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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

開戦一ヶ月!ロシア軍ウクライナ侵攻,無差別砲撃と長期前進停滞-ロシア軍BTG大隊戦術群その編成上の欠陥

2022-03-24 20:12:54 | 国際・政治
■ウクライナ軍奮戦一ヶ月!
 ロシア軍のウクライナ侵攻は本日開戦一ヶ月を迎えましたが当初二日で国家崩壊すると危惧されたウクライナ軍は驚くべき粘りを見せておりここ48時間で反撃に転じている。

 ゼレンスキー大統領による我が国国会での演説がオンライン方式により行われた昨夜と前後して、ウクライナ軍は過去48時間で首都キエフ北方において反撃に転じ、キエフ中心部15kmまで到達していたロシア軍を40km以遠まで押し戻したとしています。ロシア軍は後退しており、少なくともキエフ北方から最短距離を攻めるロシア軍を押し戻した構図です。

 ロシア軍は東部ハリコフを攻撃していた最精鋭部隊とされる、第1親衛戦車軍がハリコフ攻撃を中断しキエフに向かっていると報じられたのが三週間前ですが、こちらもキエフ外縁部に近づきつつあるとはいえ、動向が不明であり、ロシア軍で最も燃料消費量の多い部隊が400kmの迂回を行った事で燃料不足に陥っている可能性が近い実情があるのです。

 ウクライナ軍は指揮系統が高度にC4I化されており、集合と分散、目標の選定と攻撃までの即時攻撃能力を強化しており、対してロシア軍は19世紀型や日露戦争時代のような攻撃計画で、とにかく前へ、それ以外の指揮系統が不明瞭なまま前進している状況で、いわば兵器だけ新しい前時代の軍隊が21世紀型の、洗練された軍隊に各個撃破される構図です。
■一歩間違えれば北海道
 この現状を中々対岸の火事と視る事が出来ないのも正直な持論です。

 一歩間違えればキエフの惨禍は東京や札幌の現状であった可能性があり日本にとり対岸の火事ではない。こう考えるのは、正戦論、この表現さえ19世紀的なものなのですが軍事侵攻を正当化するには相応の理由が有る筈であり、有りもしない化学兵器による住民虐殺や核開発による核攻撃疑惑を、例えば国連やIAEAの査察さえ通さず陰謀を立てるとは、と。

 一歩間違えれば、というのは。ロシアが“北海道でロシア系住民が日本政府により虐待され化学兵器で虐殺されている”“日本が極秘裏に核兵器を開発してロシアを全面攻撃しようとしている”“日本がNATOに加盟してロシアを挟み撃ちにする準備を進めている”“日本はネオナチを全国民が支持している”主張し反論を聞かず攻撃を始める懸念があるのです。

 一歩間違えれば、こういうのはロシア当局も真面目にロシア系ユダヤ人のゼレンスキー大統領をナチスと考えないでしょうし、ナチスにユダヤ人は入れません。核兵器に至ってはロシアは過去国連やIAEAを通じた査察も行っておらず先月まで可能性さえ考えていなかった事が分ります。一歩間違えれば、こう考える故に、対岸の火事とは思えないのですね。
■ロシア軍苦戦の背景にBTG
 ロシア軍がここまで停滞している背景は果たしてどういったものなのでしょうか。

 ロシア軍BTG大隊戦闘群、ウクライナ侵攻に際して大量に投入されているが現状は観ての通りとなっていまして、これはわたし自身の反省も含めて様々な視点で過大評価があったと痛感します、様々な視点と云うのはロシア側も投入した戦場と想定した戦場の乖離、また部隊訓練評価と装備や人員水準、そして政策決定者のBTGへの過大評価を示します。

 BTG大隊戦闘群は600名から800名規模、戦車中隊と歩兵中隊を複数、そして砲兵大隊を隷下に置き、砲兵大隊と別に全般支援火力であるロケット砲兵を置くという。この上で防空砲兵や工兵を編成に含む非常に高い火力を発揮する部隊ですが、歩兵はこの内200名程度であるとのことで、歩兵よりも火力を重視し、砲兵大隊戦闘群と揶揄されそうな編成だ。

