■ウクライナ戦争勃発す
ウクライナ戦争勃発す。こうした時事情報とともに改めて北の守りを考えなければならないような現状を感じるところですが改めて師団祭の様子です。

第7師団祭、写真特集として掲載していますが、こうした日曜特集の記事は実はかなり早い段階で次特集を決定し、その上で準備にかかります、何故ならば掲載する写真の選定もさることながら文章総量が凄いことになりますからね、すると情勢変化も起き得る。

戦車の重要性、わたしは防衛力の基本とは軍事力の目的が土地の収奪によるものであるから、マハン先生には悪いと思うのですが究極のところ陸上防衛力が第一であり、海上防衛力は経済力の根幹という認識で死活的に重要なものはどちらか、と考えています。

情勢変化、こうした視点で駒門駐屯地特集の次は戦車教育の聖地を特集したのだし、次は一つ豪勢に戦車連隊の並ぶ機甲師団を特集しよう、こうした準備の上で進めていました。そして、時事問題には関心がありますので、ロシア、この変容も知識としてはあった。

しかし、です。ロシア軍がまさかウクライナへ全面侵攻する、そんなことは中々想像できませんでした。いや、実施する確信があったとしても、現実感がないのですね、あたかも3.11の前に、いつか巨大地震で都道府県単位の壊滅する被害が起こる、想像したのと同じ。

戦車は重要な装備である、これが並んでいるだけで抑止力となり、そもそも戦争を起こそうと周辺国の指導者に考えさえない。もっとも航空優勢がなければ動かせませんし、海上交通が無事でなければ戦車部隊を維持する経済力を維持できないのですけれども、ね。

ウクライナではジャベリンミサイルが威力を発揮しているということですが、残念なのはジャベリンミサイルがウクライナ軍へ大量に配備されているということだけでは、ロシア軍の侵攻を防ぐ抑止力とはならなかった、ということです。そして市街は蹂躙されている。

ジャベリンさえあれば、驚いたのは今回のウクライナ戦争によりこうした始点が示されていることですね、もちろん一部ではあるのですが、ロシアの戦車が意外なほどにジャベリンミサイルに破壊されているという印象なのでしょう、しかしウクライナ有利ではない。

抑止力というものを考えますと、やはり"上陸できない"という視点を相手国に突きつける必要がありまして、その点でやはり戦車なのだな、と。具体的には戦車を基幹とした装甲機動部隊が、侵攻した場合には大打撃を被る、こうした視点を突きつけられねばならない。

01式軽対戦車誘導弾、これは軽量ですので本州から緊急展開させるには理想的な装備といえるのですが、射程が短く必然ひらけた地形ではこちらがわが撃破される覚悟とともに運用せねばならず、犠牲を前提とした作戦計画は指揮官として落第の最悪な選択肢といえる。

スパイクNLOSのような対戦車ミサイル、射程が30kmを越えるミサイルであれば、それなりに有用ではあると思うのですが、これも戦車にたいしての抑止力とはなるのでしょうが、押し返すだけの装備なのかととわれれば、対戦車ミサイルは防御的な装備ではないか。

96式多目的誘導弾、イスラエルのスパイクNLOSはもともと自衛隊の96式多目的誘導弾と同じ光ファイヴァー誘導方式のミサイル、旧式化したM-48戦車を発射装置に転用したペレフ戦車駆逐車、当初マガフスパイクとよばれた、こうしたものにも搭載されていました。

光ファイヴァー誘導方式は射程をのばすことができる、見通し線外の目標もデータ通信により画像伝送し命中させられる利点があったのですが、しかし結局のところ有線誘導であり、射程延伸には限度があります、そこでスパイクNOLSは改良型をTV誘導方式とした。

TV誘導方式のミサイル、技術的には日本も可能だとは思うのですが、パイオニア無人機を1980年代から運用していたイスラエル実績、一方で日本が対峙しなければならない脅威対象が展開可能な電子戦能力を考えますと、電子妨害を受けない有線誘導の利点も捨て難い。

ミサイルについて少々論点が脱線しましたが、結局のところ、安くてお手軽にみえる携帯対戦車ミサイルには限界が、抑止力としても機能するかが疑問ですし、ウクライナは国家総動員態勢があり、そして2014年のクリミア併合から国軍を倍以上に増強させました。

