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『西部警察 PART III 』1983~1984

2018-12-18 00:00:19 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1983年4月から’84年10月まで全69話が放映された、石原プロモーション制作による『西部警察』シリーズ第3弾。

『 PART II 』をそのまま引き継いだ形で始まり、第7話でオキ(三浦友和)が降板、代わりに第8話から大将(柴 俊夫)、第9話からジュン(石原良純)が加入します。

大門軍団のメンバーは他に、大門団長(渡 哲也)、ハト(舘ひろし)、イッペイ(峰 竜太)、ジョー(御木 裕)、チョーさん(小林昭二)、佐川係長(高城淳一)、そして木暮課長(石原裕次郎)。

オキの最期は、ほとんど死にかけの状態まで捜査を続け、団長に支えてもらいながら犯人を撃ち殺した後、失踪して行方不明のまま終わるという悲惨なものでした。雪山の中をオキが独りでさまようラストシーンが、今でも脳裏に焼き付いてます。雪山じゃなかったかも知れないけどw

代わって登場した大将は、視聴者が抱く「大門軍団=体育会系」っていうイメージを更に強くさせた、応援部の団長みたいなキャラクターでした。呼ばれた時の返事が「オス!」とか「ウッス!」ですからねw

演じる柴俊夫さんは『太陽にほえろ!』で長さん(下川辰平)の娘と結婚する気象予報士や『男たちの旅路』のガードマン役でお馴染みの俳優さんでしたから、すんなり受け入れる事が出来ました。

問題は、大将の翌週に登場したジュンですよね。あの人です、あの人w 何しろ石原裕次郎さんの甥っ子ですから、どんなにカッコイイ青年がやって来るんだろう?って、私は大いに期待してましたよ。

いや、すでにデビュー作の映画『凶弾』の予告編とか、お酒のCM等でお顔はチラホラと拝見してました。なんか、ハンサムなのか不細工なのか、格好良いのか悪いのか、よく判らん人やなぁとは正直思ってましたw

だけど、裕次郎さんと同じ血を引いてて、映画で主演デビューして、こうして大門軍団の一員になろうとしてる男が、よもや格好良くない筈がなかろうと。ビミョーな印象だったのは、きっと眼の錯覚に違いないとw 私は自分に言い聞かせてました。

で、いよいよ登場した石原良純さんは、「ビミョー」という印象を遥かに超えて、ダサかったw 暑苦しいお顔もさる事ながら、あの独特な動き方が何と言いましょうか……やっぱ「ダサい」という形容詞しか浮かんで来ませんw

そういう人を私は決して否定しません。私自身はもっともっとダサいかも知れないんだし、全ての俳優が二枚目である必要も無いワケですから。ダサい役がハマる人だって必要です。

だけども大門軍団の一員になるとなれば、話は違って来ます。大門軍団という名の辞書に「ダサい」という単語は載ってない筈ですw

軍団の辞書には「捜査」などと言うかったるい文字もありません。怪しい奴を見れば殴る、蹴る、締め上げる。逆らう奴には放水する、射殺する、爆破する。それが大門軍団の流儀です。

悪党の皆さんの立場からすれば、ダサい刑事にだけは、殴られたり射殺されたりしたくない筈です。相手が渡哲也だから、舘ひろしだから、つまり男も憧れるカッコイイ男に撃たれればこそ、気持ち良く死んで行けるってもんでしょう。

先輩刑事のイッペイさんは二枚目半のキャラだけど、演じる峰竜太さんは決してダサくはなかったし、他の二枚目たちとは違う独自の格好良さを表現されてました。芝居も巧かったですね。

良純さんは、お世辞にも演技がお上手とは言えませんでした。いや、上手とか下手とか言う問題とは次元が違ってて、何かこう……ヘンなんですw ぎこちなくて、それまで見た事のない動き、聴いた事のない台詞回しで、どう表現すれば良いか……やっぱ「ダサい」としか言いようがないw