 戦闘部隊として歩兵が少ない印象がありますが、これは下車戦闘の人員規模であり、BMP-2かBMP-3装甲戦闘車31両を装備、更にBTG大隊戦闘群は偵察中隊を有し、これら部隊は通信中隊と電子戦部隊が全般支援する編成です。偵察中隊が目標を先鋒部隊として把握しながらBTG大隊戦闘群は前進軸を進むため、歩兵は最後の瞬間、という事なのでしょう。
■ソ連時代の自動車化狙撃連隊と比べ
 ロシア軍の編成は歩兵が少なすぎるのですが打撃力に特化する懸念というものはソ連時代であれば冒さなかった失敗であるように思う。

 自動車化狙撃連隊、ソ連時代の作戦基本単位は機械化歩兵部隊と戦車部隊とを組み合わせた連隊編成であり、冷戦時代の陸上自衛隊もこの自動車化狙撃連隊をかなり意識した上で想定し戦術体系を構築していました。しかし、ソ連時代の攻撃前進第一とする作戦ドクトリンに依拠すれば、連隊編成ではなく歩兵を大隊規模としても対応できると認識がかわる。

 BMP-3装甲戦闘車等を見ますと分かる通り攻撃前進第一となっていまして、下車戦闘によるマニューバの停滞などは忌避すべき思想の表れと云えましょう。また、これはBTR-80部隊がソ連末期、アフガニスタン侵攻に際して山間部対ゲリラ戦を展開する際、連隊では少人数ゲリラに対し所掌が難しく、結果的に重戦力軽戦力が部隊小型化の必要を痛感した。

 BTG大隊戦闘群というものはこうした認識の上で自動車化狙撃連隊を大型過ぎる無駄の典型として、しかし火力と戦車は重要だ、こうした意図する背景は別々でありながら各々の指揮官が最適化された回答として、コンパクト化する、そして減らすのは歩兵部隊、加えるならば大袈裟な連隊長ではなく若々しい大隊長を指揮官に充てる、帰結として生まれた。

 ソ連時代とロシア時代の違いは、特にソ連では国防省の独自性が担保されており、前任のセルジュコフ国防相の現場に依拠しない国防改革には意見を示せました。実際、自動車化狙撃連隊はアフガニスタンにてコンパクト化される前線の応急編成が採られていましたが、NATO正面での部隊コンパクト化は当時のオルガコフ参謀総長の反対で実現していない。
■政治軍関係,共産党時代とプーチン時代
 上記視点から砲兵部隊に対して歩兵部隊が少なすぎるという問題点が見えますが、ここにソ連時代とプーチン時代のロシアの政治と軍事の関係の特異性が透けてみます。

 ショイグ国防相、現在の国防相時代に入りますと変革を加速させますが、セルジュコフ国防相時代のロシア陸軍コンパクト化により、一時は千島列島の機関銃師団を例外として、全ての師団を旅団化しました、これは人件費削減といいますか、ロシア軍財政事情に合せたコンパクト化としたのですが、これにより大量の幕僚が軍を去り、この状況は継続した。

 大隊と連隊は人数が異なる、こう指摘されればその通りなのですが、加えて大隊本部と連隊本部では幕僚規模が異なります、人数としては連隊本部幕僚でも諸兵科連合部隊を指揮するには限界があるのかもしれません、NATOは大隊を作戦基本単位としていますが、これはあくまで旅団隷下に置くためで、大隊本部は旅団司令部の手厚い支援下で戦っている。

 ロシア軍では高い火力を有するBTG大隊戦闘群は、旅団から独立して単体の運用が可能という編成であり、実際今回のウクライナ侵攻に際しても75個BTG大隊戦闘群が集結とか、90個BTG大隊戦闘群に増えた、というように兵力が1BTGや20BTGという単位の様に扱われていたのはご記憶の通り。しかし、ここで編成由来の大きな問題が発生してきます。
■大隊長に70km先の戦場を強いる
 BTGのもう一つの問題は指揮官が大隊長であり大隊本部の僅かな幕僚しかいませんが長射程の火砲を付与する事で大量の情報を処理せねばならないというものです。

