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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新年防衛論集二〇二三【4】新しい"88艦隊"のF-35B搭載全通飛行甲板護衛艦と海空同床異夢の懸念

2023-01-02 20:02:36 | 北大路機関特別企画
■いずも型2隻の負担集中
 北大路機関では毎年八月八日を88艦隊の日と位置づけ、イージス艦8隻とヘリコプター搭載護衛艦8隻の88艦隊整備を提唱していますがこの視点を新年防衛論集でも考えてみましょう。

 いずも型護衛艦のF-35B搭載能力付与、実のところDDHヘリコプター搭載護衛艦の増強は喫緊の課題といえます、それは海上自衛隊のプレゼンスオペレーションの拡大によりF-35B戦闘機を運用できる護衛艦の任務はインド洋や果ては欧州地域まで、はるな、くらま、の時代とは比較にならないほどの任務があります、負担は現状2隻に集中する構図だ。

 シーマンシップ、どうがんばりましても結局は人が運用している。ここで思い出すのは現在、ニュージーランド海軍の哨戒艦が三分の一の艦で無期限出航不能となっていることです、理由は人員不足、ニュージーランド政府はCOVID-19感染拡大対策を世界でもっとも厳格に実施したことで知られますが、そのための対策施設の運営要員は不足していました。

 ニュージーランドでは不要不急の人材として海軍の水上艦艇要員をコロナ患者隔離施設運営に転用したのですが、あまりに勤務環境が苛烈であり、かなりの数が海軍を離職してしまった、その結果艦艇が無期限出航不能となっています。いや、募集をかけて人員を集めて一から教育すれば良いのですが、それとて時間がかかる、そんな現状があるのですね。

 DDHヘリコプター搭載護衛艦、ひゅうが型護衛艦へF-35戦闘機運用能力を付与することも重要ですが、あわせて8個ある護衛隊の任務遂行能力を平準化することができれば、負担というものは海上自衛隊全体で大きくとも、一隻あたり、一部隊あたりではかなり低減するのではないでしょうか、これは発着訓練を行うF-35B部隊にとっても重要なのです。

 航空自衛隊のF-35B戦闘機、しかし将来的には海上自衛隊が独自のF-35Bを導入するのか、ということも考えなければならないかもしれません。統合運用を進めておかなければ、当然障壁となる問題です、それは航空自衛隊がF-35B戦闘機を島嶼部防衛に活用しようという、陸上自衛隊的な発想であり、グローバルな機動運用をそれほど考えていないためです。

 代替滑走路、ヘリコプター搭載護衛艦の全通飛行甲板は南西諸島の数多ある代替滑走路の一つにすぎない、こうした構図です。実際そうでしょう、F-35B戦闘機は宮崎県の新田原基地に配備される、これは南九州から南西諸島北部を防衛管区とする飛行隊、中国爆撃機の太平洋進出を阻むための要衝に配備されている、つまり南西諸島から動かせません。

 イタリア空軍とイタリア海軍でにたような問題が発生しています、イタリアは30機のF-35B戦闘機を導入しますが、結局どこが所管するのかを明確にできず、15機を海軍航空隊が、15機を空軍が配備することとなりました。それも二つの基地は200kmほど離れていまして、日本でいえばこの距離は概ね厚木航空基地と浜松基地、という距離感という。

 カブール、イタリア海軍は空母カブールを運用していますので、その艦載機としてF-35Bは必要なのですが、すると30機すべてを海軍が所管すればよいと思う、これは海軍の視点でしょう、しかし一方で空軍はAMX軽攻撃機とC-27輸送機により構成される遠征航空部隊へAMX軽攻撃機の後継にF-35Bを充てる構想で、海軍には一機も渡せないとしました。

 トリエステ、イタリア海軍は新たに強襲揚陸艦トリエステを配備しますが、こちらは満載排水量が40000tを越えていて、空母カブールよりも大きい、そしてトリエステもF-35B運用能力を有しています、つまり海軍航空隊はもっと多くのF-35Bを必要としているのですが、空軍は艦上に派遣することはできるとしつつも、海軍への管理替えはしません。

 海軍と空軍で同床異夢のような状況があった、ということなのですが、この状況、新田原基地にF-35Bを配備する航空自衛隊と海上自衛隊にも同じような状況はないのか、航空自衛隊が仮に海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦運用に理解を示したとしても、新田原基地から遙か遠いインド洋や大西洋へ派遣することへ航空自衛隊が理解を示すのか、とも。

 新田原基地へF-35B戦闘機以外にも、海上自衛隊の運用とは別個の機種といえる機体を増強しなければ、イタリア海軍のような問題が生じるだろう、こうおもうのですね。一方で海上自衛隊へF-35Bの管理替えも必要となるのかもしれませんが、しかし忘れてはならないのは海上自衛隊に練習機はT-5練習機、P-3Cなどプロペラの練習機のみということ。

