goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

9ミリ拳銃 (シグザウエルP220) 海上自衛隊仕様

2007-01-22 18:03:05 | コラム

■防衛省誕生特別企画!

 防衛省誕生特別企画、と銘打ったが実態はネタ切れ救済企画である。タナカ社製P-220自衛隊仕様と9ミリ拳銃の特集を掲載したい。

Img_4346  先日、89式小銃の企画を本ブログに掲載したところ、アクセス解析などではかなりの好評であった事がわかり、今回は9ミリ拳銃について特集したい。実銃の9ミリ拳銃は、1975年に欧州多国籍企業であるシグ・ザウエル社が発表したもので、1982年に自衛隊への配備が開始された。これを1998年にエアソフトガンとしてタナカ社が発売し、ガスブローバックガンとしてその優れた形状の再現には定評がある。ちなみに言うまでも無いが新銃刀法規格内合法品である。

Img_4343  桜に錨を象った刻印が表わすように、タナカから限定品として発売された海上自衛隊仕様の9ミリ拳銃であるが、まだ、市場には少なくない数が流通しており、基本型となるs陸上自衛隊仕様の他、航空自衛隊仕様も販売されている。実はこれまで、専ら東京マルイ社製のP-226を愛用していたが、89式小銃の導入に至り、この9ミリ拳銃への移行を計画した。P-226は自衛隊でも閉所戦闘訓練に用いられていると雑誌報道されているが、やはりホンモノのレプリカ(?)で揃えたいものである。

Img_4347  まるで官公庁に納品されたような箱に納められている。ちなみに海上自衛隊仕様であるのは、HNが“はるな”ということと、何より在庫処分的な価格の下に更に◎割引とあった為である。また、自衛隊仕様ということで、脱落防止用のランヤードの取付部が握把(グリップ)下部に設置されている。TOP社が64式小銃を電動エアソフトガンにて発売したのが1997年、更に9ミリ機関拳銃などのモデル化を期待したい。なお、近く、本ブログにおいて、P-226とP-220の比較特集などを掲載しようと思う。

■自衛隊における9ミリ拳銃

 陸海空自衛隊において、11.4ミリ拳銃M1911の後継として行き渡った9ミリ拳銃であるが、これについて記載したい。

Img_0687_1  自衛隊創設時から運用されてきた45ACP弾を発射する11.4ミリ拳銃M-1911が、米軍供与品ということもあり特に第二次世界大戦初期や大戦以前に製造されたものが老朽化により作動が困難となりつつあったことから、後継拳銃として国産のものも含む幾つかの拳銃の試験を行い、最も優れている拳銃として導入されたのがシグザウエルP-220で、ミネベアにおいてライセンス生産が行われ、1990年代の半ばには全て新型に代替されている。

Img_0493  整列した37連隊の隊員、一番前に立つ連隊幹部は弾帯に9ミリ拳銃を収めたホルスターを下げている。陸上自衛隊では、基本的に3佐以上の幹部が自衛用に携帯する他、無反動砲手や機甲科隊員、警務隊など小銃の携帯が任務遂行に支障を来す場合に装備する。一部の式典では新型の9ミリ機関拳銃に更新されているようだが、基本的に機関拳銃と拳銃の用途は異なり、更に9ミリ機関拳銃の調達度合いから判断して、こうした風潮は全陸上自衛隊的なものとはならないようだ。

Img_0633  今津駐屯地祭において、式典会場入場に備え、整列を始める第三戦車大隊(第十戦車大隊の可能性もあるが、入場順序から判断)の機甲科隊員。乗車帽にゴーグルとともに拳銃ホルスターが印象的である。

 車内容積が限定的である戦車には、全ての隊員が小銃を持ち込むことは困難であり、機甲科隊員たちは、M-3短機関銃、89式小銃といった大型の小火器か、携帯性に優れた拳銃を携帯している。

