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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あいつがトラブル』1989~1990

2019-02-26 12:00:20 | 刑事ドラマ HISTORY








 
1989年12月から’90年3月にかけて全15話が放映された、フジテレビ系列の刑事ドラマです。

放映枠は土曜夜8時、なんと『オレたちひょうきん族』の後番組です。フジテレビがフィルム撮りのアクションドラマに取り組むのは8年ぶりだったそうで(そして恐らく最後の作品)、勢いがあった当時のフジらしい大胆な編成ですね。

先行の『あきれた刑事』も『ベイシティ刑事』も『ゴリラ/警視庁捜査第8班』も視聴率は振るわず、その一方で人情系の『はぐれ刑事純情派』がヒットしてしまい、アクション系のドラマが枯れ果てつつある時期での登場ですから、私も含めて好き者どもは大注目でした。

しかも『スケバン刑事』出身の南野陽子と『太陽にほえろ!』出身の萩原健一がダブル主演!って事ですからね。

人気絶頂でありつつ相当なバッシングも受けてた当時のナンノさんは、初めての正統な刑事役だったし、ショーケンさんも「マカロニ」が殉職して以来17年ぶりの刑事役でした。

横浜・港街署に新設された「失踪人課」の、トラブルメーカーな課長=沖田淳一(部下たちは『代表』と呼ぶ)がショーケンさんで、トラブルメーカーな新米刑事=美咲令子がナンノさん。

さらに、まだカンチ君も青島刑事も演じてない新人時代の織田裕二、同じくデビューして間もない宍戸 開がイキのいい若手刑事として加わります。

ほか、沖田をフォローする署長に橋爪 功、目の敵にする刑事課課長に伊武雅刀、情報屋に寺田 農といった面子。あの頃はみんな若かった!

ちなみに第1話のゲストは又野誠治さん(マカロニとブルースの競演!)と相楽晴子さん(スケバン刑事コンビ再共演!)でした。

メインライターは『太陽~』出身の大川俊道さん。そして銃器特殊効果で『あぶない刑事』『ベイシティ刑事』のBIG SHOTさんが参加されてます。

横浜が舞台のアクション物と言えば『プロハンター』『あぶない刑事』等のセントラル・アーツ作品を連想しますが、本作はキティ・フィルム社の制作。セントラルの作品は作風が自由奔放すぎて、私の生理にはイマイチ合いません。その点、本作はユーモアを交えながらも決して脱線しないのが心地良いです。この辺りは人によって感じ方が違うと思いますが……

もしかすると一般的な眼で観れば本作は、シリアスさも弾けっぷりも適度に足らない、中途半端な印象だったかも知れません。視聴率は振るわず、途中からうじきつよし氏が投入される等のテコ入れがありました。

廃れつつあったアクション撮影にも手を抜かない姿勢や、マニアックな銃器描写はコアなファンの間で高く評価されたものの、大方の視聴者にはイマイチ響かなかった。

’80年代後半になってから『リーサル・ウェポン』や『ダイ・ハード』等、戦争映画並みに派手でリアルなアクションを取り入れた刑事物のアメリカ映画がヒットして、更にレンタルビデオが普及した影響もあって、視聴者の眼が肥えちゃったのかも知れません。

と同時にお笑いブームも経て、軽いノリやユーモアに対するハードルも上がった事でしょう。リアリティへの要求も厳しくなって、それまで通じてた作劇上の嘘も許されない空気になってたような気がします。

『あいつがトラブル』にせよ『ゴリラ』にせよ、生まれた時代が違ってたら、世間の評価もまた違ってたかも知れません。つくづく、ヒット作を生み出すってのは本当に難しい!

ところで今あらためて観ると、やっぱ南野陽子って人は可愛いです。自慢の髪をバッサリ切ったのはショーケンさんに勧められての事らしく、ご本人は後悔されてたみたいだけど、ショートカット好きの私としては萌えましたw

ショーケンさんが演じる「代表」こと沖田淳一は、「マカロニ」こと早見淳が殉職しないで、やがて管理職に就いたとしたら?っていう発想から生まれたキャラクターなんだそうです。

だから組織のしがらみやルールをたびたび無視して突っ走る困った上司で、名うてのトラブルメーカーである筈のナンノさんはじめ、若手らが逆に翻弄されちゃう場面もよく見られました。

それこそが本作の肝だと思うんだけど、トラブルメーカーどうしが互いにトラブルの起こし合いっこしてるみたいな様が、視聴者にはあまりにバカバカしい空騒ぎに見えちゃったのかも知れません。

それに『太陽にほえろ!』や『傷だらけの天使』の頃の若いショーケンさんが演じる八方破れと、中年になったショーケンさんが演じるそれとは、やっぱ観る側の感じ方も違って来ちゃいます。

若い頃のショーケンさんは、どんなに突っ張って見せても少年の可愛さがあって、何となく儚さや切なさまで感じさせたもんだけど、中年になっちゃうと単なる怖いオジサンにしか見えないんですよねw(あくまで私感です)

黒澤映画に出た辺りからの「萩原健一」と、それ以前の「ショーケン」とは全くの別人である、みたいに表現されてた方がおられたけど、言い得て妙だと思います。

織田裕二さんはまだ無色な感じで、がむしゃらな芝居に好感が持てます。センスの点じゃ遠く及ばないものの、マカロニ刑事を彷彿させてくれます。

そのせいか、服装や小道具などのディテールにこだわる織田さんにショーケンさんが茶々を入れてからかい、一触即発のピリピリ感が撮影現場にあったんだとか。それを間に入ってなだめてたのが、世間からワガママ女優としてバッシングされてたナンノさんだと言うんだから、なかなかイイ話ではないですか。

