◆装甲戦闘車に関する備忘録
89式装甲戦闘車、この車両について考えるたびにもう少し配備を行う事は出来なかったのかな、と思うのですが本日はこの話題。
先日池袋の西山洋書に行きまして、神戸店よりも品ぞろえは段違いだということに毎回驚くとともに何冊か購入したのですが、CV-90がスウェーデン用と国際用の二冊に分かれていたので思わず手に取りました、独語と思いきや英語と対訳があって、ああ、これ学部時代にこういう本で独語学んでいれば、と閑話休題。CV-90ですが、物凄い国々に輸出されていたのですね、実はCV-9040Cというスウェーデン軍最新型について興味があったので購入したのですが、同時にスウェーデン以外にデンマーク、ノルウェー、オランダ、スイス、フィンランドと各型が解説されていて、思ったよりも奥が深い事を知らされました。もっとも、搭載されているボフォース40mm機関砲は今日的には大きすぎますし、輸出型には多種多様なものが装備されているのですが、対戦車ミサイルを搭載していないとなると40mmは欲しいなあ、と思ったりも。聞くところではCTA社製40mmテレスコープ弾方式機関砲搭載型も提案されているようなので、この点は進化する装甲戦闘車、ということなのでしょうけれども、ね。
こうした話を聞くたびに、ううむ、日本の89式装甲戦闘車は、と痛感してしまうのは、生産終了とともに進化できなくなっている、というところでしょうか。CV-9040CというCV-90に増加装甲を搭載した型式、UN塗装のものですが報道写真で見た際に少々驚きまして、この詳細について興味があったので観てみたのですが、成程モジュラー式装甲となっていて、必要に応じて置き換えられるとのこと。これも広範に運用されているとともに輸出型を含めアフガニスタンのような危険な地域に投入される事へ充分な防御力を付与させることを視野に入れた方式とのことですが、自走高射機関砲型にもC型改修が行われているとのことで、生産が継続されている車両というのは、将来発展性が残されているというところに若干羨ましくも。
CV-90については装甲戦闘車型とともに、機関砲塔を遠隔操作式機関銃塔へ置き換えた装甲人員輸送車型は開発されていて、国際平和維持活動は勿論、場合によっては戦車部隊への随伴には利点があるのかな、と。イスラエルのナメル重装甲車等の開発背景を個人的興味から調べた際にイスラエル軍は何故装甲戦闘車ではなく機関砲を搭載しない重装甲車ばかり開発するのか、と調べた際に、もちろん予算的なものはあるのだけれども一つの理由として砲塔を搭載するとシルエットが大きくなりすぎてしまうので戦車と協同を行う際に部隊戦闘能力に影響が生じる、という事があるようなので、しかし機甲歩兵がいなければ戦車は対戦車火器の脅威に曝される事にもなる訳で、装甲化された部隊がどちらが主力なのかによって左右されるのかもしれませんが、相応の意味は両方の型式にあるのかな、と。結論からは、機械化大隊、この編成は滝ヶ原駐屯地の評価支援部隊にあるのですが、戦車一個中隊に対して装甲化された普通科二個中隊から成る部隊なのですが、独立して機動打撃に従事する部隊については装甲人員輸送型を、普通科連隊を機械化する場合は装甲戦闘車型を装備する、という事もあり得るのかな、と。もしくは車両に占めるFCSの費用を考えた場合、普通科連隊の大半の中隊を装甲人員輸送型により充足し、他方で打撃力を確保するために一個中隊を装甲戦闘車型にする、という方式も、このあたりはも少し考えないと結論は出無いでしょうから、また後日考えましょう。
89式とともに、ULAN,個人的に興味がある車両、それはオーストリア製装甲戦闘車ウラン。装甲戦闘車として機関砲を搭載して高出力のエンジンを搭載しているのですが、機関砲は30㍉、FCSは輸入、エンジン含め別に国産でなくともよさそうなもので、打撃力は平均、防御力も平均、機動力も平均、という装甲戦闘車。何故国産開発されたのか、正確にはオーストリアとスペインの共同開発の車両で、スペイン軍が運用するもののほうがピサロといい、若干エンジン出力が小さいのですが、これ国産する必要はあったのかな、と考えつつ細部を調べてゆくと各部分の部品がウランの場合はオーストリア軍の、ピサロの場合はスペイン軍の運用体系、特に汎用品の部分で合致しているのですよね。もともとこの車両は平凡なのですが可能な限り外国製部品の寄せ集めにより生産されているので、逆にいえば輸出する場合にも相手国の部品体系に合致させられる、ということでこれは最近イギリスに採用される運びとなりました。まあ、ここ最近のイギリス軍の装備体系や導入計画を見ますと本当に配備するのか少々不安になるのですけれども、自国の補給体系に合うように、敢えて国産化する、という事は重要なのでしょうね。
オーストリアというとあまり機械化されているイメージはないのですが89式よりも生産数は多いようで、三個大隊に112両が配備。そして、CV-90とULANですが、盛んに売り込みが行われています。面白いのがULANで、この車両は未完成時にノルウェーの次期装甲戦闘車トライアルに出されて、見事CV-90,これは機関砲を30㍉に置き換えてCV-9030になるのですが、これに負けました。しかし、このトライアルの関係で徹底した評価試験を受けて問題点を洗い出しているのでう所ね、量産型は兵員室配置や降車戦闘支援装備、それにNBC防護等の面で改修が加えられているようです。輸出を前提としてこそ見えなかったものが見えてくる、というものなのでしょうか。同時にCV-90にしても輸出を重ねているからこそ、CTA社製機関砲や各種機関砲の搭載、防御力強化などの改修の必要性が出ているのかもしれません。いや、スウェーデンが独自に輸出していなくともこれくらいの改修はしているのでは、と思われるかもしれないのですがその前に配備されていた20㍉機関砲を搭載しているPbv-302装甲車等は、そこまで改修されずに運用されていますから、CV-90は輸出されているからこその改修、ということは的を射ていると思うのですよ、Pbv-302はIFORで紛争地帯にも行っているのですが、輸出は成功していないのですよね。
さて、暫定的な結論としてULANのように、海外に同様の車両があったとしても装備体系に合致させるためには極力国産が必要、と。また、CV-90を見る限り極力輸出した方が、問題点はある程度表面化して高性能な車両が完成する、ということ。まあ、他にも考える必要はあるのですが、例えば車体規模、10式戦車が配備開始となるのですがこの戦車は小型軽量化を重視して主力戦車でも40㌧台に収めているので、車体は余り大き過ぎない方が良いのではないか、という一点。もう一つは、対戦車ミサイルの搭載等、この点無理して搭載しようとして苦慮している韓国のK-21とか、あえてオプションにしたイタリアのダルド等も観たいところなのですが、これはまた別の機会に。他方で部隊配備はどうするのか、という事、これは難題です。ううむ、全ての普通科連隊に配備するとざっと4000両は必要になってしまいますし、1個普通科連隊に一個中隊を配備しても500両は必要になるのですが、分散運用を行うということは方式としてあり得るのか、という疑問も、つまり独立機械化大隊でも編成した方が良いのではないか、という事です。このあたりはまた別の機会にでも考えましょう。
HARUNA
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