ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジャングル』1987―1

2019-02-02 22:22:13 | 刑事ドラマ HISTORY







 
“『太陽にほえろ!』の後番組”というハンパ無いプレッシャーを背負って、金曜夜8時の日本テレビ系列、1987年2月に誕生した新番組が「大型刑事ドラマ’87ニューモデル」と銘打たれた『ジャングル』です。

岡田晋吉プロデューサー以下、ほとんど『太陽~』と同じスタッフで製作され、同年12月まで全35話が放映されました。(音楽担当は林 哲司さんにチェンジ)

舞台も同じ東京・新宿、七曲署の次って事で「八坂署」。まさに正統な続編と言って差し支え無いと思いますが、ドラマとしての内容は大きく変わりました。『太陽~』が最初はそうだったように、既成の刑事ドラマの常識を覆すような、斬新な手法をアグレッシブに取り入れたんですね。

刑事達が交代で主役を演じて毎回1つの事件を追うのではなく、複数の事件捜査を同時進行させ、主役を絞らずに群像劇として描き、1話完結とせず大事件は数週をかけて解決させる。

要するに現実の警察により近いリアリティーを追求したワケです。事件毎に捜査本部が設けられ、本庁から出向いて来たキャリアが指揮を執る等の描写を見たのは、この番組が初めてだったように記憶します。

カメラワークも人物アップを多用した『太陽~』とは対照的に、室内シーンをわざわざ望遠レンズで撮ったり、長回しを多用する等、黒澤映画ばりの演出が取り入れられました。

レギュラーキャストも、旬の人気者よりも実力重視の俳優さんが集められました。まず係長に鹿賀丈史、課長に江守 徹、本庁刑事に竜 雷太、ほか桑名正博、勝野 洋、火野正平、西山浩司、香坂みゆき、田中 実、山口粧太、山谷初男、安原義人と、総勢12名!

さらに鹿賀さんの妻に真野響子、桑名さんの元妻に永島映子、山口さんの恋人に高樹沙耶、勝野さんの妻に友里千賀子といったセミレギュラーも加わります。

事件捜査だけじゃなく刑事の描かれ方もリアリティ―重視で、正義のヒーローだった『太陽~』と違って、例えば係長の鹿賀さんは5時になったらサッサと帰宅し、妻との時間を大切にするサラリーマン的キャラだし、元マル暴担当だった桑名さんは暴力団と癒着してたりする。

そんな感情移入しづらいキャラクター達が、繋がりのない別個の事件捜査を同時進行させ、必ずしもスッキリ解決しなかったりする『ジャングル』の作劇は、どうやら保守的なテレビ視聴者を困惑させちゃったようで、視聴率は苦戦する結果となりました。

後に竜雷太さんは『ジャングル』を振り返って「あれはハッキリ言って失敗だった。ちょっとウケを狙い過ぎた」なんて語られてます。

「ウケを狙い過ぎた」っていうのはたぶん「玄人受け」を意識し過ぎた=「マニアック」って意味で、なるほど人気を得られなかった一番の理由は、そういう事かも知れません。

物凄く志の高いドラマ創りには違いないんだけど、気合いが空回りしたと言うか、クリエイティブ過ぎて視聴者の嗜好とかけ離れちゃったって事なんでしょう。

私個人の見解としては、玄人受けを狙ったというよりも、前作『太陽にほえろ!』とは違う内容にしようっていうスタッフの心意気が、裏目に出ちゃったような気がします。

後に大ヒットするフジテレビの『踊る大捜査線』も、作劇に『太陽~』と真逆のアプローチを取り入れた点で『ジャングル』とよく似てるんだけど、実は根本的なスピリットは全然違うんじゃないでしょうか?

