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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【26】ワスプ艦上F-35Bと護衛艦いずも型/ひゅうが型搭載

2018-12-04 20:10:04 | 先端軍事テクノロジー
■F-35B,運用法と所要支援
 佐世保の米強襲揚陸艦ワスプは米海軍が世界に先駆け第五世代戦闘機の艦上運用を実施しています。

 ヘリコプター搭載護衛艦とF-35B,運用できるのか。この視点へは出来るが用途次第という回答が妥当でしょう。F-35Bを戦闘機として運用する場合、つまりヘリコプター搭載護衛艦を航空母艦として運用する場合は、恐らくF-35Bを充分に運用させるだけの航空燃料と弾薬を搭載できません。しかし、固定翼艦上哨戒機として運用するならば、充分たりる。

 佐世保基地へ前方展開するアメリカ海軍強襲揚陸艦ワスプは2018年3月よりF-35B戦闘機の艦載運用を開始しました。ワスプはワスプ級強襲揚陸艦の一番艦で満載排水量は44000tあり、建造当時の海兵隊主力機であったCH-46輸送ヘリコプターやCH-53重輸送ヘリコプター、AH-1W攻撃ヘリコプターとAV-8攻撃機等を50機搭載する事が可能です。

 ワスプ級は全通飛行甲板を有し、その将来発展性の高さからMV-22中型可動翼機とAH-1Z攻撃ヘリコプターという新しい航空機運用に対応しており、新たにAV-8B攻撃機に代えてF-35B戦闘機の搭載を開始したという構図です。F-35B搭載後、初の長期航海は佐世保を出航し、南シナ海方面への実任務で、これがF-35B戦闘機初の艦上任務ともなりました。

 第121海兵攻撃飛行隊VMFA-121のF-35B戦闘機6機がワスプ艦上に展開しており、この6機というF-35Bの搭載数は稼働率と即応機のローテーションを考えた上での一つの定数なのかもしれません。そして我が国海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦を見ますと、6機というF-35B戦闘機であれば、その収容能力から現実的に搭載できるかもしれません。

 ひゅうが型護衛艦は基準排水量13900t、満載排水量19000t、つまり基準状態に人員と関連物資に航空機と整備器材や艦艇用燃料や真水弾薬食糧に航空燃料と航空機用弾薬を5100t搭載出来るという事になります。いずも型護衛艦は基準排水量19000tで満載排水量27000tという事ですので、満載排水量から基準排水量を差し引いた上記数字は8000tとなります。

 SH-60J/K哨戒ヘリコプターとMCH-101掃海輸送ヘリコプターや先日引退したMH-53D掃海ヘリコプター、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦はこれらの航空機を運用する想定で航空燃料や弾薬などの搭載区画を設計しています。SH-60は航空基地で数機に8000l燃料給油車が一台づつ充当され燃料補給を行いますがF-35Bの燃料搭載量は6.1tと大きい。

 8000l燃料給油車一台でF-35B一機、という燃料消費量、これで増槽を装着しない状態です。つまり、F-35Bを6機搭載し各一回全機燃料を完全補給するには8000l燃料給油車5両に満載した航空燃料が払底する事となります。いずも型護衛艦等は僚艦補給用艦艇用燃料を2650t搭載出来るとの事ですが、空母運用するならばこれらを丸ごと転用する必要も。

 固定翼艦上哨戒機、センサーノードとしてF-35Bを搭載する場合は哨戒飛行に飛行させるのみ、弾薬もAIM-120を自機兵装庫に搭載しつつも、センサープラットフォームとしてイージス艦のSM-6を誘導するならば、それほど独自弾薬を射耗する事はありません。しかし、航空母艦として運用する場合、全機が即応体制に置き戦闘空中哨戒を行う必要性が出ます。

 F-35Bは機外最大搭載、ビーストモードという搭載時にAMRAAMを12発とAIM-9Xを2発搭載する為、6機のF-35Bは一回の戦闘で84発という、護衛艦一隻分の弾薬を丸々一度だけで消費します。ヘリコプター搭載護衛艦にこの十回分の弾薬を搭載できるかは非常に厳しい。航空母艦に昇華するに課題は多い。しかしセンサーノードとして搭載は可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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