二枚目が三枚目を演じてもダサいとは感じないけど、三枚目が二枚目を演じちゃうと、人は「ダサい」あるいは「痛い」と感じてしまう。石原プロの人達はそこが分かってなかったですね。(まぁ、分かってても相手は社長の甥っ子ですからねぇ……)

だって、団長の愛する妹=明子(登 亜樹子)が、大門軍団の並み居るオトコマエ達の中から結婚相手に選んだのは、よりによってジュンですからね。扱い方が根本的に間違ってますw

この番組を毎週観てたワケじゃないけど、無理して二枚目を演じて大門軍団の中で浮きまくるジュンの姿を見るたび、私は「嗚呼、良純……」「やれやれ、良純……」ってw

その時、私はしみじみ思ったもんです。同じ縁故採用でも、西部署で良かったよなぁって。七曲署に来てくれなくて、ホントに助かったなあって…… 私は甘ちゃんでしたw

それはともかく、空いた建物を見れば片っ端から爆破する西部警察イズムは健在で、ますます派手さがエスカレートしながらも、シリーズ後半は人情を絡めたエピソードも増えて行きました。

でも大門軍団に……と言うか石原プロに、お涙頂戴は似合わないですね。『ゴリラ/警視庁捜査第8班』(’89~’90)が失敗に終わって以降、下町を舞台にした人情路線の刑事物を連作してましたけど、感じるのは違和感ばかりでちっとも面白くなかったです。

社会派とかハードボイルドならともかく、石原プロの人情路線にはどうも、札付きの不良が急にガリ勉になっちゃったような不自然さを感じました。自らが世間に植え付けたイメージによる呪縛。さんざん暴力と破壊を尽くして来た報いでしょうか……

そんな石原プロの行く末を思えば、この『西部警察 PART III 』が軍団にとって、また日本のアクションドラマ全体にとってもピークだったと言えましょう。

最終回の3時間スペシャルは、まさにそんな「最後の花火」に相応しい華々しさと重量感がありました。

とにかくゲストの顔ぶれが凄かったですね。原田芳雄を筆頭に、宝田明、中村晃子、倉田保昭、小林稔侍、武田鉄矢、山村聰、黒部進、深水三章、小野武彦etcと、超大作映画並みのオールスターキャストでした。

国家を揺るがすテロリスト軍団! 爆破! 警察組織を逸脱して暴走する大門軍団! 爆破! 要塞島における戦争映画並みの大銃撃戦! 爆破! 普段は当たらない敵の銃弾を何十発も浴びて絶命する団長! 爆破! 素の石原裕次郎に戻って涙を流す木暮課長! 爆破! 爆破!! また爆破!!!

放映当時は半ば呆れながら、そのド迫力にただ圧倒されるばかりだったけど、近年になってCATVで観直した際には、なんだか熱いものがこみ上げて涙が出ちゃいました。

こんな荒唐無稽の極致みたいなドラマを、大の大人たちが真剣に、全力で、それこそ命懸けで創ってた、熱い熱い昭和の時代を象徴してるように感じたんだと思います。

バブルでお金があったからとか、規制がまだ緩い時代だったからとか、そんな物理的な問題だけじゃ済まされない、現在のテレビ業界じゃすっかり見られなくなった「クリエーターの熱い心意気」が、画面からビシビシ伝わって来るんですよね。

この番組が終わって、銃撃アクションは『あぶない刑事』や『刑事貴族』等に受け継がれて行ったけれど、派手なカーチェイスや爆破はすっかり見られなくなり、やがてアクションドラマそのものが絶滅する事になっちゃいます。あの当時、誰がそんな未来を予測出来たでしょうか?