主役の刑事達が走らない、犯人を逮捕しない(逮捕するのは本庁のキャリア達)、殉職しない、私生活を描かない、聞き込みシーンに音楽を被せない等といった『踊る~』の作劇ルールって、言ってみれば形だけ、表面上のものであって、物語の本質とは違う「枝葉」に過ぎません。

根本的に描いてるのは青島(織田裕二)という「新人刑事」の活躍や、仲間達との固い絆、罪を憎んで人を憎まずの精神etcと、実は『太陽にほえろ!』と全く同じだったりする。

要は「刑事を走らせずとも熱血や努力は描ける」って事を示しただけで、根本的には『太陽~』の精神をストレートに引き継いでる。だから私もTVシリーズの『踊る~』にはハマりました。(映画版はダメだけど)

『ジャングル』の場合は形よりも『太陽~』の基本精神である「熱血」「努力」を否定するドラマ創りをしてしまった。いや、ホントは否定してないんだけど、否定してるように見えるハードボイルドさを狙ったのかも知れません。

それは確かに斬新ではあるんだけど、多くの視聴者がTVドラマに求めるものとは違ってた。私自身『太陽~』からの習慣で毎回欠かさず観てましたけど、決してハマってはいなかったです。

まぁしかし、実はもっと単純な話で、女性好みのイケメンをキャスティングしなかった事が、最大の敗因かも知れませんw ’80年代にはもう、テレビはすっかり女性向けのメディアになってましたから。

そんなワケで『ジャングル』は思ったような視聴率が取れず、徐々に作劇を『太陽にほえろ!』で馴染んだ手法に戻して行く事になります。最終回は結局、新人刑事=山口粧太の殉職劇になっちゃいました。

斬新な番組を成功させる事がいかに難しいか、そして質の高さが必ずしも人気を呼ぶとは限らないって事を、図らずもこのドラマは証明しちゃいましたね。

けれども、創り手がこういうパイオニア精神を失ってしまったら、それこそテレビ業界は朽ち果てて行くだけです。今現在、この『ジャングル』ほど高い志、熱い心意気を感じさせてくれる番組が、一体何本ある事でしょう?

『太陽にほえろ!PART2』と同じく、幻にしてしまっちゃいけない作品だと私は思います。是非とも再放送&商品化を熱望します!

(つづく)
 
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『太陽にほえろ!PART2』#06

2019-02-02 12:00:10 | 刑事ドラマ'80年代









 
この第6話は明らかに、パート1におけるスコッチ刑事(沖 雅也)の主役回・第242話『すれ違った女』のリメイク的な意図で創られた作品と思われます。

が、スコッチとは一味違った喜多刑事(寺尾 聰)の軽妙なキャラと、10年という歳月の流れ=時代の変化によって、ストーリーもテイストもかなり違ったものになってます。


☆第6話『心満たされず…』

(1987.1.9.OA/脚本=小川 英&尾西兼一/監督=高瀬昌弘)

冒頭、深夜における事件発生で、宿直の喜多さんが寝起きで出動し、被害者から事情聴取しながら欠伸をするというw、あまりにラフな姿勢からしてストイックなスコッチとは好対照。というか、七曲署全史においてもこんな刑事は他にいませんw

それは寺尾さんのキャラだから許されるワケで、影響を受けたブルース(又野誠治)が勘違いして(対抗意識を燃やして?)篁係長の前で鼻くそをほじったり、どんどんお行儀が悪くなって行くのは困ったもんでした。かつてはマカロニ(萩原健一)も所構わずツバ吐いたりしましたけど、おっさん臭いブルースがやると下品なんですよねw

それはともかく、事件は大手建設会社=東日建設の課長を乗せた車が襲撃され、仮面を被った犯人にボストンバッグごと書類を盗まれた、というもの。

犯行に使用された凶器はスタンガン。当時はまだ馴染みの無い代物で、わざわざ「それはアメリカで普及してる痴漢撃退用の……」なんて説明が入るところに時代を感じます。

被害者の課長も運転手も、犯人が小柄で耳にピアスの穴があった事から、女性の犯行じゃないかと証言。男がピアスをするのもかなり珍しかった時代です。

しかし、被害者である東日建設の様子がどうもおかしい。調べたら大物政治家との癒着が噂されており、恐らく奪われたのはただの書類ではなく、賄賂として運搬中だった現金だと喜多さんは睨みます。