日本にとって、ウクライナでジャベリンが威力を発揮しているから日本も高価な戦車をそろえずとも大丈夫、という視点はなかなか考えられないのです。もちろん、国民皆兵で東京や大阪京都が壊滅しても戦うと国民的な合意があれば別なのですが、議論の次元が違う。

戦車、もちろん数をそろえるだけではなく、近代化改修を、普通科隊員の装備が年々戦闘装着セット丸ごとではなく個々に地道に進歩するように強化される必要はあります、その費用は回数を数えるごとに戦車調達費用に近づいてゆくのですが、継続せねばなりません。

世界を見ますと、いやウクライナ情勢で今後世界は大きく変わる事となるのでしょうけれども、その前段階として既に欧州ではEMBTという、革新的ではないけれども意外に手堅い、将来有望な戦車が開発されつつありまして、今後の動静が非常に気に成るところです。

EMBTとして、レオパルド2とルクレルクの良いとこ取りする他ない状況の欧州について。ルクレルクのデータリンク能力、世界初の開発時点での標準装備を誇るものですし、自動装填装置も採用しています。90式戦車と並ぶ自動装填装置の採用は、画期的でした。

自動装填装置、これを採用しますと砲塔容積を局限化出来ますので、乗員区画に装甲防御を集中すれば重装甲と軽量化を両立できます。信頼性が95%程度であり、十分に見えるものの言い換えれば20発撃てば一度は装填不良を引き起こすもので、死活問題ではある。

日本でも富士総合火力演習では90式戦車が射撃を示す赤旗から装填不良を示す燈旗に載せ替えられる様子が数万の国民注視のもとで行われていまして、大丈夫なのかな、と危惧させ、皮肉の表現も数多みました。フランスも同様、アメリカもストライカーで苦労します。

もっとも当方は最初から完成させられた技術は逆に冗長性が低いと考えていましたので、欠陥を放置さえしなければ大丈夫だという認識で、もっとも日本では62式機銃のように欠陥が放置された事例もあったので油断できませんでしたが、90式戦車については幸いです。

90式戦車は富士総合火力演習を視ての通り、是正されていましたので、そこまで見守る構図でした。ルクレルクも厳しい不良への是正と改善を重ねて今日に至るのですね。そういった意味でルクレルクの砲塔システムは、これ砲塔の単体では優れたものだったのですが。

しかし、レオパルド2の車体にルクレルクの砲塔、そんなものを最新装備として2020年もあと数ヶ月という段階で見せられたさいには嘆息も否めません。日本の場合は戦車開発を継続していたからこその10式戦車、そして開発が進められている次世代戦車の技術もある。

継続は力なりそのままの日本戦車技術なのだろう、と。次世代戦車、開発開始は明示されていませんが90式戦車の開発、TK-X計画は74式戦車の開発終了から即座に進められていますので、構成要素から既に進められているのは当然といえまして、開示もされています。

防衛装備庁陸上装備研究所の一般公開など、昨年は新型コロナウィルスCOVID-19感染影響をうけオンライン開催となりましたので逆に見学が簡単だった、こうした一般公開をみますと部分部分の、おそらく全体試作の前段階の部分試作に繋がる技術が見て取れます。

これが欧州の場合は特にドイツで断絶している。この点でまだ技術開発を継続している日本は僥倖といえたのですね。もっとも、戦車だけで陸上装備体系が完結する訳ではありません、すると日本でも遅れが深刻な分野というものは存在しまして、これが大問題という。

装甲戦闘車、自衛隊が完全に後塵を拝しているのは2004年に89式装甲戦闘車の製造を終了して以来まもなく数年の内に20年という現実です、もともと350両ほど製造して北部方面隊の師団のうちの一個普通科連隊を配備充足させる構想であったようなのですが、さて。

冷戦終結のあおりを受け68両、第一線部隊では機甲師団である第7師団の第11普通科連隊、その半分の普通科中隊に配備するのが精一杯でした、一方欧州をみますと、装甲戦闘車はAPC装甲人員輸送車を置換え、エリート部隊だけのものではなくなったのでしたが。

M-113をCV-90に、極論で実際1:1ではないのですが。箱型鉄製車体にトラックエンジンと無限軌道を装着しただけを揶揄されたM-113装甲車を置き換えるように、スウェーデン製CV-90装甲戦闘車が配備されてゆきました、強力な40mm機関砲を搭載しているもの。

