北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:普通科部隊完全装甲化を目指す高機動車後継装甲車を考える

2013-11-03 23:04:08 | 防衛・安全保障

◆装甲高機動車より機動装甲車/小型装甲車か
 先日、高機動車により機動する普通科隊員を防護するべく、軽装甲機動車よりも車内容積が大きい四輪駆動の軽装甲車を大量配備できないか、というお話を乗せましたが、その続き。
Gdimg_1098 装甲高機動車、と仮称してみましたが、それでは国際平和協力活動に派遣されている装甲追加型高機動車のような響きがあるので、あの名称は紛らわしいなあ、という反省点です。名称としては、機動装甲車や小型装甲車、といった名称にするべきなのかな、と考えた次第です、少なくとも高機動車の完成車体に装甲を施すという方式は懸架装置に負荷が増え、汎用性を損ないますので、国際協力仕様高機動車とは別物に考えるべきです、高機動車には手軽な輸送と汎用性という高機動車の利点がありますからね。
Gdimg_9146 高機動車の車体部分を流用できるかは、色々と考える部分がります、装甲は重く、前後側面からの銃撃や底部からの爆風に上部からの砲弾片に耐える装甲、それを支えなければなりません。車体規模からは、一応装甲化したとしても十分な容積を確保しつつ不整地突破能力を付与できるか、可否が何ともいえません。しかし、懸架装置には余裕があることも確かで、対空レーダ装置や電子戦装置に近距離地対空誘導弾に多目的誘導弾や通信車両など、重量のある装備を搭載しても懸架装置はよく耐えています。中型トラックの車体にも応用されていますので、汎用性が高いことだけは確か。
Gdimg_6300 米軍のハンヴィーなども汎用性の高さが知られており、車体部分はトルコのコブラ軽装甲車やスイスのイーグル軽偵察車などに応用されています。ただ、党の米軍はイラク戦争のイラク治安作戦に際し、簡易爆発物IEDの被害が劇的に増加した際、追加装甲を付与し、防御力を強化、装甲車の代用として運用しては見ましたが、結局十分な防御力を獲得するには至りませんでした。装甲ハンヴィーは装甲車の代用となるので自衛隊も導入を、という識者の意見はありましたが、全く限界の前になすすべの無かった、というわけです。
Gdimg_2375 追加装甲を施したハンヴィーは、車体懸架装置に異常な負担がかかり続け、車体寿命を大きく摩り減らすと共に、車体の持前の汎用性、つまり搭載能力に大きな制限が生じました、これは搭載できる積載重量の部分を装甲に置き換えているのですから当然ではあるのですが、つかいにくくなったことは確かで、結局米軍は大量のストライカー装甲車の大量配備に、応急に耐地雷車両MRAPを急増し、投入することとなっています。ストライカーは140万ドル、MRAPは110万ドル、これを数年で数千や万両単位を揃えた米軍は凄い、という一言に尽きますが、反面我が国では真似はできません。
Gdimg_4414 さて、それでは自衛隊に導入できそうな、且つ大量配備し殆どの普通科部隊や施設科部隊などに普及出来る装甲車、軽装甲車の話に戻しましょう。装甲高機動車では、高機動車に装甲を施した、という印象をぬぐえませんので、この名称ですと装甲車両扱いではなく、汎用車両扱いで予算要求することが出来、高機動車並みに毎年大量調達することが出来るかな、という変な考えは浮かんでくるわけではなく、確かに紛らわしい、という難点はありますので、機動装甲車や小型装甲車、という名称を用いるべき、という視点に切り替えましょう。
Gdimg_2433 機動装甲車/小型装甲車は、理想としては3t半大型トラック、旧称73式大型トラックと車体部分を共通化出来れば後方支援の面から理想なのですが、恐らく戦車に随伴する不整地突破能力は付与できません。すると不整地突破用の汎用車両の車体を流用することが望ましいのですが、史上を少し見てみても、大型すぎず搭載量があり、不整地突破が可能で高速走行できる適当な車体が無い。ダイムラー社製ウニモグトラックの車体か、コマツのWA-100ホイールローダーの車体、このあたりを流用し、安く仕上げる必要があるでしょう。
Gdimg_1312 なお、自衛隊が施設科部隊等に装備していますトラッククレーンにバケットローダーやグレーダーの車体では最高速度が道交法上高速道路の運用で必要な110km/h発揮できるか知識不足で分かりにくいのですが、施設大隊に導入されているバケットローダの最高速度は40km/hであるため、整地速度が61式戦車にも及ばないのでは少々能力不足は否めません。するとやはり、手早く開発計画と調達を行うには、不整地車両の代名詞というようなウニモグの車体を輸入し、装甲を施すことが理想、というところでしょうか。
Gdimg_3769 他方、各種施設科装備で最高速度が50km/h未満の装備で、長距離の自走に際しては高速道路を使用できない、輸送支援を必要とする装備について最高速度を110km/h発揮できる、イギリスJCB製HMEE工兵車両のような、民需車両との互換性を有する高速不整地走行用共通車体を官民で開発する、というのも、そもそもHMEEの基本車両が民生車両として海外で一定の市場を開拓していますので、車体を装甲車へ転用する念頭を含め開発する、という意義はあるかもしれません。しかし、民需主導でなければ防衛主導では規格が特殊化し、量産性や普及が実現せず、価格低減には結びつかないでしょう。
Gdimg_9863 他方、仮に安く出来るのであれば、82式指揮通信車を現行使用に仕様変更し、四輪駆動化することができれば、後方支援上有利なのですが、車高を下げ、車体部分の重量を軽減したとして、現行の六輪駆動から四輪駆動に置き換えたとして、不整地突破能力を確保できるのかは未知数で、なんともいえません。ただ、箱型汎用装甲車体を有する四輪駆動装甲車として、後方支援での整備面と取得装備面を共に均衡点を探し、大量調達するべき、という視点のもと、考えるべきでしょう。しかし、難しく新型車両を開発せずとも、自衛隊装甲化を根本的に進める、として、軽装甲機動車の一時期の調達数と同程度の150両程度、96式装輪装甲車を現在の年間25両程度から普及させることができれば、もちろん140億円必要となり、中期防あたりで700両から800両近く を生産することは政治的な決断と後押しが必要ですが、普通科隊員の機動力向上と防御力強化を考えれば、そこまで不可能なのかな、と思う事もあるのですが、ね。

北大路機関:はるな

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コメント (3)
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