となると、犯人はその日にリベートの金が運ばれることを知っていた、すなわち社内の人間である可能性が高く、捜査一係は内部調査を開始。

そして喜多さんは、外資部の秘書を務める女子社員=千鶴(相本久美子)に眼をつけます。

役職的に千鶴はリベートの裏事情を知り得るポジションであり、事件当夜の確かなアリバイも無い。しかも同僚OLたちの話によると、彼女は以前から事件そっくりな裏金強奪計画を、トイレにおける井戸端会議などで話していたという。

本当に犯人が女性なら、確かに千鶴は怪しい。しかし当人は「冗談で言っただけよ」と涼しい顔。資産家の娘で金にも困っておらず、動機がまるで見当たらない。この辺りまでの展開は、事件の内容は違えど『すれ違った女』とよく似てます。

千鶴にちょっと気があるDJ(西山浩司)は「彼女の計画を聞いた他の誰かが実行したのでは?」と、千鶴をあくまで疑う喜多さんに異を唱えます。そんなやり取りもボン(宮内 淳)とスコッチの間にありました。

ただし、喜多さんとDJの場合は「千鶴がシロかクロか」で5千円を賭けるという不謹慎さでw、その辺にもキャラの違いと時代の流れが感じられます。

とにかく喜多さんは、千鶴を徹底的にマークします。彼女は喜多さんと同じ城南大学出身の後輩であり、資産家に生まれて何不自由なく育てられた境遇もよく似てるのでした。スコッチが「すれ違った女」の抱える虚無感に共鳴したのと同じように、喜多さんも自分自身の影を千鶴に見たのかも知れません。

千鶴は大企業に勤めながら夜は清掃のアルバイトに励み、休日にもまた別の仕事をするというワーカホリックぶり。そこに彼女の抱える虚無感らしきものが見え隠れします。

共犯者がいる可能性を考えた喜多さんは、千鶴がいつも身につけてる、いまいち彼女には似合ってないブローチに眼をつけます。調べると、人事課長の島崎(清水章吾)が千鶴の誕生日にプレゼントしていたことが判明。どうやら彼女は、妻子ある島崎課長と不倫の関係にあるらしい。

当然ながら島崎は全面否定。事件当夜のアリバイもあり、共犯の線は限りなく細いんだけど、彼の態度に喜多さんは不審を抱きます。

折しも千鶴の自宅近くで、犯行に使われた上着や帽子が発見されます。その帽子に、彼女の髪の毛が付着していた!

あまりに出来すぎた展開を訝しながら、喜多さんは東日建設に乗り込み、あえて島崎課長を含む同僚たちの目の前で、千鶴に容疑の確定を宣告します。その乱暴なやり方に、さすがの千鶴も「サイテーな先輩よ!」と激怒。会社を飛び出し、喜多さんを振り切って姿を消しちゃいます。

千鶴が向かった先は、2時間サスペンスでお馴染みの岸壁。島崎課長に呼び出された彼女は、そこで見知らぬ若い男に危うく崖下に突き落とされそうになるも、駆けつけた喜多さん&DJに救われます。

細身で小柄なその男の耳には、ピアスの穴が! 現金強奪の真犯人はこのチャラ男であり、陰で操ってるのは島崎課長。自分に疑惑の眼が向けられるのを恐れ、自殺に見せかけて千鶴を殺そうとしたのです。

「嘘よ! そんなの嘘よ!!」

どうやら千鶴は、本当に何も知らなかったようです。彼女が冗談で話してた裏金強奪計画を聞きつけた島崎は、それを利用することを思いつき、いきつけの店のチャラいバーテンを金で雇い、「男装した女性」に見せかけて犯行に及ばせた。大金欲しさと、持て余してた千鶴の愛情から逃れる為に……