なお、犯人役あるいはチョイ役で出演されたゲスト俳優陣の中には、内藤剛志、今井雅之、宇梶剛士、豊川悦司、萩原聖人、渡部篤郎、椎名桔平etcと、その後のTVドラマ界を支えて行く実力派が多数含まれてます。

あと『あいつがトラブル』っていうタイトルは、失踪人課はトラブルメーカー揃いなんだけど、当人達は自分がトラブルの元ではなく「あいつがトラブルなんだ」ってお互いに思ってる……てな意味だそうです。

現在なら『TROUBLE/警視庁特別失踪人課』みたいに無個性なタイトルになっちゃうだろうと思います。今どきのドラマ制作者さん達も、これ位は捻ったものを考えて頂きたいもんです。
 
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『ハロー!グッバイ』1989

2019-02-26 00:10:27 | 刑事ドラマ HISTORY




 
ご存知でしょうか? タイトルからは全く内容が想像つかないけど、1989年の4月から9月に全19話が放映された、日本テレビ系列の刑事ドラマです。

放映日は金曜夜8時、つまり『太陽にほえろ!』から『同PART2』『ジャングル』『NEWジャングル』『もっとあぶない刑事』と続いて来た伝統の刑事ドラマ枠です。

次の『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』の後には『刑事貴族』シリーズが始まるというラインナップの中で、この『ハロー!グッバイ』はあまり目立たず、忘れ去られた存在のような気がします。実際、視聴率も芳しくありませんでした。

内容的にもかなり異質で、明らかに「トレンディードラマ」の影響を受けてるんですよね。形だけは刑事ドラマだけど中身はラブコメだった『君の瞳をタイホする!』(フジテレビ)がヒットして、片や正統派の『ジャングル』がコケてしまい、日テレとしても迷いが生じた時期だったのかも知れません。

オシャレな街・銀座を舞台に遊び感覚を前面に押し出し、オシャレなエリート刑事たちが恋愛のついでに事件を解決する。つまり日テレ版『キミの瞳をタイホする!』を目指したワケですね。だからこの枠の作品で唯一、フィルムじゃなくビデオ撮影だったりします。

そうなると私は、本来なら相手にしないところなんだけど、金曜夜8時は日テレの刑事ドラマを観ることが長年の習慣になってたし、『太陽~』OBの三田村邦彦さんがレギュラー出演されてた事もあって、毎週ではないにしろ律儀に観てました。

それに、主役が何しろ水谷 豊さんですから、そんなに浮ついた内容にもなり得ないんですよね。制作も生真面目な東宝だし、根っこには不器用な熱さがあって、トレンディードラマとしてはかえって中途半端に見えたのかも知れません。

だからこそ私は観てられたんだと思います。トレンディードラマを否定するつもりは無いけれど、私が求めるものは一切そこに無いですから。

水谷さんが演じた伊達警部補は、ロンドン帰りの武闘派コップで、恐れを知らない大胆不敵な捜査ぶりは後の『刑事貴族2~3』における本城刑事のプロトタイプと言えましょう。ロンドン帰りって設定は『相棒』にも通じてますね。

三田村さん演じる安藤警部=課長は、伊達と幼なじみの腐れ縁で、犬猿の仲。出世欲が強くてエリート風を吹かせる、まさに伊達とは正反対な性格なんだけど、お互い何となく小競り合いを楽しんでるような節もありました。

賀来千香子さん演じる小宮警部補=通称マリリン(笑)は、伊達&安藤と同期で、2人から想いを寄せられてるモテ女。さて、果たして彼女はどっちを恋のパートナーに選ぶのか?……って、どーでもええわっ!

上記の3人を中心に、布施 博、川崎麻世、五十嵐いづみ、石井章雄(ラサール石井)といったトレンディーな(?)メンツが銀座署「刑事課分室」に勤めてました。

私としては、大地康雄さん扮する東郷署長がツボでした。あの超イカツい顔で「暴力は許さん! 暴力は絶対にいかんのだっ!」って怒鳴りながら机を殴りまくる倒錯ぶりで、署員たちが署長の悪口を言うと必ず背後に立ってるというw、トレンディードラマを意識した割にはコッテコテの吉本新喜劇的キャラなんですよね。

しかも『太陽にほえろ!』が大好きで、いつもテーマ曲を口ずさんでるという、実に愛すべき署長さんでしたw

水谷さんと三田村さんの小競り合いも「お前の母ちゃんデベソ」レベルで小学生そのまんまの他愛なさ。私は微笑ましく観てましたけど、トレンディーさを求める視聴者たちにソッポを向かれたのも、まあ当たり前かも知れませんw

だけど私は、このドラマのそんな垢抜けなさこそが好きでしたね。その証拠に、そういうベタな部分しか記憶に残ってませんからw

今にして思えばこの辺りから、世間一般の嗜好と私自身の嗜好とが、大きくズレ始めたのかも知れません。刑事物以外のドラマはほとんど観なくなってましたからね。

その刑事物すら、同時期に放映された『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(テレ朝)や『あいつがトラブル』(フジ)といったアクション路線が世間に無視され、地味~な人情路線ばかりになっちゃいますから、ホント観たい番組が無かったです。

『ハロー!グッバイ』の後番組『勝手にしやがれヘイ!ブラザー』は、フィルム撮影に戻ったものの刑事物ですらなく(ジャーナリストの柴田恭兵&大学生の仲村トオルが主人公)、いよいよ私の愛したアクション刑事ドラマは絶滅するのかと思われました。

ところが、暗中模索の時期をくぐり抜けた日テレ金曜夜8時枠が、まさかの原点回帰を果たしてくれる事になります。それが、結果的に日本で最後のフィルムアクションドラマとなった、あの『刑事貴族』シリーズなのでした。
 
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