 P-3C哨戒機も練習機に用いられていますが、確実にいえるのは海上自衛隊にF-35B戦闘機の搭乗員を養成する能力といいますか、適合する練習機の機種がありません、いや、T-7Aレッドホークとホーク練習機を購入すればよいとも、アメリカに全部留学するという手段もあるのですが、なんとなれ海上自衛隊に操縦士を養成する方法が現状無いのは確かだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二三時事:防衛産業撤退問題-国の示した"国有化"は最適解か?防衛産業撤退背景を考える

2023-01-02 18:16:38 | 北大路機関特別企画
■新年防衛論集二〇二三時事
 時事問題としまして前回は核兵器を巡る危険な転換点を紹介しましたが、本日は防衛産業に関する赤字防衛産業の撤退問題を巡る政府の対応について考えてみたいと思います。

 防衛産業、政府では防衛産業の国有化を検討する動きがある、一部報道などで報じられ始めています。防衛産業、不思議なのは”防衛産業が撤退を検討している”という点を、何故昭和と平成時代に撤退を検討していなかったのかまで踏み込んで考えていない点です、”ミサイル防衛により装備調達費用が削減され防衛産業が成立せぬ数しか発注が無い”為でないか。

 国有化を議論するのは一つの選択肢なのかもしれませんが、例えば数年に一度しか発注の無い飛行艇や、数年後に調達が有るのかないのかを明確にしなかった観測ヘリコプター、こうしたものを国有化したとして国有工廠の工員は何も仕事が無い時には何をしろというのでしょうか、PKO:ペンキ塗り草むしり大掃除にしても、限界があります、無理が無いか。

 撤退している防衛産業は下請けの業種や中小企業に集中しています、例えば装甲材や航空機主要部品など、下請け企業が撤退しますと三菱重工も組み立てる事ができません、するとこの下請けの、例えばピトー管とかフラップの付け根や車両のハッチなどを国有工廠が製造し三菱重工に納入する事が求められるのですが、そんな隙間産業は可能なのかと思う。

 装備の種類を増やし過ぎた、装甲車一つとってもAAV-7水陸両用車と73式装甲車に89式装甲戦闘車に82式指揮通信車と87式偵察警戒車と化学防護車にNBC偵察車と16式機動戦闘車と96式装輪装甲車や輸送防護車と軽装甲機動車と、新しくパトリアAMVが加わります。これでは個々分散され調達数に響きます、火砲もミサイルも更に増して多種多様だ。

 ミサイル防衛により予算が圧迫されて調達できなくなったのが防衛産業撤退の原因であり、要するにミサイル防衛の予算を別枠で確保出来るならば、昭和時代も平成初期にも防衛産業撤退の話はそれほど顕著化していません、要するに原因は企業体質でも少子化でも地球温暖化でもなく、防衛省が財務省の意向を受け調達を抑えた、需要不足にあるのですね。

 国有化というが、例えば防衛省だけで火砲を製造するとしましょう、すると砲身を精製する日本製鋼所の溶鉱炉も大坂城あたりももう一度あの大阪造兵工廠でも再建するのでしょうか、昔ほど数は必要ないので機銃を製造した豊川海軍工廠などを大阪に集約する事は出来るでしょうが、溶鉱炉からやるなんてことが国にできるのか、という疑問にたどり着く。

 株式取得による国有化という視点もあるのかもしれません、確かにミサイルを製造する東芝はじめ株式を一定数国が保有する場合は可能でしょう、しかし例えばF-2戦闘機を例に挙げれば、下請け企業は主要な企業だけで1500社に上ります、全部国が株式を取得すると万々歳なのでしょうが、その為の費用をどこが捻出するのか、という議論がありません。

 国有化の前に、小泉政権より前の小渕政権時代くらいの装備調達数を維持していれば防衛産業はそもそも撤退しない、もちろん利益を出すことが許されないし訓練中の事故でも製造物責任法を適用される事さえ有るのですから割には合わないのですが、撤退はせず社会的貢献として存続する選択肢はある筈です。まず政府は視点を変えてみるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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新年防衛論集二〇二三【3】岸田ドクトリンは中国脅威を正面から受け止め安倍ドクトリンは世界と共に受流す

2023-01-02 14:11:44 | 北大路機関特別企画
■FOIPかゲオポリティクス
 今回は戦略というひろい視点から物事を考え防衛政策の理解への一助としたいのです。

 岸田ドクトリン、中国脅威を正面から受け止めて云々、こうした論調が安全保障関連三文書からは読みとれるもので、開戦前夜の緊張を直視するような視点とともに十年間で防衛力を整備するという、前夜という割には白夜のような長々とした施策を提示しています、しかし、FOIPの安倍ドクトリンの、敢えて受け流すという姿勢とは、逆行した印象です。

