生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼シリーズ(155)ビジョナリー・カンパニー2

2020年01月13日 14時07分02秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼シリーズ(155)         
 TITLE: ビジョナリー・カンパニー2

このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。            
『』内は,著書からの引用部分です。 
                     
                                                        
書籍名;『ビジョナリー・カンパニー2』 [2001] 
著者;ジェームズ・コリンズ、
発行所;日経BP出版センター 発行日;2001.12.21
初回作成日;R2.1.13 最終改定日;

副題は「飛躍の法則」で、このシリーズの2冊目になる。第1巻の原本の発行は1994年。シリーズの第4巻「自分の意志で偉大になる」は8年後の2002年の発行。

 巻末の「解説」には、野中郁次郎によって、このように書かれている。
 『コリンズは、アメリカのインターネット・バブルに対し「企業や隆営者にとってカネ(利益)は目標ではなく結果であるという原点が少なからず揺らいでいる」といち早く警鐘を鳴らした。彼が指摘するように、偉大な企業を創業した経営者はカネ以外の社会的な使命感によって経営を行い、その結果資産を得たのでありその逆ではなかった。アメリカ型の経営というと、われわれは、全てを分析的に捉え「競争に勝つ」という相対価値を飽くことなく追求する経営スタイルを連想しがちであるが、グレート・カンパニーになった企業の指導者たちからは、一貫して「社会に対する使命」という絶対価値を追求する強い意志力が伝わってくる。』(pp.418)

 「飛躍の法則」のすべては、「第5水準の経営者」による経営で、その過程は次の様にある。
 『 第五水準までの段階
第一水準 有能な個人   才能、知識、スキル、勤勉さによって生産的な仕事をする
第二水準 組織に寄与する個人   組織目標の達成のために自分の能力を発揮し、組織 のなかで他の人たちとうまく協力する
第三水準 有能な管理者   人と資源を組織化し、決められた目標を効率的に効果的に追求する
第四水準 有能な経営者   明確で説得力のあるビジョンへの支持と、ビジョンの実現に向けた努力を生み出し、これまでより高い水準の業績を達成するよう組織に刺激を与える
第五水準 第五水準の経営者   個人としての謙虚と職業人としての意思の強さという矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる 』(pp.31)

 最も重要なのは、人材なのだが、通常とはちょっと異なる。
 『最初に適切な人を選び、その後に目標を選ぶ
 偉大な企業への飛躍を指導したリーダーは、まずはじめに新しいビジョンと戦略を設定したのだろうとわれわれは予想していた。事実はそうではなかった。最初に適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、適切な人がそれぞれにふさわしい席に坐ってから、どこに向かうべきかを決めている。
「人材こそがもっとも重要な資産だ」という格言は間違っていた。人材が最重要の資産なのではない。適切な入材こそがもっとも重要な資産なのだ。』(pp.18-19)

 通常の日本の会社では、先ずこのことができない。新卒の一括雇用と終身雇用制度がその原因だ。

 次に重要なことは、「規律」だった。
 『どの企業にも文化があり、一部の企業には規律がある。しかし、規律の文化をもつ企業はきわめて少ない。規律ある人材に恵まれていれば、階層組織は不要になる。規律ある考えが浸透していれば、官僚組織は不要になる。規律ある行動がとられていれば、過剰な管理は不要になる。規律の文化と起業家の精神を組み合わせれば、偉大な業績を生み出す魔法の妙薬になる。』(pp.20)

規律が、単なる規律でなくて、企業文化になることは、グッドカンパニーの原則だ。 

そして、予想していなかったことで顕著なことは、すこし異なる「リーダーシップ」だった。
『たとえていうなら「すべての答えはリーダーシップにある」との見方は、中世に自然界の科学的な理解を妨げていた「すぺての答えは神にある」の現代版だと云える。十六世紀には、理解てきないことがあるとすべて神に答えを求めた。不作になったのはなぜなのか。神の御心だ。地震はなぜ起こるのか。神の御心だ。惑星があのように動くのはなぜか。神の御心だ。啓蒙主義の時代になると、もっと科学的理解しようとする動きが進んだ。こうして物理学、化学、生物学などが発達した。無神論者になったわけではないが、自然界の動き、字宙の動きを深く理解できるようになった。
これと同様に、すべてを「リーダーシップ」の一言で説明しようとすれば、十六世紀の人たちと違 いがなくなる。』(pp34.)

それは、ジャック・ウエルチのような人ではなかった。
『 良い企業を偉大な企業に飛躍させた経営者は全員おなじ性格をもっていた。事業が消費者向けであろうと産業向けであろうと、経営が危機的状況にあろうと安定していようと、サービス業であろうと製造業であろうと、変わりはなかった。転換の時期がいつあろうと、企業の規模がどうであろうと、変わりはなかった。 飛躍を達成した企業はすべて、
さらに、比較対象企業は、第五水準の指導者がいない点で一貫していた。第五水準のリーダーシップは常識に反するものであり、企業を変身させるには強烈な個性をもった偉大な救世主が必要だとの見方に反しているので、第五水準のリーダーシップが事実から導き出された概念であって、何らかの思想に基づく概念ではない点を強調しておきたい。』(pp.35)

第5水準のリーダーシップの「まとめ」は、次のようになる。
 『・偉大な実績に飛躍した企業はすべて、決定的な転換の時期に第五水準の指導者に率いられていた。
・ 「第五水準」とは、企業幹部の能力にみられる五つの水準の最上位を意味している。第五水準の指導者は個人としての謙虚さと職業人としての意志の強さという矛盾した性格をあわせもっている。野心的であるのはたしかだが、野心は何よりも会社に向けられていて、自分個入には向けられていない
・第五水準の指導者は次の世代でさらに偉大な成功を収められるように後継者を選ぶが、第四水準の経営者は後継者が失敗する状況を作りだすことが少なくない。』(pp.62)

そして、最後の野中の「解説」には、次のようにある。
『グレート・カンパニーのリーダーたちは、強烈な個性の下で指導力を発揮し大胆な経営手法を駆使するジャック・ウエルチ型の経営者ではなく、むしろ控えめで物静かで謙虚でさえあった。しかし、逆説的ではあるが、彼らには自社を偉大な企業にするために真理を追究し続けるという職業人としての強い意思とそれを愚直にやりぬく粘り強さがあった。彼らは、異なる意見に耳を傾け、従業員とじつくり対話し、リアリティの持つ多面性を総合化していった。』(pp.416)

 『規律ある入々で構成される組織は、外部環境の変化に適応しやすく、従業員の動機づけや管理の問題からも解放される。彼らの戦略は「どんな困難にぶつかっても最後には必ず世界一になれるのだという確信をもつと同時に、自分がおかれている現実を直視する」ということと、「規律ある人々との徹底的な対話を通じて自分たちが世界一になれる分野となれない分野を見極め、なれる分野にエネルギーと情熱を傾注する」という2つの原則を軸に構成されている。そして同時に、事業の原動力として最も重要な数値をわかりゃすく指標化し、それを基に事業展開する体制を作り上げている。規律ある適切な人材がいなければ、偉大なビジョンがあっても意味がない。未来を信じると同時に現実を直視し、自らの強みと弱みを熟知した上で、単純で実行可能な戦略を地道に行動に移す。そのことを、第五水準のリーダーたちは着実に実践した。』(pp.416-417)


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