ボスニア紛争を筆頭に、冷戦後の欧州への最大の脅威は周辺地域の紛争が拡大し及ぼす悪影響だ、と地域紛争介入への気運が高まり、そのためには歩兵を損害から防護するために装甲戦闘車の優先度が高まり、逆に平和維持任務などでは戦車が必要な状況は多くない。

戦車の地域紛争への需要は、多くないだけでソマリアPKOや2000年代のレバノンPKO任務では戦車こそが状況を左右したのですが、多くない、こうした状況から、冷戦時代の開戦即欧州大戦という有事は滅多に起きない想定から日々緊張、というような状況でした。

地域紛争では、普段使いの戦闘車両としては戦車よりも装甲戦闘車、そんな需要があったのですね。89式装甲戦闘車は35mm機関砲を搭載しており、それまでの各国装甲戦闘車といえばソ連のBMP-2が30mm、イギリスのウォリアーも30mm、という水準でした。

諸外国の装甲戦闘車の機関砲は、アメリカのブラッドレーが25mmでドイツのマルダーとフランスのAMX-10Pが20mmでしたので、35mmは最大級だったのですが、これも追い抜かれ、しかも40mm機関砲の砲弾がどんどん改良され、結果、高威力化してゆきました。

さて自衛隊、機械化部隊、今後はどのように展開するのでしょうか。いや89式装甲戦闘車も開発当時は重装甲といいますが、当時は26tという重量もなかなか横綱級の重さでしたが、それは1980年代の話、2010年代には装輪装甲車も一部が30t時代に入っています。

人命を考えますと日本の場合は、昔の様に赤紙で何名でも呼べるほど予備役はいませんし少子高齢化だ、装軌式装甲戦闘車は45t前後のものが基本となり10式戦車と比較しても重い車両が出ている所を見ますと、89式装甲戦闘車はその後継も含めて、そろそろとは思う。

BMP-2,しかしロシア軍ウクライナ侵攻で甚大な被害が出ているとはいえBMP-2と、そして見間違いかと思ったBMP-1を見ていますと、先ず性能よりも89式装甲戦闘車水準の物でも取り急ぎに五百輌六百輌と揃えられる体制の方が重要なのかな、とも思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ウクライナ戦争勃発す。こうした時事情報とともに改めて北の守りを考えなければならないような現状を感じるところですが改めて師団祭の様子です。

第7師団祭、写真特集として掲載していますが、こうした日曜特集の記事は実はかなり早い段階で次特集を決定し、その上で準備にかかります、何故ならば掲載する写真の選定もさることながら文章総量が凄いことになりますからね、すると情勢変化も起き得る。

戦車の重要性、わたしは防衛力の基本とは軍事力の目的が土地の収奪によるものであるから、マハン先生には悪いと思うのですが究極のところ陸上防衛力が第一であり、海上防衛力は経済力の根幹という認識で死活的に重要なものはどちらか、と考えています。

情勢変化、こうした視点で駒門駐屯地特集の次は戦車教育の聖地を特集したのだし、次は一つ豪勢に戦車連隊の並ぶ機甲師団を特集しよう、こうした準備の上で進めていました。そして、時事問題には関心がありますので、ロシア、この変容も知識としてはあった。

しかし、です。ロシア軍がまさかウクライナへ全面侵攻する、そんなことは中々想像できませんでした。いや、実施する確信があったとしても、現実感がないのですね、あたかも3.11の前に、いつか巨大地震で都道府県単位の壊滅する被害が起こる、想像したのと同じ。

戦車は重要な装備である、これが並んでいるだけで抑止力となり、そもそも戦争を起こそうと周辺国の指導者に考えさえない。もっとも航空優勢がなければ動かせませんし、海上交通が無事でなければ戦車部隊を維持する経済力を維持できないのですけれども、ね。

ウクライナではジャベリンミサイルが威力を発揮しているということですが、残念なのはジャベリンミサイルがウクライナ軍へ大量に配備されているということだけでは、ロシア軍の侵攻を防ぐ抑止力とはならなかった、ということです。そして市街は蹂躙されている。

ジャベリンさえあれば、驚いたのは今回のウクライナ戦争によりこうした始点が示されていることですね、もちろん一部ではあるのですが、ロシアの戦車が意外なほどにジャベリンミサイルに破壊されているという印象なのでしょう、しかしウクライナ有利ではない。

