北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日本を襲う三連動地震を考える 防災の日(1923年9月1日:関東大震災)

2011-09-01 23:03:59 | 防災・災害派遣

◆現実味増す東海・東南海・南海地震の連動

 マグニチュード9.0という巨大地震が発生した、ということで今後地震に対する想定外という言葉を見直す必要に迫られた3月11日からまもなく半年。

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 本日は例年通り防災訓練が行われ、過去最大の防災訓練と報じられていましたがよくよく聞いてみると首都圏の子鬱制限が過去最大規模だった、ということで他方、災害派遣により訓練体系の再構築を強いられた自衛隊の参加は限られていた模様。すると報道はなかなか交通制限と指揮所訓練以外映すものがなく、逆に初動における自衛隊の位置づけを示してしまったかたち。

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 私たちが新しい脅威として考えなければならないのは次の地震災害にどのように備えるか、という至極当然の課題です。東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震ですが、同時にマグニチュード8以上が想定されている宮城県沖地震の発生は30年以内に99%の確率で発生するとして推移しています。

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 そもそも。東日本大震災では首都直下型地震で自衛隊が想定していた動員規模5万という大規模災害派遣任務の二倍を政治が要請したのですから、実任務を担う防衛省自衛隊としてはこれまで必要としていた機動力と集中能力に関する装備を倍増させ、次に備える必要はあるだろう、最低限こう考えるわけなのですが。

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 その具体的施策としては、防衛計画の大綱に”防衛および防災上必要がある際に十万人の規模の部隊を迅速に集中させ、その任務継続を維持するべく必要な機動力を整備する”という一言を加えることで、中期防衛力整備計画に輸送艦と輸送機、ヘリコプターの増強に反映させる出力とすることが考えられましょう。

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 東北地方で想定される地震では上記のとおりなのですが、日本には地震災害のほかに台風被害、またかなり大型の火山も数多くあり、特に後者に関しては火山爆発指数で7ないし8という巨大軍歌を引き起こすものもあることから防災なくして日本の政治は成り立ちません。

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 それだけではなく首都圏直下型地震の危険性も想定されています。日本は首都圏の立地上、百数十年周期で壊滅的な地震被害を受けているわけですからね。そもそもあと何年以内にどの程度で発生というのは、海溝型やプレート境界型といわれる地震発生が50~60年周期であるから過去に発生して以来の年数で判断されている、というのが実情です。

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 加えて発生周期が数千年単位とされる直下型地震に対してはこの数字は参考にならないばかりか、正断層地震のように活断層を新しく生み出して発生する自身もあるため、日本では安全な地域はない、という前提で考える必要があるでしょう。

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 こうした中、海溝型地震として周期から考え、発生するまであまり時間がないとされる東海地震は、もともと太平洋プレートとフィリピン海プレートとユーラシアプレートとの境界面で発生するので、最近区分されている東海地震と南海地震、そして東南海地震は元来同じ地震だった、ということが再認識されている次第。

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 東海地震、東南海地震、南海地震の連動地震、という危険性が認識されているのが今日で、新しく連動地震という単語が使われ始めているのですけれども、このように連動した場合、マグニチュード9クラスという未曾有の地震災害が再度今世紀の日本を襲う危険性が認識されたという構図。

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 広範囲に及び中規模都市が分布する地域の防災には、高台への非難と皇孫建築物による避難拠点確保により一時避難を行うことはできるのですが、その後は確実にその地域は孤立しますから、道路が再整備され支援節を搭載した民間車両が通行できるまでの数日から十数日間に対応する備蓄と三次元輸送体制が整備されなければなりません。

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ただ、同時に想定被害地位に大阪と神戸、そして名古屋がくわえられましたので、都市型災害という特殊性に対し、停電と道路不通、場合によっては都市部への長期浸水が考えられるのですから、こちらに対しても準備をやはり並行して考えなければなりません。

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 北大路機関では、地震災害に対する書道について自衛隊の展開能力や基盤的防衛力、という視点、輸送能力と戦略予備という概念を用いることが置かったのですけれども、今回想定しているような規模の地震となると、如何に予備を維持して規模を充実させても難しいものがあります。

