として考えているか、単なる素人の思いつきか、どちらかでしょう。

 地対地ミサイル部隊を陸上に置く、不思議に思いましたが説得力はあります、仮に護衛艦に巡航ミサイル1万発を搭載するとしますと、まや型ミサイル護衛艦からすべての対空ミサイルを降ろしてVLS垂直発射装置一杯に巡航ミサイルを搭載しても搭載できるのは96発、イージス艦が100隻あっても搭載できません、陸上ですと掩砲所に集積可能です。

 都市部を核攻撃からまもる、こうした視点からも重要です。例えば北海道の第1特科団に88式地対艦誘導弾が配備開始された当時、第3施設団にはミサイルの掩砲所を構築するための坑道掘削装置が配備されました、掩砲所にミサイルを配置するのはソ連軍が北海道侵攻に先立ってもっとも危険な地対艦ミサイル部隊へ戦術核を使う懸念があったためでした。

 東京大空襲を例に挙げましたが、大阪大空襲をみますと三月に一回行われ多聞お次は六月に入ってのものであり、三ヶ月の空白期間がありました、日本の都市空襲は四月と五月に空白期間がある、これをなぜかと調べてみますと、同時期、沖縄戦と猛烈な特攻攻撃が繰り返されていたのですね、アメリカの戦略爆撃機は九州山間部を攻撃していた歴史がある。

 特攻隊の飛行場を制圧するために山間部の特設飛行場に対して大規模爆撃を実施し続けていた、特設飛行場は滑走路さえあれば航空隊を機動運用が可能であったのですが、なにしろ数が多い、そもそも戦略爆撃機が投入されたのは海軍が台湾の日本軍飛行場を空母で攻撃した際に飛行場が200以上あり、ニミッツ提督が空母だけでは無理と指摘している。

 悲劇的な特攻攻撃ではありましたが、都市空襲を間接的に遮断する事ができたという意味はあったのです。さて現代、北朝鮮は核兵器を増強すると言います、日本に核兵器はありませんが、都市部から離れた山間部に自衛隊が掩砲所を構築して無数の地対艦ミサイル部隊を展開させるならば、核攻撃を都市部から引き離すことにつながるのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二三【6】政治の決断は宇宙防衛に並ぶ唐突なミサイル防衛から反撃能力への急激な転換

2023-01-03 14:44:33 | 北大路機関特別企画
■唐突な政治決断と現場
 政治が決定して閣議決定で防衛省に命じてその遂行を財務省が待ったをかけるという構図で日本の防衛力整備は進むというか停滞し再編を続け最中に次の決定が来る。

 本気で航空自衛隊が宇宙からの偵察能力を大規模に開発する、というならば個人的には賛成します、それは日本が周辺国の核恫喝に対し反撃能力を通常戦力により構築するという非常に難しい施策を進めるためです。核兵器であれば敵核戦力を一気に無力化できますが、通常兵器であればかなり正確に標的を追尾し目標付近へ命中させなければなりません。

 宇宙開発に関しては"予算さえ認められるならば"IHIにも三菱重工にもロケット打ち上げ能力があります、つまり国内で循環する防衛力と防衛産業にも波及効果が期待できるためです。ただ、技術的に移動式ミサイル発射装置を宇宙からの監視能力だけですべて追尾できるのか、技術的な余地はあるのか、とも考えるのです。この点は大前提として不安だ。

 宇宙作戦、それでも疑問であるのは、今回政府は政府が保有する情報収集衛星を自衛隊へ移管するという動きもありません、国家安全保障戦略に情報収集衛星の自衛隊移管が明記されているわけでもなかったのです。こういう条件を踏まえますと、情報収集衛星を所管する内閣衛星情報センターの隷下に宇宙保安センターを設置した方が、とも考えます。

 もう一つの自衛隊、難しいのは自衛隊が自己完結の組織であり、もちろん装備製造などは民間企業に依存するのですが定期整備まで含めてかなりの部分を自前で実施しているため、宇宙分野を任務として付与する場合は宇宙関連の教育部隊を創設しなければなりませんし、宇宙作戦の戦術研究まで自ら踏み込んで行う必要がでてくるという。これは余りに負担だ。

