北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大台風30号フィリピン直撃、レイテ島等死者一万以上の懸念 政府は自衛隊派遣を検討

2013-11-11 23:55:56 | 防災・災害派遣

◆都市部に上陸した台風としては史上最大

 当初の予定では本日は昨日の記事続編を掲載予定でしたが、予定を変更して記事を作成しました。

Himg_6496 非常な人道危機です。台風30号の直撃を受けたフィリピン国内では突風と高潮により多くの犠牲者が発生し、死者は一万人に迫るものとされ、被災者は950万人、全てのインフラが破壊されているため被災者の多くは生命の危機に曝されていますが、フィリピン政府は余りもの被害の大きさから被害の全容も掴みいれていません。

Himg_6118 自衛隊がフィリピンの台風被災地へ国際緊急援助隊を派遣する方向で調整が進められています。先週末、フィリピンを襲った台風30号は宇宙空間からフィリピンの広大な島嶼部を覆う規模と800ヘクトパスカル台を維持しつつ上陸、最大瞬間風速90mに迫る猛烈な突風を48時間に渡り叩きつけ、突風に加え高潮が沿岸部を蹂躙しました。

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 レイテ島を中心に甚大な被害をもたらし、被害の全容はつかめていませんものの、安倍総理は現時点で伝えられる被害の大きさから何時でもフィリピン政府の要請があり次第、自衛隊を派遣できる体制を固め、国際緊急援助隊派遣の方針を示しています。

Gimg_2350 フィリピン政府は現在のところ、我が国自衛隊への国際緊急援助隊の派遣要請を出せていません、これは被害の全容を把握できていないことに起因します。分かりにくい話ですが、我が国では大規模災害に際しては様々な手段、戦術偵察機を含め情報収集手段はありますが、これがフィリピンには無いのです。

Img_1802 したがって、国際緊急援助隊の要請を出そうにもどの地域でどういった被害が出ていて、どのような支援が必要であるかが分からず、要請を出せない混乱の極致にある、というものが実情で、現在、欧州各国は救援拠点となる被災地より離れたマニラ方面に救援物資の輸送を開始、米空軍は輸送機など航空部隊による輸送を開始しました。

Img_0697f 犠牲者は当初の報道では3名であったものの、今夜日本時間2300時までの時点で1755名の死亡が確認され、レイテ島地元警察の情報では一万以上の死者が出ている可能性が伝えられています。他方、レイテ島は空港が管制塔を含め高潮により破壊され民間航空機の発着が不能となりました。

Img_7245i 被災者は950万に上るとされ、全てのインフラが破壊され、台風の通過地域では建造物の八割が破壊されています。これに対しフィリピン空軍機による被災地への輸送が開始されましたがフィリピン空軍には稼働するC-130輸送機が2機しかないため、充分な物資輸送が出来ていません。

Img_5260_1 また、フィリピン政府によれば被災地までの道路が破壊され、極度の食糧不足から一部地域で暴動や掠奪が発生、政府の被災地へ向けた輸送コンボイが被災地に向かう途中を暴徒に襲撃され、救援物資を奪われるなど不穏な状況が生じており、BBCによればフィリピン軍より350名が治安維持へ派遣された、とのこと。

Hbimg_8337 ここまでの状況を見ますと、国際緊急援助隊の派遣に際し、不測の事態への準備の必要性も考えたくなるところですが、現時点では救援拠点となる空港施設などはフィリピン軍が武装し警戒に当たっているため、そこまでの警戒を要する状況ではない模様です。

Img_7205 それでは国際緊急援助隊の編成が為された場合の任務を想定してみましょう。現時点では被災地への空輸能力が極度に不足しており、加えて衣料品や医師の現地での不足が深刻です。したがって、輸送機と医官の派遣、ヘリコプターの派遣が考えられるでしょう。前述のフィリピン空軍の実情もあり、数機のC-130H派遣が現地の空輸能力を倍増させます。

Iimg_2029 ヘリコプターの派遣を行う際には、その輸送手段が必要となります。過去の事例を見ますとパキスタン地震ではC-130輸送機にUH-1H多用途ヘリコプターを搭載し派遣しており、他方、インド洋大津波国際緊急援助隊派遣に際しては輸送艦へ多用途ヘリコプターと輸送ヘリコプターを搭載し派遣しました。

Mimg_1590 更に、医官の派遣、可能であれば機動衛生ユニットや陸上自衛隊の野外手術システムの派遣も考えられます。被災者が950万という東日本大震災に並ぶ規模となっており、東日本大震災では内陸部や日本海側の医療施設は無事でしたが、今回はそのような余裕がありません。

Aimg_3329 沿岸部の高潮被害が大きかったことから海上自衛隊の輸送艦や、ヘリコプター搭載護衛艦を拠点としてヘリコプターの救助拠点として用いる事も考えられます。双方ともに艦内に医療設備を有しており、輸送能力も比較的大きく災害派遣においてもその能力が重視されています。

Himg_0998 被害の全欧が現時点では分かっておらず、その後勢力を若干衰えつつも台風は南シナ海の南沙諸島を蹂躙しヴェトナム北部に上陸、現在は中国南部へ向かう進路を採っており、すでに中国海南島でも被害が出始めているとの報道もあります。このため、今以上に被害が拡大する可能性もあり、今後の展開を注目する必要があるでしょう。

Img_3973h また、被災地があまりに広大であり、一旦の究明救難任務が完了したのちには、防疫支援任務等も要請される可能性があります。台風被害は我が国にも余所事ではなく、近年内に同等の規模の台風が上陸する可能性が高いわけですので、必要な協力を行うことが求められるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
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