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 三連動地震では、名古屋市、大阪市、神戸市が津波で大きな被害を受ける危険性が指摘されており、この日本の中枢都市を任された自治体は新しい脅威にどのようにして対処するのか、厳しい、しかし避けて通ることは絶対できないという重い課題を突き付けられているわけです。

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 また、連動地震とは言っても数日間からさらに長い間隔をあけての発生という過去の実例もありますので、一つとっても日本の総力を挙げた救援救難と復旧復興が試されるほどの規模、一つが発生すればほかの連動地震がいつ発生するのか、という前提での広域防災支援計画を立案しておかなければならないわけでして、これが厳しい。

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 上記問題点を棚上げしたとしても今回の東日本大震災が提示したように津波を伴う大規模地震被害は、その被災地が直下型地震に対してきわめて広範囲に及ぶ、という大きな問題点があります。したがって、後方支援拠点を多数設置する必要が出てくるわけですね。

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 東海地震では東名高速道路と東海道本線、東海道新幹線は静岡県内で大被害を受けますから、地域的に孤立する事例は多く想定でき、特に首都圏を含めた東日本からの増援体制が大きく制限されることとなるばかりか、南海地震の津波を正面から受ける形となる四国の防災体制は根本的な再編を強いられている状況。

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 東日本大震災に対して、連動地震は津波被害、特に大津波警報が想定される海岸線だけで二倍以上の規模になりまして、いったいどの地域に後方支援拠点を設定して対応したらいいのか、これは完全な奇襲で来るわけですので、怒ってみなければわからず同時に柔軟な対応が可能な体制が整備されなければなりません。

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 被害さえ局限化できれば対応が容易となりますのでたとえ話で許されるのであれば、東名高速道路を土盛り構造化する区間を広げ、仙台東部道路が東日本大震災の大津波から仙台市中心部をまもったように一種の防波堤とする施策、中央道の拡張と東海道新幹線を補完する中央新幹線、北陸新幹線の建設強化などを行うべきと考えます。

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 また可能ならば沿岸部の都市部について、抜本的な住宅地の高層化を図り、自動車道の立体交差などを促進し、津波に備えるとともに地震による倒壊や火災被害への脆弱性を大きく弱め、沖積平野での住宅街を最大限丘陵地帯に減税支援などを交え数十年単位での移転を図るべきとも信じるわけです。

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 ただし、現実的かと問われればこれは非常に難しく、やはり個々人に依拠するほかないというのが現在における防災の基本骨子。これは想定されている被害を想定した防災施設が対応できないため、個々人で逃げるしかないという現状になるから致し方ない構図でもあるのですがね。

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 国土開発という観点に再度位置から防災という概念を盛り込み、如何にしても対処できない地形においては居住に対する制限というものを加え、対処できるものに関しては今までの防災設備を脱構築する、これだけの体力が日本にあるのか、これについては少々議論の余地がります。

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 逃げの一手ではあまりに無力ではないのか、と考えるのでしたらば、もしくは幾度かここに記載したような太平洋の壁とした防災基盤を構築するのか、財政負担がすごいことになりますのでこれは国民的合意が必要になるわけではあるのですが。

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 ただ、どう準備しようとも被害を防ぐには限度があります。広範囲化する場合、動員をどう考えるのか、初動の基盤的防衛力、すなわちその地域に配置されている師団・旅団を支援する形で、たとえば当該地域の方面隊に加えほかの方面隊が各一か所の戦域後方支援拠点を整備し、一対一の支援体制を構築する必要があるでしょう。

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 また、津波災害とともに長期浸水、地盤沈下により長期間海面下に陥没する地域がありますので会場からの支援を受けるのに制限が生じますから、この大きな問題をどうやって克服するのか、文字通りの輸送能力ではなく戦力投射能力という視点からの能力装備がなければならないわけです。

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 インフラが破綻した状況では、こうした視点を見ればわかるように自己完結能力を持つ軍事機構、そして平時からの備蓄による地域防災が両立することで、被害からの復旧までの期間を短縮することになるのですが、前者へは政治参加というかたちで、後者へは自らの主体的関与、というものが必要になるわけですね。

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 また同時に、これは復旧からは離れてしまうのですが、復興とその後のより防災に指向した地域再構築についての課題は、法律論と制度論、社会学から防災工学までを包括して訓練ではなく長期的な議論として専門的意見を抽出し、これが重要なのですが政治が理解し反映させねばなりません。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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