 IT革命、この響きは日本での森内閣時代に進められたもので、漸く判子主義が終わりつつも紙文化が残る状況です。そしてロシアのIT状況を見ますと特にロシア軍ではさらに遅れており、大隊幕僚は歩兵の砲兵の戦車の、近接戦闘か対砲兵戦か敵戦車との遭遇か戦闘ではなく兵站か車両の故障、こうした情報を包括処理し管理し命令を出さなければならない。

 業務過多に陥っているのではないか、BCT大隊戦闘群のウクライナでの現状は、そもそも指揮官は戦闘と共に独立運用を想定しているのですから車両整備や弾薬燃料と糧食の補給に負傷者後送を行った上で戦闘指揮を執らねばなりません。そしてもう一つ、編成を見ますと強力な火力を有していますが、この強力な火力が足かせになっているようにも思える。

 ロシア軍はソ連時代の砲兵重視を継承しているのでしょうか、大隊戦闘群とは言っても歩兵大隊と戦車中隊という近接戦闘部隊を支援するのに、砲兵大隊とロケット砲兵中隊という同数の火力戦闘部隊を含んでいます、そしてロシアの火砲の性能は高く、これは一見して利点と解釈されがちですが、性能が高いという事は射程が長い事を示し、標的は遠い。

 2S35SVコリツィア自走榴弾砲の最大射程は70km、京都市から神戸市まで到達する物凄い性能ですが、こんなものをBTG大隊戦闘群は装備しています。勿論2S35SVは新型ですので今回投入されている部隊の自走榴弾砲には2S19ムスタ自走榴弾砲も多数あります、これも旧型ではありますが射程は40kmに迫り、京都市から大阪市を狙える射程となっている。

 砲兵大隊にロケット砲兵中隊という編成は、旅団砲兵どころか師団砲兵に匹敵する水準ですが、BTG大隊戦闘群本部は、要するに最新装備を持つ場合は70km先の情報を、旧型でも40km先の情報を、IT化が遅れているという事はかなりアナログな通信手段を把握しなければなりません、そして砲兵は遠くを狙うとしても戦闘は近接戦闘部隊が所掌するもの。
■僅かな損耗で麻痺-少なすぎる歩兵
 この編成のもう一つの問題は砲兵部隊が70km先を狙うのに手元の歩兵部隊は僅かであり一直線に進むほか横の広がり、戦線を形成でき無い問題があります。これは歩兵の代用に偵察部隊を転用するなど更なる無理を生む。

 歩兵大隊とはいうもののBTG大隊戦闘群の歩兵は200名前後、陸上自衛隊の師団普通科連隊一個普通科中隊よりも若干少なく、この長い戦域を担保するには敵中枢制圧等は別として、地域占領や対遊撃戦など、歩兵の数が必要な戦闘は不可能であり、特に多数の歩兵を必要とする市街地戦闘などは、苦戦するというよりも元来は想定外の編成といえましょう。

 アフガニスタンでの戦訓に、偵察部隊は騎兵部隊のように精鋭要員を集めて編成されていることが、偵察部隊ではなく指揮官が信頼する単なる精鋭部隊として活用、いや酷使、こうした状況となりまして大きな損耗を強いられ、偵察部隊は偵察以外に使うべきではないとの戦訓が在りました。しかし今回、偵察部隊は先鋒と前衛を担い損耗を強いられている。

 M-1A2戦車、アメリカ陸軍では湾岸戦争において偵察部隊として確かにM-3騎兵戦闘車を装備していましたが、先鋒に装甲の比較的薄いM-3へ無理を強いる事は無く、M-1A2戦車を先頭に前進しました、C4I性能の優れた戦車は情報優位に資するものですし、M-3は下車歩兵が限られる為に地域占領に参加しない、こうした程度の運用区分で快進撃を支えた。