 自衛隊が担うということはこういうことですので、ここまでの覚悟はあるのか政治の覚悟を問いたいところです。そして覚悟を決めるならば、これまでミサイル防衛のように既存の任務を削減することなく予算も人員もそのままに新任務を付与して人員のやりくりを破綻させるような選択肢よりは、もういっそもう一つ自衛隊を創っては、こう思うのですね。

 ミサイル防衛から反撃能力へ、唐突な方針変換についても不思議に思うのです。いやミサイル防衛は継続する方針となっているので無理な転換というほどではないのですけれども、ミサイル防衛に20年間を投じることなく、膨大なミサイル防衛の予算を巡航ミサイルに投じていれば、かなりの数をそろえられたのではないか、数千いや数万の、ということです。

 無駄な時間というわけではありませんが、この20年間で削減し続けた特科部隊を削減するのではなく、装備するものをFH-70榴弾砲から地対艦ミサイル連隊に置き換えれば、全般支援の第五大隊と地対艦ミサイル連隊の人員規模は同程度ですので、完全五個大隊編成の特科連隊は三個地対艦ミサイル連隊の人員規模、もの凄い数が整備できたのではないかと。

 師団を変に改編して戦力を空洞化のがたがたにしたのはミサイル防衛の予算を既存の防衛予算の枠内から捻出した事に他なりません、そんな事をせずに小泉政権時代、ミサイル防衛を行うという政治決断を行う前に、反撃能力まで議論を続けておき、反撃能力の敵の巡航ミサイル攻撃から防衛する体制に切り替えていれば、いま防衛費はもっとやすかった。

 特科連隊のFH-70榴弾砲をHIMARS高機動ロケットシステムに切替えて、日本独自に戦術ミサイルシステムの開発を行い、戦車大隊の戦車を自走高射機関砲に更新して巡航ミサイル対策に活用していれば、普通科連隊はそのまま維持することで、全国の当時の13個師団に膨大な数の地対地ミサイル部隊と巡航ミサイルや無人機を破砕する防空部隊を創れた。

 しかし、もうやってしまったといいますか、ミサイル防衛で崩壊した防衛力は建て直さねばなりません。ここで考えさせられるといいますか、皮肉だと感じたのは政府が中期防衛力整備計画を廃止し、防衛力整備計画という、一次防二次防三次防の時代まで防衛力整備を逆行させた発想を示した事です。崩壊したのだから一次防からやり直すような方式かと。

 一次防まで戻るならば、それこそ陸上防衛も再構築し、いまの9個師団6個旅団態勢を根本的に見直しては、と思うのです。ここでラジカルですが、防衛力整備法という法整備を行い、自衛隊を第一次防衛力整備計画から再構築する試案を考えてみました。防衛力整備法、法律が必要なのはその為の予算措置を事項要求として財務当局に中抜きさせないため。

 第1師団、現在の規模は師団としてみますと冷戦時代のフランス軍師団、NATO加盟国では非常に小型と称されたフランス軍師団よりも更に小型編成となっています。もっとも陸上自衛隊の師団は2000年代まで普通科連隊四個を基幹とした甲師団で定員は9000名、フランス軍の冷戦型編成に近い規模は有していました、ただこれとて師団として小型でした。

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新年防衛論集二〇二三【5】宇宙防衛能力整備は核兵器持たぬ日本に死活的課題か?検討すべき第四の自衛隊

2023-01-03 07:00:33 | 北大路機関特別企画
■極論として"戦略自衛隊"
 今回は前回の続きと共に政府が突如重視を提唱した宇宙作戦と航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改編への視座を考えてみましょう。

 難しい問題ではあるのですが、F-35B戦闘機は護衛艦隊に絶対必要な航空機です、F-35Bについて開発したアメリカは、高価な装備であるために様々な運用方法を研究しているためにその新しい運用が開拓され続けているのですが、その一つにイージス艦のスタンダードミサイルのイルミネータとして運用する方法があります、見通し線外の戦闘に活用する。

 スタンダードSM-6ミサイルなどは最大射程370kmに達するほどですから、これは発射したイージス艦からみることはできません、イルミネータでの誘導はできないのですが、それならばこの誘導の役割をF-35Bに行わせよう、ということ。F-35B,センサーノード機としての運用です。この一点からしても、護衛艦隊の戦闘にF-35Bは必要といえるのです。

