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北大路機関

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【12.8特集】戦艦武蔵自沈説【前篇】最新科学は南洋に散った巨大戦艦の最後を解明できるのか

2016-12-06 22:50:00 | 北大路機関特別企画
■戦艦「武蔵」は自沈した
 本年も12月8日が近づいてまいりました、ヘリコプター搭載護衛艦くらま高松出港で沸いた日曜日に“NHKスペシャル 戦艦武蔵の最期 ~最新科学が迫る“真実”~”というドキュメンタリーが放送されました。

 戦艦武蔵は大和型戦艦二番艦として1942年に竣工した世界最大の戦艦で満載排水量72000t、46cm三連装砲三基を主砲とし最大射程は50kmと現代の対艦ミサイルに迫る長大な打撃力を有しています。戦艦は当時最強の打撃力と機動力を兼ね備えた兵器であり、列強が注力し整備、今日でいうところの戦略核ミサイルに匹敵する最強無比の装備でした。

 NHKでは“最新科学が迫る真実”と銘打った表題を掲げましたが、発見成った海底の武蔵から、魚雷による装甲板リベット部分が欠損し装甲継手からの隔壁破壊に至った、という部分、従来の定説が基調、“最新科学が迫る真実”との新しい発見は、海中の副砲基部形状等から水中爆発要因は機関部水蒸気爆発でなく弾薬爆発の可能性が示唆された点でしょう。

 実は“戦艦武蔵は自沈した”という説がありまして、今回は“最新科学が迫る真実”という表題に、何か新事実が明らかになるのではないか、と期待していました。この説は荒唐無稽な想像ではなく、五度にわたる航空攻撃による大量の浸水からの復旧命令下にキングストン弁操作の命令が含まれ、結果的に開放操作が沈没に響いた可能性があるというもの。

 戦艦武蔵自沈説は、第三分掌区第十一罐室伝令の一等機関兵曹が元海軍士官で作家の豊田穣氏へ証言したものです。罐室は現在風にボイラー室、蒸気動力をタービンへ送る機関心臓部で四個機関分隊が各三個分掌区を持ち奇数罐室が右舷と偶数罐室が左舷のスクリューを担当していました。罐室外壁にはバルジ装甲が機関部を水中攻撃から防護しています。

 不沈艦武蔵と謳われた武蔵は米軍のフィリピン反攻を阻止する捷号作戦において主力として参加、喪失しました。武蔵の最後には様々な要因が考えられ、第二次攻撃への主砲対空射撃を実施した際に機銃員退避が不期射撃となり間に合わず爆風被害による機銃射撃能力低下となった一説、海戦前に艦隊中唯一再塗装を行った為に航空目標となった一説など。

 レイテ沖海戦は第二次世界大戦中最大の海戦といえました。日本海軍は航空母艦4隻と戦艦9隻に巡洋艦19隻及び駆逐艦34隻を展開させ、アメリカ海軍の航空母艦17隻と護衛空母18隻に加え戦艦12隻及び巡洋艦26隻と駆逐艦141隻が激突した海戦です。アメリカは空母部隊を展開、我が方はマリアナ沖海戦後再建中の陸海軍航空部隊が投入されました。

 日本側資料では魚雷命中20本被雷と爆弾17発命中に至近弾18発、アメリカ軍資料では爆弾命中44発とロケット弾命中9発及び魚雷の命中25本、と報告されています。これは恐るべき数字で、真珠湾攻撃の際にアメリカ海軍戦艦アリゾナが九七式艦上攻撃機からの800kg爆弾直撃を受け1発で轟沈した事を考えれば、防御力の高さは明白と云えましょう。

 武蔵の防御力は、水中爆発を考慮した先進的な設計です。こういいますのも当時世界の新鋭戦艦は艦隊決戦における主砲弾命中への防御を垂直装甲と水平装甲により重要区画防護を構成していましたが、我が国では建造中止となった戦艦土佐への射撃実験により砲弾の水中破壊という可能性が認識され、水面下の区画へも充分な重装甲が施されていました。

北大路機関:はるな くらま
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