 ウクライナでのロシア軍運用は、BTG大隊戦闘群の偵察装甲車が先鋒を担っているのでしょうが、小型で軽快な装甲車は言葉を転じれば薄い装甲の車両です、偵察部隊は劇的な損耗に曝されると共に、偵察部隊を専門部隊として編成していますので、この部隊が損耗する事はBCT大隊戦闘群の前進能力を喪失する事と表裏一体という事実を示されています。
■地域紛争用の編成を全面侵攻に
 編成の無理は上記の通りなのですが、これは例えばロシアへ友好的地域に派遣し現地の民兵が足りない歩兵を補う様な想定なのでしょうか、するとロシア軍侵攻をウクライナ国民が歓迎しない時点で現状は不可避といえます。

 BTG大隊戦闘群は、地域紛争への投入を念頭としていたのでしょう。この部隊編成は、ロシア軍がBTG大隊戦闘群を派遣した友好国での作戦で現地の陸軍が歩兵大隊をロシア軍になりない分補填する方式としたならば、つまりシリア内戦介入やカザフスタン騒擾、つまり受入国の軍隊協力という準備が在ってのみ機能する編成であったのかもしれません。

 火力戦闘部隊と近接戦闘部隊が同数と云うのは、この他に島嶼部防衛として砲兵部隊主力の戦闘で砲兵部隊を敵近接戦闘部隊から防衛する運用が向いており、また、師団砲兵並の火力戦闘部隊を隷下に置くならば師団砲兵並の情報収集能力を確保するべきだったともいえましょう。そしてなにより、歩兵が必要な市街地戦闘にはまったく不向きと云える。

 編成として例えば、歩兵が1個大隊ではなく3個大隊あれば充分な攻撃衝力を維持できた可能性があり、例えばBTG大隊戦闘群というならば歩兵大隊に砲兵大隊とロケット砲兵中隊を点ける等せず、2個歩兵大隊に1個砲兵中隊を加える編成ならば、歩兵の迫撃砲と併せ近接戦闘部隊と火力戦闘部隊の均衡を保てたのかもしれません。なぜこうなったのか。

 軍事演習では砲兵隊の大量の火力投射は迫力がありますし、標的は反撃してきませんので政策決定者が自己評価を誤ったのかもしれません。そしてもう一つの可能性として、ロシア軍は真剣にロシア軍がウクライナへ侵攻した瞬間にウクライナ人民がロシア軍を歓迎し、親ロシア派武装勢力が次々とロシア軍に歩兵大隊を供給してくれると信じたのでしょうか。
■市街地差別砲撃を行う背景
 ロシア軍、しかし砲兵重視の編成は脅威です、市街地を無差別砲撃するのですから非戦闘員被害や民生被害は夥しい。

 ウクライナではロシア軍合近接戦闘を避け市街地への遠距離からの砲兵砲撃を加えている、こう表現されるものですが、BTG大隊戦闘群の編成を見るならば近接戦闘を避けているのではなく元々近接戦闘能力を低くしており、充分に砲兵で叩いてからでなければ前進できないのです。するとロシア政府は短期間での勝利を考えたとすれば、編成と矛盾します。

 ロシア軍はどのように転じたとしても最終的に勝利まで継続するのでしょう、問題はこうした問題が顕在化した以上、国軍の再編を進めなければなりません。また想定以上に防御上の問題を抱えていたT-90戦車やT-80戦車の新型戦車への置き換えが必要ですし、BMP-3装甲戦闘車も下車戦闘主体とする必要があり、またなにより通信のC4I強化が必要です。

 変革が必要なロシア軍ですが、このまま戦闘を続けるならばロシアにどのような国力を残す事が出来るのか、最強の経済制裁と呼ばれたSWIFT除名は実行され、続いて世界銀行や国際通貨基金除名の可能性が出ており、ロシアに残る外資系企業は日欧米市民運動に急かされるように撤退し1990年代のロシアへと回帰しつつあります、経済はどう変貌するか。

 経済破綻は、ロシア軍が例えば仮に今日中に突如ウクライナ撤退を実現したとして明日にはSWIFT復帰で来週には経済制裁が終了し来月には外資企業も戻ってきたとしてGDPは13%のマイナス成長になるという。勿論そんな事は有得ませんので、ロシア軍を再建できるような体制まで経済が復旧するには、プーチン大統領時代でもあと30年は必要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ゼレンスキーウクライナ大統領国会演説-これまでの支援に謝意,ロシア大統領府報道官は核兵器実戦使用を示唆