Img_8081  東北方面隊記念行事において観閲行進を行う第六戦車大隊の74式戦車。戦車という巨大な火力と拳銃、なにやらアンバランスのように思えるかもしれないが、降車警戒時の自衛用や接近する歩兵排除には拳銃は必要である。俄には信じがたいが、近年の事例として2003年のイラク戦争においては米軍のM-1戦車に対して民兵が爆薬を担いで肉薄するという状況が実際にあり、ベレッタM92F9ミリ拳銃を用いて砲塔に取り付いた民兵を無力化、排除するという実例がある。

Img_2061  この他、司法警察任務を介して部隊の治安維持にあたる警務隊も、拳銃を携行している。平時には司法警察任務にあたる警務隊も有事の際には米軍の野戦憲兵と同じように交通整理や捕虜の取り扱いも行う為、いわば警察官が短銃を携帯し運用するものと同じ用途であると考えればよい。

 写真は千僧駐屯地祭における司令部付隊隷下、警務隊の観閲行進の様子。

Img_2435  また、近年では自衛用途としての拳銃から、いわば戦闘に直接用いる装備として拳銃が見直されている。写真は、伊丹駐屯地祭における訓練展示の様子であるが、ロープ降下しつつ、窓からの進入に備え、拳銃を構えている。一発一発確実な射撃が行えることもあり、特に市街地などを想定した閉所戦闘訓練では拳銃が多用されているとされ、今後は普通科部隊においても拳銃の装備について例えば初級幹部や上級陸曹に対しても支給すべきというような再検討が為されるときも来るかもしれない。

Img_6379  海上自衛隊でも、幹部用に拳銃が護衛艦などに搭載されている。軍艦において将校が拳銃を携帯する事例は、大航海時代まで遡ることが出来、暴動鎮圧用とされているが、近代に入ってからはシンボル的な意味以上のものはもたないようだ(ただし、途上国海軍ではいまだに暴動などはあるときく)。特に、各国海軍との交流が多い海上自衛隊にあっては、レセプションなどの場において、幹部自衛官に拳銃携帯を求められる場合があることは想像に難くない。

Img_6263_1  海上自衛隊の艦艇には、落水者救助に際しての鮫避けなどの用途に用いる為、20丁前後の64式小銃もしくは散弾銃などが搭載されているとされる。また、近年では、インド洋対テロ支援任務への派遣を契機として、自爆ボート対処を目的とした12.7ミリ機銃や、62式機銃が搭載されることもあるが、これら火器は基本的に 武器ロッカーにしまわれているのにたいして、拳銃は幹部が自室にて保管するようになっているようだ。

Img_6292  この他、能登半島沖工作船侵入事案を受け、臨検用に拳銃が用いられることもある。また、拡散防止イニシアティヴ(PSI)構想への日本の参加により、臨検という任務は今後増加することが予測され、9ミリ拳銃の必要性は今後高まることとなろう。

 写真は、護衛艦に装備されている浮揚式防弾チョッキ。従来の防弾チョッキでは落水時に危険であったが、これは浮力を有している。

2005116_029  航空自衛隊でも、幹部自衛官は拳銃を支給されている。

 写真は笠取山分屯基地祭における第14高射隊(白山分屯基地)隊員によるペトリオットミサイルの再装填作業の訓練展示であるが、端に写っている3尉は、弾帯に拳銃用ホルスターを吊り下げている。レーダーサイトや野外で運用されるミサイル、レーダーはコマンド部隊の攻撃を受ける可能性があり、また基地警備部隊も拳銃などの火器を装備して有事に備えている。

Img_1195  この他、冷戦時代にはアラート任務に当たる戦闘機パイロットは拳銃を装備していたという。何に用いるかは不明だが、パイロットの拳銃装備は今も続いているかは不明である。参考までに、パキスタン輸送支援任務に展開した輸送機には自衛用に拳銃を携行した隊員が乗ったという。

 このように、拳銃は自衛隊にあっても未だ欠くべからざる装備なのである。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする