北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

EV-22艦上早期警戒機案,いずも型ひゅうが型護衛艦センサーノード機F-35Bに代わる選択肢

2018-12-17 20:03:07 | 先端軍事テクノロジー
■サーベラス早期警戒システム
 あらゆる可能性を検討、という視点から海上自衛隊がミサイル長射程時代の将来水上戦闘に用いるセンサーノード機、F-35B以外の選択肢があり得るのかを考えてみましょう。

 F-35Bがセンサーノード機として将来の水上戦闘には必要となる、対艦ミサイルの射程は中ロ両国で年々延伸しており、欧州は空対艦ミサイル艦載化で遠からずこの潮流に対抗、アメリカも長射程化を構想している中、何れ日本も長射程化する。一方でシチルシステムや中華神盾を筆頭に広域防空艦が増大し、哨戒ヘリコプターによる索敵誘導に限界が来る。

 EV-22という選択肢はないか、こうしたご意見が本論へ寄せられまして、実はこの視点、別の議論の場でも寄せられた視点でして、ある種必然的な論理の帰結なのかな、と考えました。EV-22,英海軍が提案を受けていたV-22のAEW型構想ですね。V-22については陸上自衛隊のMV-22可動翼機取得も開始されますので、V-22運用基盤はまもなく千葉県木更津に整備されます。

 EV-22,方法論としては有り得るでしょう。問題は英海軍がAW-101-AEWに決定した、という点です。機体規模と機体構造の関係からE-2DのレーダーシステムをそのままV-22へ搭載してEV-22,とすることは出来ません、レーダーが回転翼に干渉しますし、残念ながら主翼が可動翼となっているV-22の構造上、重量あるレーダーの追加を行うには再設計が要る。

 EV-23,一つ増える可能性が。V-22の主翼上にレドームを搭載する場合、簡単な改修では終わらず、新造、それもV-23という規模の新型機を開発する事になるでしょう。海上自衛隊がP-1哨戒機を断念して50機や60機と調達する場合でも、開発費や初度費でE-767をも凌駕する費用を要することになる懸念があります、なにより日本以外に必要とする国が考えにくく、しかし日本独自での開発となれば2020年代に完成するとは思えません。

 イギリス海軍方式で、艦載機での早期警戒機を考えた場合、現実的にはAW-101-AEWが搭載するオルシデ戦場監視レーダーとサーベラス早期警戒装置を搭載する、という選択肢となるでしょう。オルシデ戦場監視レーダーは離着陸時においてアンテナドームを胴体に収容します。イギリス海軍では汎用性を考え、AW-101-AEWは既存AW-101から対潜機材を置き換える事でAEW機にするという。

 AW-101-AEWはE-2CやE-767のような胴体上のレーダーを搭載せず、下に向けている。離陸後巡航高度に到達すると共に胴体から機体下部へ展開する方式を採用しています。この場合、逆に海上自衛隊のMCH-101掃海輸送ヘリコプターへサーベラス早期警戒装置を輸入し搭載した方が、費用面で現実的なのかもしれません。イギリス海軍の運用を考えた場合、MCH-101の機内に掃海モジュールに置換える事は不可能ではない。

 タレス社製サーベラス早期警戒装置は、機内に2名用管制コンソールと2名情報処理コンソールを配置するもので、AW-101ならば滞空時間は3時間と長く、機内容積には交代要員の待機も可能です。予算面で余裕があれば海上自衛隊が独自にCV-22として艦隊輸送用にV-22を取得、サーベラス早期警戒装置を搭載、ECV-22として運用する事も可能でしょう。

 シーキングAEW-7- ASaC7改修型の性能で最大400目標の識別追尾とリンク16による情報共有が可能となっていましたので、後継のAW-101-AEWは少なくとも同程度以上の性能を有していると考えられますが、一方で忘れてはならない点として、AW-101-AEWには充分な索敵能力が、少なくともSH-60Kよりも高い索敵能力があるとして、生存性はどうか。

 F-35Bが有するセンサー能力で忘れてはならないのは、EO-DASシステムに代表される複合型光学情報装置で、APG-81レーダーに代表されるレーダーの様に電波を発信し敵脅威対象に標定される事無く、情報収集も可能です。そして脅威対象が広域防空艦を有する場合はASQ-239脅威電波発信源位置標定も可能です。更に何より、ステルス性を有している。

 冒頭に提示した通り、SH-60Kでの索敵が困難になる要因は彼我のミサイル射程増大とともに、広域防空艦の普及があり、敵艦対空ミサイルの射程数百km圏内での生存性を確保する事が求められます。勿論、更に長い数百km以上の索敵能力を付与する事も選択肢の一つでしょうが、現実的にはステルス性のある航空機が望ましい。すると、残念ながらEV-22やAW-101-AEWには限界があると結論づけられます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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