2022-03-24 07:00:24 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍ウクライナ侵攻開始から間もなく一ヶ月ですがウクライナ軍は驚くべき粘り強さと官民一致の抵抗によりロシア軍を押しとどめています。

 ゼレンスキー大統領は23日夕刻、衆参両院議員を前に初のオンライン演説に臨み、ロシアへの経済圧力をアジアで最初に決断した日本政府の決断やウクライナへの支援へ謝意を示したうえで、ロシア軍ウクライナ侵攻に際して機能不随に陥った国連での改革や、ロシア軍による無差別攻撃にて甚大な被害を受けたウクライナの国土復興へ協力を要請しました。

 衆参両院議員を前にした演説では、通訳の難しさはありましたが、チェルノブイリ原発をロシア軍に占領されソ連時代の原発事故から続く長期間にわたる核汚染物質管理体制を阻害されている点、また、ロシア軍によりサリンなど化学兵器の使用が懸念されている現状を説明し、福島第一原発事故や地下鉄サリン事件を知る両院議員の良心に訴えた構図です。

 ゼレンスキー大統領は、日本の平和外交を深い意味から理解しているようで、当初考えられた対戦車ミサイルや防空システムなどの武器援助や三海峡封鎖などを要請する事は無く、ロシアへの経済制裁を更に強化する事を望んだ姿は印象的でした。ただサリン以外の大量破壊兵器について心配な情報がロシア大統領府報道官から示されました、核兵器について。

 ロシア大統領府のぺスコフ報道官はCNNインタヴューに応え、ロシア軍が核兵器を使用する可能性はあるのかとの問いに対し、ロシア軍には核兵器を使用する手順が在り、決定的な敗北が想定される場合には核兵器の使用はあり得ると発言、改めてウクライナ国内での戦闘が核攻撃へ発展する可能性を示しています。実際にはどのような状況が考えられるか。

 戦術核兵器は定義が様々ですが、機甲師団や重要拠点など即応が必要な目標に対しては砲兵隊の短距離ロケット弾などを用い即座に対応する事も可能ですし、イスカンデル弾道ミサイルなど短距離弾道弾に搭載する事も可能、また海軍の大型対艦ミサイルにはHE弾頭以外に核弾頭型があり、政治が使用決断するならば投射手段は難しいものではありません。

 核兵器による威嚇の段階であり、核兵器使用は不可避ではありませんが、例えば核攻撃が行われた場合に各国からのロシア外交官追放や国連除名を含む厳しい措置が無い、つまり核攻撃により戦争を短期間で終わらせられると判断するならば、投射する可能性が否定できません。日本は常識を超える様な制裁措置を含め、考えておくべきなのかもしれません。

 ウクライナ侵攻開始から間もなく一ヶ月、しかしロシア軍の実情は驚くもので、先ず軍直轄部隊の電子戦装備や防空指揮車や砲兵指揮車にレーダーなど、故障は勿論燃料切れとなった車両が破壊されず放置され、毎日のようにあの1976年のミグ25函館亡命事件に匹敵する様な絶対に第三国に渡ってはならない装備がウクライナ軍に鹵獲され続けています。

 戦術核兵器使用については懸念されているのですが、そもそもロシア軍の侵攻部隊指揮系統が全く分からず、なにしろ敵前で60kmも渋滞する程の攻撃軸などの設定は不得手という状況ですので、ウクライナ軍とロシア軍の混交している状況でロシア軍自身を巻き込まずに核攻撃は出来るのか、また核防護装備がお粗末な現状で自軍被害が大きくないか、と。

 ウクライナ侵攻の野戦部隊を統括する総司令官が誰なのか、この時点から不明といわれています。もっともロシア軍は何をやるか分らないという事が、今回のウクライナ侵攻で判明しています、従って20世紀や21世紀の軍事常識では測り兼ねている為に、敢えて自軍を巻き込み使用する懸念さえあるのが不気味なのですが、こうした素朴な疑問があります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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