島崎が怪しいと睨んでた喜多さんは、わざと目の前で千鶴に容疑確定を宣告し、彼を罠に嵌めたのでした。

島崎の逮捕&送検を千鶴に報告し、かつて何不自由ない生活の中で虚しさを抱えてた自身の心情を、喜多さんは彼女に吐露します。

「キミを見た時、あの頃のオレと同じ……いつでも何かに苛立って、傷ついてる自分をどうすればいいか分からないでいる……そんな風に見えたんだ」

「……真剣だったんです。あの人への気持ちだけは本当だったんです」

「分かってる」

「……私、もう一度1人でやってみます。先輩!」

「頑張って。後輩!」

豊か過ぎるがゆえに感じる、底の深い虚しさ。1987年初頭という、まさにこれからバブルに突入する時期ならではのテーマで、'70年代とは「虚しさ」の種類がちょっと違うかも知れません。

そこに「不倫」が絡んで来るのは、ヒロイン以外に真犯人を設定する為に必要だったにせよ、そのせいで話の焦点がボケちゃったきらいがあります。まぁ、これもまた「時代」ですよね。

とにかくスコッチ編の『すれ違った女』と多くの共通点がありながら、結末は真逆。犯人の正体は裏の裏をかいて「男を装った女に見せかけた男」で、主役である喜多さんはDJとの賭けに完敗ですw

『すれ違った女』も殺人が絡まないお話で、決して重くはないんだけど、この『心満たされず…』はやたら軽く感じますね。さすがは'80年代。レビューを書いててもイマイチ手応えがありませんw

ヒロイン=千鶴に扮した相本久美子さんは、当時30歳。1974年に近藤久美子の芸名で歌手デビュー、'76年に本名の相本久美子に改名してからバラエティー番組『TVジョッキー』の司会等で注目され、人気アイドルの仲間入りを果たされました。

デビュー翌年から女優業へも進出、刑事ドラマは『非情のライセンス』『新幹線公安官』『メイド刑事』『ハンチョウ』等にゲスト出演されてます。

この『太陽にほえろ!PART2』第6話が放映されたその年に結婚され、しばらく芸能活動を控えておられましたが、離婚を経て、子育てが一段落した1999年頃から本格復帰。現在も女優・歌手・タレントとして活躍されてます。
 
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『太陽にほえろ!PART2』1986~1987

2019-02-02 00:00:14 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1986年11月から翌年2月まで、金曜夜8時に日本テレビ系列で放映されました。制作は日本テレビ&東宝です。

ご存知でしたか、この番組の存在を? 知ってても観た事がないって方が大半じゃないでしょうか? なにしろ全12話、つまり1クールしか放映されなかったドラマですから……

今でこそ1クール(3カ月)放映が標準になってますけど、当時の連ドラは短くても2クール以上が常識でしたから、12話で終わりとなると「視聴率の低迷による打ち切り」って思われちゃうんですよね。

でも、違うんです。前作『太陽にほえろ!』はボス=石原裕次郎さんが体力の限界で急遽終了が決まった為、裕次郎さん以外のレギュラーキャスト陣の出演契約が、まだ1クール分残ってたんですね。

日テレとしては新しいボスを迎えて番組を継続したかったんだけど、石原プロが終了を強く望んだ為、新しいドラマに切り替える事が決定、でも準備期間が要るしキャストの契約もあるから、新番組までの繋ぎとして『PART2』が創られる事になったワケです。

ファンはみんな、代理ボスを務める渡 哲也さんの続投を望んでたと思いますが、当時の渡さんはもう「団長」的な役柄を卒業したかったのかも知れません。

そんな様々な事情から、1クール限定を前提に製作された『太陽にほえろ!PART2』ですが、パート1が全718話あるのに、パート2が全12話って… どんなバランスやねんw 違うタイトルに出来なかったの?って思うけど、まぁ他にどうしょうも無かったのでしょう。

パート2最大の特徴は、メジャーな連続物の刑事ドラマでは恐らく(当時は)前例が無かったと思うのですが、ボスの役目を務めたのが女性であること。演じたのは、裕次郎さんが最も尊敬されてたと云われるベテラン女優・奈良岡朋子さんです。

