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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリス&オーストラリア極超音速兵器開発とズムウォルト級駆逐艦リンドンBジョンソン

2022-03-22 20:11:26 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 極超音速兵器を超音速兵器と誤訳する方が多いようですが超音速兵器はマッハ1以上で極超音速兵器はマッハ4前後、広義には間違いないのですが世代に関する意味が違います。

 イギリス海軍の第一海軍卿トニーラダキン海軍大将は極超音速ミサイル開発について発言しました。これは1月28日のタイムズ紙の取材に応じたもので、具体的な開発期間や配備計画と性能などに関する言及はありませんが、その必要性を説いたかたちです。第一海軍卿は増大するロシアの軍事力について、海軍と海中の過去二十年間の増大を示しました。

 特にツイルコン極超音速ミサイルとキンジャール空中発射弾道弾を例に挙げ、その実験は70回を超えるとともに、イギリス周辺においても試験が行われており、既にこれらの装備体系は、開発段階あら第一線への配備へと進んでいます。イギリスに同種の装備品が無い事は強大化するロシアの軍事力へ対抗するうえで問題であると必要性を説いています。

 イギリス海軍は潜水艦からの長距離打撃力はアメリカ製トマホーク巡航ミサイルに依存し、水上戦闘艦の艦対艦ミサイルは1980年代に開発されたハープーンミサイルであり、対艦ミサイルの射程は短く巡航ミサイルは亜音速のままとなっています。他方、基礎技術開発や既存の水上戦闘艦や原潜からの搭載や発射など運用には課題も多いこともまた事実です。
■駆逐艦リンドンBジョンソン
 ズムウォルト級駆逐艦はアーレイバーク級の後継が見込まれていましたが少数製造に終わり、そして当初レールガンを搭載する計画が極超音速兵器搭載へ切り替えられています。

 アメリカ海軍のズムウォルト級駆逐艦リンドンBジョンソンが1月12日、バス鉄工所を公試の為に出航しました。リンドンBジョンソンはズムウォルト級駆逐艦の三番艦で最終艦、アメリカ海軍の駆逐艦として合衆国大統領の名を冠した駆逐艦です。ただ、リンドンBジョンソン元大統領は第二次世界大戦へ従軍した予備役海軍中佐であり、海軍功労者です。

 リンドンBジョンソンは二番艦マイケルモンスーアとともに2011年に2隻が18億2600万ドルで発注され、一隻当たりの建造費は9億1300万ドルなっており、1番艦ズムウォルトの建造費が43億ドルとニミッツ級原子力空母並の建造費であった事を考えれば設計費や初度費用を差し引いても非常に建造費を抑えた事となりますが、3隻以上は建造されません。

 ズムウォルト級駆逐艦は満載排水量1万4564tの大型駆逐艦で画期的なステルス設計を採用したほか、ジェラルドフォード級空母にも採用されたSPY-3レーダーを搭載しています。ただ、搭載する垂直発射装置Mk57VLSはトマホークミサイルとESSMミサイルのみ対応し艦隊防空能力を持たず、将来レールガン搭載が予定されていましたが中止されています。
■オーストラリアAHRP計画
 オーストラリアの試験施設は日本は勿論韓国やフランスのタレスなど欧州諸国でも広く活用されるのかもしれませんね。

 オーストラリアのピーターダットン国防相は1月25日、AHRP計画ブリスベーンの極超音速兵器開発試験場開設式典に出席しました。今回新しく創設された施設がイーグルファーム極超音速兵器開発試験場はマッハ5までの極超音速兵器を試験するもので、AHRP計画とはAustralian Hypersonics Research Precinct豪州極超音速兵器開発促進計画を示す。

 AHRP計画についてはタレスオーストラリア社が具体的な開発計画を有しており、オーストラリア軍も従来の装備体系を更新する構想がある。これはオーストラリアが元来、資源輸出国であり食糧自給可能な地域大国であり、専守防衛が成立っていた一方、近年の中国台頭などは国土が保全された場合でも国家の安全が保全されない情勢が醸成された為です。

 イーグルファーム極超音速兵器開発試験場はオーストラリアの広大な国土を活かして開設されました、オーストラリアはJAXAの超音速旅客機概念実証無人機試験や、惑星探査衛星はやぶさ惑星採取サンプルカプセル地球帰還などにも広い国土を用いて協力しています。なお、開設式典が行われた1月25日は建国記念日にあたり、その重要性が垣間見えます。
■弾道ミサイル迎撃戦
 ミサイル防衛は天文学的軍事費を必要としますが実際攻撃され迎撃できない場合は当該国への外交関係へも影響する、そんな警鐘のような話題です。

 アラブ首長国連邦がイエメンからの弾道ミサイル迎撃に成功した際に同国をイスラエル大統領が訪問していた。アラブ首長国連邦は1月31日、弾道ミサイル攻撃を受けました、イエメンからの弾道ミサイル攻撃は1月24日に実施されたものに続いて1月では二度目の弾道ミサイル攻撃となっており、最初のミサイル攻撃と同じくTHAADが迎撃しました。