抑止力というものを考えますと、やはり"上陸できない"という視点を相手国に突きつける必要がありまして、その点でやはり戦車なのだな、と。具体的には戦車を基幹とした装甲機動部隊が、侵攻した場合には大打撃を被る、こうした視点を突きつけられねばならない。

01式軽対戦車誘導弾、これは軽量ですので本州から緊急展開させるには理想的な装備といえるのですが、射程が短く必然ひらけた地形ではこちらがわが撃破される覚悟とともに運用せねばならず、犠牲を前提とした作戦計画は指揮官として落第の最悪な選択肢といえる。

スパイクNLOSのような対戦車ミサイル、射程が30kmを越えるミサイルであれば、それなりに有用ではあると思うのですが、これも戦車にたいしての抑止力とはなるのでしょうが、押し返すだけの装備なのかととわれれば、対戦車ミサイルは防御的な装備ではないか。

96式多目的誘導弾、イスラエルのスパイクNLOSはもともと自衛隊の96式多目的誘導弾と同じ光ファイヴァー誘導方式のミサイル、旧式化したM-48戦車を発射装置に転用したペレフ戦車駆逐車、当初マガフスパイクとよばれた、こうしたものにも搭載されていました。

光ファイヴァー誘導方式は射程をのばすことができる、見通し線外の目標もデータ通信により画像伝送し命中させられる利点があったのですが、しかし結局のところ有線誘導であり、射程延伸には限度があります、そこでスパイクNOLSは改良型をTV誘導方式とした。

TV誘導方式のミサイル、技術的には日本も可能だとは思うのですが、パイオニア無人機を1980年代から運用していたイスラエル実績、一方で日本が対峙しなければならない脅威対象が展開可能な電子戦能力を考えますと、電子妨害を受けない有線誘導の利点も捨て難い。

ミサイルについて少々論点が脱線しましたが、結局のところ、安くてお手軽にみえる携帯対戦車ミサイルには限界が、抑止力としても機能するかが疑問ですし、ウクライナは国家総動員態勢があり、そして2014年のクリミア併合から国軍を倍以上に増強させました。

日本にとって、ウクライナでジャベリンが威力を発揮しているから日本も高価な戦車をそろえずとも大丈夫、という視点はなかなか考えられないのです。もちろん、国民皆兵で東京や大阪京都が壊滅しても戦うと国民的な合意があれば別なのですが、議論の次元が違う。

戦車、もちろん数をそろえるだけではなく、近代化改修を、普通科隊員の装備が年々戦闘装着セット丸ごとではなく個々に地道に進歩するように強化される必要はあります、その費用は回数を数えるごとに戦車調達費用に近づいてゆくのですが、継続せねばなりません。

世界を見ますと、いやウクライナ情勢で今後世界は大きく変わる事となるのでしょうけれども、その前段階として既に欧州ではEMBTという、革新的ではないけれども意外に手堅い、将来有望な戦車が開発されつつありまして、今後の動静が非常に気に成るところです。

EMBTとして、レオパルド2とルクレルクの良いとこ取りする他ない状況の欧州について。ルクレルクのデータリンク能力、世界初の開発時点での標準装備を誇るものですし、自動装填装置も採用しています。90式戦車と並ぶ自動装填装置の採用は、画期的でした。

自動装填装置、これを採用しますと砲塔容積を局限化出来ますので、乗員区画に装甲防御を集中すれば重装甲と軽量化を両立できます。信頼性が95%程度であり、十分に見えるものの言い換えれば20発撃てば一度は装填不良を引き起こすもので、死活問題ではある。

日本でも富士総合火力演習では90式戦車が射撃を示す赤旗から装填不良を示す燈旗に載せ替えられる様子が数万の国民注視のもとで行われていまして、大丈夫なのかな、と危惧させ、皮肉の表現も数多みました。フランスも同様、アメリカもストライカーで苦労します。

もっとも当方は最初から完成させられた技術は逆に冗長性が低いと考えていましたので、欠陥を放置さえしなければ大丈夫だという認識で、もっとも日本では62式機銃のように欠陥が放置された事例もあったので油断できませんでしたが、90式戦車については幸いです。

90式戦車は富士総合火力演習を視ての通り、是正されていましたので、そこまで見守る構図でした。ルクレルクも厳しい不良への是正と改善を重ねて今日に至るのですね。そういった意味でルクレルクの砲塔システムは、これ砲塔の単体では優れたものだったのですが。