これには賛否両論あろうかと思いますが、私は大正解だったと思ってます。もし、候補に挙がってたとされる加山雄三さんや後に『刑事貴族』でボスになる松方弘樹さんみたいな男性スターが起用されてたら、どうしても裕次郎さんと比べちゃいますからね。そして裕次郎さんに遠く及ばないのは目に見えてます。

ならば思い切って全く違った角度から人選した方が良いし、到来する女性の時代をいち早く先取りした点でも、実に鮮やかな舵取りだったと私は思います。ここまで大胆に改革されたら、ファンもかえって文句が言えなくなります。

そしてもう1つの目玉が、寺尾 聰さん扮する喜多 収 刑事でした。『太陽にほえろ!』の中だとスコッチ刑事(沖 雅也)からの流れを汲む「クールな一匹狼キャラ」のポジションだけど、同じクールでも肩肘張らない飄々とした軽さも兼ね備えた、全く新しい刑事像を築かれてたのがもう、さすがとしか言いようありません。

何があってもウェットにならない、とことん乾いた感じが実にハードボイルドで、犯人をサラリと射殺しちゃうような所も『太陽』じゃ異色のキャラでした。おまけにニックネームも無し!ですからね。たぶん、そうして『太陽』色に染まらない事こそが寺尾さんの希望というか、出演の条件だったんだろうと思います。

後のメンバーは前作から続投のドック(神田正輝)、マミー(長谷直美)、ブルース(又野誠治)、マイコン(石原良純)、DJ(西山浩司)、トシさん(地井武男)、さらに4年ぶりに現場復帰の長さん(下川辰平)と、総勢9名の大所帯。

そんな中でも寺尾さんは全く埋もれないどころか、ピカイチの存在感を示しておられました。これは私だけの感覚かも知れないですが、それまでチームの中心にいたリーダー格の神田正輝さんが、寺尾さんが加入した途端に影が薄くなっちゃったんですよね。

ベテランと若手の中間にいるポジションと、キャラ的にも少し被る部分があって、そうなると圧倒的に寺尾さんのカリスマ性とか男の色気が、神田さんを食っちゃったように私は感じました。

それだけ寺尾聰という俳優の持つパワーが凄いって事で、今でも主役級で活躍されてる所以ですよね。実際、粒揃いなパート2全話の中でも、寺尾さんが主役を務めた3本は特に面白かったです。武骨なブルース刑事とのコンビが、軽妙で凶悪で実に最高でした。

寺尾さんは『大都会 PART III』以降、数々の刑事ドラマに出演されてますが、その中でもこの『太陽2』で演じられた喜多刑事こそが最高に魅力的だったと、贔屓目を抜きにして私は思ってます。たった12話しか無いのが実に惜しい!


#01 悪魔のような女

OPタイトルの冒頭にテロップが入り、藤堂ボスが栄転して新体制となった近未来の七曲署、という設定がサラリと告げられます。

テーマ曲は「太陽にほえろ!メインテーマ’86」が引き続き使われますが、タイトルバックの映像にはパート2ならではの演出が施されてました。ボスの歩きは勿論、若手刑事の疾走もオミットされて「熱血」な感じが無くなったのと、ドック、マミー、ブルース、マイコン、DJの若手陣がなんと、ワンカットの長回しで一気に紹介されるんですよね。

遊園地で犯人が現れるのを待ち構えてるような設定で、ブルースがあの顔で眉間にシワを寄せながらメリーゴーランドに乗ってたりw、何ともシュールで笑っていいのやら戸惑いました。(ジーパン=松田優作さんが巨大コーヒーカップで煙草を吸ってたOPタイトルへのオマージュ?)