 日本の安全保障はグローバルな、いや全地球的という単語がインド太平洋では当てはまらないと言うならば、大西洋以外のグローバルといいますか、こうした指針へ転換したはずなのですが、いつのまにか伝統的ゲオポリティクス的、いわばハートランドとリムランドの関係の狭い大陸的な安全保障政策へ戻っているのではないか、不思議に思うのですね。

 受け流す姿勢、安倍ドクトリンは中国脅威を正面から見ていない、こうした非難も成り立つのかも知れませんが、受け流しグローバルな視点をもつことにより、安全保障といえば中国の侵略に備える、北朝鮮の核攻撃に備える、ロシア軍北海道上陸に備える、この三つの選択肢という安全保障から、地域安定に日本の防衛力を昇華させた構図でもあります。

 集団的自衛権公使と憲法の問題があるので、安倍ドクトリンの世界と強調を深めて戦争をなくそう、そのなくすべき戦闘の中には極東地域も含まれる、という概念は日本国憲法を逸脱しており、従来のように戦争する相手は中国だけなので中国に撃ち込めるミサイルを重点的に整備しよう、この岸田ドクトリンは法的には正解ではあるのですけれども、ねえ。

 憲法改正、実のところ安倍ドクトリンは最終的に憲法改正により、憲法が目的とした平和的生存権を直視する、現状の手段としての平和を重視し結果としての平和は度外視する憲法からの脱却を目指していたと考えられるのですが、その安倍ドクトリンは安倍元総理暗殺事件により亡くなり永遠に実現することができなくなってしまいました。継ぐのは誰か。

 FOIPの継承かゲオポリティクス回帰か、問題なのは、これにより防衛力の概念が大きく変わるためです。日本は日本本土に立てこもり周辺国の攻撃に長距離ミサイルで反撃する基盤を構築すればよい、これが今の新しい施策なのですが、FOIPを維持するならば日本にはパワープロジェクション能力が求められ、海外の共同訓練を増やす必要があると考えます。

 ダイナミズムな防衛力転換を進めている現在の岸田ドクトリンですが、その方向性と、安倍ドクトリンからお急激な展開が果たして妥当かをどの程度踏み込んで議論したのかが、いまひとつ見えないのです。そして、個人的私見を挟むならば、日本にひきこもるよりも、やはりFOIPの提唱者として、日本は自衛隊をグローバルに展開させるべきと思うのです。

 ヘリコプター搭載護衛艦、増強すべきと考えます。しかし護衛隊群そのものは増強すべきではないとおもう、それは防衛費がGDP2%となっても、です、なぜならば現在の四個護衛隊群編成が確立したのは1974年であり、第一次石油危機の時代です。それ以降日本は幾度か景気後退に見舞われましたが、四個護衛隊群を維持できているのはこの点にあります。

 新しい88艦隊、現在の四個護衛隊群は二個護衛隊を基幹としており、一つの護衛隊をDDHヘリコプター搭載護衛艦を中心とした対潜掃討部隊、一つをDDGミサイル搭載護衛艦のイージス艦を中心とした防空部隊、こう区分しているのですが、イージス艦の8隻体制が確立した今日、防空部隊と対潜掃討部隊で護衛隊を分ける必然性がなくなり柔軟に動ける。

 F-35B戦闘機を搭載するヘリコプター搭載護衛艦、航空自衛隊は護衛艦にも発着可能であるF-35B戦闘機を42機導入する計画であり、F-35Bはクイーンエリザベス級空母を運用するイギリス海軍であれば12機で一つの飛行隊を編成していますが、その一つ前型にあたるインヴィンシブル級航空母艦ではハリアー攻撃機、平時は5機を定数としていました。

 5機というのは如何にも過小ではあるのですが、必要に応じて飛行隊の空母展開を繰り変えることで対応しています。この視点で考えるならば、ヘリコプター搭載護衛艦はF-35Bを搭載した場合は防空から航空打撃まで担えるものですし、AH-64D戦闘ヘリコプターとMV-22可動翼機を搭載した場合は両用作戦へコマンドー空母のように運用できるのです。

 全通飛行甲板は様々な装備を運用できますので、SH-60K哨戒ヘリコプターを搭載するだけでは対潜掃討艦ですがMCH-101掃海輸送ヘリコプターを搭載した際には掃海母艦としても運用可能です、アメリカ海兵隊はMQ-9無人偵察機の強襲揚陸艦より運用する艦載型を研究しており、こちらは偵察攻撃に監視用、ソノブイを装備し対潜哨戒にさえ対応します。

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新年防衛論集二〇二三【2】FOIP自由で開かれたインド太平洋構想は継承されるか?グローバルか一国主義か