 ヘリコプター搭載護衛艦を増強すべき、日本の防衛はもっと世界の一員として存在する事で、一国の、しかし専守防衛と云いつつ経済活動の葉には既にグローバルに展開している、こうした現状に対応するにはパワープロジェクション能力が必要であり、その為に護衛隊群の護衛隊全てにヘリコプター搭載護衛艦を配備し、広い任務に対応できるようすべきだ。

 海上自衛隊の作戦管区、しかし冒頭の視点に話を戻しますと、結局のところFOIPの利権を継承して自衛隊の作戦管区をグローバルに展開させ、二つの大洋と世界の中で位置づけを確たるものとするのか、相手は中国と北朝鮮だけだ、と切り替えるかでF-35Bの用途はだいぶん変わってきます、ここで政府の視座を知りたいのですが、現状、宇宙を見ている。

 ミサイル防衛と認知領域戦争に宇宙作戦、ミサイル防衛は20年前から自衛隊に付与されている任務ですが、こうした新任務の増大を考えますと、抜本的に自衛隊の統合運用を強化して陸海空の人材を統合任務司令部の隷下に置くか、それが無理ならば陸海空に重ならない任務に対応するべく、もう一つ自衛隊を作ってはどうかと思うのです。極論ではある。

 戦略自衛隊でも特務自衛隊でも、なにかエヴァンゲリオンとかガサラギとかを思い出す名前ですが、戦国自衛隊や特生自衛隊というのはあわないところですが、統合運用が進まない現状で新任務を押しつけますと、かえって縦割り行政のように、ほかの自衛隊が所管すべき任務についても手が及ばない、まわりまわって全体として後退する懸念があるのです。

 衛生軍や戦力基盤軍とサイバー軍、日本にもう一つ自衛隊を、と主張しますと突飛な考えに思われるかもしれませんが、ドイツの例を見ますと2000年代に入り連邦軍隷下に衛生軍や戦力基盤軍にサイバー軍を新編しています。いや逆に軍の任務が本来業務以外に分散して戦力基盤が崩壊しているという他山の石と思われるかもしれないが、実例はあるのだ。

 人員については正直なところ2000名規模の純粋な増員が必要でしょう、しかも陸上自衛隊の普通科など簡単に異動させ対応できる任務ではないため、民間人材などを活用するには相応に人件費も必要となります。ただ、宇宙領域の戦いと認知領域の戦いは基本的に小銃やミサイルは飛ばない戦闘、果たして自衛隊の任務なのか、日本の任務なのかともおもう。

 宇宙任務は重要、こうアメリカが主張するならばその通り、と考えるのです。DSPミサイル監視衛星が正常に機能する全地球規模の通信システムとICBM大陸間弾道弾部隊やSLBM潜水艦発射弾道弾を運用する戦略ミサイル原潜部隊とを通信で結ばなければ、どこの地域からアメリカへ核攻撃が行われたかが把握できず、正確な報復ができません故ね。

 宇宙領域の重要性はわかります、情報収集衛星などがキラー衛星から破壊されては情報収集が難しくなる、という視点も理解できないわけではない。それでも核兵器国や核保有国ほど切迫した重要性なのかととわれれば、なければ不便という程度ですし、なにより自衛隊自身が人工衛星を保有していないという点も、宇宙作戦能力の疑問の一つなのです。

 イスラエルのように軍が、つまり自衛隊が独自の宇宙衛星打ち上げ基地を所管し、通信衛星10機近くと偵察衛星を10機程度保有し、その情報を活かす装備を持つならばわかります。しかしイスラエルが独自の宇宙作戦能力を持つ背景には、イラン核開発を筆頭に周辺国の核兵器開発状況を把握し、必要ならば、そのための装備を使う判断に使う上で必要だ。

 日本は今のところ核兵器を保有する計画はありません、イスラエルのように、ほぼ持っているだろうが明確に有無を示さないという曖昧核戦略をとるわけでもありません、秘密裏にという話さえ聞きませんので、イスラエルのように自国への核攻撃が切迫した場合に保有する通常兵器以外の兵器を使用するという選択肢は、核の無い日本には必要ないのです。

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