北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国政府一部撤回!中国新防空識別圏尖閣諸島日本領空包含問題、民間航空機を対象外へ

2013-11-26 23:35:34 | 国際・政治

◆熟慮足りぬ中国政府、各国反発に一部翌日撤回

 中国の防空識別圏が我が国領空の一部を含み、防空識別圏内での管轄権行使問題において国際社会からの反発を受け、開始から僅か一日、中国側が一部を撤回しました。

Osimg_6501 昨日、中国側は防空識別圏を一方的に拡大し、その圏内に日本の領空の一部を包含、防空識別圏内での管轄権行使を行い得るという中国側の独自解釈に基づき、当該空域では日本領空を飛行するすべての航空機に対し中国国防省の飛行許可を取るよう一方的に宣言を行いました。

Osimg_2401 しかし、この空域を飛行する民間航空機に対しても求める姿勢を採ったため、国際社会の大反発に遭い、僅か開始から一日で民間航空機を除くという、発言撤回を行ったもの。最終的に中国側は撤回せざるを得ないとは当初予見できましたが、僅か一日での撤回は意外であり、中国国防省と政府の稚拙な意見集約体制を露見したといえるやもしれません。

Osimg_1902 特に防空識別圏を中国は排他的空域として扱い、日本を含む世界各国のような識別線ではなく、一種の領空として扱う姿勢のもと、他国領空をその範囲に含むことは、日本領土の一部を中国が飛行制限空域とした訳であり、強行すれば当然、航空自衛隊との航空戦闘に展開する可能性があるもので、反発を受け翌日部分撤回するとは、事の重大性を認識していなかったのでしょうか。

Osimg_9871 中国の今回の行動は全てにおいて浅はかと言わざるを得ませんでした。結局、日本領空とその周辺空域を飛行する民間航空機は対象外としたことは、言い換えれば自衛隊機や米軍機等が日本領空を飛行する際に中国国防省へ飛行計画を提出するよう求めた、と修正したわけなのですが、通るわけがありません。

Img_2861 更に中国側が排他行動を採るとした尖閣諸島日本領空でも、海上保安庁航空機が警戒に当たっているのですが、排除行動はとられておらず、これは中国側が単に一方的な放言を行っただけ、というもので、対外的に見て余りにみっともない対応でした。やるといたことを一日で部分修正し、訂正した行動も実行に移さない、今回の中国の対応は思慮の浅さを対外的に示した、こうした残念なもの。

Osimg_5609 防空識別圏は我が国国内法、そして国際法上は、領空侵犯を防止するために接近航空機の識別を行う単なる空の彼我識別線ですが、中国の防空識別圏は領空の延長であるとの独自解釈に基づき、管轄権行使を行う姿勢を示したため、他国領域上空での管轄権行使を行うという非常識極まりない明白な国際法への不適合措置であり、我が国のような冷静な対応は僥倖、他国に対し強行すれば航空戦闘に発展しかねないものでした。

Osimg_2485 防空識別圏を領空扱いし排他的行動を採ったことで戦闘に展開した実例としては、1981年のシドラ湾事件が挙げられます。これはリビア政府が海岸線から200浬の線を結ぶ内側のシドラ湾を自国領空と一方主張したことで発生しました。国際社会は猛反発し、米海軍は空母ニミッツを派遣しシドラ湾公海上を航行させました。これに対しリビア空軍が航空攻撃を仕掛けたため、米海軍のF-14戦闘機により撃墜されています。

Osimg_0583 リビア側がさらに撤回しなかったため交渉を続けたところ、リビア側が実力行使に出たため1986年にアメリカ、サラトガ、コーラルシーの三隻を派遣し、NATO軍とともに報復を行っています。これに対してリビア政府は海外の旅客機や公共施設爆破などの無差別テロで報復したため、リビアに対する対外的な心象が悪化し、致命的な経済制裁に長期間苦しむこととなりました。

Osimg_2958 今回の中国側の行為は、一方的に宣言し、そして自国管轄権の行使空域と宣言した範囲に他国領空を含むというリビア以上に悪質な行動を採りましたが、実行に移さず翌日に一部撤回、その後の修正部分も現時点で実施せず宣言に終えているところには、ある意味、国際規範に従おうという姿勢を垣間見ることが出来るかもしれません。

Img_5315 他方、今回の一部撤回はあくまで修正であり、今後も日本の自衛隊機などに対して日本領空周辺を飛行する際に飛行計画の提出を求めてくる可能性があります。また、米軍機にも求める可能性がありますので、全撤回を行わなければ、日本領空を飛行している自衛隊機や米軍機へ中国軍機が退去を求め、強制措置を採った場合、航空戦闘に展開する可能性があり、これを防ぐためには我が国としては全撤回を求める必要があります。

Nimg_8163 ただ、今回の部分撤回を日本の外交勝利と見る事は出来ません、中国が自滅しただけで、それだけ非常識な主張を行ったため日本以外の各国から反発を受けただけです。我が国としては引き続き、中国の国際法上の通念を逸脱した領空認識の修正を求め、謝罪を求めてゆくことが必要でしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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