2023-01-02 07:00:41 | 北大路機関特別企画
■戦略の明確化が基点
 素人は戦略を語り玄人は兵站を語るといいますが、戦略とは戦争するしない筆頭にどの国と友好関係を結ぶのかという大前提を画定する事に在りますので戦略がなければ兵站を概念化できません。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋構想は、今後どのようになるのでしょうか、岸田ドクトリンというべき安全保障三文書では、日本周辺へローカルな安全保障基盤再構築へと回帰しているようで、安倍ドクトリンでの太平洋とインド洋、二つの大洋と地球儀を俯瞰する安全保障枠組み構築という視点から若干後退したような印象が拭えないのです。

 インド洋という視点を従来のアジア太平洋に切り替えて国際公序の基盤を考えた安倍ドクトリンは、考えれば非常に先進的なものであり、そして間接的にではありますが米中軍事衝突という懸念を少なくない部分で回避させたという意味はありました、なぜならばアジア太平洋というのは、アジアが中国で太平洋がアメリカ、二国対立の理念でした。ここが。

 太平洋とインド洋を結ぶ概念、この重要な点は中国が地域大国から超大国を自称しようとする中、インドを世界最大の民主主義大国として重視するとともにインド洋はアフリカ地域と隣接しており、これはアフリカ地域との歴史的関係の深い欧州地域を、この地域の安全保障へ関与させるという転換点であり、非常に広い視野の安全保障概念となる構図です。

 インド軍は定期的に艦隊を日本へ親善訪問させるとともに海上自衛隊もプレゼンスオペレーションとしてヘリコプター搭載護衛艦をインド洋へ親善訪問を繰り返し、その一環として東南アジア諸国やオセアニアと南太平洋諸国との協力関係を強化しており、インド軍はさらに戦闘機部隊を日本へ派遣し航空自衛隊と共同訓練を実施することとしています。

 イギリス海軍は虎の子空母クイーンエリザベスの処女航海たる初の長期展開の目的地を横須賀基地としましたのもこの一環ですし、ドイツ海軍も貴重なフリゲイトを日本へ、こちらは晴海不当まで親善訪問させています。これこそFOIPの一つの成果であり、関係する国を多くすることで二国間の緊張関係を多国間の安全保障で予防外交する構図をめざした。

 安倍ドクトリンというべき施策は、重ねて安全保障関連法整備としまして自衛隊の活動領域に裁量を広くすることに成功していますが、これもFOIPとして活動領域が広範囲、グローバルに広がる中でその提唱者たる日本が、この分野で後れをとることは、全体の認識共有に逆行する、こうした観点からの整備といえるでしょう、実行力というものを感じる。

 地域安定がもはや国際公共財となっている、受ける印象はこうしたものです。アメリカと中国の蜜月関係時代、いや習指導部以前の胡指導部時代には中国は国際協調を基調としており、戦狼外交という軍事行動上等の習指導部時代というものは逆にここまで中国は代わってしまうものなのか、驚かされたものですが、胡錦濤時代の改革、意味は大きかった。

 バイラテラル関係という、自転車の両輪に見立てて世界の知的財産集約拠点アメリカと世界の工場たる中国、この二国間系が成立し成熟したのが胡錦濤時代であり、これは中国が自国内での自己完結を目指す製造業と技術での世界長店を目指す現代でも代わるところではありません、すると世界の工場と戦争が発生するという事態は避けねばならない。

 アジア太平洋という概念は同時に言い換えればバイラテラルな関係を安全保障面で具現化したといえるのかもしれません、これをインド太平洋に置き換えるならば、製造業を強化する政策は中国以上にいまインドが重視している分野でもあり、またインドの製造業支援と日本の関係を考えれば、FOIPを提唱した安倍ドクトリンをインドが歓迎した背景に。

 自由で開かれたインド太平洋構想、FOIPは中国には非常に難しい課題といいますかやっかいな課題を突きつけているといえるでしょう、中国は基本的に二国間外交を提唱しており、アメリカに対しては実は太平洋を破産での隣国という事実を棚上げし、アジアの問題に干渉するなとの姿勢を突きつけ、南シナ海問題には二国間外交を強いている構図なのです。

 二国間外交という視点は聞こえはいいかも知れませんが、日本やインド、世界第二位の経済大国で核兵器を持つ中国に対して、世界第三位の経済大国や世界第二位の人口と核兵器を保有するインドならばともかく、東南アジア諸国が一つ一つ二国間外交で中国と対峙する場合、経済力や軍事力や投資や観光産業などで必ず譲歩を強いられてきた歴史があった。

 FOIPの概念の強さは、このFOIPが概念であり、安全保障協力機構や多国間協力枠組みではなく、壊しようがない概念であり理念、いわば国際公序に関する理想を提示したという点です、機構や枠組みであれば圧力で壊すことができますが、理念や概念は曖昧模糊としているいっぽうで物理的なものではありませんので中国はこれを壊すことができない。

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