北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

19年度護衛艦隊改編後の艦載回転翼機

2007-01-24 14:25:42 | 防衛・安全保障

■地方隊の護衛艦隊編入と艦載ヘリ

 平成19年度における海上自衛隊の組織改編は、特に地方隊の護衛隊を護衛艦隊に編入するというタイプ編成への移行という意味で、海上自衛隊の組織体系を根本から再編する野心的なものである。

Fh020026  海上自衛隊では、機動運用を担う護衛艦隊と、沿岸警備を担当する横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊の地方隊を置いて日本列島とシーレーンの防衛に当たっており、かつては機動運用部隊である護衛艦隊にはヘリコプター護衛艦やミサイル護衛艦、大型の対潜護衛艦により編成され、地方隊は二個護衛隊6隻の護衛艦と、掃海艇や輸送艦艇、魚雷艇などの部隊により沿岸警備を担当していた。その時点では、護衛艦隊と地方隊は拮抗していたのだが、ミサイル護衛艦の充実によるいわゆる八八艦隊構想に基づく護衛艦隊の巨大化は地方隊との任務遂行能力の格差を拡大していった。

Img_0781  1982年から1987年にかけて12隻が就役した“はつゆき”型護衛艦は、満載排水量4000㌧、ガスタービン推進であり、対空・対艦・対潜各誘導弾と対潜ヘリコプターを搭載した護衛艦隊用大型汎用護衛艦として整備が進められたが、それにつづく“あさぎり”型8隻、“むらさめ”型9隻、“たかなみ”型5隻と航続する汎用護衛艦が就役するにつれ、護衛艦隊にて余剰となった艦艇がそのまま地方隊に配備されるようになった。

Img_9328_1  沿岸警備を任務とする地方隊には、大型の護衛艦は不向きとして、“いすず”型、“ちくご”型、“いしかり”、“ゆうばり”型、“あぶくま”型というような比較的小型の護衛艦を整備してきたが、冷戦構造終結を受けての平和の配当論が国際的に高まったことから、細川内閣時代に防衛大綱の改訂が提唱され、護衛艦定数10隻の削減が確定されたことから、その皺寄せは主に地方隊護衛隊数の半減という政策にて具体化し、定数削減を艦艇の大型化にて対応するという理解が為された。

Img_1110  しかし、1999年3月の能登半島沖工作船浸透事案に際して、舞鶴地方隊の護衛艦が臨時に護衛艦隊第三護衛隊群の隷下に入り運用されたことで、特に艦艇の一括指揮下に置くことが提唱されていた。こうした中で、平成19年度防衛予算概算要求には、現行の横須賀地方隊21護衛隊を11護衛隊に、呉の22護衛隊を12護衛隊に、佐世保地方隊の23、26護衛隊を13、16護衛隊、舞鶴の24護衛隊を14護衛隊、大湊25護衛隊を15護衛隊に改編し、護衛艦隊の指揮下に改編することが盛り込まれた。

Img_1270  さて、現段階で地方隊に配備されている“はつゆき”型護衛艦は、2006年2月までに護衛艦隊から全艦が地方隊と練習艦隊に異動した。

 この際に地方隊用の護衛艦からは哨戒ヘリコプターの運用能力を除き、ヘリコプター格納庫は必要に応じてヘリコプター運用能力を回復できるとされるが、この“はつゆき”型の護衛艦隊への再編入を以て哨戒ヘリコプターの運用能力は再度付与されるのであろうか。

Img_1437  現在、護衛艦籍にある艦艇で、ミサイル護衛艦を除けば地方隊用の護衛艦9隻が、ヘリコプター格納庫を装備していないが、これらは第25護衛隊(4隻)、大湊地方隊直轄艦(1隻)、第26護衛隊(3隻)と大型汎用護衛艦との混成編成として第24護衛隊に一隻が配備されているが、再度ヘリコプター運用能力を付与するとなれば、ヘリコプター運用能力を有さない艦艇に対しての任務相互補完能力を如何に維持するのかという問題が残る。

Img_9684_1  一方で、従来の護衛艦隊が有する汎用護衛艦は、5500t型のいわゆる19DDと併せ、護衛隊群を構成するDDHグループの護衛隊に2隻、DDGグループの護衛隊に3隻が配備される為、旧式艦艇が置かれる二桁護衛隊と新鋭艦で構成され護衛隊群の隷下に置かれる一桁護衛隊とで、一応の区分は残るようである。この場合、写真の“あさぎり”型護衛艦がいよいよ余剰となり地方隊、つまり今後の護衛艦隊の二桁護衛隊に配備されることとなる。

Img_9803_1  この場合も、現行のヘリコプター運用能力を維持するかが問題となろう。問題点は3点、19年度に予定されている“はつゆき”型の護衛艦隊編入と同時にヘリコプター運用能力が付与されれば艦載型のSH-60Jが11機必要となる為同じく自衛艦隊の航空集団に編入される小松島航空隊、大村航空隊、大湊航空隊のヘリコプターを艦載用に転用するのか。また、二桁護衛隊へのヘリコプター運用能力が付与されないならば今後“あさぎり”型などはどうするのかということだ。

Img_0715  更に、“いしかり”“ゆうばり”型は2009年まで、写真の“あぶくま”型6隻は2013~2018年にかけて近代化改修が為されなければ耐用年数限界を迎えるが、少なくともこれまでの間は、二桁護衛隊の中ではヘリコプターの運用能力の有無という性能差が残り、この均衡を保つことが重要となろう。付け加えるならば、この後は16隻の地方隊枠が残り、これにヘリコプターを搭載するか否かにより、海上自衛隊の洋上作戦能力は少なくない差異が生じる。

Img_1444  哨戒ヘリコプターは対潜哨戒に加え、機銃を搭載しての工作船対処(新型のK型からはミサイルを搭載しての小型高速艇への対艦攻撃能力も付与)、在外邦人救出や島嶼部防衛における人員輸送という任務も有しており、改編後の護衛艦へのヘリコプター搭載に対する判断とは、海上自衛隊全般の戦力投射能力を左右するという理解が必要であろう。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする