ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『泡』『金魚姫』

2022-05-18 16:53:44 | 
『泡』 松家仁之 集英社
 男子高の二年に上がってまもなく学校に行けなくなった薫は、夏のあいだ、大叔父・兼定のもとで過ごすことに。兼定は復員後、知り合いもいない土地にひとり移り住み、岡田という青年を雇いつつジャズ喫茶を経営していた。薫は店を手伝い、言い知れない「過去」を感じさせる大人たちとともに過ごすうち、一日一日を生きていくための何かを掴みはじめる―。
 泡は、呑気症の泡。海岸の波の泡。人生。一つの意味しかなかった泡が話が進むにつれて上層的な意味を持っていくのは印象的。
「集団に慣らされたほうが気持ちは楽だけれど、集団はまちがえるから。しかも真面目で熱心なのがいると、もっとひどいことになる」そして、「気をつけたほうがいいのは、自分がひとりだなと感じた時かな」の後に続く言葉が良かった。いろんな経験をしてきた大人ならではの言葉だった。環境を変えて、違う大人と生活したのがよかったのかも。
 読んでいて思春期がリアルで自分の思春期のことを思い出した。自分という人の形からぶよぶよとはみ出していくような自分、気をしっかりと持っていないとどこかへ飛んでいきそうな自分。ちょっと懐かしかった。

『金魚姫』 萩原浩 角川書店
 恋人にふられ、やりがいのない仕事に追われていた潤は、夏祭りで気まぐれにすくった琉金にリュウと名をつけた。その夜、部屋に赤い衣をまとった謎の美女が現れ、潤に問いかける。「どこだ」。どうやら金魚の化身らしい彼女は誰かを捜しているようだが、肝心な記憶を失い途方に暮れていた。突然始まった奇妙な同居生活に、潤はだんだん幸せを感じるように。しかし彼女にはある秘密があった。
 テレビからいろいろと学んでいくリュウがキュートでおもしろかった。間に挟まれる昔の話や潤のブラック企業の話は、かなりハード。リュウが敵だと思っていた相手は、私の予想とは全然違った。潤がリュウのことがあっても、簡単に別の人と結婚するのが少し違和感があった。
 読んでいてSnow Manの「縁~YUĀN~」が頭の中でずっと鳴っていた。
コメント
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