■核攻撃脅威へも抑止力
東日本大震災を回想しますと、あの当日に世界に中継された巨大津波と共に災害救助への障害となった原子力災害、その二つが突出して印象的でした。
核事故にも核攻撃にも備える必要がある。こうした視点から、どの科の官庁が行う必要があるならば、特に東京消防庁にも厚労省医系技官にも、こうした準備を求めるには限度があります。対特殊武器衛生隊を含めた専門知識を、全く平時インフラが機能しない状況に置いて、確実に迅速に立ち上げて機能させるには、軍事機構たる自衛隊しか対応できない。
被曝治療、これは非常事態法制の枠組と共に考える必要がありまして、原子力非常事態を背景に発動させる非常事態法制の一環として被曝衛生治療に対し研究と部隊運用に実績を持つ機構として自衛隊が民間医療施設の機能維持を行う、という視点は見方を換えれば文民統制に反する可能性、自治体行政への自衛隊との関係を一種再認識させるものといえる。
非常事態法制の中に、平時から被曝治療に関する情報を蓄積し、多数の被曝者を同時に応急治療を行う運用計画を有している組織として自衛隊を挙げ、その上で、現場で最も適切な行動を遂行可能な当事者に指揮命令系統を非常時に限定して包括する、という枠組を構築する必要があるでしょう。理想は民間に十分な被曝治療余力ですが現実は見るべきです。
スクリーニングと被曝者除染、実のところ世界最悪の原子力事故に数えられている福島第一原子力発電所事故ですが、スクリーニングを行った範疇では衣服に高レベル汚染が確認されるような、つまり身体そのものの除染が必要な程の重度被曝者は放射性降下物が観測された地域、現在の帰還困難地域住民に対しては確認されていませんでした、幸いという。
最悪の状況を考えるならば1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故、黒鉛減速炉の黒鉛が燃料棒を吹飛ばした結果に大量の放射性物質が拡散した、こうした状況のような福島第一原子力発電所事故より数段酷い状況、人員に対する除染が必要な状況を考慮せねばならず、これは民間医療機関にその能力整備を期待するのはある種、度を越しているといえる。
対特殊武器衛生隊、次の大規模災害を考えますと、考えたくはない事ではあっても原子力事故の可能性というものは、再生可能エネルギーに限界があり、化石燃料依存度を高められない気候変動対策強化への世界的な趨勢を俯瞰しますと、原子力事故という懸念とは最大限、考えねばなりません。事故防止も、起きた場合への治療という視点も含めて、です。
被曝という非常事態は一例として喫緊の課題である次の原子力事故への脅威対処として提示しましたが、これは目を逸らしては成らない周辺国からの我が国都市部への核攻撃、核攻撃時の被爆医療という観点も当然含みます。大規模な公共核シェルターを有さない我が国としては、簡単に防衛ということを考慮しただけでも同時に被曝の蓋然性があります。
核攻撃対処という命題を検討していないことは行政の怠惰ともいえましょう。衛生自衛隊、もちろん厚生労働省などが実働部隊を創設し、東京や大阪が核攻撃を受けた場合の大量被爆患者発生を念頭に十分な医療体制を構築する方向で進むならば、敢えてその必要は提示しません、いや、現実的にはそうした施策は、平時枠組のなかで検討してはならないとも。
突発的に数十万の被爆者や重篤負傷者が発生した場合に対処できる医療基盤があれば、敢えて衛生自衛隊が必要、という提案を行いません。首都直下型地震や南海トラフ地震での大量負傷者が発生した場合でも、これに対応できる医療基盤を行政が平時から確保できるならば、別にこうした提案は行わないのですね。しかし現実的に可能か、となるわけです。
巨大災害への医療崩壊回避、被爆治療にしても災害負傷者診療にしても、医療行政を所管する厚生労働省が、真剣に取り組んでいない問題があるのですね、そして、これほどの事態を平時の枠組みで盛り込むことは、無理がある、故に非難は必ずしも妥当とはいえません。有事と平時の区分が必要、これは2019年の首都直下型地震特集に際して再三提唱した。
平時から日常的に原発事故が発生する事を想定して大量の病床を維持している巨大病院が其処此処あれば、それは逆に異常です。そこまで医療利用者に負担を求める事は論外でしょう、有事に備える医療基盤は平時には無駄となります。有事の備えというものは基本的に有事が回避できるという前提で、使わないからこその備え、というものなのです故、ね。
実際、化学科の方でいろいろお教え頂きました陸将補の方がいまして、イラク化学兵器無力化や中部地方初の原子力事故を想定した国民保護訓練を提唱された方がいましたが、3.11の前に退官されていまして、不幸なのか幸いなのか長い自衛官生活の中で一度も国内原子力事故に対応する事の無かった方もいます、有事に備えるとはそういうことなのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