 イスラエルのヘルツォーグ大統領、この弾道ミサイル攻撃が実施された時、アラブ首長国連邦へはイスラエルのヘルツォーグ大統領が訪問している最中であり、首都アブダビにおいてアラブ首長国連邦のムハンマド皇太子と30日に会談を行ったのちの滞在中という。イスラエル政府によればヘルツォーグ大統領一行へ危険が及ぶことはなかったとしています。

 ドバイではドバイ万博が開催中、アラブ首長国連邦国防省の発表によればTHAADによる迎撃は成功し、ミサイルの残骸は住宅街の外側に落下したとの事で被害は報告されていません。攻撃を行ったイエメンの反政府武装勢力フーシ派は、ミサイル攻撃を停止する条件にアラブ首長国連邦からの外国企業撤退を要求しており、報復の激化も懸念されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア軍進撃停止と南部マリウポリ無差別砲撃!ウクライナ侵攻で暴露されたBCT大隊戦闘群編成上の問題

2022-03-22 07:00:55 | 防衛・安全保障
■臨時情報ーウクライナ情勢
 マリウポリの無差別砲撃はかつて満洲へのソ連軍侵攻での被害を見るようで中々辛いものがある。

 ロシア軍の進撃がここ数日間停滞している、イギリス国防省高官の分析をBBCやロイターが報じたのが四日前の17日ですが、その後もロシア軍はキエフやハリコフ周辺での大きな前進をみせていません。これはロシア軍BCT大隊戦闘群の砲兵重視と機械化重視という編成が影響を及ぼしているのかもしれません。BCTの火力は開戦前こそ脅威とされましたが。

 BCT大隊戦闘群の火力は強力です、歩兵大隊を支援する為に長射程の砲兵大隊を有しており、本来は師団火力であるロケット砲兵による全般支援火力も有しています。これは2014年クリミア侵攻とウクライナ東部紛争において砲兵火力によりウクライナ軍を圧倒した経験も影響しているのでしょうが、弾薬は有限、火砲にはBL弾薬基数という制約があります。

 火力は強力ですが、BL弾薬基数とは一会戦を戦う所要弾薬というもの。BL弾薬基数は火砲一門当たり100発程度、自走榴弾砲は瞬発で毎分6発程度と持続射撃でも毎分2発は射撃しますので一時間も撃てば車載弾薬、射撃を続けるには補給が必要です。通常は部隊のトラック等でもう一基数増加携行するものですが、撃ち続ければ数十分で射耗してしまう。

 砲兵重視は火力が大きく頼もしいものですが、結局最後の段階で必要なものは歩兵です。しかしBCT大隊戦闘群は砲兵の比重が大きく、歩兵大隊の戦闘群なのか砲兵大隊の戦闘群なのかという程の比重です、一方で歩兵は近接戦闘により撃ちあえば死傷率が高い、近接戦闘部隊の宿命があります。すると歩兵が百名死傷するだけでBCTの歩兵は半減します。

 攻撃衝力、歩兵を失いますと攻撃を持続した場合でも占領が出来ません。現在ロシア軍は市街地への無差別砲撃を行い世界から批判に曝されていますが、歩兵を前に出せない以上は充分有る砲兵を使わざるを得ない状況なのでしょう。しかし前述の通り、火砲が多いという事は弾薬消費量が多い為、補給の問題が深刻化していることとなります。そして更に。

 機械化が進んでいる。BCT大隊戦闘群は戦車10両と装甲戦闘車40両を中心として高度に機械化されていますが、装軌車輛などは特に戦車等は1リットル数百m程度の燃費です、動けばそれだけ燃料が消費しますが、動かなくともアイドリングだけで相当燃料を消費します、アイドリングを行う理由は襲撃を受けた際にエンジンが停止していれば退避不能だ。

 機械化部隊の燃料消費量は大きい。この為に、ウクライナのような広大な国土を有する国を侵略する際には、十数kmおきに補給拠点を構築する事が望ましいのですが、ウクライナ軍の戦闘がこれを阻んでいます。一つは軽歩兵部隊や機械化部隊の分散運用とC4Iによる集合分散の迅速化、一つは市販ドローンも含めた無人偵察機の多用による情報優位です。

 C4Iによる集合分散迅速化、ウクライナ軍は2014年のクリミア併合時代と比較し電子戦能力と軍事通信基盤を強化しています。これにより、普段は目標とならないよう分散している部隊が攻撃の際には即座に集合し打撃力を構成する、喩えは変ですが普段は社会の隅々に分散する艦船愛好家、空母横須賀入港の際に情報一つで数時間後一万人集まるのと同じ。

 無人偵察機の多用も大きいもので、例えば動かない車列やロシア軍の攻勢情報、また野外補給拠点を無人機が発見しますと、ロシア軍は一番叩かれたくない場所と襲われては困る時間帯に攻撃を加えます。敵部隊を発見したら接触を維持するのが原則ですが、攻撃を受けると偵察部隊等は接触を維持できない事があります、しかし、無人偵察機は可能という。

 無人偵察機は偵察部隊と違い万一撃墜されたとしても市販の無人機ならば変な話、小銃と同じくらいの費用です、落とされた操縦士はがっかりするかもしれませんが、命は落とされません。そしてロシア軍の電子戦能力は当初考えられたより格段に低く、無人機運用拠点を発見する事が出来ないでいる。こうした状況がロシア軍を停滞させているのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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