でも今思えば、何度もリハーサルを重ねないと撮れない非常に手の掛かったショットで、スタッフ&キャストの意気込みと遊び心が伝わる素晴らしいOPタイトルです。

第1話の内容ですが、ドックを主役に冷血な殺人犯のアリバイ崩しが描かれてて、これじゃパート1とそんなに変わり映えしないやんって、当時は拍子抜けした記憶があります。

でも、これも今にして思えば、新しい試みが色々とされてるんですよね。最初に犯人の犯行を視聴者に見せておいて、主役の刑事が如何にして犯人の正体に気づき、その尻尾をつかんで行くかを描く「倒叙法」のスタイルが取られてる。『太陽』では滅多に使われなかった手法です。

さらに、犯人が美女(金沢 碧)であった事。それまでは大抵、女性が殺人を犯す動機は「痴情のもつれ」だったり「家族や恋人の仇討ち」だったり、あるいは「正当防衛」が多かったのに対して、この犯人は私利私欲の為に男を利用し、用無しになれば殺すという、まさに悪魔のような蜘蛛女でした。

『太陽』じゃほとんど前例が無いもんだからドックたちは戸惑うんだけど、そこで新ボス=篁(たかむら)係長がこう言うんです。

「犯罪に男も女もありません。犯人という1人の人間がいるだけよ」

この台詞は、女性のボスでなければ説得力が無いと思います。新しい『太陽にほえろ!』の幕開けが宣言された瞬間ですよね。


#02 探偵物語

探偵事務所のオフィスを借りて、宝石店強盗の容疑者(森川正太)のカノジョ(甲斐智枝美)を張り込む喜多さん&ブルース。すると、その張り込み相手から「彼を警察より先に見つけて逃がして欲しい」って、仕事を依頼されてしまう2人。

探偵になりすました喜多さんはカノジョと行動を共にし、カレシが持ち逃げした宝石を狙う強盗一味と闘う羽目になるという、角川映画の『探偵物語』を彷彿させるお話。

寺尾さんの飄々とした軽いノリと、ハードボイルドな男の色気が同時に堪能出来る好編で、決して『あぶない刑事』にも引けを取らない格好良さ。助演のブルースとの組み合わせもバッチリで、このシリーズ最大の収穫だったと私は思ってます。

また、クライマックスの銃撃戦において、喜多さんが強盗一味の1人(片桐竜次)をアッサリ射殺しちゃう展開にも度肝を抜かれました。死ぬ所までは見せてないんだけど、片桐さんは腹を撃たれて、そのまま放置されてましたからw、絶対死んでると思います。

従来の『太陽にほえろ!』ならば犯人射殺は重大なトピックとして描かれるんだけど、喜多さんは顔色一つ変えないで、サッサと他の犯人を追いかけて行っちゃう。これもまた、パート2はひと味違うんだよっていう、宣言の意味を込めた演出だったんでしょうか?


#03 老犬ムク

これは名作です。迷い犬になつかれ、アパートで飼うワケにもいかず七曲署の裏に繋いで面倒を見るDJ。で、篁係長の許可を得て飼い主を探してみたら、河原で遺体となって発見されちゃう。

決して目新しいプロットでもないんだけど、ボスが女性になって家族的な雰囲気が一層強くなった七曲署と、まだまだ少年みたいに見えるDJのキャラクターに、しょぼくれた老犬「ムク」の佇まいが絶妙にマッチしてるんですよね。

いつもボーッと寝てばかりいるムクが、飼い主を殺した犯人を見つけた時だけ必死に全力疾走する姿に涙。それで体力を使い果たしたのか、行方不明になったムクは翌朝、飼い主の遺体が発見された河原で……

かつての警察犬シリーズみたいにイヌをやたら擬人化すること無く、あくまでイヌはイヌとして扱ってるのも良かったし、涙を強要しない淡々とした演出にかえって泣かされます。

刑事ドラマとイヌは相性バツグンで、定番中の定番なんだけど、これほど泣けるエピソードは他の番組を見渡しても無かったように思います。


#05 長さんの長い午後

マミーから職務質問を受けた男(村田雄浩)らが発砲し、喫茶店に立てこもります。被弾したマミーは重傷で、一刻の猶予もない。

身代わりで人質になった長さんは、いわゆるストックホルム症候群を利用して犯人達を自首させようとします。そんな長さんを信じて待つか強行突入するかで、ドックと喜多さんが激しく対立し、珍しく一係が真っ二つに分裂しちゃう。