東日本大震災を回想しますと、あの当日に世界に中継された巨大津波と共に災害救助への障害となった原子力災害、その二つが突出して印象的でした。
核事故にも核攻撃にも備える必要がある。こうした視点から、どの科の官庁が行う必要があるならば、特に東京消防庁にも厚労省医系技官にも、こうした準備を求めるには限度があります。対特殊武器衛生隊を含めた専門知識を、全く平時インフラが機能しない状況に置いて、確実に迅速に立ち上げて機能させるには、軍事機構たる自衛隊しか対応できない。
被曝治療、これは非常事態法制の枠組と共に考える必要がありまして、原子力非常事態を背景に発動させる非常事態法制の一環として被曝衛生治療に対し研究と部隊運用に実績を持つ機構として自衛隊が民間医療施設の機能維持を行う、という視点は見方を換えれば文民統制に反する可能性、自治体行政への自衛隊との関係を一種再認識させるものといえる。
非常事態法制の中に、平時から被曝治療に関する情報を蓄積し、多数の被曝者を同時に応急治療を行う運用計画を有している組織として自衛隊を挙げ、その上で、現場で最も適切な行動を遂行可能な当事者に指揮命令系統を非常時に限定して包括する、という枠組を構築する必要があるでしょう。理想は民間に十分な被曝治療余力ですが現実は見るべきです。
スクリーニングと被曝者除染、実のところ世界最悪の原子力事故に数えられている福島第一原子力発電所事故ですが、スクリーニングを行った範疇では衣服に高レベル汚染が確認されるような、つまり身体そのものの除染が必要な程の重度被曝者は放射性降下物が観測された地域、現在の帰還困難地域住民に対しては確認されていませんでした、幸いという。
最悪の状況を考えるならば1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故、黒鉛減速炉の黒鉛が燃料棒を吹飛ばした結果に大量の放射性物質が拡散した、こうした状況のような福島第一原子力発電所事故より数段酷い状況、人員に対する除染が必要な状況を考慮せねばならず、これは民間医療機関にその能力整備を期待するのはある種、度を越しているといえる。
対特殊武器衛生隊、次の大規模災害を考えますと、考えたくはない事ではあっても原子力事故の可能性というものは、再生可能エネルギーに限界があり、化石燃料依存度を高められない気候変動対策強化への世界的な趨勢を俯瞰しますと、原子力事故という懸念とは最大限、考えねばなりません。事故防止も、起きた場合への治療という視点も含めて、です。
被曝という非常事態は一例として喫緊の課題である次の原子力事故への脅威対処として提示しましたが、これは目を逸らしては成らない周辺国からの我が国都市部への核攻撃、核攻撃時の被爆医療という観点も当然含みます。大規模な公共核シェルターを有さない我が国としては、簡単に防衛ということを考慮しただけでも同時に被曝の蓋然性があります。
核攻撃対処という命題を検討していないことは行政の怠惰ともいえましょう。衛生自衛隊、もちろん厚生労働省などが実働部隊を創設し、東京や大阪が核攻撃を受けた場合の大量被爆患者発生を念頭に十分な医療体制を構築する方向で進むならば、敢えてその必要は提示しません、いや、現実的にはそうした施策は、平時枠組のなかで検討してはならないとも。
突発的に数十万の被爆者や重篤負傷者が発生した場合に対処できる医療基盤があれば、敢えて衛生自衛隊が必要、という提案を行いません。首都直下型地震や南海トラフ地震での大量負傷者が発生した場合でも、これに対応できる医療基盤を行政が平時から確保できるならば、別にこうした提案は行わないのですね。しかし現実的に可能か、となるわけです。
巨大災害への医療崩壊回避、被爆治療にしても災害負傷者診療にしても、医療行政を所管する厚生労働省が、真剣に取り組んでいない問題があるのですね、そして、これほどの事態を平時の枠組みで盛り込むことは、無理がある、故に非難は必ずしも妥当とはいえません。有事と平時の区分が必要、これは2019年の首都直下型地震特集に際して再三提唱した。
平時から日常的に原発事故が発生する事を想定して大量の病床を維持している巨大病院が其処此処あれば、それは逆に異常です。そこまで医療利用者に負担を求める事は論外でしょう、有事に備える医療基盤は平時には無駄となります。有事の備えというものは基本的に有事が回避できるという前提で、使わないからこその備え、というものなのです故、ね。
実際、化学科の方でいろいろお教え頂きました陸将補の方がいまして、イラク化学兵器無力化や中部地方初の原子力事故を想定した国民保護訓練を提唱された方がいましたが、3.11の前に退官されていまして、不幸なのか幸いなのか長い自衛官生活の中で一度も国内原子力事故に対応する事の無かった方もいます、有事に備えるとはそういうことなのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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