そうはさせまいと、石原プロは2度、破壊アクションの復活を試みました。1度目は前述の『ゴリラ』で、失敗作と言わざるを得ない内容ながら何とか1年間続きました。この作品に関しては又、あらためてレビューしたいと思ってます。

2度目は、ストレートに『西部警察SPECIAL』としての復活でした。内容よりも撮影中の交通事故が話題になっちゃった曰わく付きの作品で、予定より1年遅れの2004年に放映されました。

これを観た時に私は、ドンパチ・アクションのTVドラマが、もはや成立しない時代になっちゃった現実を痛感させられました。

まず、フィルムじゃなくビデオで撮影されてるのが、私にとっては大ショックでした。通常のドラマの数倍お金を掛けてる石原プロの作品でさえ、もうフィルムを使えないという絶望。

そして、大門軍団の後を継いだ「鳩村軍団」の面々……すなわち石原プロの未来を担う若手俳優たちの凡庸さたるや! 顔の見分けがつかないのは、別に私が歳を取ったせいじゃないと思います。

あんなホストクラブみたいな兄ちゃん達が拳銃を振り回しても、ごっこ遊びにしか見えません。それなら石原良純さんを出してくれた方がよっぽど楽しめますよマジでw

これも又、ドンパチ・アクションが似合う若手俳優が、この国じゃもはや絶滅しちゃったという現実です。絶望です破滅です。

そして、件の事故ですよね。あれは運転してたイケメン君が調子に乗って危ない運転をやらかしたワケじゃなくて、素人にはコントロールしづらい外国産のスーパーカーを劇用車に使ったのが、そもそもの原因らしいです。ただ急発進するだけの、何でもないシーンの撮影で、見物人のエリアに突っ込んじゃった。

「西部警察と言えばスーパーマシンでしょ」って事で、何億円もかけて本物のスーパーカーを何台も取り寄せたらしいんだけど、馬力があり過ぎて危なっかしいし傷もつけられないってんで、かえって派手なカーアクションが出来なくなっちゃったという本末転倒ぶり。

その挙げ句に見物人を大怪我させて、せっかく立ち上げた連ドラの企画が中止ですからね。事故は連ドラ版の撮影中に起こったらしいです。

そもそも「西部警察と言えばスーパーマシン」だなんて、誰が思ってたんでしょう? そんなもんはオマケの要素に過ぎなくて、作品の魅力はもっと他の部分にあった筈です。

本物のスーパーカーが出てきて喜ぶのは一部のカーマニアだけで、それよりも中古車をバンバン壊しまくって、ちょっとデコレートした程度のフェアレディZを無邪気にスーパーマシンだと言い張るw、そんな中学生感覚こそが西部警察の醍醐味だった筈じゃないですか?

それをヘンに背伸びしてイキがってみた結果、取り返しのつかない痛手を負っちゃった。あの事故の顛末を見て、ドラマ業界全体が「カーアクションなんか、やるもんじゃないな」って思っちゃったかも知れません。

日本のアクションドラマを牽引して来た『西部警察』が、自らの驕りによるミスで、このジャンルの息の根を止めちゃったワケです。

ついでに言えば、殉職した筈の大門くぅ~んが、この復活スペシャルではシレッと元気に再登場しちゃうという、私としてはちょっと許しがたい作劇もありました。

『宇宙戦艦ヤマト』じゃあるまいし、パラレルワールドだとか言って済ませられる問題じゃないですよ。そうやってキャラクターの生命やファンの気持ちを軽く見てるから、天罰が下ったんじゃないですか?

……こうして振り返ってみると、石原裕次郎という太陽を失った瞬間から、軍団は明らかに輝きを失い、衰退の一途を辿ってますよね。私の眼にはそう見えます。

裕次郎さんの没後に石原プロが製作した作品で、ヒットしたと言えるのは唯一、スペシャルドラマの『弟』……つまり裕次郎さんの伝記ドラマのみ、ですからね。

つくづく、石原裕次郎あっての石原軍団であった事を、歴史が証明してると思います。これは本当に、理屈を超えた何か物凄いものを、裕次郎さんって人は持っていた。そういう星の下に生まれた人なんだ、としか言いようがありません。

『西部警察PART III』……それは石原裕次郎さんがご出演された最後の石原プロ作品であり、アクションドラマというジャンルの終焉を象徴する番組とも言えましょう。
 
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