こういう場合、本来なら中立の立場にいるのがドックのキャラで、長さんを信じるべきだ!って熱くなる姿にはちょっと違和感がありました。

もはやドックが一番の古株になっちゃった現状だと、そういう役割に回るしか無いんですよね。自由度の高い喜多さんに視聴者の眼は行っちゃうワケで、神田さんもツラい立場……だったのかも知れません。


#06 心満たされず…

大企業の重役が拉致され、リベートの金を奪われる事件が発生。犯人は「男装した女性」と思われ、喜多さんは1人の女子社員(相本久美子)に眼をつけます。

何不自由なく満たされた生活の中で、心だけが満たされない。そんな普通のOLがゲーム感覚で起こした犯罪なのか? スコッチの主演作『すれ違った女』を彷彿させるミステリーですが、本作は更にひと捻りが加えられ、不倫の恋が絡んでるのが時代を表してます。

今回、喜多さんとコンビを組むのはDJ刑事。この組み合わせも面白かったですね。喜多さん&ドック、喜多さん&マイコン(笑)のコンビ作も観てみたかったです。


#08 ビッグ・ショット

ところが、一番の名コンビと思われた喜多さん&ブルースの関係が悪化しますw

昔ながらの猪突猛進型で身体を張った捜査が信条のブルースから見ると、合理的でマイペースな喜多さんのエコノミー捜査は、まるで手を抜いて遊んでるみたいに見えちゃう。

実際、喜多さんも売り言葉に買い言葉で「人生なんて、死ぬまでの暇つぶしよ」なんて言うもんだから、ブルースは余計にカッカして、マイコンに八つ当たりw

だけど、いざ銃撃戦となれば生命を投げ出して市民を守る喜多さんの姿を見て、ブルースも考えを改めます。つくづく単純な男ですw 以前よりも絆を深めて、最強コンビここに復活!


#11 神戸・愛の暴走

ブルースの妻・泉(渡瀬ゆき)が撃たれて重傷を負います。ブルースに恨みを持つ男(阿藤 快)の犯行と判明し、理性を失ったブルースは犯人に復讐すべく暴走し、単身で神戸へと向かいます。

地方ロケ編としてはあまりにシリアスな内容ですが、久々に『太陽にほえろ!』らしい骨太なアクションが見られて嬉しかったです。

震災前の三宮やポートアイランドは、私も自主製作映画でロケした馴染み深い場所で、親友がアシックスの社員だった事もあり、非常にメモリアルな一編だったりします。(当時のアシックスは『太陽』のスポンサーで、ポートアイランドの本社でも撮影されてました)


#12 さらば!七曲署(終)

篁係長の息子(井上純一)に殺人容疑がかかります。夫(米倉斉加年)と離婚して以来、係長が数年ぶりに息子と対峙する場所は取調室だったという皮肉。

もちろん息子は無罪である事が判明し、事件は丸く収まるんだけど、この話の一体どこが「さらば!七曲署」だったのかは、未だ謎のままですw まぁ、これはあくまでパート2の最終回であって、1クールのドラマとしては順当な幕引きだったように私は思います。

このドラマ、パート1にも決して引けを取らないクオリティーだし、パート2ならではの魅力も多々あって、幻の作品にしておくにはあまりに勿体無い……と思ってたら、30年経ってようやくDVD化され、CS初放映も叶いました。当時の視聴率も評判も実は高かったそうだし、これは是非とも皆さんに再注目して頂きたい作品です。

なお『太陽にほえろ!PART2』終了時に催された「さよさらパーティー」には、ハワイで療養中の裕次郎ボスから声のメッセージが届いたり、松田優作さんが会場に駆けつけるというサプライズもありました。ショーケンさんと同じで『太陽』に関しては悪口しか言わなかった優作さんですが、ちゃんと愛しておられたんですよね。

その優作さんがファンへのメッセージを求められた際に放ったお言葉が「早く『太陽』を卒業して、映画館に来なさい」でした。いやぁーホント、耳が痛いですw
 
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