北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南スーダンPKOへ陸上自衛隊より施設科部隊300名派遣で具体化検討

2011-09-17 23:22:16 | 国際・政治

◆自衛隊の編成はアフリカ派遣を想定していない

 自衛隊はアフリカ地域での活動を念頭に置いた編成ではありませんし、東日本大震災で訓練体系が大きな影響を受けているのですが、当初本部要員数名の派遣となるはずの南スーダンPKOに300名の部隊を派遣することになったようです。

Img_3978_2南スーダンに陸自PKO…300人規模で・・・政府は、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に、陸上自衛隊の施設部隊を派遣する方針を固め、具体化の検討に入った。 今月中にも調査団を現地に派遣する。複数の政府筋が16日、明らかにした。20日から訪米する野田首相は、国連総会の一般討論演説と潘基文パンギムン国連事務総長との会談で、この方針を表明する方向で調整を進めている。 派遣部隊の規模は300人程度を想定している。現地の道路や橋の建設・修復などのインフラ整備などを行う方針だ。検討と準備が進めば、早ければ年内に派遣を実現したい考えだ。実現すれば、民主党政権下でのPKO新規参加は、2010年2月のハイチへの復興支援以来、2回目となる。

Img_0121_2 南スーダンは今年7月、スーダンから分離・独立を果たしたが、長い内戦による国土の荒廃が深刻な問題になっている。PKOをめぐっては、潘氏が先月8日、当時の菅首相と会談した際、陸自部隊の派遣を要請するなど、国連が日本政府に強く要請していた。 しかし、菅政権の基盤が不安定だったことに加え、陸自は東日本大震災への対応に追われていた。また、現地の治安情勢が不透明だったことから、防衛省内に慎重論が強く、司令部要員の派遣を前提とした調査団を9月初旬に派遣し、首都周辺の治安などを確認するにとどまっていた。(2011年9月17日03時04分  読売新聞)http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110916-OYT1T01227.htm

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自衛隊は現在ハイチPKOへ人員を派遣しています。日本政府は律儀なことに千年に一度の災害という東日本大震災へ自衛隊十万名派遣という東西冷戦時代の北海道直接侵攻でも想定しなかった規模、首都圏直下型地震への想定派遣規模五万名の二倍という規模の派遣を行い、自衛艦が一人でも必要で予備自衛官の招集を開始した時点でも配置地震への復興人道支援への自衛隊派遣を継続し、交代要員の準備を行いました。300名というとどうにかなりそうな規模ではあるように思われるかもしれませんが、派遣先がアフリカ大陸内陸部の南スーダン、内戦が長く継続した地域であり北部に有力なスーダン軍を想定したうえでの派遣となると意味が違ってきます。特に300名規模ではルワンダPKOの派遣k簿と同程度なのですが、あのとkは難民支援、今回は重装備が必要な施設部隊の派遣が求められているので、これはかなり難易度が高くなってきます。

Img_1714_2 自衛隊は元々アフリカ地域での活動を想定していなかったばかりか、つい二十年前までは専守防衛であり国際平和維持活動であっても自衛隊は派遣できないという制約がありました。装備面で自衛隊は限界を抱えているわけです。装甲車は冷戦時代に地形防御ばかりを考えていましたから装甲車は軽装甲車である軽装甲機動車がようやく普及したばかりで、こうした任務に必要な装甲戦闘車は四個中隊分のみ、当初計画されていた四個連t外聞さえも充足できませんでした。輸送機についても、航空自衛隊にある輸送機はC-130HとKC-767を加えて漸く約20機、海上自衛隊では外洋で航行可能な輸送艦は3隻です。東日本大震災を経験して国内での輸送能力でさえも不足する状況があったわけですから、アフリカの内陸部へ自衛隊を派遣する、というのは東アフリカ地域のジブチに自衛隊の航空拠点が完成しつつある状況ですけれども、やはり現状は不足の一言を欠かせないわけです。

Img_4119_2これだけではなく、本年は東日本大震災により訓練体系が大きく影響を受けてしまっています。具体的には協同転地演習や総合防災訓練に影響が出ているわけでして、南九州の第八師団のように口蹄疫災害派遣、霧島火山災害派遣、東日本大震災災害派遣と続いている部隊もあります。300名といえば、交代要員と待機要員、訓練要員の確保に加えて会空自永代による輸送支援を行わなければなりません。日本の輸送機だけでは不足している状況ですので、厳しい防衛費から費用を捻出しなければなりません。

Img_6747_2 海外派遣、特にアフリカ地域での任務を考えるのでしたら、例えば方面隊規模で装甲戦闘車を運用する連隊を確保するとか、輸送機定数の大幅な増強、輸送艦の充実などの施策を行い、人員規模についても削減ありきの体制からの脱却が必要です。東日本大震災を契機に、国内だけでも動的防衛力が不足していることが判明しました。欧州のようにアフリカが地中海の向こうにある訳でもありませんし、日本はNATOに加盟していませんのでロジスティクス面での相互支援体制にも恩恵を受けられません。自衛隊は無理を無理やり通す玉手箱ではありませんので、この点政治はしっかりとした責任を持つことが重要です。

北大路機関:はるな

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コメント (6)
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