しかし、レオパルド2の車体にルクレルクの砲塔、そんなものを最新装備として2020年もあと数ヶ月という段階で見せられたさいには嘆息も否めません。日本の場合は戦車開発を継続していたからこその10式戦車、そして開発が進められている次世代戦車の技術もある。

継続は力なりそのままの日本戦車技術なのだろう、と。次世代戦車、開発開始は明示されていませんが90式戦車の開発、TK-X計画は74式戦車の開発終了から即座に進められていますので、構成要素から既に進められているのは当然といえまして、開示もされています。

防衛装備庁陸上装備研究所の一般公開など、昨年は新型コロナウィルスCOVID-19感染影響をうけオンライン開催となりましたので逆に見学が簡単だった、こうした一般公開をみますと部分部分の、おそらく全体試作の前段階の部分試作に繋がる技術が見て取れます。

これが欧州の場合は特にドイツで断絶している。この点でまだ技術開発を継続している日本は僥倖といえたのですね。もっとも、戦車だけで陸上装備体系が完結する訳ではありません、すると日本でも遅れが深刻な分野というものは存在しまして、これが大問題という。

装甲戦闘車、自衛隊が完全に後塵を拝しているのは2004年に89式装甲戦闘車の製造を終了して以来まもなく数年の内に20年という現実です、もともと350両ほど製造して北部方面隊の師団のうちの一個普通科連隊を配備充足させる構想であったようなのですが、さて。

冷戦終結のあおりを受け68両、第一線部隊では機甲師団である第7師団の第11普通科連隊、その半分の普通科中隊に配備するのが精一杯でした、一方欧州をみますと、装甲戦闘車はAPC装甲人員輸送車を置換え、エリート部隊だけのものではなくなったのでしたが。

M-113をCV-90に、極論で実際1:1ではないのですが。箱型鉄製車体にトラックエンジンと無限軌道を装着しただけを揶揄されたM-113装甲車を置き換えるように、スウェーデン製CV-90装甲戦闘車が配備されてゆきました、強力な40mm機関砲を搭載しているもの。

ボスニア紛争を筆頭に、冷戦後の欧州への最大の脅威は周辺地域の紛争が拡大し及ぼす悪影響だ、と地域紛争介入への気運が高まり、そのためには歩兵を損害から防護するために装甲戦闘車の優先度が高まり、逆に平和維持任務などでは戦車が必要な状況は多くない。

戦車の地域紛争への需要は、多くないだけでソマリアPKOや2000年代のレバノンPKO任務では戦車こそが状況を左右したのですが、多くない、こうした状況から、冷戦時代の開戦即欧州大戦という有事は滅多に起きない想定から日々緊張、というような状況でした。

地域紛争では、普段使いの戦闘車両としては戦車よりも装甲戦闘車、そんな需要があったのですね。89式装甲戦闘車は35mm機関砲を搭載しており、それまでの各国装甲戦闘車といえばソ連のBMP-2が30mm、イギリスのウォリアーも30mm、という水準でした。

諸外国の装甲戦闘車の機関砲は、アメリカのブラッドレーが25mmでドイツのマルダーとフランスのAMX-10Pが20mmでしたので、35mmは最大級だったのですが、これも追い抜かれ、しかも40mm機関砲の砲弾がどんどん改良され、結果、高威力化してゆきました。

さて自衛隊、機械化部隊、今後はどのように展開するのでしょうか。いや89式装甲戦闘車も開発当時は重装甲といいますが、当時は26tという重量もなかなか横綱級の重さでしたが、それは1980年代の話、2010年代には装輪装甲車も一部が30t時代に入っています。

人命を考えますと日本の場合は、昔の様に赤紙で何名でも呼べるほど予備役はいませんし少子高齢化だ、装軌式装甲戦闘車は45t前後のものが基本となり10式戦車と比較しても重い車両が出ている所を見ますと、89式装甲戦闘車はその後継も含めて、そろそろとは思う。

BMP-2,しかしロシア軍ウクライナ侵攻で甚大な被害が出ているとはいえBMP-2と、そして見間違いかと思ったBMP-1を見ていますと、先ず性能よりも89式装甲戦闘車水準の物でも取り急ぎに五百輌六百輌と揃えられる体制の方が重要なのかな、とも思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)